楽しい日常を過ごしていた少女ちゃんの前に巨大な壁が現れてしまった。
悲しいけど、つらいけど、乗り越えなければ……、そんなお話。
第8話は、前編・後編の2回に分けて投稿します。
本作は今野隼史(辺境紳士社交場)・アークライトの『のびのびTRPGスチームパンク』のソロプレイのルール「カードをもとに物語を書く」に従って記した二次創作です。
『のびのびTRPGスチームパンク』のプレイヤーキャラクターの「名前」を「キャラクターの名前」にしているので、
PC「機械屋」→「機械屋さん」
PC「少女」→「少女ちゃん」
等々となっています。
先に記しとく設定、
機械屋(主人公)と先輩は女性、
作中の「ダリル」は通貨単位、1ダリル=1円くらい、
と言うことで。
使った(引いた)カード
PC:少女
イントロダクション:巨大生物の影
シーン1:アイドルコンテスト
カード1:闇:賞金首
シーン2:追憶のメロディ
カード2:光:片思い
シーン3:無限エネルギーの秘石
カード3:達人
シーン4:朝まで飲み明かせ
カード4:闇:都会っ子
シーン5:水晶宮殿のいざない
カード5:光:火星から来た
クライマックス:爆発カウントダウン
クレジット
ゲーム名:のびのびTRPG
ゲームデザイン:今野隼史
発売元:株式会社アークライト
© 2021 FRONTIERPUB / Arclight, inc.
翌朝。
朝ごはんを食べに食堂に行こうとしたところでドアがノックされました。
「はーい」
私がドアを開けると「謎の男」さんがいました。
「少し構わないか?」
「えと、あ、はい」
今日の「謎の男」さんはいつもと少し様子が違います。
「謎の男」さんから写真を一枚、受け取りました。
男の子の写真でした。
歳は私と同じくらいか少し小さいくらいか、そんな男の子です。
「昨日の宴会にもいた」
えっ? ぜんぜん気がつきませんでした。
「少女くんの初めての任務だ。
この子の正体を探れ」
「謎の男」さんの声には厳しさが感じられました。
「少女くんひとりで無理そうだったら先輩くんと機械屋くんに手伝ってもらうといい」
先輩さんと機械屋さんにお願いするのが良さそうです。
「あと、これだ」
私のインフォメーション端末にデータが転送されました。
地図画面が立ち上がり、地図上に何かのマーカーが表示されました。
「これがその子のいる場所だ。昨日、マーカー発信データを入れておいた。
では頼む」
そう言って「謎の男」さんは部屋を出ていきました。
やはり巨大生物の件で忙しいのでしょうか?
とは言え、私に任務です。初めての任務です。
……でも、私ひとりでは絶対に無理です。なので先輩さんと機械屋さんに手伝ってもらうことに決めました。
さて、と出かけようとしたところで思い出しました。朝ごはんです。
朝の早めですが、工房のシャッターは全部開いてました。
工房の前で先輩さんが体操をしてました。
「おお、少女ちゃん!」
「おはようございます」
私はぺこりとおじぎをします。
「あのですね、
今日はお願いがありまして……」
少し言いにくいです。
「ん?
どったの?」
先輩さんは早く言ってよ、的な表情です。
私は思い切りました。
「『謎の男』さんから初めての任務をもらいまして……」
やっぱり言いにくいです。
「うむ、初めての任務か……」
「それで、先輩さんと機械屋さんに手伝ってもらえたら嬉しいな……、とか思いまして……」
これってすごく無理言ってますよね?
「了解!
今日は予定ないから。
それに楽しそうだし」
先輩さんはにこりと笑顔になりました。
「じゃ、ちょっと待ってて、
機械屋ちゃんつれてくるから」
先輩さんは小走りで食堂へ向かいました。
すぐに先輩さんと機械屋さんが来ました。
先輩さんはにこにこしてますが、機械屋さんは何か厳しい表情でした。
先輩さんと機械屋さんに男の子の写真と地図のマーカーを見てもらいます。
あと、昨日の宴会にもいたらしい、と言うことも伝えます。
工房から出てシャッターを閉めて鍵を確認して。
「じゃ、さっそく行こう!」
先輩さんは元気いっぱいです。
マーカーは工業街にありました。
「えっと、工業街に行きますか?」
私は尋ねました。
「いや、あそこは街の行き止まりだ。
工業街を目指しつつ、繁華街の方に行かれても良いように動こう」
機械屋さんが言います。
私の仕事だから私が先頭に、となりました。私の後を先輩さんと機械屋さんが歩きます。
「!」
マーカーが動き出しました。
「先輩さん、これっ!」
先輩さんと機械屋さんが地図を見ます。
マーカーは王都中央駅を目指しているようです。
「中央駅か」
機械屋さんの声。
私たちは王都中央駅へ向かうことにしました。
ここからは先輩さんが前を歩いてくれました。
歩くテンポを速めたり遅めたり、王都中央駅でちょうど追いつくように、そんな歩き方です。
そこから10分くらい、王都中央駅はもうすぐです。
地図を拡大表示させます。
地図に浮かんでいるマーカーのあたりを見ると……、いました! 写真の男の子です。
「先輩さんっ」
私はつい大きな声になってしまいました。
「少女ちゃん、落ち着いて」
機械屋さんが小さい声で言いました。
「は、はい」
今度は私も小さい声で言いました。
男の子は改札を通りました。
私たちも後を追って改札を通ります。
どこに行くつもりなのか……。
見つからないように後をつけます。
男の子が乗ったのは最近開通した新路線、王都中央駅から東へ、水晶の宮殿のすぐ前を通ってさらに東へ伸びる路線です。
私たちは今度はいかにも三人グループっぽい感じで、男の子が乗った車両の隣の車両に乗ります。
「機械屋ちゃん、どしたの?」
先輩さんが機械屋さんに声をかけます。
機械屋さんは何となく難しい顔をしてます。
「いや、アタイの思い違いなら良いんだが……」
「うん? 何が?」
先輩さんが尋ねます。
「何か不思議な感じがしないか? あの子」
機械屋さんは難しい表情のままです。
「やっぱり、機械屋ちゃんも思ってた?」
先輩さんの表情が険しくなりました。
私にはぜんぜんわかりません。
「少女ちゃん、これ、かなりキツいことになるかも。
覚悟しといた方が良いよ」
先輩の言葉には何とも言えない重さがありました。
「あの子の行くとこ」
「水晶の宮殿しかないね」
機械屋さんと先輩さんが言いました。
昼までかなりある時刻、列車は水晶の宮殿の駅に着きました。
先輩さんと機械屋さんが言った通り、男の子は列車から降りました。私たちも降ります。
男の子の行き先は水晶の宮殿、それは間違いないようなので、かなりの距離をとって尾行します。
水晶の宮殿の扉が開いています。確か、普段は閉まっているはずです。
「やっぱりか」
と機械屋さん。
「さて、どうする?」
と先輩さん。
んと、私は何も言えません。
男の子はごく当たり前のように水晶の宮殿に入っていきました。
「これ、もうどうにもならないね」
先輩さんが言います。
「適当なところで出るか」
「だね」
機械屋さんの言葉に先輩さんが答えます。
10分ほどしたでしょうか、男の子が水晶の宮殿から出てきました。
私は男の子の前に出ようとしました。
でも、先輩さんが私の腕をつかんで引き戻しました。
「少女ちゃん、しっかり確認してからね」
男の子の後ろ、水晶の宮殿から「たこ」のような宇宙人? ステレオタイプな宇宙人? が何人か出てきました。
少し話し込んだ後、宇宙人? は水晶の宮殿に戻っていきました。
男の子は駅へ戻るつもりなのか、こちらへ歩いてきました。
「んじゃ、行くよ」
先輩さんの言葉を合図に、私と先輩さんと機械屋さんで男の子の前に立ちました。
「やっぱりいたんだね」
男の子はそう言いました。
「これから王都に戻るけど、一緒だよね」
男の子は続けました。
もうどうしようもないのでしょうか、先輩さんは、
「戻るしかないね」
そう言いました。
王都への列車。
男の子は話しました。
「僕は特別な存在っていうか、他の人とは違う」
始まりはそんなところから。
他人のことはあまり言わずに自分のことを話します。
私は男の子に何となく少しの親近感が芽生えました。
私も特別。『鍵』だからかもしれません。
もしかしたら友達になれるかも、そんな気持ちになりました。
王都まであと30分くらい。
機械屋さんが男の子の言葉をさえぎりました。
「で、何するつもりだ? あの宇宙人みたいなのは何だ?」
「僕はどうやっても死ぬんだ。
だから話すよ」
男の子は淡々と話し始めました。
「うん、あれは宇宙人。
水晶の宮殿に隠れてた。でもたぶんもう脱出したと思う。
彼らはこの星に移住するつもりだ。
だからこの星に住めるかどうかテストをした。
海に巨大生物を放った。
でも上手くいかなかった。
だから僕を作って細かく調べさせた。
結果はやっぱり無理。
だから彼らがこの星に住めるように環境を劇的に変えることが決まった。
そうなればこの星の生き物は全滅。
でも仕方ない。
もうすぐに、本当にすぐに始まる」
私たち三人は突拍子もない話に何も言えません。
いちばんに我に帰ったのは機械屋さんでした。
「じゃあアンタ、作り物だったのか、
道理でへんな感じなわけだ」
次に先輩さん。
「すぐっていつ? 具体的に言って!」
私は何も言えません。わかりません、わかりたくないです。
再び男の子。
「街のどこかに爆弾がある。
日没と同時に大爆発。それを合図にして環境変化処置が始まる」
先輩さんと機械屋さんが凍りつきました。
私はわかりたくないです。
機械屋さんが腕時計を見ました。
「王都に帰って『謎の男』に連絡つけて、で、日が暮れるまで3時間あるかないか」
先輩、その子見張っててくれ」
「了解!」
「アタイは少女ちゃんと一緒に『謎の男』に話を通す」
そんなことを言っているうちに列車は王都中央駅に着きました。
機械屋さんが早口で言います。
「アタイと少女ちゃんは軍の……、
待て、少女ちゃんのインフォメーション端末、軍のやつだよな?」
「は、はい」
私は震えていました。
「『謎の男』に急いでつなげ!」
指も震えてます。
何とかつなげることができました。
「機械屋だ、
今から言うのは嘘とか与太話とかそんなんじゃねぇ……」
機械屋さんは男の子が言ったことを細かく伝えました。
「……わかった、合流だな」
通信が終わった機械屋さんはインフォメーション端末を私に返してくれました。
「少女ちゃん、先輩、軍の役所の前で『謎の男』と合流だ」
先輩さんと機械屋さんは小走りですが、私と男の子は全力で走ります。
役所の前に「謎の男」さんがいました。
「やはり……か、
水晶の宮殿の守りが甘かったか……」
「アンタ、また知ってたのか!」
機械屋さんが「謎の男」さんに叫びます。
「いや、ここまでとは……、
まったくわからなかった」
私は息を整えて落ち着いたところで気付きました。
街に人がいません。
「日が暮れるまでもう時間ないよ!」
先輩さんも大きな声です。
「あの、人がいないのは?」
私は小さな声で聞きました。
「戒厳令を出した。
私の部隊はもちろん全部動いている。
正規軍と警察ももうすぐ動きだす。
だが、爆弾が見つかるかどうか……」
「謎の男」さんが厳しい表情で言います。
「爆弾がどこにあるか知ってんだろ?」
機械屋さんがキツい口調で聞きました。
続けて、
「アタイはわかってるつもりだ。
アンタも一緒だろ?」
「謎の男」さんが言います。
「可能性を信じたい……」
「ああ、そうだな」
機械屋さんは力なくそう言いました。
それから2時間が過ぎ、さらに過ぎ。
日没まであと10分くらい。
軍と警察が全力をあげて爆弾を探しているのですが見つかりません。
「可能性はなかったか……」
「……そうだな」
「謎の男」さんの言葉に機械屋さんが肩を落としました。
先輩さんが男の子から離れます。
「謎の男」さんが男の子に鉄砲を向けました。
「え!?」
私は何もわかりません。
でもこれじゃ男の子が死んじゃいます。
男の子の方へ駆け出そうとした私を先輩さんが羽交い絞めにしました。
カチリ、
鉄砲の音です。
私には怖すぎます。
だから先輩さんの肩に顔をうずめようとしました。
でも、
「少女ちゃん、しっかり見るんだ!」
機械屋さんが私を先輩さんから引き離して男の子を見えるようにしました。
パンッ!
乾いた音がしました。
同時に男の子が後ろに倒れました。
本当に瞬間のことです。
でも私にはとても長いスローモーションのように見えました。
男の子が背中から倒れて地面に力なく横たわりました。
私は機械屋さんの腕を振りほどいて男の子に駆け寄ります。
地面に座って男の子の体を抱き上げます。
「なんで!? なんで!?」
ぽろぽろと涙がこぼれます。
「言ったよね。
『僕はどうやっても死ぬんだ』って」
男の子が力のない声で言います。
「時間がきて爆発して死ぬか、その前に殺されるか……、
まわりを巻き込むか……、巻き込まないか……、
それだ……け……」
男の子の体から力がなくなりました。
ぜんぜん動きません。
「いや、いや! いやっ!!
いやーっ!!」
私は訳がわかりません。
泣くしかありません。
地面に座ってるしかありません。
「ぎりぎりか……。
……どうにかなったな」
機械屋さんの声が聞こえました。
日が沈むほんのわずかだけ直前のことだったようです。
「処理班、急げ!
技術部に運んですぐに分析だ」
「謎の男」さんの声を合図にまわりにいた兵隊さんのうちの何人かが近づいてきます。
担架が持ってこられ、男の子がその上に乗せられてどこかに運ばれていきました。
先輩さんが私の肩に手を置きました。
「いやーっ!」
私は先輩さんの手を振り払って泣き続けました。
すごく長い時間、泣いていたように感じます。
「少女くんは……」
「……そっちじゃ絶対無理」
「ウチでひとばんあずかる……」
「謎の男」さん、機械屋さん、先輩さん、
声がとぎれとぎれに聞こえました。
「ひっく……、ひっく……」
私はちょっと落ち着きました。
先輩さんが言いました。
「今日はウチにおいで、
軍よりはいいでしょ」
「……はい」
小さい声で返事をしました。
先輩さんに支えられるようにして工房まで歩きました。
機械屋さんは何も言わずに私たちの後ろを歩きました。
工房に着いたときには、日はしっかりと沈んでいました。
小さな扉を開けて中に入ります。
三人で食堂に入りました。
「ほら、座って」
「はい」
私は小さい声しか出せません。
先輩さんの声に促されて、私はいすに座りました。
私の隣に先輩さんが座りました。
「機械屋ちゃん、晩メシお願いしてもいい?」
「ああ」
先輩さんの言葉に答える機械屋さんの声にも力がありませんでした。
機械屋さんは手際よく料理を作ってくれました。
先輩さんのテーブルをはさんだ向かいに機械屋さんが座りました。
機械屋さんは険しい表情です。
そんな機械屋さんを見ると、私は男の子のことを思い出しました。
「う……、うぅ……」
涙が浮かんできました。
すぐにがまんできなくなります。
「えぐ……、えぐ……」
涙がぼろぼろ流れます。
何もわからなくなります。
「少女ちゃん……、大丈夫だから……、ね」
先輩さんがなだめてくれます。
でも私は泣き続けました。
ガタンッ、機械屋さんが立ち上がったみたいです。
私のところへ来ました。
胸ぐらをつかまれます。
機械屋さんは私を引きずるようにして食堂を出ました。
私には何なのかわかりません。
機械屋さんに工房の床に転がされました。
「少女ちゃん!
「謎の男」が何ですぐに撃たなかったかわかる?
アタイが何で少女ちゃんに見せたかわかる?」
機械屋さんの怖い声が続きます。
「『謎の男』が好きで男の子を撃ったと思う?
ぎりぎりまで待ってくれたんだ。
街のどこかで爆弾が見つかれば男の子を撃たなくていい。
でも見つからなかった。
だから撃つしかなかった!」
「うぅ……、うぅ……」
私はわかりたくありません、わかりたくありません。
機械屋さんがさらに言います。
「『謎の男』はね、少女ちゃんが男の子を見るまで撃たなかったんだよ。
撃とうと思ったらいつでも撃てた。
でも撃たなかった」
機械屋さんの言葉に、私はどんどんつらくなります。
「少女ちゃんはこれからもっと残酷なのを見ることになるんだよ?
それが『謎の男』の仕事。
他の人がつらすぎてできないことをするのが仕事。
だから少女ちゃんは見なきゃならない」
私の心に機械屋さんの言葉が刺さります。
「機械屋ちゃん、
それくらいで止めたげよ、
ね……」
「……ああ」
先輩さんが機械屋さんに声をかけました。
「少女ちゃん、今日は疲れたでしょ、
早いけどさ、もう寝よ、
そしたら落ち着くから」
今度は私に声をかけてくれました。
「機械屋ちゃん、部屋、どうしよ?」
「……奥の倉庫にいくらかマシな部屋があったよな?
悪いけどそこで寝てもらうか……」
機械屋さんの声はどこか悲しげでした。
私がその部屋のはしっこでぼーっとしているうちに、先輩さんが簡易ベッドを用意してくれて、機械屋さんが毛布を持ってきてくれました。
先輩さんが言います。
「ほら、横になって」
私はふらーっとベッドに寝転びました。
先輩さんが毛布をかけてくれました。
どうしてだかわかりませんがすぐに眠たくなって、そのまま眠ってしまいました。
何時間あとでしょうか、じゃなくてすぐだったかもしれません。
お手洗いに行きたくなって目が覚めました。
部屋を出ると食堂から光がもれてました。
ついそっちに足が向きました。
いくらか近づくと、先輩さんと機械屋さんの話し声が聞こえてきました。
「……少女ちゃんに悪いことしたかな」
機械屋さんの声は悲しげです。
「でも、私か機械屋ちゃん、どっちかがしないとダメだった。
私にはできなかった……」
「アタイ、残酷なのかな?」
「それは違うと思う……」
先輩さんの声も沈み気味です。
「誰かが汚れ役にならないと、
どうにもならないもんな……」
「だったら『謎の男』はつらすぎるよね……」
「謎の男」さんの名前が先輩さんから出ました。
「あいつは十分すぎるくらいにわかってる。
つらくてもそれが自分の仕事だって、
汚れ役でいいって……」
「『いい』っては思ってないと思うな」
先輩さんの力のない声。
「そうだな……、
汚れ役でいいっては思ってないか。
誰かのための汚れ役、か……」
「機械屋ちゃんはどうしてできたの?
少女ちゃんに男の子見せるの」
先輩さんが尋ねます。
「……アタイはいろいろ見てきたから」
「そっか……」
少し間をおいて、機械屋さんが話し始めました。
「ふたりならんでさ、
今のアタイと先輩と、よりももうちょっと距離があったかな。
すっごく馬鹿な話しして笑ってて、
そしたらいきなり、どかんってものすごいでかい音がして、煙で何も見えなくなって、
煙がはれたらそいつがいないんよ。
たぶんそいつのだろ、っていう腕片方と脚片方だけが残ってて……」
機械屋さんの言葉が止まります。
無音が少し。
「両脚吹き飛ばされて、死にたくない死にたくない、って言ってるやつに楽にしてやる、って頭撃ったり……」
「……機械屋ちゃん、強いんだね」
私は食堂から離れました。
お手洗いに行って、先輩さんと機械屋さんが用意してくれたベッドに戻りました。
毛布を頭からかぶって今日あったことを順番に思い出しました。
何が正しくて何が間違ってたのか? そんなことじゃありません。
皆さんが何を考えてたのか、何をしたかったのか、私にできるせいいっぱいのことを考えました。
いつのまにか眠りました。
翌朝。
私が起きたときには先輩さんも機械屋さんも、もう起きていました。シャッターは全部開いています。
「おはようございます!」
私は思いっきりの元気で朝のあいさつです。
「お、おはよう」
機械屋さんは驚き気味、
「おはよー!」
先輩さんはいつもの先輩さんのようでした。
三人で朝ごはんを食べました。「朝メシ食わない派」の先輩さんも一緒に食べました。
「少女ちゃん、ちょっとわかったみたいだね」
先輩さんに言われました。
そう言われるとちょっと辛いです。
「……ぜんぜんわかってません。
でも……、わかりたいです」
「そっか、少女ちゃんは強いんだな」
機械屋さんがそう言ってくれました。
朝ごはんを食べ終わって少しして、街が動き始めました。
工房の前で自動車が止まる音。
三人で食堂を出ました。
いたのはもちろん「謎の男」さんでした。
私は「謎の男」さんに走り寄りました。
「ひとばんして、何かわかったようだな」
さっき先輩さんに同じことを言われました。
「……ぜんぜんわかってません。
でも……、わかりたいです」
「そうか、少女くんは強いな」
これもさっき機械屋さんに言われたことと一緒です。
「ひとつ聞いてもいいですか?」
私は「謎の男」さんの目を見て質問しました。
「『謎の男』さんはいい人、
でいいんですよね?」
「謎の男」さんはフッと笑みを浮かべて言いました。
「それはどうかな、
いいか悪いか……、それを決めるのは少女くんだ」
私は「謎の男」さんと一緒に軍の役所に戻りました。
『昨日の後始末と、それに今日の始末もしなければならない』
そう言って「謎の男」さんは立ち去りました。
「昨日の」はわかりますが、「今日の」はわかりません。
部屋に戻ると新聞が届いていたので目を通しました。
やはり、と言うか、昨日の騒ぎについては「テロリストが街に潜んでいた」と言うことになっていました。
テレビをつけました。
テレビは大騒ぎでした。
その騒ぎの元に私はとても驚きました。
「巨大生物の死骸が王都近くの砂浜に打ち上げられている」
浮遊機械からの中継が流されていました。
これが「今日の」ですか……。
巨大生物もこの星を調査するために作られた。
心がとても痛いです。
でも、だから痛みを消そうとは思いません。
痛いのは痛い、でいいんです。
きっとそうなんだと思いました。
了