冒険と探検と日常と ~のびのびTRPG~   作:混沌野郎

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王都に忍び寄る邪悪な影……。
ついに「影」が「影」じゃなくなった。
後がなくなった少女さんは機械屋さんに助けを求めることに。
「影」の背後には帝国の姿が見え隠れして。
少女さんはこの試練に打ち勝てるのか……、そんなお話。

 第10話は、前編・後編の2回に分けて投稿します。

 本作は今野隼史(辺境紳士社交場)・アークライトの『のびのびTRPGスチームパンク』のソロプレイのルール「カードをもとに物語を書く」に従って記した二次創作です。

 『のびのびTRPGスチームパンク』のプレイヤーキャラクターの「名前」を「キャラクターの名前」にしているので、
PC「機械屋」→「機械屋さん」
PC「少女」→「少女ちゃん」
等々となっています。

先に記しとく設定、
 機械屋は女性、
 と言うことで。

使った(引いた)カード
PC:少女
イントロダクション:秘密結社の陰謀
シーン1:空賊の襲来
カード1:闇:好奇心の塊
シーン2:名誉あるひとこと
カード2:光:紅茶中毒
シーン3:死を告げるサイン
カード3:闇:復讐者
シーン4:せまりくる警官隊
カード4:光:雇用
シーン5:巨大飛行船に潜入せよ
カード5:光:警部(NPC)
クライマックス:皇帝の最後

クレジット
ゲーム名:のびのびTRPG
ゲームデザイン:今野隼史
発売元:株式会社アークライト
© 2021 FRONTIERPUB / Arclight, inc.


第10話 暗躍する影 (後編) [2/2] (冒険回)

 四日目。

 機械屋さんと私は宿を出ました。カウンターで精算をして戸を開けました。

 向かいの壁に男がひとり、もたれかかっていました。

 機械屋さんと私は外に出て戸を閉めるます。

 男はいくらか距離をとりました。

「くくくっ」

 小さく笑いました。

「あの男のところへ行きな」

 私ははっとしました。「謎の男」さんに何かあったのか。

 気になりますが、今は気にしてられません。

 男が私の方へ距離をつめました。私はその分さがります。

 男の両手にはナイフ。特徴的な形のナイフ。やはり北方の暗殺者です。

 ナイフには強力な毒が塗られているはず、かすり傷ひとつで命を落とします。

 男の武術はかなりの腕前です。

 でも「謎の男」さんよりは格下。私でもあるいは。

 向かい合います。

 男が振り下ろした左手、タイミングをはかって避けて、勢いをつけた右足で壁に蹴りつけます。

 男の左手からナイフが落ちました。

 次は右手。こちらも振り下ろすところをジャンプで避けて、今度は両足で男の手の上に着地。

 これで男は両手を使えないはずです。

 とは言え暗殺者、次は何で来るか……。

 いえ、来られる前にこちらから。

 ステップで二歩後ろへ引いて、そこから勢いをつけて両腕を前に。両手を地面につけて脚を前に回転。足首を男の首に絡めます。

 勢いのままに今度は足首を軸にして男の背の方へ体をひねりながら着地。

 男の首と頭にダメージが入ったはずです。

 男はまったく動かなくなりました。

 それまで何も言わなかった機械屋さんが言いました。

「うわ……、

 少女さんも容赦ないね。

 頭と首、ダブルって……」

 私は何か照れてしまいました。

 と、ちょっとほんわかした空気はすぐに消えました。

 

「こっちだ!」

「両側からはさみこめ!」

 誰かが通報したのか、そもそも仕組まれていたのか、

 大勢の警官さんが集まってきました。

 路地の両方を警官さんに押さえられています。

 戦いたくはないのですが仕方ありません。

「少女さん、どっちに行く?」

「機械屋さんのタイミングに合わせます」

「了解!」

 瞬間に機械屋さんが走り出しました。

 私はすぐに機械屋さんの横にならびます。

 申し訳ないのですが、警官さんたちを殴り倒し、蹴り倒して路地から抜け出しました。

 表通りにはパトカーが何台もとまっています。あれだけの警官さんがいたのですから当然です。

 機械屋さんはパトカーに乗ってました。

 エンジンがかけっぱなしだったようです。これも当然です。

 私は機械屋さんの隣、助手席に飛び乗りました。

 機械屋さんは私を確認するとすぐにパトカーを走らせました。

「ここももうアウトだな、

 次はどこに行くか……」

 機械屋さんが考えを言葉にしました。

 とりあえず空港に向かっているようですが、無事に船に乗れるか……。

 私はふと横を見ました。目を疑いました。

「機械屋さん!止めてください!」

 機械屋さんはパトカーを急停止させました。

「どうした?」

「あれ!!」

 私が指さす先を機械屋さんが見ました。

 帝国の巨大武装飛行機械が泊まっていました。

「これは……、

 忍び込むか……」

 機械屋さんの考えは私と一緒でした。

 帝国の飛行機械のそばまでは簡単に行けました。

 でも、人の出入りがそれなりにあるので、忍び込むタイミングがなかなかありません。

「暗くなるまで待つか」

 機械屋さんが言いました。

「ですね」

 私は同意しました。

 待っている間に「私が機械屋さんを雇った」と言うことにしました。

 こうしておけばこの一件について、王国内では問題になりません。

 それに、機械屋さんにいくらかお金を渡せます。

 機械屋さんに提案するとすぐに、

『そうしてもらえるとありがたい』

 そう言ってもらえました。

 日が暮れました。

 機械屋さんと私は少しずつ船との距離を縮めます。

 人影がなくなった一瞬をついて船の貨物庫に走りこみました。

 少しすると貨物庫の扉が閉まりました。

 更に少しすると、ガクン、と飛行機械が揺れました。離陸したようです。

 今の時点では忍び込んだことには気づかれていないようです。

 飛行機械の中を動きまわることにしました。

 少しずつ行動範囲を広げていきます。

 なぜか人の気配がありません。

 武装しているのであればそれなりの人数が要るはずなのですが……。

「……出すんだ」

「おい……」

 人の声がしました。

 機械屋さんと私は目で合図しました。

 まず私が進みます。次に機械屋さん。

 また私、次に機械屋さん。

 そうして「声」に近づきます。

 声は留置房からでした。

 声の主は私が見知った顔、「警部」さんでした。

 警部さんは私を見て言いました。

「またお前か! いいか、この事件は俺のものだ。捜査の邪魔はするなよ」

 と大声です。

「後で助けにきます」

 そう言ってその場を離れました。

 機械屋さんのところへ戻ります。

「あれは何だったんだ?」

 機械屋さんが尋ねました。

「『表』の警察官です。

 『裏』絡みの事件はこちらが全部横取りしてるので」

「なるほど」

 機械屋さんはすんなりと受け入れてくれました。

 結局、機械屋さんと私は初めにいた貨物庫に戻りました。

 扉が開けられるときに注意すれば、いちばん安全そうです。

 

 巨大武装飛行機械はかなりの時間、飛び続けました。

 そもそもどこへ向かっているのかわかりません。

 長い時間の後。

 ゴトン、と船が揺れました。

 貨物庫から船内への通路に隠れました。

 少しして、貨物庫の扉が開きました。

 外は明るくなっていました。

 

 五日目。

 貨物庫から荷物がすべて運び出されました。

 扉の向こうに注意を向けます。

 人の気配はありません。

 また少しずつ進みます。

 大丈夫そうです。

 機械屋さんと一緒に船の外に出ました。

「ここは……」

 機械屋さんがつぶやきました。

 古い記録で見た景色に似ています。

「……帝都の飛行場です、おそらく」

 しかしおかしいです。やはり人の気配がありません。

「これ、皇帝を押さえたら勝ちだな」

 機械屋さんが言いました。

「そうですね……、

 でもどこに行けば……」

「あのドームの建物だ、あそこに皇帝の玉座があるはずだ」

 えっと、その……。

「機械屋さん、どうして知ってるんですか?」

「前に一度来たことがある」

 そう言えば古い記録にありました。

 帝国の極秘裏の軍備拡張を止めたついでに帝国を崩壊させた。と言う話。

 民間人二名が協力した、だったはずです。

「じゃあ、帝国を崩壊させたのは……」

「ああ、きっかけは先輩とアタイだ。

 そこに『謎の男』がとどめをさした」

 なるほど、「謎の男」さんとの古いつきあいの理由がわかりました。

「では急ぎましょう!」

 私は機械屋さんを急かしました。

 でも、機械屋さんはあまり危機的ではないようです。

「人の気配がないわけだ」

 機械屋さんが指した先では自動人形が無機質に作業をしていました。

「ま、ただ、ぼーっとはしてられねぇな」

 機械屋さんと私はドームの建物を目指しました。

 飛行場を出ると、大通りのような道が伸びていました。

「この先だ」

 大通りを進みます。街も不気味な静かさです。

 しばらく歩いてドームの建物の前に着きました。

 立派な門がありました。手で押すと簡単に動きました。

 門を開けて中に入ります。

 何のセキュリティもありません。

 ドームの建物にも特に何もなく入れました。

 そのまま奥へと進みます。

 途中で何回も階段を上りました。

 「玉座」は建物の上の方にあるようです。

 行き止まりが見えてきました。

 誰かがいます。

「誰か」が機械屋さんと私に気づきました。

「皇帝か……、

 みじめなモンだな、人形の街の主か」

 機械屋さんがそう言いました。

「くっ、

 我が夢もここまでか。だが、ただでは滅びぬぞ」

 皇帝が右手を掲げました。

 邪悪なエネルギーが集まっている!?

 機械屋さんが真剣な表情になりました。

「さて、どうするか、

 前は先輩の道具でどうにかしたんだが……」

 機械屋さんが私に目で合図をしました。

 私はコクリ、とうなずいて返事をしました。

 瞬間の先。

「やーっ!」

 私は皇帝に走り寄ります。

「やっ!」

 思いっきり勢いをつけた右足でハイキック。

 皇帝が掲げていた手を弾き飛ばしました。

 私はすぐに皇帝の正面を向きます。

 反撃に備えました。が、その必要はありませんでした。

 私のハイキックは少しパワーがありすぎたようで、皇帝も吹っ飛んでいました。

 皇帝が掲げていた邪悪なエネルギーは、すぐに消え去りました。

 

 ズウン、と重い爆発音がしました。

 

 気になります。

 ですがその前にすべきことをします。

 私は皇帝の胸倉をつかんでむりやり立たせます。

 そうしてから腹に思いっきり膝を入れました。

 これで当分動けないでしょう。

「少女さんは本当に容赦ねぇな。

 先輩以上だ」

 機械屋さんの言葉。

 これは喜んでいいのでしょうか?

 私は何か複雑な表情になってると思います。

「さて、外はどうなってるのか……」

 機械屋さんが空港の方を見ました。

 私は機械屋さんにならびます。

 巨大武装飛行機械が大爆発していました。

 泊まっていた他の武装飛行機械も次々に爆発します。

「さすがは特殊部隊だ、

 あの距離から撃ってピンポイントに当ててる」

 私たちは部隊が来るのを待ちました。

 少しして、来ました。

 先頭は「謎の男」さんです!

 私は「謎の男」さんに駆け寄りました。

「大丈夫だったんですね!」

「なに、あれくらい何でもない。

 ただ、犠牲は出た。つらいが……」

 少し悲しげな表情がありました。

「おう、こいつ引き渡すぞ」

 機械屋さんが皇帝を引きずってきました。

 私たちは空港に戻りました。

 その道中で「謎の男」さんに言われました。

「現場での判断は十分にできている。

 だが、その先は良くなかったな。

 少女くんがいなくては、末端が動けない。

 それに、安易に民間人を巻き込むのも良いことではない」

 「謎の男」さんは淡々と話します。

 それだけに、私の心に突き刺さります。

「しかし……、これだけのことをするとは、

 少女くんは大したものだ」

 最後に「謎の男」さんは、私を褒めてくれました。

「さて、では帰ろうか」

 「謎の男」さんの声を合図に、私たちは特殊部隊の飛行機械に乗り込みます。

「あ、

 ちょっと待っててくれ」

 機械屋さんが帝国の船の残骸に向かって走りました。

 瓦礫の下から何かを引っぱり出しました。

「あ、そうでした」

 私は機械屋さんの下に走ります。

「いったい何なんだ! これは!!」

 警部さんを助けるのをすっかり忘れていました。

「おっさん、どう言うことかわかるか?」

 機械屋さんが警部さんに尋ねました。

「ま、まさか、ほ、本当にあったのか……!?」

 警部さんの声は震えていました。

「そう言うことだ、誰にも話さないのが得策だ」

 部隊の隊員はもちろん全員、加えて部隊の人間ではないのが二人、特殊部隊の船で王都を目指します。

 途中、私が機械屋さんを雇ったことにした件について話をしました。

 「謎の男」さんが言うには『良い判断だ』とのことです。

 加えて『ではいくらか報酬を渡そう』とも言ってくれました。

 機械屋さんは『金のために雇われたんじゃねぇ、少女さんだから雇われたんだ』とのことでした。

 報酬のことも『仕事が遅れた分、客に割り引きしなきゃなんねぇ。その分だけもらえたら十分だ』と言いました。

 ですが「謎の男」さんは言います。 

「使えるものは何でも使え、

 もらえるものは何でももらえ、

 君はそう言う考え方だと記憶していたが……」

「まあ、……その通りだ」

 機械屋さんは「謎の男」さんの言葉を認めました。

「んじゃ、全額もらうぞ、

 絶対返さないからな」

 そう言ってお金を受け取ってくれました。

 王都の空港で機械屋さんと別れました。

「少女さん、また良い経験になったな。

 これからもがんばれよ!」

 部隊の人が預かってくれていたらしいバイクに乗って、機械屋さんは走り去りました。

 帝国が潰れたので秘密組織も潰れたはずです。

 「事故」の多い毎日は終わります。平穏な王都に戻ります。

 でも、軍の役所はひどいことになってます。

 帰ったらすぐに、私は忙しくなりそうです。

 

 

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