冒険と探検と日常と ~のびのびTRPG~   作:混沌野郎

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 月初めに向こう一ヶ月分のお金を使って買い物をしちゃった先輩さん。
 機械屋さんと一緒に仕事を探しに行ったら、ハイリターンだけどどこからどう見ても怪しい求人があった。
 先輩さんがノリノリで応募しちゃって……、そんなお話。

 本作は今野隼史(辺境紳士社交場)・アークライトの『のびのびTRPGスチームパンク』のソロプレイのルール「カードをもとに物語を書く」に従って記した二次創作です。

 『のびのびTRPGスチームパンク』のプレイヤーキャラクターの「名前」を「キャラクターの名前」にしているので、
PC「機械屋」→「機械屋さん」
PC「少女」→「少女ちゃん」
等々となっています。

先に記しとく設定、
 機械屋(主人公)と先輩は女性、
 作中に出てくる単位『ダリル』は通貨単位、1ダリル=1円くらい、
 と言うことで。

使った(引いた)カード

イントロダクション:未知なる大陸へ
シーン1:アイドルコンテスト
カード1:闇:俺はお前だ
シーン2:追憶のメロディ
カード2:光:カウボーイ
シーン3:深奥へ至る洞窟
カード3:闇:吸血鬼
シーン4:秘密の武器製造工場
カード4:光:パトロン(NPC)
シーン5:迫りくる警官隊
カード5:闇:通信機
クライマックス:皇帝の最期

クレジット
ゲーム名:のびのびTRPG
ゲームデザイン:今野隼史
発売元:株式会社アークライト
© 2021 FRONTIERPUB / Arclight, inc.


第2話 仕事の〆は焼肉で (冒険回)

 アタイは機械屋。

 手先の器用さには自信があるけど、力はさっぱり。

 まあ、力は重力制動でどうにかなるから気にしない。

 アタイは今、倉庫街にある先輩の工房で働いてる。

 いろんなことがあった末に、ここに流れ着いた。

 それと『先輩』って言ってるけど、アタイは『先輩』の『後輩』じゃない。

 雇ってもらった時に『私のことは先輩って呼んで』と言われた。

 今までに一度も『先輩』と呼んでもらったことがなかったから、『先輩』って呼んでもらいたかったらしい。

 ちなみに先輩はアタイを『機械屋ちゃん』と呼ぶ。

 アタイの仕事。

 雇ってもらった時は『先輩の助手』みたいな感じのはずだった。

 けど実際に仕事を始めたら『何でも屋』だ。

 先輩の助手をするのは1日か2日かに1回あるかないか。

 先輩が一人でできない作業の時。

 後は工房に依頼される仕事。

 蒸気自動車の修理だったり、融合炉のメンテナンスだったり、時計の修理なんかもする。

 先輩とアタイとでどうにかなる仕事は何でも請ける。

 だから『何でも屋』。

 

 

 1日目

 部屋に光が差し込む。

「んー」

 もう少し眠りたい。

 昨夜、じゃない、しっかりと日付が替わって、そろそろ寝よう、部屋の照明を消して毛布に包まったちょっと後。

 部屋のドアが勢いよく開かれて大声が響いた。

『機械屋ちゃん! 良いアイデアが出た! 時間が惜しい! 今すぐ試作する!』

 先輩はこれだから困る。

 時間の感覚とかはどうでも良いらしい。

 思いついたらすぐ行動に移す。

 アタイからすると迷惑この上ないけど、これが先輩の『生き様』で『魅力』だ。

 朝の光で部屋が十分に明るくなる。

 もう少し寝ていたい……。

 でも生活のリズムを保ちたい。

 ……眠たいながらもベッドから出た。

 

 工房。

 『工房』と言ってるけど、倉庫を一棟借りて工房にしてる。

 そんな工房だ。

 工房を正面から見て左側に部屋がならんでる。

 手前から事務室、食堂、先輩の部屋、アタイの部屋、それより奥は倉庫。

 正面から見て右側は作業スペース。

 元が倉庫だから工房としては十分すぎる広さ。

 壁際には大きな作業機械がならんでる。

 

 アタイは部屋を出て食堂に入った。

 着替えの必要はない。

 先輩もアタイも常日頃、作業着だ。

 つまり、作業をするときはもちろん、メシ食うときも、寝るときも作業着。

 着替えるのはあまりにも汚れすぎたとき。

 着替える先の服はもちろん作業着。

 

 工房の奥で、ガキン! ガキン! と金属音がしてる。

 先輩は結局、徹夜したらしい。

 手伝えと言われたけど、途中でこっそり抜けたのは正解だった。

 まともにつきあってたらアタイも徹夜になってただろう。

 

 とりあえず朝メシ。

 アタイは食う派で、先輩は食わない派だ。

 棚から食パンを取り出す。最後の1枚だった。

 パンをトースターにセット。

 焼いてる間に冷蔵庫からヨーグルトとジャムを取り出す。

 ヨーグルトとジャムもこのメシで最後だ。

 できればコーヒーも欲しいけどコーヒーは品切れだった。

 今日の予定がひとつ決まった。買い出し。

 パンが焼ける香ばしい匂いが漂う。

 ちょうど良い焼き加減のパンをトースターから取り出した。

 皿に移したパンにジャムを塗る。最後のジャムだからちょっと少なめ。

 容器に残ったジャムをかき集めてヨーグルトにも少しだけトッピングした。

 テーブルにパンの皿とヨーグルトの鉢をならべて、

 『いただきます』

 メシを食いにかかった。

 外はかりかり、中はふわふわのパン。

 酸味と甘味が混ざったヨーグルト。

 しっかり味わって食った。

 

 良い朝メシが食えた。

 コーヒーがなかったのが残念だったけど上々の朝メシだった。

 買い出しに行くから。

 今ある食品をチェックして買う物のメモを作る。

 まず冷蔵庫、中にあるのは調味料だけ。

 冷凍庫、何も入ってない。

 棚、乾物なし。缶詰すらない。

 シンクの下、サラダオイルとあとは……、ここも調味料だけ。

 ……ここまで何もないってのはさすがに酷い。

 とにかく、買い出しに行こう。

 

 食堂を出て隣の部屋、事務室に入る。

 インフォメーション端末を取り出して事務室の端末に同期させた。

 今日は月初め、先月の帳簿を締めよう。

 金銭管理ソフトを起動した。

「……え?」

 アタイの顔は一瞬で真っ青になった。

 昨日、入金されたばかりの金、ほとんど全部がなくなってた。

 頭の中が真っ白になる。

 昨日、30万ダリルとちょっとあったのは間違いない。

 アタイはしっかり確認した。

 でも今は250ダリルしかない。

 ……考えられる原因はひとつ。

 事務室を出て工房の奥、作業をしてる先輩に走り寄って大声で叫んだ。

「先輩っ! 何買ったんだっ!」

 先輩がアタイを向いた。

「あ、機械屋ちゃん、おはよ」

 のんきに挨拶してる場合じゃない。

「『おはよ』はいいから、何買ったんだっ!」

「ん?

 何って、工業用の3Dプリンタ。

 ちょっとしたロケットノズルが作れるやつ。

 昨日の夜に端末見たら30万ダリルもあったからついつい。

 今日、入金されるでしょ?

 だから思い切って」

 アタイの真っ青な顔が真っ赤になる。

「入金は昨日だ!」

 アタイの叫び声に先輩が縮こまる。

「あー、そうだっけ……?」

 先輩の言葉にイラっとしつつ、どうにかなりそうなことを考えた。

「すぐにキャンセルしろ!

 でなけりゃ返品でもいい!」

「えっと、それがね……、

 ノークレーム、ノーリターンなのだよ」

 ……終わった。

 

 買い出し。

 アタイは残りの250ダリルでマーケットに行った。

 ちょうど開店の時間に着いた。

 正解だった。

 見切り品の菓子パンが3割引になってた。

 それをふたつ買った。

 ふたつ買えたのはラッキーだ。

 見切られてなかったらひとつしか買えなかった。

 

 昼メシ。

 アタイと先輩、テーブルをはさんで座った。

 アタイの前と先輩の前に菓子パンがひとつずつ。

 それと水がたっぷり入ったマグカップ。

「昼メシ、これだけ?」

 先輩の声に悪びれた様子はない。

「金がないんだ、仕方ないだろ」

 お互いにそれ以上は何も言わないで黙々と菓子パンを食べた。

 

 晩メシ。

 もちろん事態は悪化した。

 テーブルをはさんだ先輩とアタイの前にそれぞれマグカップ。

 ふたりで何も話さずに、空腹がごまかせるくらいまで水を飲んだ。

 昼メシの菓子パン、半分ずつにすりゃ良かった。

 そうしたら晩メシにもパンが食えてた。

 ちょっと後悔した。

「……明日、労働ギルド行く?」

「行くしかないな……」

 明日の予定が決まった。

 

 

 2日目。

 労働ギルド、いわゆる仕事の斡旋をしてる役所、に来た。

 斡旋されてる仕事は多種多様。

 期限なしの安定した仕事もあれば、10日くらいで終わる仕事もある。

 それに単発モノ、1日2日で済むのもある。

 アタイたちが探すのはもちろん単発モノ。

 ギルドの中に整然とならんでる端末。

 先輩とアタイはそれぞれ端末の前に陣取って仕事を探しにかかった。

 アタイは給料は気にせずに堅実そうな仕事を探す。

 けど、良い感じのはなかなか見つからない。

「おおっ! 機械屋ちゃん、これどうかな?」

 先輩がアタイに言った。

「良いのがあったか?」

 先輩が使ってる端末を見た。

 

 仕事内容:未知の大陸の調査

 報酬:50万ダリル

 期間:3~5日

 

 怪しい。

 未知の大陸の調査?

 50万ダリル?

 絶対に怪しい。

 だけど先輩はこの仕事が気に入ったらしい。

「じゃ、二人分応募」

 端末をたたっ、と操作して先輩の情報を入力する。

 仕方ないか………。

 先輩に続いてアタイも情報を入力した。

 端末で『処理中』の文字が点滅を始めた。

 1分くらいして表示が変わった。

 『面接あり、明日11時に来られたし』

 だそうだ。

「応募完了、明日が楽しみだね」

 先輩は笑顔になった。

「だな」

 こうなったらどうにでもなれ、だ。

 アタイは開き直ることにした。

 二人でギルドを出た。

 

 工房への帰り道。

 この街いちばんの大公園を通りかかると賑やかな声が聞こえてきた。

 公園の野外ステージで何かしてるらしい。

「ちょっと見てく?」

 先輩が興味津々の笑顔でアタイを見た。

「ああ、

 何か面白そうだな」

 アタイも何をしてるのか気になった。

 だから野外ステージに向かい始めてた先輩を追いかけた。

 野外ステージへの途中。

 『新時代アイドルコンテスト』

 大きな横断幕が風に揺れてた。

 『飛び入り参加大歓迎』

 ともあった。

 背すじを冷たい何かがぞわっと走った。

 ステージのわきに受付?っぽい長机があった。

 先輩がいた。

 嫌な予感しかしない。

 急いで先輩に駆け寄った。

 けど、遅かった。

「じゃ、これでお願いします!」

 先輩はちょうど受付を終わらせたところだった。

「先輩、飛び入りの受付したんだな!

 アタイは嫌だ、先輩と二人でアイドルとか!」

「ん?

 二人じゃないよ。

 アイドル目指すのは機械屋ちゃん」

 ああ!ダメだ、この人……。

「いいじゃん、いいじゃん、

 油まみれの作業着で歌う工業系アイドルとか、絶対ウケるよ!」

 先輩に腕をつかまれて強引に楽屋に連れてかれる。

 途中でステージを見た。

 いかにも「アイドルアイドル」な女の子が歌ってた。

 楽屋に入るとやっぱり「アイドルアイドル」な女の子がいっぱい。

 アタイも先輩も明らかに場違い。

 でも先輩は笑顔、にこにこしてる。

「大丈夫、大丈夫、

 工業系アイドルは絶対当たるって!」

 先輩がこの状況を楽しんでるのは間違いない。

「そこのあなた、ちょっと良いかしら?」

 ふりふりの可愛らしい衣装を着た、ちょっとつり目がちの女の子がアタイのところに来た。

「あなた、このコンテストを何だと思ってるの?

 あなたのような人には絶対に負けません!」

 何か勝手にライバル視された。

 受付順なのか、アイドルのたまごたち? が次々とステージに上がって行って、落胆した表情で戻ってきた。

 そんな女の子を見てるうちに……。

 アタイの番がきた。

 

 工房への道。

「はぁー」

 アタイは大きなため息をついた。

 手にはポケットティッシュがひとつ。参加賞だそうだ。

「でもさ、アレだねー、

 もうちょっとどうにかして欲しかったねー」

 先輩も残念だったらしい。

 残念なことになるのは分かってたけど……。

「先輩、やっぱ工業系アイドルは無茶だったんだよ」

「そじゃなくて、参加賞がポケットティッシュって、

 せめてボールペンくらいは欲しかったね、うん」

 ああ!やっぱりダメだ、この人……。

 アイドルコンテストの余韻が抜けて、いつもの感覚に戻ってきた。

「ところで機械屋ちゃん、

 実は君は二重人格者の裏側の人格だ、

 とか、そんなことない?」

「あるわけねぇだろ、

 そんな発想どこから出てくんだ?」

 まったく、何を言い出すんだ。

「そのさ、

 本来の人格だったらアイドルコンテストとか余裕、とかだったら良かったな、って」

「ないに決まってんだろ!」

 先輩は気楽そうに、アタイは疲れ切って工房に帰ってきた。

 

「でさ、晩メシ何?」

 先輩には危機感はないのか?

「晩メシは水と、水と、水」

 開き直るしかない。

「メインディッシュは?」

 先輩の質問に答える。

「サラダオイルで良いんだったら、ある」

「あー、水って美味しいよね」

 二人して無口になる。

 腹いっぱいになるまで水を飲んだ。

 

 夜遅く。

 アタイはベッドに寝っ転がって小さなオルゴールを見つめてた。

 何かにつけて親方、アタイの育ての親、に言われた。

『そのオルゴールは大事にしろ、壊したり失くしたり、絶対にするな、

 お前がお前な唯一の証だ』

 親方が言うにはアタイは戦災孤児だ。

 どう言ういきさつだったのか、鉄骨峡谷の入り口に居たんだか捨てられたんだかしてたらしい。

 まだ赤ん坊で弱々しく泣いてたのを親方が拾ってくれた。

 その時、アタイと一緒にこのオルゴールが包まれてた。

 親方からそう聞いた。

 ゼンマイを巻いてふたを少し開ける。

 柔らかいメロディが広がった。

 何度も聞いてるのにいつも初めて聞くように感じる。

 懐かしいメロデ、

 ぐうー、

 腹が鳴った。

 そりゃそうだ。水を飲んだだけだ。

 対応策はひとつしかない。

 アタイは食堂でたらふく水を飲んだ。

 

 

 3日目。

 11時にギルドに来い、とのことだった。

 先輩とアタイは少し早め、10時に工房を出た。

 ギルドへの道、先輩が何かを見つけた。

 先輩の視線の先にゲームセンターがあった。

 ゲームセンターの店先、いちばん目立つところに置かれてる筐体を見て先輩が言った。

「おっ!

 『カウボーイ・ショット3』出てたんだ」

 先輩はこのゲーム、『カウボーイ・ショット』が大のお気に入り。

 いわゆるガン・シューティング、てのか、鉄砲っぽいコントローラーで画面に出てくる敵キャラを片っ端から撃ちまくるゲーム。

 『1』と『2』は余裕で全クリアできる腕前だ。

「あー、プレイしたいー、

 機械屋ちゃん、100ダリルない?」

「ないからギルド行くんだろ」

「だよね……」

 はぁー、

 先輩と二人してため息をついた。

「……行こ」

 先輩が足を踏み出したところで、足下できらりと何かが光った。

「ん? 何だ?」

 先輩はそれを拾い上げた。

 100ダリル硬貨だった。

「おおっ!

 これぞ天啓!」

 先輩はさっそうと『カウボーイ・ショット3』に向かった。

 10分くらいか、先輩は初めてのプレイとは思えないくらいさくさくとゲームを進めた。

 けど、さすがに初プレイなんだから仕方ない。ゲームオーバーを迎えた。

 だけどこのゲームで10分強ってことは、たぶんもうすぐ半分、は行ってる。

「機械屋ちゃん、両替急いでっ!」

 現実逃避もここまでになると立派だ。

「先輩、ギルド行くんだろ、ギルド」

「あ、そだ……、

 ……ギルド行くんだ」

 先輩はがっくりと肩を落とした。

 

 ギルドには11時ちょっと前に着いた。

 今日は窓口に行って面接の件を伝える。

 相手さんもちょうど来たとのことで、すぐに面接を受けることになった。

 ギルドのスタッフに面接室へ案内してもらう。

 アタイたちが部屋に入ってすぐに面接官が来た。

 黒いスーツを着た屈強そうな男だった。

 対して先輩とアタイは油まみれの作業着……。

 もうちょっとマシな格好で来た方が良かったか。

 そんなことを思ったけど面接官はアタイらの服装は全然気にしないで、先輩とアタイのスキルを徹底的に聞いてきた。

 ひととおりの話が終わって面接官が言った。

「合格だ」

 面接官はインフォメーション端末を取り出した。

 先輩とアタイも面接官に促されてインフォメーション端末を取り出した。

 面接官が端末を操作すると、アタイらの端末に行くべき場所への地図と必要な機材のリストが転送された。

 加えて、先輩の端末には機材の準備費用だと言って、『前金だ』と10万ダリルが入金された。

「金は惜しまない、結果によっては報酬を増額する」

 面接官はそうも言った。

 最後に、全行程の記録、位置情報、写真、動画、音声、等々、取れるデータは全て集めてくるように、と言われた。

 

 ギルドを出て、改めて機材のリストを見た。

 山に登るか、洞窟に入るか、そんな感じの機材の名前がならんでる。

 インフォメーション端末に工房にある機材のリストを表示させる。

 ふたつのリストを重ねて買い足す必要がある機材のリストを作った。

 リストができあがった時にはもう昼すぎになってた。

 先輩もアタイも10万ダリルで舞い上がってた。

 だから昼メシはすっかり忘れて機材を買ってまわった。

 

 買い物を済ませて工房に帰ってきたのは夜が始まるくらいの時間だった。

 金はまだ十分に残ってる。

 でも大事な金だから大切に使いたい。

 そんな考えから晩メシは先輩とアタイ、それぞれに見切り品の菓子パンが3つもあった。

 

 

 4日目。

 いつもより早起きした。

 でも先輩はもう機材のチェックを始めてた。

 アタイもチェックを始める。

 チェックした機材を全部まとめてリュックに入れるとかなりの重装備になった。

 先輩とアタイ、重たいリュックを背負った。

 工房から出る。

 先輩がインフォメーション端末に昨日受け取った地図を表示させる。

 街を出て『目的地』までの経路が表示された。

 先輩とアタイはとりあえず『目的地』を目指して出発した。

 

 『目的地』には昼前に着いた。

 アタイたちの街、王都、の南にある山脈の麓、森の中だった。

 ここから山を登ると山脈の稜線、帝国との国境線だ。

 王国と帝国はそれなりの緊張状態にある。

 戦力を対等に、との条約がなくなればすぐに戦争になってしまうだろう。

「先輩、この穴みたいだな」

 アタイの前には洞窟? の入口っぽい穴がある。

 入口? は頑丈な柵でがっちりと固められて、柵は大きな鍵でしっかりと閉じられてる。

「えと、……これかな?」

 先輩のインフォメーション端末を横からのぞくと、鍵のアイコンが表示されてた。

 アイコンは赤く光ってる。

 先輩が穴に近づくとアイコンが緑になった。

「とりあえずタップしてみる?」

「だな」

 先輩がアイコンをタップした。

 ガチャンッ!

 柵を閉じてた大きな鍵が開いた。

 二人で頑丈な柵を開ける。

 先輩がヘッドライトの調子を合わせて洞窟に踏み込んだ。

 その後ろをアタイが続いた。

 

「しっかしさ、先輩、

 大陸の調査するのに洞窟に入るってのは良く分かんねぇな」

「そんなの、どうでも良いって、

 50万ダリルだよ、50万ダリル、何が来ても大丈夫だって」

 洞窟の中はそれなりに広かった。

 かがんだりしなくても十分に歩ける高さ。

 幅も二人ならんでも余裕だ。

 何とも言いがたい不信感が生まれた。

 頑丈に閉じられてた入口、人が通るのに十分な広さ。

 何かあるんじゃないか? そんな気がする。

 先輩に言ってみようかと思ったけどやめた。

 今の先輩なら『50万ダリル』としか答えてくれないだろう。

 

 1時間くらい歩いたところで洞窟がふたつに分かれた。

 片方はさらに奥に続いてる。

 もう片方はまっすぐ下に向かってる、縦穴、だ。

 縦穴の先はほの赤く光ってるようにも見える。

「機械屋ちゃん、どっち行く?」

「どっちって、下に行かせたいんだろ?」

「分かってるねー」

 先輩は楽しそうにザイルをロープリールにセットし始めた。

 ロープリールにザイルをしっかり固定してロープリールの動作を確認する。

 問題なし。

 ザイルの端をアタイの体に、こっちもしっかり固定した。

 縦穴のふちから体を少し乗り出す。

「降ろしてくれ」

「んじゃ、ゆっくりいくよー」

 カコン、と小さい音がして、ロープリールがザイルを流し始めた。

 アタイの体がゆっくりと縦穴を降りていく。

 3分くらい降りると暑くなってきた。地熱か?

 さらに降りる。

 暑い。

 チリチリと言う音が聞こえてきた。

「止めてくれ!」

 降りていた体がとまった。

 作業着に焦げができてる。しかも焦げは少しずつ増えてる。

「急いで上げてくれ!」

「了解っ!」

 ギュンッ! と勢いをつけてアタイの体が引き上げられた。

「機械屋ちゃん、大丈夫?」

「大丈夫じゃねぇよ。

 耐熱服じゃなかったらアウトだった」

 何とか助かった。

 ほっとした。

「いやいや、機械屋ちゃんは吸血鬼なんだから、

 これくらい大丈夫だよ」

 どう言う理屈だ? 返す言葉がない。

 作業着を見る。

 あっちこっちが焦げてる。焦げてできた穴もあった。

 加えて腕時計が熱でやられてた。

「あー、この服、気に入ってたのに……」

「そんなこと言わなくって良いって、

 50万ダリルだよ、50万ダリル、

 新しいの買えるから」

 先輩はにこにこしてる。

 やっぱり『50万ダリル』しか考えてないらしい。

 

 洞窟をさらに進む。

 洞窟が分かれてるところ、『下』に延びてるのは全部無視した。

 いくつか『横』に分かれてるのがあった。

 それには全部、先輩に行ってもらった。

 運が良かったのか、『横』への洞窟は全部すぐに行き止まりだった。

 ここに来て今更ながらに気がついた。

 洞窟のルートがインフォメーション端末の地図にリアルタイムで記録されてた。

 この感じだと写真も動画も全部自動で記録されてるんだろう。

 

 さらに進む。

 真っ暗な中を歩いてるから時間の感覚がない。

「機械屋ちゃん、今日はここまで」

「え?」

 先輩の言葉に足をとめた。

 腕時計にライトを当てて見せてくれた。

 時計は21時を指してる。

 アタイのは熱にやられたんで気がつかなかった。

「無理はしない方が良いからね」

 そう言って先輩はリュックを下ろした。

 先輩に続いてアタイも荷物を下ろした。

 リュックから食べ物、カロリーフードとカロリージュースを取り出した。

 先輩も同じく。

 メシを食って、今日はここで終わり、になった。

 クッションを敷いて横になる。

 やっぱり疲れてた。すぐに眠りに落ちた。

 

 

 5日目。

 目が覚めた。

 先輩はもう起きてた。

「あ、機械屋ちゃん、おはよ」

「ああ、おはよう、

 ……先輩、今何時だ?」

 真っ暗な中だから時間が分からない。

 アタイには時計がないから先輩に聞く。

「んー、9時前」

 うおっ! ってことは爆睡も良いとこだ。

「じゃあ、機械屋ちゃんが食い終わったら出発ー!」

 

 改めて洞窟を進む。

 わき道があったら奥を確認する。

 そうして進み続けた。

 突然ライトの光が戻ってこなくなった。

 つまり、この先はかなり広くなってる、と言うことだ。

「機械屋ちゃん、慎重にね」

「了解」

 できるだけ慎重に、できるだけ慎重に、少しずつ進む。

 視界が開けた。

 とてつもなく広い空間に出た。

 薄暗いけどライトがいらない程度には明るい。

 ヘッドライトを消した。

 この空間、明らかに作られたものだ。

 遠くに大型エレベーター? っぽいのがある。

 ここはたぶん地下だ。

「なんだ? ここは?」

「しっ!」

 アタイの声を先輩が小さな声で制した。

 カツカツ、と誰かが歩いてくる音が聞こえた。

 洞窟に戻って『誰か』が通りすぎるのを待つ。

「何もないな」

「ああ、いや、あってもらっては困る」

 男が二人、話をしながら通りすぎた。

 二人とも帝国軍の制服を着てた。

 つまり、帝国軍の兵士、と言うことだ。

 慎重に洞窟から出る。

「何で帝国軍が?」

 さっぱり分からない。

「機械屋ちゃん、これ」

 先輩が積み上げられてた『何か』を指した。

 自動人形のフレームだった。

 フレームの先輩が示したところに帝国の紋章があった。

「じゃあ、ここは帝国の秘密工場ってことか?」

「みたいだね」

 冷たい汗が頬を流れた。

 通りすぎた兵士を見ようと一歩踏み出した。

 その一歩、注意が足りなかった。

 何かの箱を引っ掛けた。

 運が悪かった。

 ボルトの箱だった。

 大きな音をたててボルトが床に散らばった。

「誰だ! 侵入者か?!」

 通りすぎた兵士が走って戻ってくる。

「機械屋ちゃん、走るよ!」

 先輩が走り出した。

 兵士から逃げるんじゃない。

 先輩は兵士に向かって走る。

 アタイは先輩の後を慌てて追いかける。

「クッションシールド、あるよね?」

「もちろんだ!」

 クッションシールド、機械系の人間の基本。

 高いところから落ちた時とか、何かが落ちてきた時とかにクッションになってくれる。

 それだけじゃなくって別の使い方がある。

 腰にあるクッションシールドの操作スイッチに手をやる。

 ブゥン、とクッションシールドの出力が上がる。

 アタイたちに向かって走ってくる兵士。

 先輩もアタイもためらわずに兵士に突っ込んだ。

 バウンッ、と兵士のひとりが先輩のクッションシールドに弾き飛ばされた。

 もうひとりにはアタイが突っ込む。

 ひとりめと同じように弾き飛ばした。

「機械屋ちゃん、しっかりついて来て!」

「了解っ!」

 先輩が走る先には大型機械用の開放型エレベーターがある。

「待てっ!」

 クッションシールドで弾いた兵士が体勢を立て直して追いかけてきた。

 パンッ、パンッ、と乾いた音。

 銃弾が飛んでくる。

 けど大丈夫だ。銃弾はクッションシールドに弾かれて床に落ちた。

 面接の時に面接官が言った言葉を思い出した。

 『金は惜しまない』。

 金を惜しまないのは良いけど、できれば安全は惜しんで欲しかった。

 とは言え、いまさら文句を言っても仕方ない。

 先輩がエレベーターに駆け込む。

 すぐに操作を始めた。

 ガコン、と音をたててエレベーターが動き出した。

 アタイはエレベーターに飛び込んで、転がった。

 鈍い音を響かせてエレベーターが上がってく。

「このタイプはいきなり地上には出れないはず。

 機械屋ちゃん、止まったらすぐ地上用の操作お願い、

 たぶんそっちにあるから」

 先輩が地上用操作装置のあるらしい場所を指した。

 重い音と軽い揺れでエレベーターが止まった。

 先輩が示した場所に操作装置があった。

 操作方法はシンプルだった。

 装置のパネルには『上』と『下』のボタンがならんでた。

 アタイはもちろん『上』を押した。

 もう一度鈍い音。

 エレベーターが改めて上がり始める。

 もうすぐ天井、のところで天井が左右に分かれて開いた。

 ゴゴン、と重たい音がしてエレベーターが止まった。

 地上に出た。

 わずかに明るい。日が暮れたばかりらしい。

「機械屋ちゃん、こっち!」

「分かった!」

 先輩がまた走り出した。

 アタイは先輩を追いかけて走る。

 走っていく先に塀があって門がある。

 先輩がしたいこと、すぐに分かった。

 二人同時に門に突っ込んだ。

 二人分のクッションシールドが門を押し込む。

 派手な音をたてて門が吹っ飛んだ。

 助かった……。

 気が抜けそうになる。

「まだだよ、機械屋ちゃん」

「?」

 まわりを見ると銃をかまえた連中がたくさん。

 たぶん武装警官だ。

 ダッと先輩が横に走った。

 アタイは先輩を追う。

 これで逃げれるかと思ったけど、そんなに上手くはいかない。

 先輩とアタイは塀際に追い詰められた。

 カシャンと音がして、まぶしい光。

 スポットライトがアタイらを照らした。

「貴様ら! なにものだ!」

 隊長っぽいのが大きな声で言う。

「どうしよ? 弁明してみる?」

「無駄だろ」

 あきらめるしかないか……。

「んじゃ、機械屋ちゃん、私の手、にぎって、

 絶対に離さないで」

 カチッと小さな音。

 次にブゥンと低い音がすると先輩が消えた。

 自分の腕に目をやると腕が見えない。

「消えた! 消えたぞ!」

「どこに行った!」

 警官隊に動揺が走る。

「走るよ!」

 先輩がアタイの手を引っ張って走り始めた。

 アタイも走る。

 とにかく走る。

 なるべく細い道、なるべく細い路地を選んで走った。

 3分くらい走った頃。

 キュウン、と音がして先輩が見えた。

 もう一度腕に目をやると腕も見えた。

 先輩はそこで走るのをやめた。

「何なんだ? 今のは」

 先輩に尋ねる。

「ん? 光学迷彩。

 まさか役に立つとはね」

 さすが先輩、だ。

 あと、この感じだとたぶん他にもいろいろ持ってきてる。

 落ち着いてまわりの様子を見る。

 恐ろしいくらい静かな街だ。

 戦争に備えて住民のほとんど全部が避難してる、なんて話を聞いたことがあったけど、話は本当だった。

「さて、とりあえずここまでのことを報告、と」

 先輩はリュックから通信機を取り出した。

 手際よく通信機をセットする。

「んーと……、

 ……よし、つながった」

 通信機にインフォメーション端末をつなぐ。

 データの転送が始まって、終わった。

「次、機械屋ちゃんね」

 アタイもインフォメーション端末を通信機につないでデータを転送した。

 データの転送が終わってインフォメーション端末を外した。

『データ確認』

 通信機から無機質な合成音声が流れた。

「なんだ?」

「嫌な予感するねー」

 先輩は急いで通信機をリュックに片付けた。

 

 ドオンッ!

 秘密工場があったあたりが大爆発した。

 それだけじゃない、人がいない街のあっちこっちで爆発が始まった。

「もしかして国境警備隊か?」

「だけじゃないね、

 たぶん王国軍全部だよ」

 先輩の言葉は今のアタイらには重たい。

 あっちこっちで爆発してるんだ。巻き込まれかねない。

 不安は的中した。

 爆発がこっちに近づいてきた。

「機械屋ちゃん! 逃げるよ!」

「了解!」

 先輩と二人、また走った。

 今度は爆発を背にして走る。

 大通りに出た。

 後ろから爆発が近づいてくる。

 だから後ろには逃げられない。横も無理そう。

 となれば前しかない。

 重たい破裂音の後、背中に圧力を感じる。そんなことが何回もあった。

 走って、走って、走る先に門、やたらと立派な門、が見えてきた。

「機械屋ちゃん! クッションシールドは?」

「あと一回!」

 クッションシールドを確認して二人で門に突っ込む。

 門は吹き飛んでがれきになった。

 

「ここまで来たら大丈夫か?」

「だったら良いんだけど」

 立ち止まってまわりを見た。

 門からの先に大きくて高い建物がある。

「上ったら様子見えないか?」

「だね、上ってみよう」

 建物に入ると階段が続いてた。

 前に進むしかないから階段を上る。

 ふと気づいた。爆発が近づいて来ない。

 と言うことはここは大丈夫なのか?

 けど、ここは何なんだ?

 もういくらか上ると階段が終わった。

 広いホールに出た。

 ホールは純白で厳かな装飾がホールを飾ってる。

「最後は貴様らか」

 突然の声。

 声の主を探す。

 ホールの奥に男、声の主、がいた。

 その男はニュースで見慣れた顔、帝国の皇帝だった。

 改めてホールを見回す。

 ここは玉座の間らしい。

 と言うことは、アタイらは帝国の首都にいるのか。

 それに納得して。

 先輩とアタイは皇帝と向き合った。

 皇帝が何かを掲げた。

「我が夢もここまでか、だが、ただでは滅びぬぞ」

 皇帝が掲げた右手には邪悪なエネルギーが激しく明滅してる……。

 あれが爆発したらこの街が消滅する。それくらいの威力。

「……先輩、どうする?」

「あれが爆発したら終わり、

 でも、爆発しなかったら?」

 先輩は皇帝に気づかれないようにリュックから『何か』を取り出す。

 『何か』を持った手に力を入れた。

 バチンッ! と大きな音がした。

 同時に皇帝が掲げてた邪悪なエネルギーが力を失い始めた。

 光は少しずつ弱くなって、かすかになって、消えた。

「先輩、今のは何だ?」

「今の?

 邪悪エネルギー中和器。

 いやいや、持ってきて正解だったね」

 やっぱり先輩らしい。

「他にもいろいろ持ってきたんだけどねー、

 使いどころがなかった。

 残念残念」

 先輩が軽い声で言った。

 皇帝を見ると、邪悪なエネルギーを失ってどうしようもなくなって床に崩れてた。

 その直後、大きな声と騒がしい足音をさせて王国軍の兵士がホールになだれ込んできた。

 銃をかまえた兵士が皇帝を囲んだ。

 先輩とアタイも囲まれた……。

 皇帝は捕まえられてどこかに連れていかれた。

 先輩とアタイも捕まえられた……。

 連れていかれた先は王国軍が誇る巨大戦闘飛行機械の留置室だった。

 インフォメーション端末と荷物全部を押収された。

 先輩とアタイは飛行機械で王国に帰ることになった。

 王国に戻って、アタイたちは軍の留置所に移された。

 

 

 6日目。

 留置所で一泊。

 次の日、先輩とアタイは取調室に移された。

 部屋には机がひとつ。

 机をはさんでドア側に椅子がひとつ、反対側にふたつあった。

 アタイらを連れてきた兵士に促されてふたつならんでる椅子に座った。

 少しの後、男が部屋に入ってきた。

 ギルドで会った面接官だった。

 面接官の合図で兵士は部屋を出てドアが閉められた。

 こんなところで会うとは。

 『面接官』なんかじゃない。

 『謎の男』とでも言うべきか……。

 一旦音がなくなった部屋。

「あんた! どう言うことだ!」

 アタイは男に叫んだ。

「ちゃんと説明してよ!」

 先輩も続く。

「分かっている、説明しよう」

 男は淡々と話し始めた。

 

 帝国が秘密工場で兵器を作っているらしい。

 それは確かだ。

 だが、決定的な証拠がなかった。

 軍の特殊部隊を動かすか、あるいは政府の特務機関を動かすか、そのような案はもちろんあった。

 しかし、もし失敗したら……。

 帝国が王国に戦争を仕掛ける立派な理由になる。

 そうなれば間違いなく全面戦争だ。

 そんなことはできない。

 議論の末に『未知の大陸の調査』と言う名目でギルドに求人を出した。

 

 とのことだった。

「で、私たちはどうしたらいい?」

 先輩が尋ねる。

「このことを公にするのは良い考えとは言えない」

「つまり?」

 今度はアタイ。

「公にすれば……、

 命は大切にするものだ」

「話さなければ?」

 もう一回アタイ。

「報酬の50万ダリルと前金の10万ダリル、

 全ての倍を渡そう」

「「話しません!!」」

 男の言葉が終わる前に先輩とアタイの声が重なった。

 

 その先は先輩もアタイも急いだ。

 まず、押収されてたインフォメーション端末と荷物を返してもらった。

 次に、男をせかして事務処理の窓口に急ぐ。

 先輩がインフォメーション端末を窓口の端末に同期させた。

 前に受け取った10万ダリルを別にして、残りの報酬の110万ダリルが入金された。

「では、私はこれで」

 男は通ってきた廊下を戻っていった。

 

 先輩とアタイは建物を出た。

「先輩、とりあえず帰るか?」

「それはないでしょ!」

 先輩は速攻で否定した。

「牛天国!」

 ピシャリと言い切った。

 

 『牛天国』、焼肉のチェーン店。24時間営業とメニューがひとつだけなのが売りだ。

 『食べ放題・飲み放題』、それしかない。

 その下に『コース』ごとの料金がある。

 と言っても、

 

 二時間コース:3,000ダリル

 五時間コース:5,000ダリル

 時間無制限:20,000ダリル

 

 だけだ。

 『無制限』はネタメニュー。

 SNSで名前を売りたいヤツが一度通る道、

 あるいはテレビの大食い番組、

 そう言うメニューだ。

 

 先輩とアタイは牛天国へ急ぐ。

 自然と早足になる。

 牛天国に着いた。

 店に入ると店員がやってきた。

 先輩とアタイ、考えてたことは全く同じだった。

「「二人、時間無制限!!」」

 

 

 了

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