少し前に知った書店の「乙女フロア」が気になったので見に行くことに。
いろいろな本がならんでいる中で出会った「薄い本」。
先輩さんが思い切って買った「薄い本」の正体は……、そんなお話。
本作は今野隼史(辺境紳士社交場)・アークライトの『のびのびTRPGスチームパンク』の二次創作です。
ソロプレイのルール「カードをもとに物語を書く」に従って記した世界観を使って記した二次創作です。
『のびのびTRPGスチームパンク』のプレイヤーキャラクターの「名前」を「キャラクターの名前」にしているので、
PC「機械屋」→「機械屋さん」
PC「少女」→「少女ちゃん」
等々となっています。
先に記しとく設定、
先輩(主人公)と機械屋は女性、
作中の「ダリル」は通貨単位、1ダリル=1円くらい、
と言うことで。
クレジット
ゲーム名:のびのびTRPG
ゲームデザイン:今野隼史
発売元:株式会社アークライト
© 2021 FRONTIERPUB / Arclight, inc.
こんちは、私は先輩。
倉庫街にある工房でエントロピージェネレーターを作ってる。
もちろん当たり前だけど開発ってのはそうそう上手く行くはずがない。
一進一退。
進んでは退いて、退いては進む。
でも、トータルでは少しずつ進んでる。そう信じてる。
今日の仕事は精密作業室で結晶回路の修理。
ダメになってるパーツを新しいのと取り替える。
拡大鏡で結晶回路を見ながら取り替えるパーツの型番をメモする。
メモが出来上がったら移動。
小さな引き出しがたくさんならぶ棚。
メモを見ながらパーツを取り出す。
あ、ない……。
引き出しのひとつ、空だった。
買い足すの忘れてた。
仕方ないね。
なかったパーツは後回しにしてメモにあるパーツの残りを集めた。
さて、どうしよ……。
パーツは西通りの店で買う。
パーツひとつのためだけに西通りに行くのは正直面倒。
……だけど。
よし、ストックが頼りないのも買ってこよう。
棚の引き出しを順番にチェック。
空の引き出しがふたつとあと少ししかないのが6つあった。
買うべきパーツの型番をメモに取って作業室を出た。
作業スペースで仕事してる機械屋ちゃんにひと声かけて工房から出る。
街の中をのんびりと歩いた。
西通りに入る。
西通りにはいろんな店がならんでる。
私が行くパーツ屋のほかに、インフォメーション端末、個人用のも据え置きのも、の店、ゲーム店、本屋、あとゲーセンとかもある。
馴染みのパーツ屋に入った。
向かうのは店の奥にある小さな引き出しがたくさんの棚。
棚の横に置いてある小さなトレーを手にする。
……いくつ買おう。
少し考えて20個ずつ買うことにした。
持ってきたメモを確認しながらパーツを探す。
見つけたのを順に20個ずつトレーに取った。
レジで金を払ってパーツが入った袋を受け取った。
これで良し。
店を出て工房へ、来た道を戻る。
少し歩いたところでふと立ち止まった。
ちょっと前、学生ちゃんと来た店。
マンガとかゲームの攻略本とか、そのあたりの品揃えが抜群の店。
そう言えば学生ちゃんと来た時は本買ってすぐに店出たっけ。
『乙女フロア』しっかり見なかった。
……うん、見ていこ。
店に入って階段を上がって3階へ。
3階に上がって『乙女フロア』を見てまわる。
学生ちゃんが文庫本を教えてくれた本棚。
棚の上に『ボーイズラブ』とあった。
あの時は気づかなかった。
文庫本の棚から振り返って、向かいの棚にはマンガ。
こっちの棚にも『ボーイズラブ』とあった。
フロアをうろうろする。
普通の少女マンガはもちろんある。
小説とか雑誌なんかもある。
そんなフロアの一角、本が平積みされてる。
興味、って言うか、何かおもしろそうだな、って思った。
積まれてる本、透明の袋に入ってる。
表紙のイラストは見たことがあるキャラクターだった。
前に少女ちゃんが言ってたアニメ。
女の隊員さんに教えてもらった、って言ってた。
イケメンがたくさん出てくるから楽しいよ、って教えてもらったんだけど、少女ちゃんはイケメンには特に魅力を感じなかった。
だけど、ストーリーがおもしろいから見てる、らしい。
少女ちゃんに教えてもらって機械屋ちゃんと一緒に見たけど私たちには合わなかった。
そのアニメのキャラクターだ。
でも、何か違う。
……絵のタッチがアニメと違う。
?
どゆこと?
手に取ってみた。
薄い本だった。
手にした本の隣に積まれてる本。
表紙は同じアニメのキャラクター。
その本も手に取る。
こっちも薄い本でやっぱり絵柄がアニメと違う。
両手の本2冊を比べる。
2冊の本でも絵の雰囲気が違う。
こんな本初めてだ。
袋に入ってるから中は見れない。
だから買うならジャケ買いだ。
買うべきか買わざるべきか……。
少し悩んでから決めた。
買おう!
買わずに後悔するよりも買って後悔しろ、そんな気がした。
値段は、と……。
袋のはしに値札が貼られてる。
!?
600ダリル!?
んっと、この薄い本が600ダリル……?
でも、買おう!
2冊を持ってレジに行く。
1,200ダリル払って、黒い袋に本を入れてもらって、袋を受け取った。
工房に帰ってきた。
機械屋ちゃんと少し話をしてから食堂に入る。
テーブルに黒い袋を置いて精密作業室へ。
買ってきたパーツ、足りなかったひとつを作業机に置いて、残りのを順番に小さい引き出しに入れた。
作業机に陣取ってパーツの交換に取りかかる。
難しい作業じゃない。
だから1時間もかからずに終わった。
時計を見ると夕方までいくらかある。晩メシまでは十分ある。
どうするか……。
うん、買ってきた本を確かめよう。
食堂に移動。
黒い袋から薄い本2冊を取り出して、透明の袋を開けた。
2冊をテーブルにならべる。
どっちの表紙にもイケメンがふたり。
やっぱり絵の感じが違う。
ま、気にしなくて良いね。
テーブルの2冊の片方を取って表紙をめくった。
マンガだった。
でも、ありがちなマンガじゃなかった。
……イケメンふたりの濡れ場。
つまり……、BLだ。
目から鱗、これって初めて見る世界だ!
1冊目を最後まで読んで、2冊目に手をつける。
やっぱり、って言うか、こっちもBL。
奥が深い。
これ、買って大正解だよ。
こんな世界があったんだ。
ものっすごい勉強になる。
2冊目も読み終えて、もう1回2冊を読み直した。
「終わったー、
メシ作るぞー」
機械屋ちゃんが入ってきた。
「おつかれー」
食堂に迎え入れる感じ。
「ん?
何だ、その本?」
テーブルにならんでる2冊。
機械屋ちゃん、気づいてくれた。
「西通りで買ってきたんだけどね」
「うん」
私の声に機械屋ちゃんが相づち。
表紙を見て。
「ああ、前に少女ちゃんが言ってたアニメか?」
「そうなんだけど違うって言うか……」
上手く説明したいけど上手く説明できない。
「?
絵の感じ、何か違うよな?」
「でしょ」
説明できないなら、見てもらった方がいいね。
「読んでみて」
「おう、
けど薄い本だな」
機械屋ちゃんに1冊を渡す。
中を見て。
「!?」
驚きすぎて言葉が出なくなった?
「えっ!
先輩! 何だこれ!?」
驚きの声、って言うか驚きすぎの声。
「BLらしいんだけど……、
……良く分かんなくって、
機械屋ちゃん、どう思う?」
尋ねてみる。
「先輩が分かんねぇんだ、
アタイが分かるわけねぇだろ」
開き直り? の言葉。
「まいったね」
これは何なんだろ?
本当に分からない。
「そっちも一緒か?」
「これ?」
もう1冊も機械屋ちゃんに渡す。
中を見て。
「アタイには無理だ」
2冊が返ってきた。
「でもさ、本っ当に謎だね。
……少女ちゃんに聞いてみよっか?
アニメ見てるから分かるっしょ」
「先輩、少女ちゃんには絶対に見せんな!」
軽く言った私に機械屋ちゃんの重たい声が返ってきた。
機械屋ちゃんがちょっと考えてから言った。
「そうだ、先輩に小説教えてくれた子」
「?
学生ちゃん?」
機械屋ちゃんに答える。
「あの子だったら知ってんじゃねぇか?」
そだ、何で気がつかなかったんだろ。
学生ちゃんなら絶対知ってる。
理由は分かんないけど断言できる。
「だね、
絶対知ってる。
今度会ったときに聞いてみよ」
うん、私はうなずいた。
「さて、メシ作るかー」
機械屋ちゃんは冷蔵庫の中を見て、食材を取り出して、晩メシに取り掛かってくれた。
メシを食いながら今日の仕事の話をして、明日の仕事を確認して。
あとは何てことのない話をした。
メシの後、機械屋ちゃんは自分の部屋に戻って、私はテレビを見た。
適当にテレビ見てたら良い時間になった。
本2冊と黒い袋を持って部屋に戻る。
2冊を重ねて机に置いた。
改めて表紙を見る。
これ、世界広がったね。
知らなかったことを知る、嬉しい。
ベッドに上がって毛布をかぶって。
大満足で眠りについた。
了
はい、「買わずに後悔するよりも買って後悔しろ」、と言うことで「BLの同人誌」です。
が、現時点では先輩さんにはまだ「謎」です。
近日中に公開予定の話で明らかになる、と言うか、先輩さんが知ります。
書店のレジ袋が「黒」なのは、一時期の「とら」とか「メロン」を意識して、です。
あと、少女ちゃんにアニメを教えた「女の隊員さん」は素のアニメファンだと信じたいです。