追放された心当たりがありすぎるので、元凶の召喚獣とのんびり旅をします。 作:セパさん
「旋風斬!」
「ラルフ!左からも来るよ!」
「ちぃ!」
金色に輝く竜王の牙が勇者ラルフを襲い、鮮血が
「<
「助かったアデラ!」
手負いの竜王が煌々と魔力を高火力へと変えていく。広範囲のブレスであり、並みの冒険者であれば灰も残らない。
「させないよ!火焔術式!」
だがブレスは射出の前に更なる火力で打ち払われ、炎を飲み込んだ竜王は苦悶の表情を浮かべ怯みはじめる。ラルフはその隙を逃さず喉元を刺突し、遂に竜王はその巨体を大地に沈めた。
「ふぅ……。金色竜王1体相手にこれだけ苦戦するか。想定よりもシオンが抜けた穴は痛いな。」
「まぁシオン君に内緒のまま3人で戦うのは初めてじゃないし、わかりきってたことだけどねぇ。」
「では戻って来いと懇願しますか?わたしは反対ですよ。」
「いや、覚悟の上だ。シオンは……正確にはその式のマリーはあまりにも危険すぎる。」
「戦闘中にわたしたちまで混乱させられるとか生きた心地しないよねー。」
「そういう問題でもない。もっと根源的な問題だ。」
「と、申しますと?」
「シオンは別として、マリーは最初から俺らを仲間なんて思ってなかったんだよ。」
「敵として見られてたってこと?」
「いや、あれは……」
ラルフは小考し適当な言葉を見つける。
「
●
「……やぁ、初めまして。お嬢さんたち。見ての通り
「魔族に人間の性別はよくわからないのかもしれないけれど、僕は男だ!」
「おっと、それは失礼。」
漆黒のローブを身にまとった赤毛の女性、曰く死神タナド。彼女が連れてきたのは一見和装姿の華奢な男性に見えるがその手足は緑の鱗を持ち、鋭利な爪が見て取れる。
「それで、わたしを一体どうするつもりなのかね?」
「僕たちは君が死なないよう依頼されている。施術をするのは僕じゃなくて……」
うふふふふふふふふ
「……君のメイドにも負けないくらい意味不明な僕の式だけれども。」
「それは興味深い。貴女は精神の類を操る奇々怪々な存在に見える。」
『 へぇ 』
流石次期当主様、マリーの能力を一発で見抜いちゃったよ。
「そう関心するものでもないよ〝少年〟。わたしは一番身近にいた
その瞬間、静かに佇んでいたタナドさんが憤怒の形相を浮かべてガルドさんの胸倉をつかみ悠々と宙に浮かせた。
「ふふふ、死神らしくこのままわたしを縊死させるつもりかな。それも興味深い。」
「あなたは……あなたは自分の生涯を何だと思っているのですか!?」
激高したタナドさんの気迫は竜よりも恐ろしい、だがその目からは涙がぼろぼろと零れ落ちていた。
『 愛憎劇はそろそろ終わりでいいかしら 』
うふふふふふふふ
『 死ねない死にたがりと殺せない死神の終着点 』
『 最早〝死〟以外にないのではないかしら 』
その瞬間、マリーの銀髪が逆立ち、禍々しい瘴気が空間を包んだ。
●
「陛下!陛下!」
「なんだ騒々しい。」
「大変申し上げにくいのですが……。ガルド親王陛下がメイドと泉にて遺体で発見されました!恐らく入水による心中を試みたものと……。」
「なんだと!?」
魔戦王と讃えられたドラゴネスも突然の知らせに茫然とするほかなかった。
「すぐに神官を総動員させ蘇生させろ!」
「すでに行っておりますが、発見が遅れたためと水死体故、遺体の膨満・損傷
「何をやっているこの役立たず!!」
ドラゴネスは手元にあった杯を家臣に投げつけ、家臣は頭部から著しい出血をした。
「あのメイドが
「全力で取り組む次第ですが……」
「あんな失敗作でも、ドラゴネス一族を継ぐものなのだ!血脈が途切れるなど許されることではない!」
「失敗作……ですか。」
「なにが可笑しい!」
「わたしは父上の作品ではない。醜く道化を演じるのも辟易した頃だ。父上、わたしのことは忘れてください。」
「貴様……。」
「ご主人様、本当に殺さなくてもよろしいのでしょうか。」
「すまないね。何の興味も沸かないんだ。マリーさん、そういうことで手筈通りに。」
うふふふふふふふ
『 不可逆的記憶障害措置 施行 』
●
要塞都市に唯一広がる湖に掛けられた橋の上。
「ふぅ……また死に損ねた。」
「それにしても、あれだけの者の記憶を書き換えるなんて……本当に出鱈目な女ね。」
『 それはどうも 』
「結局僕は何もしてないなぁ。ガルドさんとタナドさんはこのまま橋を渡るの?」
「ああ、わたしは外の世界を全く知らない。描きたい物語がこの世にはたくさんある。それは死ぬよりも素晴らしいことかもしれない。」
「死神と魔戦王の息子……ううん、敵には回したくないねぇ。」
「もうこの世にわたしを知るものはいないのだろう?のんびりと旅を楽しむさ。」
「わたくしも、愛する人の傍で……。」
「世は戦時中なのにのんびり旅かぁ、僕らと一緒だね。」
「そのうち何処かでまた巡り合うかもしれない。そのときはよろしく。」
シオンは差し伸べられた手を握り返す。
「うん、またどこかで。」
その瞬間、鋭利な刃物がガルドさんを両断した。
「……うぅ。う!?あ?」
「ああ、やっと殺せた。やっとあなたと二人きり。これで永遠に……。蘇生させられることもない!遺体がどこかにいくこともない!祀り上げられることもない!わたしとあなただけ!」
「は、はぁ!?」
「ありがとう、シオンさん、マリーさん。これでわたしとご主人様は永遠に二人きり。魂も躯も、誰にも渡さない。」
「ちょっと……」
『 下がって 』
「ああ、ここに邪魔な証人がいましたね。大丈夫、一瞬で楽にしてあげる。」
『 希死念慮注入処置 施行 』
「……あら?わたしはご主人様と二人きりになったのに何をしているのかしら。さぁ心臓を見せて、ご主人様、この鎌で心臓と心臓のキスを、世界一の贅沢な……一生に一度っきりの……。」
タナドさんは目を虚ろにしながらガルドさんの亡骸を起こし、心臓に鎌を突き刺し……そのまま自分の心臓を貫いた。瞬間、糸の切れた人形のように脱力し、橋から落ちて水中深くへと沈んでいった。
「ねぇ、マリー。」
『 なに 』
「結局二人とも夢が叶った訳だけれど……」
『 そうね 』
「なんて悪趣味な戯曲を見せられたんだろう、僕たちは。」
『 最早誰も知る人はいない わたしたち以外は 』
「描きたい物語なんて考えたこともないけれど、僕はこんな終わり方にしてほしくなかった。」
シオンが泉をのぞき込むと、催眠薬の瓶と原稿用紙がプカリと浮かび上がってきた。
序盤の部分は俗にいう【追放作品】を見て毎回疑問に思っていたことを書いてみた感じです。アンチ・ヘイトタグをつけた方がいいですかね?