カードゲームの悪の組織で幹部をやってます。闇のカード(禁止カード)が強いです 作:カードショップの闇結さん
よろしくお願いします。
「コスト七を払って、『ラピスラズリ・クイーンドラゴン』を召喚」
「おー」
相手の切り札っぽいドラゴンが、俺の前でギャオーと雄叫びを上げる。さすがの迫力だ。
モンスターが現実に、というのだから、いつ見てもこのすごい。
「ジェムカードをデッキボトムへ、能力発動」
「ちょっと待った。カウンタースペル、『抑制の翼』。ラピスラズリ・クイーンドラゴンのジェムを全て墓地へ。能力は発動しない」
「な……また……っ!?」
これで、相手の行動できるモンスターはいなくなる。
「俺のターンだな? 九コスト、スペル発動。『戦和流転』。各プレイヤーは、モンスターを全て、土地エリアに置く。その後、こうして土地エリアに置いたカード以外の土地エリアのモンスターカードをバトルエリアへ好きな数置き、残りのカードは墓地へ置く」
「そん……な……」
相手の土地エリアには、ラピスラズリ・クイーンドラゴンだけが置かれる。俺の方も三枚だけ土地エリアに行った。
「ほら、さっさとジェム分配しろ」
ジェムカード、というのはモンスターに乗っける裏向きのカードのことだ。プレイヤーにアタックするときは、このカードの枚数を参照してダメージを計算するし、このカードを消費して、モンスターは能力を使ったりできる。
ジェムの分配のタイミングは、モンスターがバトルエリアに出た時、そしてターンの初め。このターンの初めのジェム分配で、一つもジェムがないモンスターは消滅する。
まぁ、ジェムカードは大事だよってことだ。
「く……、『ラピスラズリ・クイーンドラゴン』に」
土地エリアに引っ込んだやつとは、また別のカードだ。ま、普通切り札は何枚も入れるだろう。
「今、コスト払わずにモンスター出したよな? んじゃ、カウンタースペル、『正義の鉄槌』。コストを支払わずにバトルエリアに出たモンスターの上にあるジェムを一つ破壊」
「あ……っ」
状況起因型のカウンタースペルだ。相手の卑怯な行動を咎めるメタカードという意味合いが強い。
刺さるときは刺さるし、刺さらないときはめっきり刺さらない。本当に止めたいカードに限って効かなかったりする。そんなもんだろう。
「不正はするもんじゃないな」
「どの口が……」
「元気いいなぁ。アタックフェイズ。『アクアマリン・ジャックドラゴン』のジェムカードをデッキの一番下へ、効果発動。相手は手札を六枚墓地へ」
「もう……やだ……っ」
「『豊潤なる愛 コスモス』。デッキの一番下にジェムカードを送り、効果発動。土地エリアのカードが二倍になるまで、山札の上から一枚ずつ土地エリアへ」
これで、俺の土地エリアのカードは六枚になる。こんなものだろう。
あとは、もういい。
「ターンエンドだ」
「くそ……」
ターン開始時のジェム整理だ。
相手のジェムはゼロ枚。場に残せるのは一体もない。
このターン開始時のジェム整理で、ジェムを乗せられなかったモンスターは消滅して、墓地に置かれる。
土地エリアから引っ張り出されたモンスターたちが、全てチリへと帰って行った。
土地エリアにはたった一枚。ジェムもなし。相手の手札もなし。
次に、ドローステップ。引けるカードは二枚だ。
その後、手札から一枚をジェムカードとして裏向きでバトルエリアに置ける。そこから更に、土地エリアに一枚を置ける。
「……サレンダーだ。ここから逆転はできない」
カードを手放して、彼女は言った。
ここまでされたら、負けたも同然。そう言うのも当然だろう。
まぁ、ここから逆転するバカデッキを俺は知ってるけど。
「ダメだ。これはどっちかが負けるまで続く、真のファイトだ。モンスターの攻撃は実体化するし、トドメを刺されたら死ぬ。降参はルールにない」
「……っ」
まぁ、うん。なんで俺がこんなことを……人生っていろいろあるものだ。
ちなみにこの子は、ちょっとした正義感から、俺の所属する組織にちょっかいをかけてきた。下っ端をケチョンケチョンにやっつけるくらい実力はあるみたいで、ちょうど近くにいた幹部の俺が派遣されたわけだ。
普通の仕事とか、いっぱいあるんだけどなぁ。とにかく、変装して、俺は駆けつけた。
それで見つけた女の子は、俺もちょっとだけ知る女の子だった。まぁ、今は変装してるし関係ない。
「ターンエンドか?」
「…………」
敗北を目の前に絶望的な表情になる女の子だった。
ちょっと悪いことしてるな……なんて思っているのはいけないだろうか。
「んじゃ、俺のターン。七コスト、『絶望の未来図』。相手の山札を見る。その中から、一つカードを選び、デッキ内のそのカードと同名のカードを墓地へ。ターンエンド」
「私のデッキが……!?」
コストの高いモンスターカードを墓地に送る。
この調子で、モンスターカードを引っこ抜いていけば、俺の勝ちは確定だろう。
「『青海竜リスペル』。ジェムをデッキの一番下へ。能力発動。墓地から、『抑制の翼』、『絶望の未来図』を手札へ。ターンエンド」
ま、スペルを連打する体制を整える。後三回『絶望の未来図』を撃てば、相手のデッキはおしまいだろう。
「……して……」
「え……?」
「もう、殺して……」
定まらない目で、そう懇願してくる。
ちょっと笑える。
「嫌だね」
「……そんな……」
心折れちゃってるよ。まぁ、こんなふうに嬲られるのは俺だって遠慮したいか。
そこから、三ターン四ターンと経過している。
もうこの子の山札には、モンスターカードがない。ドローやら、そういったカードだけになり、反撃の芽はなくなる。
ただ、デッキだけがなくなっていく。
「さて、最後の一枚だ。引け」
「……っ!?」
そして、このゲーム……山札が無くなった瞬間に負ける。女の子は、泣きそうになりながら、カードを引いた。
「お前の負けだ」
「あれ? 死なない……?」
「ライブラリアウトだからな。ライフ削って、トドメを刺したわけじゃないだろ?」
「あ……っ」
すき好んで、人を殺したいやつなんているわけがないだろう。ただ、死に怯えるこの子の姿は、ちょっと面白かった。
「これに懲りたら、悪い奴らに二度と関わるなよな? 命の保証はないからな?」
「……へ……?」
女の子は、狐に摘まれたような顔のまま、ぼうっと立ち尽くす。俺はそこから、颯爽と立ち去った。
***
俺は、TCGの世界に転生した。カードゲームの世界だ。
ヤケになんかみんなカードゲームをやってて、どこかしこにもカードゲームをプレイできる施設のあるそんな世界だ。
「マスターは、メスガキに甘すぎます」
「メスガキって、どこでそんな言葉覚えたんだよ?」
「インターネットです」
ちなみにこの子は、天使の羽の生えてる女の子だ。メスガキである。
俺のエーススペルである『抑制の翼』に描かれている天使ちゃんだ。
「すき好んで人を殺したい奴がいるなら知りたいね」
「でも、やらなきゃやられるんですよ?」
「そんときゃ、そんときだよ」
真のファイトをしているんだから仕方がない。自分がいつ死んでも、覚悟はできてる。
ちなみに普通の人間は、エクスアーム社製のバトルボードを使ってプレイする。うっかり、これを使わないと、真のファイトが暴発するからだ。
「私が……いるからですよね……?」
「さてね」
俺がこれを使わないのは、まぁ、『抑制の翼』とかもろもろが闇のカードだからだ。
この世界にあるカードは、なんか異世界にいるモンスターの依代とか、そんな感じだった。遺跡に眠る伝説のカードとかもある。
当然、その中には、やばいカードパワーのものや、存在してはいけない効果のものも存在する。
カードが新しく発見されるたびに、エスクアーム社が審査を行い、カードパワーがおかしいカードを闇のカード認定、使用禁止にするのだ。
エクスアーム社の発足した闇のカード委員会のエージェントが、カードの封印を担当していたりする。
バトルボードはエクスアーム社製。闇のカードガン積みの俺のデッキは、バトルボード使うとエラー吐くし、位置情報が自動的に闇のカード委員会に通報されるから、使えなかった。
「マスターはバカです」
「半分は俺の責任だからね」
この世界、カードというのは買うのではなく、自分の力で勝ち取るものだ。拾うっていうのも割とある。
そうやって手に入れて、自分だけのデッキを作る。だから、普通の人間は、ロクなパーツを揃えられずに、弱いデッキで戦わざるをえなかった。
あれもない、これもない中、俺は父母、親戚の叔父ちゃんとかのカードストレージを許可を受けた上で漁りに漁り、デッキを作り上げた。
やっぱり、前世でやっていたカードゲームの知識は役に立った。この世界、同じレアカードは基本的に複数人で使うことができなかったから、研究が進んでなさすぎるし。
ちなみに、カードは依代の元のモンスターに願うと三枚まで分裂する。だから、デッキに入れられる同名カードは三枚までだったり。
まぁ、それで、俺は、これは強いと思ったカードたちで、大会を荒らしてしまった。
その結果が、闇のカード認定。俺のよくする土地破壊……ランドデストラクションや、ジェム破壊……ボードデストラクション戦術は、見栄えが悪かったんだと思う。
対戦相手の子、よく泣いてたし……。これは闇のカードだわ……。
「元はといえば、俺がストレージから引っ張り出してきたからだよ。あとはお前のカードパワーのせいだけど」
「えっへん」
偉そうなのは強いからだ。モンスター的には、強いことはいいことだった。
こんなふうに、カードを強く使えていると、相棒としてカードの元となったモンスターがやってきたりするのがこの世界だ。
カードの封印は、そんな相棒と引き裂かれることを意味する。
それは普通に嫌だろう。
「よっと……」
それで俺は変装を解く。
「いつも思うけど、よくその胸の大きさ収まってますよね」
「まぁ、最近のは優秀だし」
ちなみに、転生した俺は女だった。