カードゲームの悪の組織で幹部をやってます。闇のカード(禁止カード)が強いです 作:カードショップの闇結さん
というわけで、敗者復活戦決勝である。
会場にいるのは、光谷ちゃんと、相手の子である。
ちなみに、もう光谷ちゃんは、代表選出場を決めていた。この敗者復活戦は、俺に負けたみんなが集まって、トーナメントで俺がいたところを、光谷ちゃんに変えてやり直したようなものだった。
光谷ちゃんは、一番多く対戦数をこなし、常に勝ち続け、シンデレラガールとして、決勝まで上り詰めた。
そして、今は決勝戦のやり直しだった。
ちなみに、三位決定戦のやり直しはないようで、津雲ちゃんが代表選に出れるのは変わらない。
「よろしくなの」
「よろしく」
相手は、青い髪で無機質な表情の女の子だった。
互いに握手をして、決勝戦が始まっていく。
「ん……相手の子……。強い」
一緒に会場に応援に来たのは緑川ちゃんだった。友達になった。なんか、やけに私にべったりとくっついてきている。
「でも、相性自体はいいと思うけど」
俺は、実際、あの子と決勝で戦っている。あの子はコンボを狙う感じのデッキだったから、コンボパーツを引っこ抜いたら、何もできずにプランが崩壊していった感じだった。
光谷ちゃんのデッキの妨害性能なら、相手になると思う。
「光谷は……そこまでじゃない。コバルト・ブルーの相手は……なかなか無理」
「えっと、知ってる子?」
「それなり」
津雲ちゃんの話では、緑川ちゃんは大会で結果を残せていないということだった。でも、黒のマスターは緑川ちゃんのことをなんか知ってるみたいだったし、今大会に出ている子とも知り合いっぽい。不思議だ。
「二コスト、『チャージ・シャドウ』を使用します。カードを三枚引いて、二枚捨てます」
初動、コバルトちゃんは、黒青の二コストのスペルを唱えた。目的は、手札交換か……あるいは――、
「墓地肥やし」
墓地に落ちたカードを見れば、彼女の狙いがそうだとわかる。
光谷ちゃんが、三コストの、ジェムを外して光のモンスターのコストを軽減するモンスターを召喚する。
「三コスト、『マジスティック・アーク』を召喚します。ジェムをデッキの下に送ることで、次の自分のターン初めまで、自分がスペルを唱えた時、山札から一枚を土地へと置きます」
緑のモンスターだった。
自分が誘発のスペルを抱えていることを示すような能力で、それは相手への牽制になる。
「乗ってやるの。四コスト、『静止する光』を唱えるの」
相手の見えている色は、青緑あとは黒か。警戒するべき汎用誘発札は、青のハンデス。『波浪』だろう。
自信満々に、スペルを唱えた光谷ちゃんの手札には、手札から墓地にいくという状況に起因して、墓地から召喚されるモンスターが二枚あった。
普通なら、悪くない選択肢だった。
「誘発。『マジスティック・リコール』。墓地から、コスト六以下の黒のスペルを唱えます」
「……ふーん、そうやって、スペルでスペルを唱えて、土地を稼ぐわけなの」
「今から、ループの証明を開始します」
「……っ!?」
その宣言に、光谷ちゃんは動揺する。
「『マジスティック・リコール』で、墓地にある『ラッキー・デイ』を唱えます。この状態をAとします」
「……?」
光谷ちゃんは、Aと言われて、頭にハテナを浮かべていた。
「『ラッキー・デイ』を唱えることができたので、『マジスティック・リコール』の効果は終了し、『マジスティック・リコール』のテキストを参照して、『マジスティック・リコール』を山札の一番下に送ります」
いま、『ラッキー・デイ』が唱えられたわけだが、『ラッキー・デイ』の効果を発動する前に、スペルを唱えるという効果が果たされたと判定され、『マジスティック・リコール』は唱え終わったことなる。だから、このタイミングで、『マジスティック・リコール』のカードを移動させるわけだ。
「さらに、『ラッキー・デイ』、効果。山札の一番下にあるカードを当てます。『マジスティック・リコール』。山札の一番下にあるカードが当たった場合、それがモンスターなら、そのカードをジェムとして場に置き、スペルなら唱えます」
「……!?」
再び、『マジスティック・リコール』が唱えられる。
完全に光谷ちゃんは動揺していた。
「『マジスティック・リコール』を唱えることに成功したため、『ラッキー・デイ』を墓地へと送ります」
「まさか、なの!?」
「『マジスティック・リコール』の効果発動。墓地にある『ラッキー・デイ』を唱えます。この状態をA′とします」
「……? ……?」
A′と言われて、さらに光谷ちゃんは、頭にハテナを浮かべていた。
「AとA′は、同じ『マジスティック・リコール』で『ラッキー・デイ』を唱えている状態です。よって、ループが完成します。Q.E.D.」
「難しいことを言うななの。余計なんか、わからなくなるの」
アルファベットの混じった説明に、光谷ちゃんは頭をこんがらがせていた。
Xとか、Yとか、光谷ちゃんには難しいのかもしれない。
「では、ループが証明できたので、私は任意の数までスペルが唱えられます」
「好きにするの」
このギミック自体は私は知っていたし、本当なら教えてあげたかったけど、いなかった私が知っているのはおかしいしね。
津雲ちゃんは、完全に警戒して、スペルを撃たなかったから、常に津雲ちゃんの応援をしていた光谷ちゃんは、このギミックを知らないし。
「『マジスティック・アーク』の能力により、スペルを撃った回数、山札の上から土地に置きます。十枚」
土地の数が十三枚になる。これは、光谷ちゃんも、万事休すかもしれない。
「『静止する光』は通るの。お前は次のターン、スペルを唱えられないの」
「了解しました」
「それと、『光の尖兵』の効果を使用するの。ジェムを外すことで、次の自分のターンに、召喚する光のモンスターのコストを二、少なくするの」
マナがあろうと、スペルを封じさえすれば、理不尽なコンボは発動してこないという判断だろう。ここから、スペルロックを毎ターン行い、しのぐ。
追い詰められた状況でも、しっかりと判断できている様子だった。
「では、こちらのターンです。十二コスト支払い『獄炎鳥ブラックソル・フェニックス』を召喚します」
「……!?」
そのカードには、十二コストの重みがあった。
真のファイトだったら、空を覆い尽くすほどの大きな黒い炎の鳥が現れたのかもしれない。
「能力。ジェムを外すことにより、発動します。バトルエリアにある互いのジェムを全て墓地に送ります」
「……っ!!」
「こうして墓地に送られたジェムの数だけ、山札の上からこのモンスターにジェムを乗せます」
オールボードデス。ちょっとあのカードいいな、と思ったけど、黒が入るから私のデッキには合わないだろう。
「モンスターを召喚した際や、ターンの初めにこのジェムを外すことはできない。ターンエンドです」
ジェムロック……というのはたまにある。
ジェムがたくさんあるモンスターから、不足ジェムを補って召喚することや、消滅を防ぐこともルール上可能だ。
ただ、このモンスターの場合は、自分以外を全て消滅させるというコンセプトのため、ジェムロックで、そういうのを許さないんだろう。
「く……っ」
カードを引いて、光谷ちゃんは手を止めた。
光谷ちゃんは悩んでいるようだった。そこからしばらく熟考に入る。
完全に追い詰められている光谷ちゃんだ。会場は、固唾を飲んで、その選択を見守っている。その中には、もう勝負は決まったと、席を立った人もいた。
「『光龍ダイヤモンド・エンドレス・ドラゴン』を召喚するの。ジェムをデッキボトムに、山札の上から十枚を公開」
公開されたそのすべてのカードが光だった。その後に、ライフの十点が加わる。
苦し紛れ……そんな言葉が思い浮かぶ。ライフが十ならば、赤黒の鳥にあっさり削りきられると考えたのだろう。
ただこんなのは時間稼ぎにしかならない。
「『死海鳥ブラックマリン・フェニックス』を召喚」
「……!?」
しょっぱそうな名前の鳥が出てくる。
とはいえ、九コストの重量級だ。その効果も、その重さに相応しいものだった。
「能力により、自分と相手の手札を全て捨てる。誘発は使わせない」
「く……っ」
「さらに、捨てた数と同じ数を引く……この効果は任意、使わない」
山札切れを警戒してだろう。その選択は分からなくもなかった。
ふと、緑川ちゃんは呟いた。
「これは……ある……」
勝ちの目が……ある。
そうだ。この選択で、光谷ちゃんに一つの勝機が生まれる。
「『獄炎鳥ブラックソル・フェニックス』で、八点!」
光谷ちゃんのライフが、残り十二点になる。後二回……それだけのアタックで、彼女は負けるだろう。
「私のターンなの! 『光の聖者リリエス』を召喚」
カードの一枚は土地ではなくジェムに置かれた。
五コスト。使える土地を全て使って、召喚したモンスターだ。そうして能力が発動する。
「……っ!?」
その能力は、モンスターを指定し、ターンの開始時にジェムを載せさせないというものだ。
「ジェムを手札に戻すことで、『光の聖者リリエス』の能力を使用。『死海鳥ブラックマリン・フェニックス』を指定。ターンエンド」
ターンの開始時に、『死海鳥ブラックマリン・フェニックス』が消滅をする。
これで、次のドロー次第か。
「……っ。『マジスティック・アーク』を召喚します」
なかった。……有効札が、なかった。
トップ勝負に持ち込んだからには、自信があったんだろう。それなのに、このターン、ほとんど動けていないのは、きっと痛い。
「やっぱり……覚えてない?」
光谷ちゃんは『ダイヤモンド・エンドレス・ドラゴン』でトップ操作を行なっている。これは相手にも公開される情報だった。
これを覚えていれば、『死海鳥』の能力を不用意に使ったりはしなかったはずだ。覚えていれば、今、『獄炎鳥』で殴るかどうか、熟考する理由はないはずだ。
光谷ちゃんには、一枚、手札がある。さっき、ジェムにして、能力の発動時に戻ってきた手札だった。
「『獄炎鳥ブラックソル・フェニックス』でアタックします。八点」
「ライフ減少により誘発。『光の制裁』。このターン、減った自分のライフと同じ数だけ、相手のライフを削る。ただし、この効果でライフはゼロ以下にはならない。こっちも、八点!!」
トドメはさせないとはいえ、強力な光のスペルだ。これを用いて勝つのが光谷ちゃんの常套手段だ。
コバルトちゃんも、今までの戦いを見ていたはずだ。このスペルは当然警戒していた。だから、手札をさっき捨てさせたんだ。
「あと二点……」
「でも、遠すぎる……ライフを犠牲に、相手の手札を削ったという見方もできる」
ライフ、というのは、純粋なカードアドバンテージに何ら貢献をしない。トドメを刺されない限りは、いくら削られてもいい。
そんなライフを削った代わりに、もう一枚の手札もない。手札が三枚と二枚では、大きな差がある。
モンスターを出すとして、土地を貯め、ジェムを置くという行為をどちらも行えるかどうかは、かなりの差だ。
だから――、
「『光の門へレス』を召喚」
――こんな、モンスターの召喚の仕方は、本来ならばしないだろう。
ジェムを場に一枚も置かない召喚だった。
場に一枚もジェムがなければ、モンスターは能力を使えず、ターンの初めに消滅する。いないも同然だった。
会場が、どよめく。カードを触り立ての子どもでもしないミスだとヤジを飛ばす人間もいた。
俺も、見たのは久しぶりだった。かつてのそれは、俺に追い詰められながらも不敵に笑い、決して諦めずに逆転を目指した王の一手。
そのときと同じ気迫を、今の彼女からは感じてしまう。
そして、彼女は土地にもカードを置いていない。そのカードは手札にあった。
「自己誘発『曙光の刃』」
「……!?」
「コスト五以上の『光』のモンスターを召喚した時。山札の上から二枚、カードを見る。その中の『光』のカードを一枚を手札に、一枚をジェムとして、モンスターにセット! 『光の門へレス』にジェムを追加」
「ジェムが……」
二枚のカードは『光』のカードだった。この運命は決まっていた。
五ターン目、『光龍』の効果により、十枚のトップデックの操作が行われていた。今は、その描かれた道筋の中にある。
「そして、ジェムを外すことで、『光の門へレス』の能力を発動するの。手札から、コスト六以下の『光』のモンスターを召喚する」
土地五枚、ジェム零枚、手札二枚の状態から、ジェムの付けられたコスト六のモンスターが召喚される。それには、大きな意味があった。
「『光騎士クレス』を召喚。召喚時に、今、外したジェムをつけるの。能力により、山札を上から三枚を公開」
「……っ!?」
私をよくいじめてくるモンスターだ。そのモンスターは、最大で三枚手札に光のカードを加える効果を持っているが、大事なのはそこじゃない。
「三枚とも『光』のため、次の自分のターンの初めまで、相手はスペルを使えないの」
そう、スペルを封じるこの効果だ。今、トップ勝負のこの状況において、トップの多くを腐らせる、この効果はあまりにも強い。
「私のターンです……」
コバルトちゃんは、カードを引いた。表情こそあまり変わってはいないが、光谷ちゃんの迫力に、気圧されているように見える。
こういう時の、手札は決まって……、
「『獄炎鳥』でアタックします」
なにもカードをプレイせずに、アタックへと入っていく。
そうだ、関係ない。光谷ちゃんのライフは残り四。この八点が入れば勝利だ。
「誘発、『逆光』」
「…………」
「攻撃するモンスターのジェムの数が、自分のライフより多い場合が条件なの。このアタックを中止し、次の相手のターンの初めまで、相手のモンスターを全て行動不能にする」
時間が止まった。
スペルを止め、攻撃を止める。相手はなにもできない。これこそが、行動妨害に特化した白の本領だった。
「決まりかな……」
「意外だった……」
そう緑川ちゃんと話す。ターンは、光谷ちゃんに渡っていく。
「召喚、『光騎士クレス』、二体目。さらに自己誘発『曙光の刃』! 山札を二枚見る」
山札の中から二枚が捲られる。
その中には、『光』のカードは一枚だった。光谷ちゃんのデッキのほとんどは『光』だが、一種類のみ、違うカードが混じっている。それは、自らのライフをリソースへと還元するカードで、光谷ちゃんの使うコンボの起点となるカードだった。
ちなみに、初めて私の店に来た幼い彼女に、私がその強さを懇切丁寧にプレゼンしたカードでもある。
二枚、『光』ではなかったことを、残念がる必要はない。いや、むしろここで出てくれたと言うべきだろう。
――だって、
「『光』のカードは、一体目の『光騎士クレス』に、ジェムとして追加。これで、二点。さらにアタックフェイズ。二体目の、『光騎士クレス』能力を使用」
山札から三枚、捲られる。
今の光谷ちゃんには、気迫と勢いがあった。こういう時、決まってカードは応えてくれる。
「封殺せよ! 『光騎士クレス』でアタックなの!」
「……通します」
決着がつく。どちらが勝ってもおかしくはない……そんな戦いだった。会場では、大喝采が沸いている。みんながみんな、光谷ちゃんの勝利を祝福していた。
***
表彰式だ。
今回の大会、優勝は、コバルト・ブルーの子、準優勝は津雲ちゃんということになる。そして、特別優勝が、光谷ちゃんだ。
俺がいなくなった分は、繰り上げで、最初の大会の結果を取り消したりしないという方針だった。その結果、敗者復活戦で上り詰めて、決勝戦でまで勝った光谷ちゃんは、特別優勝という形になる。
ちなみに、コバルト・ブルーの子は、大会の優勝に加えて、今回もおまけで戦ったため、特別景品が貰えるらしい。
そうして、世界大会代表選の、アマチュア参加の枠が決まったというわけだ。
そんな大会を見届け、私は車を出しに行こうとしたところだった。
「あなたは、闇結天音」
「……えっと」
コバルト・ブルーの子だった。
初対面である。私って、まあ昔はそこそこ有名だったから、知られていてもおかしくはない。
「あなたが、黒のマスターに勝ったこと、私は評価している」
「……なんの話?」
これは、とぼけるしかない。
あの男は、私ではありません。一人称も違うし。
「私は、次の世界大会で、マスター・オブ・ブルーを真のファイトで殺す。必ず殺す」
「どうして……?」
勝手に進められるその話に、その殺意の理由は、聞かずにはいられない。
「私たちは、ブルーの後継選びの……非人道的なファイター育成計画の被害者。あの男だけは、必ず殺さないといけない」
「……えぇ……」
ついさっき会った子に、あまりにも重い過去を開示され、私は困った。
とりあえず、話してみるしかないかもしれない。
「だから、あなたには協力してほしい」
「今のあなたが青のマスターに挑んでも、たぶん勝てないよ?」
「……っ」
コバルトちゃんは、息を呑んだ。
今日のプレイを見て思ったが、彼女には甘い部分が多すぎる。今日のファイトでも、反省点はそこそこだ。
「なんというか、勝ちを追求する姿勢かな。そういうのがいまいち……」
「真のファイトじゃない。代表選にはどうせ出られる。こんなの、ただの遊び」
「一つ一つのファイトで、本気になれない……それじゃ、カードは付いてこない」
カードがついてくるかどうか、この世界では必要なものである。ラキエルとか、あいつ拗ねたらすぐ初手に三枚くるし……。
「違う……っ。私は、あいつを殺す。そのための私で、そのためのデッキ。それ以外は、なにもない……。だから……っ」
「私にはさ、これだけが全てって思って、それ以外なにも考えられない時期があってさ」
コバルトちゃんに、デッキを取り出して見せた。これが、かつての私の全てだった。
コバルトちゃんも、自分のデッキケースを撫でて、言った。
「そう……私にも、これだけ」
「まぁ、でもさ。歳をとるうちに、案外、いろんなものを拾ってきてさ。それはそれで大変なんだけどねー」
今は、強いカードを公式大会で使って、闇のカードにされないようにと、大会の出場をやめたけど、あの頃は違った。
闇のカードになったら、別のカードを使えばいい。とにかく勝てる戦いをと、そんな感じだ。カードに宿る魂……というのを本当の意味で理解してはいなかった。
「じゃあ、あなたは恵まれている。私はずっと失ってきたから……」
「失ってきた……ね」
あの頃の自分を思い出す。子どもの頃は全てが与えられていた。成長するにつれて、一つずつ、なにか大切なものを失っていって、私にはカードしか残らなかった。
優勝さえできればと……誰もが認めてくれる。全部戻ってくる。
そんな幼稚な妄想に取り憑かれて、誰かさんを憎んだこともあったけな。
「利害は一致している。あなたは、私の計画に、協力すればいいだけ」
「その計画では、あなたが青のマスターと戦うんだね」
「そう」
「いいよ。ちょっと手伝ってあげる」
次の世界大会で、ことを起こすのは、私たちも同じだった。
でも、そう。この子には、青のマスターとは戦わせない。だって、そういうのは、きっと悪い大人の役目だからだ。
プロットには、ループ子がループして、わけわかんないままに負けるって書いてありました。それが変わったのは、きっと、カードに愛されていたからでしょう。
今回のおまけはケルベロスくんです。
おまけ
【最強闇のカード決定戦・番外編:『地獄の狂王ブラッディ・ケルベロス』】
「『津波』……手札を全て捨ててください」
「はい」
「勝った! これで安全にアタックして、詰めていけば……」
「墓地に二十枚カードがあるため、『地獄の狂王ブラッディ・ケルベロス』を召喚します。エクストラウィンです」
「…………」
***
「はいはーい。緑だよ。では、今日は、最強闇のカード決定戦、番外編ってことでやっていくよー!」
「今回紹介するカードはこちら! 『地獄の覇王ブラッディ・ケルベロス』……ではなく、『地獄の狂王ブラッディ・ケルベロス』です!」
「『地獄の覇王ブラッディ・ケルベロス』といえば、マスター・オブ・ブラックにより、先日使用されたカードですが、かつては違う姿で存在しました!」
「それが、『地獄の狂王ブラッディ・ケルベロス』というわけですね」
「では、この『狂王ケルベロス』と、『覇王ケルベロス』。どう違うのか、さっそく比較をしていきましょう!」
「この古文書によるとですね……現代風に文字を書き直したのがこれですね! 比べると、黒単色、コスト、特殊勝利条件はそのままに、踏み倒し条件が、墓地に黒のカード二十枚から、色関係なくカード二十枚に緩くなっています」
「では、当時のマスター・オブ・ブラックのデッキがどうだったのか……それはこのかつての公式記録に残っています! 黒使いのそこのあなた、とっても気になっちゃうでしょう? そのデッキが、こちら……!」
「【青単ケロベロス】!」
「青の強みである大量のドローを生かしたのが、このデッキです。青の力で手札を大量に補充、そうやって引き込んだ誘発札により、延命! そんな最悪な遅延行為により、ケルベロス降臨までの時間を稼ぐ悪魔のようなデッキです」
「ケルベロスを墓地に送るカードには、青単色の『チャージ・アウト』を使用。この『チャージ・アウト』のような、カードを数枚引いて、一枚を捨てるという青の効果で、ケルベロスくんを墓地に送ります」
「誘発札は脅威の二十四枚! 絶対に相手の攻撃を通さないという、強い意志を感じますね」
「このデッキの特筆するべき点は、『ケルベロス』をフィニッシャーとして獲得したことにより、青単の手札は貯まるが、ジェムもマナも貯まらずに、大量展開も大型フィニッシャーも出しづらいという特徴を見事に克服しています」
「当時の青単界は、大いに震撼したでしょう」
「このデッキを使用し、マスター・オブ・ブラックは、当時の最強プレイヤーとして名を馳せたと記録にありますね」
「黒が『ケルベロス』三枚だって? 黒使いの皆さん、ご安心ください。このデッキはまだ発展途中。さらに青以外のカードを追加することで、このデッキは次なる高みへと辿り着きました。それが、こちら……」
「【青白ケルベロス】!」
「青の大量ドロー、誘発バウンスに加えて、白のライフ増加、ロックといった更なる誘発札を追加することにより、堅牢な守りを実現したのがこのデッキです」
「このデッキの特筆すべきところは、『チャージ・アウト』のような、手札を能動的に捨てるカードがなくなっていることです」
「代わりに入ったのが、この『聖人ミハイル』のような白のカード。このカード自体、相手の二点以上のアタックを一点に変えるという能力を持った、二コストのカードですが、このカードには、隠された効果が存在します」
「それが、これ。『ケルベロス』を墓地に送り、墓地にカードが二十枚に達した時、エクストラウィンするという効果です」
「他にもジェムを墓地に送る守りのカードを採用することで、『ケルベロス』を無駄なく墓地に送り、今までよりもさらに硬い守りを実現することが可能になったのが、このデッキです」
「マスター・オブ・ブラックとはいったい……?」
「しかし、このカードに転機が訪れたのが、1814年。ナポレオン戦争の終結により、闇のカードの大改正が行われ、このカードも闇のカードに指定されました」
「ですが、このカード……使い手との絆により変化し、名前が変わって、踏み倒し条件が黒限定に弱体化。それにより闇のカード指定を逃れ、現代までマスター・オブ・ブラックの相棒として使われて続けているわけですね」
「ちなみに今のデッキは準黒単で、黒か、黒を含む多色のカードで作られています。黒使いの皆さん、今度こそご安心して大丈夫ですよ?」
「では、次回。マスター・オブ・ブラックとの交流が語られ、今話題の闇結氏の鮮烈なデビュー戦を飾った……まさかの即日闇のカード指定を受けた伝説のあのカードを紹介します」
カードゲームのルールアンケート
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わからないけど楽しい
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ちゃんとわかった方が楽しめそう