カードゲームの悪の組織で幹部をやってます。闇のカード(禁止カード)が強いです   作:カードショップの闇結さん

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赤の妖精王

 

 

「それにしても、困るの」

 

 私の店に集まっていた光谷ちゃんは言った。学校の長期休暇で、この店が彼女たちの溜まり場だった。今は、光谷ちゃんしかいないけど、後から集まってくるだろう。

 

「なにを困っているんだい? 光谷ちゃん」

 

 なんとなく、話しかけてほしそうだったから、私は話しかけた。

 言っておくが、私と光谷ちゃんは仲良しである。光谷ちゃんが幼い頃から、七年くらいの付き合いになる。ほぼ毎日店に来ているし。気分は親戚のお姉さんだ。

 

 私にあたりがキツイって? 友達の前では、恥ずかしがっているだけだよ、あれは。

 たぶん……。きっと……。

 

「最近、スカウトの話が来てるの」

 

「スカウトって、プロチームとか? すごいじゃん」

 

 プロっていうのは、お金もらってファイトをやっている人たちのことだ。スポンサーがたくさんいて、一年に一億とか、二億とかもらえる感じのアレだ。

 

「プロにはならないの。学校に通えなくなるし……」

 

「学校ね」

 

 津雲ちゃんとか、炎野ちゃんとか、光谷ちゃんには友達がいる。毎日練習とか、大会づくしのプロっていうのは、そこまで価値のないものなのかもしれない。

 

「天音は、チーム詳しくないの?」

 

「あはは、私はプロ、首になったクチだからね」

 

 一時期、プロの団体に所属していた時期があった。ただ、対戦相手にトラウマを植え付ける私の戦法のせいで、練習相手の団体の半分以上が脱退。世論の私の戦法への非難もあって、私は首になった。

 

 王とかは、ずっとフリーだったし。なんだかんだで、当時の私たちは逸れものだったかな。

 

「学校を優先したとかなの?」

 

「え? 私、小学校中退だよ?」

 

「なにがあったの!?」

 

 あれは、十数年前のことになる。

 

「いや、ファイトが強くて可愛い私が面白くなくて虐められたってだけ。私の戦い方、当時はいろいろ言われてたからさ」

 

 卑怯者だとか、真面目に戦えだとかね。相手のライフを削って、倒して殴り合いっていうのが、ファイトの醍醐味だろうって感じだ。

 スペルのデストラクション系の行動は、かなり叩かれていた。世間で批判される私を虐めるのは、正義の味方みたいに、そんなふうに思っての行動だったかもしれない。

 

「そんなやつ、ファイトでボコボコにしてやればよかったの」

 

「しょせん、子どもでしょ……学校で私がファイトするの禁止されてたってのもあるけど……。それで、学校とか、まぁ、いいかなって思って、行かなくなったし。ファイトだけできれば良かったし」

 

 前世の知識とかあったし、俺がそう思うのも必然だっただろう。

 

「それで、その後所属したチームを首になったら、世話ないの……」

 

「ごもっともで……」

 

 とはいえ、チームを首になった後も、三天の神器のカード規制まで、私は活躍していたわけだし。

 お金自体はたくさんあるから、別にいいだろう。

 

 あんなに批判された私も、今やほとんどが忘れているし。覚えているのは、コアなファンか私の戦法の被害者くらいか。

 

「私くらいは、見捨てないでやってやるの」

 

「もーっ、このこの」

 

 普段ツンツンなくせに、なかなかに可愛いことを言ってくれる。

 そんなことを言いながら、机に突っ伏して、ぐでーとする光谷ちゃんを撫でてあげる。

 

 そうやって、しばらく過ごしていると、入り口に津雲ちゃんの影が見える。

 

「あ、来たの」

 

「あいて……っ」

 

 撫でていた私の手を、ペシと光谷ちゃんは払いのける。酷い。

 光谷ちゃんは、津雲ちゃんのところへと走っていく。

 

「光谷ちゃん! 炎野ちゃん知らない?」

 

「……こっちには、来てないの。なにかあったの?」

 

「迎えに行ったら、いなくて……入れ違いになったのかなって……。でも、電話も繋がらなくって」

 

「私も、ちょっと探してみるの」

 

 迷子ってわけじゃないだろう。電話は、たまたま電池切れって感じかもしれない。

 でも、ちょっと心配だ。

 

「私も探すよ」

 

 知らない仲でもないしね。近頃、炎野ちゃんはあんまり調子良さそうじゃなかったし。

 

 店をクローズする……。なんか最近、臨時休業多すぎる気がする。

 一応、店長に電話出しておこう。私、この店の店長、みたことないんだよな……。ワンオペだし。

 

 まぁ、店の運営資金は、王のロンダした海外の資産から出てるし、別にいくら休んでもいいか。

 

 

 

 ***

 

 

「力が、欲しいか?」

 

「なんだ、お前……?」

 

 気がついたら、裏路地にいた。

 津雲ちゃんに続いて、光谷ちゃんが、代表選まで勝ち抜いてしまった。自分ばかりが力足らずで、大して勝つこともできなかった。悔しかった。

 

 心ここに在らずで、いつもと違った場所に来てしまった。

 

「くくく……、貴様には、この構築済みデッキをやろう」

 

「構築済み……デッキ……!?」

 

「そう、世界を混沌に陥らせたこの構築済みデッキだ。クク……この構築済みデッキのカードは強いぞ?」

 

「……っ!? カードが……強い?」

 

 カードが、足りなかった。決して貧困というわけではなかった。だが、この世界、カードを集めるのには資金力が必要になる。競技の場に立てるスタートラインにさえ、たどり着いてはいなかった。

 

 そうだ。強いカードだ。強いカードさえあれば自分も……そんな感情に支配される。

 

「このデッキはくれてやる。だが、それには条件がある」

 

「条件?」

 

「真のファイトで、闇結天音を殺せ!」

 

 

 

 ***

 

 

 

「あ、良かった! 炎野ちゃん!」

 

 私は、路地裏で立ち尽くす炎野ちゃんを見つける。

 

「闇結……さん?」

 

「え? どうしたの?」

 

 炎野ちゃんは、虚な目でこっちを見つめる。ちょっと、アレだ。正気な感じじゃない。

 

「真のファイトを……」

 

「きゃ……っ!?」

 

 ふと、体に衝撃が走った。

 気がついたら、私は道路の上に転がっていた。何かが、私の上に乗っかって、ちょっと重い。

 

「危なかったの……」

 

 重い、と思ったのは、光谷ちゃんだった。重いなんて思ってごめんよ……。

 

「炎野ちゃん! どうしたの!?」

 

 そうして、炎野ちゃんの前に立つのは、津雲ちゃんだった。二人を包む空間が、私たちを隔てている。そうだこれは、真のファイトのフィールドだった。

 

「俺だって、カードさえ強ければ、みんなと戦えるんだ!!」

 

「……っ!!」

 

「俺はこの禁じられし構築済みデッキで、全てを壊す!!」

 

「構築済みデッキ……?」

 

 私は、構築済みデッキで、脳内検索をかける。禁じられし構築済みデッキ……なんて触れ込みのデッキ、あったっけなぁ。

 そんなキャッチコピーの構築済みデッキ、やっぱりない……。

 

「津雲ちゃん! ファイトで俺は、勝ってみせる!」

 

「本気……なんだね?」

 

 悲しげに、津雲ちゃんは言った。これから始まるのは、どちらかの死ぬまで止められない真のファイトである。

 

「危なかったの……津雲ちゃんが代わりに受けてくれなきゃ、闇結さんが殺されてたの……」

 

「えぇ……」

 

 二人は、私のこと、庇ってくれてたってことだろうか。

 でも、ライブラリアウトが得意なのは私だし、止めるなら、私が適任だとは思う。まぁ、炎野ちゃんのデッキが速攻だったら、やられちゃうかもだけど。

 

「いいよ! 相手してあげる!」

 

「いくぞ!!」

 

 そして、二人のファイトが始まった。

 友達同士の殺し合いだ。まぁ、炎野ちゃんは津雲ちゃんより圧倒的に弱いし、どんな構築済みデッキかは知らないけど、津雲ちゃんがデッキ切れで勝つだろう。

 

 安心して、私は座って見ることができる。

 

「ドロー! ジェムをセットし、土地を置いてターンエンド」

 

「ん?」

 

 炎野ちゃんの置いたマナに注目する。

 あれは、『火炎の妖精ピロステギア』だ。ジェムの追加を得意とする赤の四コストのモンスターだった。

 

「私のターン。ドロー、ジェムと土地でエンド」

 

「俺のターンだ! 二コスト!! 『終わりの妖精イトギス』を召喚!!」

 

 そのモンスターを俺は知っている。王のモンスターで、俺の『抑制の翼』のメタカードとして、大きく活躍してきたカードだ。

 このカードが場に出されると、俺はトラウマから心拍数が二百くらいに上がって、震えが止まらなくなる。早く……早く、潰さないと……。

 

「というか……あいつって、え? 構築済みデッキに入ってたっけ?」

 

「……あのデッキ……まさか幻の……!?」

 

「え……? 知っているの、光谷ちゃん!」

 

「『エターナルデッキVol.1――赤の妖精王』なの。王妖花のチャンピオンシップ五連覇を祝して発売されたこのデッキには、あの『赤の妖精王ジェムニ』が入っていたの」

 

「『ジェムニ』……?」

 

 いや、『ジェムニ』って、クロニクルの方じゃなかったっけな……と、一瞬思った。もしかしたら、私の覚え間違いかもしれない。そんなデッキ、知らないし……。

 それに、『イトギス』はクロニクルのパックに……いなくてホッとした思い出がある。だから、このデッキ、知らない。

 でも、『ジェムニ』が発売してたのは知っている……だからクロニクル……あれ?

 

「王妖花のあまりの人気に、予約は当然、サーバーダウン。店頭には並んだ瞬間、即完売。あまりの手に入らなさに、海外では、暴徒と化した一般市民が、デッキ【赤の妖精王】を求めて、店や、輸送車を襲撃し……さらにハッカーはエクスアーム社の注文をハッキングして手に入れようとサイバー戦争ファイトが勃発したの」

 

「なにそれ、怖い」

 

 この世界、ハッキングするにもファイトが必要なのだ。セキュリティウォールのデジタルファイターを倒さないといけない。

 

「この血の七日間は、『赤の妖精王ジェムニ』が闇のカード指定を受けることで収束したの。さらには、さらなる混乱が予想されていたため、発売予定だった構築済みデッキ【青の妖精王】、【緑の妖精王】は当然発売中止。同時に、『ハンドラ』、『マナリカ』も闇のカードになったの」

 

 そんなもん発売するなよ……。

 

 でも、そうか……思い出した。

 その時期は、ちょうど、俺たちのカードが揃って規制された時期だった。闇のカード指定には、五年のスパンを設けているから、みんな一斉に闇のカード指定を受けたわけだ。

 

 そこから、俺のところにボスが泣きながらやってきて、悪の組織を結成した。

 いろいろ忙しかったから、そのあたりのデッキを知らなくてもおかしくないか……。

 その後に、『ジェムニ』回収の話を聞いて、クロニクルと勘違いしたのだろう。

 

「だから、あのデッキは、エクスアーム社が自主回収した幻のデッキなの!! その筋に売れば、三億はくだらないの!!」

 

「光谷ちゃん。いつか、一緒に働かない?」

 

「店が大きくなったら、考えてやっていいの」

 

 今の、私のワンオペで回るような店じゃ、店員の増強も望めないか……。

 

「それで、デッキの【赤の妖精王】を、今、どういうわけか、炎野ちゃんが使ってるってわけだね」

 

 王のデッキを思い出す。四十枚のリストを私は知ってるけど、まともに使って回るもんじゃない。

 多色なしの三色デッキで、色の配分は完全に均等。プロキシで回してみたことがあるけど、初手に色で事故る確率に、進化じゃないモンスターがこなくて事故る確率がありすぎて、使えなかった。

 

 あんなデッキにできるのは、じゃじゃ馬な妖精王たちを手なづけている王だからこそだろう。

 果たして、赤単の妖精デッキはどんなものか。

 

「二コスト、『ディープ・ソルジャー』!」

 

 ディープ・ソルジャーを出すいつもの動きだ。

 三ターン目、ターンは、炎野ちゃんに渡った。

 

「進化。三コスト、『赤の妖精王ジェムニ』!! 召喚」

 

 ――は?

 

「そうだ! この構築済みデッキさえあれば、私のことを見下していた連中も、見返せるんだ!」

 

「バカなの……」

 

 せっかくの『イトギス』を進化させての『ジェムニ』の召喚だった。意味がわからない。

 そもそも、なんでこのタイミングに、『ジェムニ』を出したのか。私にはわからなかった。

 

「ジェムニの能力を発動する。ジェム、墓地、手札から、妖精のカードを好きな数、山札の下へ。そして、山札の下へ送った数だけ、好きなモンスターにジェムを追加! 『ジェムニ』に、五枚のジェムをセット!」

 

「……? ……?」

 

 津雲ちゃんは、頭にハテナを浮かべていた。炎野ちゃんは、手札を全てデッキの下に送って、『ジェムニ』に五点を付けたからだ。

 

「さらに、この能力でジェムを付けられたモンスターは、アタックできる。『ジェムニ』でアタック!!」

 

「えっと……『荒れ狂う海』。『ジェムニ』を手札に戻して……」

 

「く……ぅ。ただ、手札に戻されただけなら、何度でも……っ!」

 

「三コスト、『チャージ・ウェイブ』」

 

「あ……っ」

 

 唱えられた『チャージ・ウェイブ』により、手札は捨てられた。落ちた手札は、『ジェムニ』だった。

 

「あと、『ディープ・ソルジャー』の能力を使います」

 

「酷い……手札から捨てるなんて……」

 

「えっと……ごめん……」

 

 どんなに強い札も、使えなければ意味がない。相手の手札にある強力なモンスターや、スペルを一枚のカードとして処理するハンデスは、だからこそ強い。

 泣きそうになる炎野ちゃんの気持ちもわかる。

 

 にしてもやっぱり、『ジェムニ』の隣には『ハンドラ』がいないと今ひとつ攻め手にかけるかな。逆に、この二枚のシナジーはやばすぎると思うけど……もう一体の、『マナリカ』は『マナリカ』で意味わかんないし。

 

 とはいえ、『ジェムニ』単体でも、横に盤面が並んでいれば、相手の誘発が切れるまで、飽和攻撃ができて、強い。

 召喚したモンスターはそのターンにアタックできないが、ジェムニはそれを打ち消すため、バウンスとかほとんど意味ないわけだし。

 まぁ、ハンデスで落とされたらしかたないか……。

 

「こっちのターン。マナとジェムを置いて、四コスト……!」

 

「……?」

 

 なんで、今、炎野ちゃん、ターンの初めにジェム置いたんだろう。もう、ジェム、五枚あったし、赤デッキならここからはジェムは増えていくだけだ。

 いつもの速攻なら、ジェム管理できてるんだけど、動揺しすぎだろう。

 

「『火炎の妖精ピロステギア』を召喚! ジェムを外すことで、山札の一番上をジェムとして置く」

 

 さらに、炎野ちゃんは、ジェムを増やした。もう私には、炎野ちゃんが何をやりたいかわからない。たぶん、炎野ちゃんもわかってないだろう。

 

「えっと、一コストで『ディープ・ソルジャー』を召喚。余った三コストで、『ダブルチャージ』。カードを二枚引きます。二体の『ディープ・ソルジャー』の能力を発動」

 

 対して、津雲ちゃんは堅調だった。次のターンには、もう出るだろう。

 

「こっちの番だ! ドロー! っ……来た! 二枚目! 『赤の妖精王ジェムニ』を召喚!!」

 

 二枚目っ。

 ちょっと、この二枚目は厳しいかもしれない。能力が発動する。ジェムの数は……九点か……いや、やっぱり全然厳しくない。最悪、通しても、大丈夫だろうし。

 

「これは……」

 

「『ジェムニ』でアタック!」

 

「うーん。ちょっと、通したくないかな? 誘発、相手のアタック時に、自分の青の手札を捨てて『リバース・ウェイブ』」

 

 もう一枚の『リバース・ウェイブ』が手札から捨てられての発動だった。

 

「あ……」

 

「相手のモンスターを手札に戻します。さらに、その後、相手の手札を一枚捨てます」

 

 炎野ちゃんの『ジェムニ』が戻される。そして、また手札から墓地に捨てられた。

 

「二分の一……ぃ」

 

 そういうこともある。なんというか、ドンマイ。

 

「じゃあ、二軽減して、七コスト、『ラピスラズリ・クイーンドラゴン』を召喚します。ジェムをデッキボトムに、能力を発動。墓地から、青の誘発のついたカードを手札に戻します」

 

「…………」

 

 炎野ちゃんは、カードを取り落とした。その顔には、詰んだと書いてあった。

 まぁ、そういう時ってあるよね。

 

 そこから、津雲ちゃんの遅延ファイトで、デッキアウトまで、ズルズルだ。

 さて、私はやることがある。

 

 

 ***

 

 

「そんなところで、高みの見物……?」

 

 教えてくれたのはラキエルだった。ファイトに夢中になっている隙をついて、俺は回り込んで、この状況の首謀者と会うことに成功した。

 

「お、お前は……っ!? 闇結天音!!」

 

 なんというか、炎野ちゃんが初めて襲いかかったのは私だった。本来のターゲットは私だったのだろうか。

 

「どうして、私を狙ったのかな?」

 

「俺は……貴様に負けたせいで……全てを奪われた……!」

 

「全て……?」

 

 ちょっと、鎌をかけてみたつもりだったけど、あたりみたいだ。

 

「お前とのファイトの恐怖で、俺はカードが握れなくなった。プロとしての立場を失い、結婚を約束した彼女には捨てられ、親にすら見限られた! 面接ファイトもできないせいで再就職すらままならない!!」

 

 この世界、企業も面接の際にファイトをする。世の就活生は、就活情報サイトで、面接官のデッキ傾向を知り、メタデッキを組むのが常だった。

 

「それで、なんで彼女にあのデッキを……?」

 

「王妖花のデッキならば、お前を倒せる! だからだ……! お前を殺す復讐だ! ふ、唆すのも簡単だったよ」

 

「自分の手でやればいいじゃん」

 

「カードが握れないと言ったはずだ」

 

「あ、ごめん」

 

 なんというか、前世だったら、馬鹿みたいな理由に思えるだろう。でも、本人は至って真面目だし、この世界では、カードを握れないとか深刻な問題だった。

 私がいろいろ言われたのも、私と戦って、心が折れ、ファイトができなくなる人がいたせいだ。魂の殺人だとか言われて、人権団体とかから抗議がきてたし。

 

「ま、でも……真のファイト、やったことないでしょ?」

 

「それがどうした?」

 

「構築済みデッキじゃ、殺せないよ?」

 

「は……?」

 

 意外と、みんな誤解してる。俺も、最初は誤解してた。

 

「いや、エクスアーム社のカードは真のカードじゃないからね。デッキの中に真のカードが一枚も存在しない場合、真のファイトは成立しないから、見かけだけだよ、あれは……」

 

 殺すとか、物騒なこと言われたから、一枚くらい真のカードが混じってるかと思ったけど、そんな感じじゃなかった。

 本当に真のファイトを成立させたいなら、ファイトを挑んだ側が真のカードを戦うデッキに入れてないといけない。真のファイトのフィールド自体は、ファイトに使うデッキに入っていなくても、真のカードを持っていれば、そのカードから発生するものだった。

 

 真のカード自体は、この世界、気付かずに持っている場合もよくあって、真のファイトは暴発するんだけどね。バトルボードを使いましょうってことだ。

 

「そんな、バカな……!」

 

「炎野ちゃんが、唆されたように見えたのは、お前を引き止めるためかな」

 

「……っ!?」

 

 私を殺せるまで、こいつは見守ってるだろうし。

 

 それに殺せとか、命令してくるやつに逆らったら、なにされるかわかんないし、一旦、言うことを聞いておくというのもありだろう。

 それは炎野ちゃんの適当なプレイからもわかった。

 

 そうしているうちに、駆けつける人影があった。

 

「真のファイト強要罪で、お前を逮捕する!」

 

 街の交番のお兄さんが、駆けつけてきていた。彼は私のお店によくくるお兄さんだった。

 

「姑息な……ぁ!」

 

「確保!!」

 

「闇結! 貴様に全てを奪われた第二、第三の刺客が、貴様を殺すだろう」

 

 魔王みたいなこと言われたんだけど。

 まぁ、でも、恨んでる人はいるかなぁ。

 

「ていうか、【赤の妖精王】のデッキ持ってたなら、今売れば、働かなくてもいいくらいの資産にはなったんじゃ?」

 

「…………。お前への復讐が何よりも優先だ」

 

 それは、思いつかなかったって、顔をしていた。頭が悪いというか、いや、復讐が目を曇らせたのかな。

 コバルト・ブルーちゃんに、これが復讐に囚われた人間の末路だと教えてあげたい。自分を客観視できるかもしれないし。

 

 これで、一件落着だろう。

 

 

 

 ***

 

 

 

 戻ってくると、そこには異様な光景があった。

 人がみんな、ボロ雑巾みたいに倒れている。

 

「あぁ、天音か」

 

 そして、その中心に立つのは、王妖花だった。

 

「何してんの?」

 

「いや、ちょっとジェムニが騒がしかったからね。来てみたんだ。カードは導いてくれるからね」

 

 それが偽物のカードでも、カードのモンスターには、使われていることがわかるみたいだ。

 

「い、生きてる……?」

 

 倒れてる人間の中でも、光谷ちゃんたちに駆け寄る。

 

「三ターンキルなの……。悪魔の妖精なの……」

 

 気を失いながらも、うなされていた。無事そうだった。

 

「彼女たちには、四十枚偽物のデッキを使ったから大丈夫さ」

 

「そんなデッキ、持ってたの?」

 

「発売中止でも、試供品は届いたからね。じゃあ、これはもらっていくよ」

 

 真のカードじゃないなら、回りやすさもそこまでじゃないだろうに、よくやる。

 

 にしても、周りに倒れているのは、エクスアーム社の闇のカード回収班だろう。簡単な仕事のはずだったのに、こんな化け物と会うとか、ご愁傷様だ。

 

「『イトギス』、あと『妖精術・赤』くらいは置いて行って」

 

 闇のカードは『ジェムニ』だけだから、他のカードは炎野ちゃんにあげても大丈夫のはずだ。

 

「じゃあ、『ジェムニ』以外はあげよう。それと、天音。この後、遊んでかない?」

 

「お前は、帰れ」

 

 なんで、不用意に出歩くかなぁ。この指名手配犯。





 この話、ちょっとふざけすぎたので、後で整合性が取れなくなる気がします。そうならないように頑張りたいです。

 前回のアンケートでは、二十パーセントがもうちょっと詳しいルールが欲しかった感じで、無視できない数字だと感じたため、なにか考えておきます。

 おまけは、一回目のアンケートでは、あまり票数はありませんでしたが、二回目のアンケートで大躍進を遂げたこのカードです。


おまけ
【最強闇のカード決定戦:『浄界の輪』】


「『エナジープラス』!」

「『浄界の輪』を唱えます。土地から、カードを一枚墓地に送りますね」

「……減った……? え?」

「『荒野』を唱えます」

「土地が……っ、なくなった……?」


 ***



「はいはーい。緑だよ。では、今日も、最強闇のカード決定戦やっていくよー!」

「今回紹介するカードはこちら! 三天の神器、マナ担当、『浄界の輪』です! 緑の誘発スペルで、このカード、やばいです」

「コスト七のスペルですが、誘発なので、当然関係ありません」

「相手が土地にあるカードの数と、同じコストのカードをプレイした時が条件ですね。発動したら最後、相手のマナを一枚破壊し、マナを全て使用不可能にしてきます。意味がわかりません」

「では、実際にこのカード。使われた方はどうなるか」

「頭が、おかしくなります。私はなりました」

「当時、幼かった私は地元で負け知らず、自信満々に全国大会に乗り込みました。そこで初戦に当たったのが闇結氏」

「意気揚々と、『エナジープラス』を唱えた瞬間、『浄界の輪』が発動。増えるどころか減ったマナ。何が起こったのか、正直、わからなかったことを覚えています」

「この『浄界の輪』、もし、発動した場合、そのターン動けないばかりか、マナが減って、実質、一ターンがなかったことになるんですよね」

「そして、『浄界の輪』を警戒して動いた場合、デッキ構築時に用意したプランが、一ターン遅れることになります」

「そんな効果の『浄界の輪』は、使っても使われなくても、実質的なエクストラターンを持ったカードと言えるでしょう」

「このカードへの対策は、引けてないことを祈って、全力で動く。あるいは一ターン遅れても全てを壊せる強力なデッキを使うかでしょう。あればいいですね、そんなデッキ」

「では次回、最強闇のカード決定戦、最悪のスペル封じ、『反転の矢』について解説していきたいと思います」



補足1
 このゲーム、モンスターのスタッツを簡略化してて(スタッツまで考えるとコスト論とか、モンスターのダメージ計算とかで作者の頭がおかしくなるから)、モンスターを殴るとか、ブロックといったバトルするような行動がない……そのため防御札はスペルの誘発がメジャーですね。
 だから、軽量スペル封殺系のモンスターはヤバかったり……。
 今はそんな感じで考えてますが、都合によって、都度変わる可能性があります。しれっとモンスターがブロックを始めるかも。
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