カードゲームの悪の組織で幹部をやってます。闇のカード(禁止カード)が強いです 作:カードショップの闇結さん
「何が起こったのかわからなかったの……」
私たちは、警察の事情聴取を受けた後、普通に家路についた。そして、また別の日、集まっていたわけだ。
「強かった……。あれが、『妖精王』……」
ふらっと現れた理不尽デッキにふらっと轢き殺されたのが彼女たちだ。
「反則の闇のカードのことを考えても仕方ないの。今は目の前のことなの」
そう言いながらも悔しそうにデッキの調整をしている光谷ちゃんだ。まぁ、あんなののメタデッキなんて考えてたら、普通に構築歪んじゃうし、代表選の前にやることではない。
「闇結さんは、アレに勝ったことがあるって……」
「ん? あぁ、一回ね。BO3でマッチ自体は取られちゃったけど」
真のファイト無敗、公式戦無敗だったの王の唯一の負け試合。闇結天音の最後の公式戦でもあった。
悔しすぎて、一ヶ月くらい部屋に引き篭もったのを覚えている。あのまま優勝できてれば……って、あれは私の人生を全て賭けた戦いだった。
「バケモノカード同士だったの。考えるだけ無駄なの」
闇のカードVS闇のカードだ。カードパワーでいえば、今開かれている大会が素朴に見えるほどのものだろう。
参考にはならない話だ。
「あ、それで……これなんだけど……。ミセス・ブラックが渡せって」
黒のマスターが置いていったチラシだった。
私、あの人、苦手。
「ん? 代表選前強化合宿?」
代表選に出る選手の交流が主だった。代表選直前に一週間ほどの合宿って感じだ。
「義務じゃないの。敵に情報を晒す必要はないの」
「でも、代表に選ばれたら、みんな仲間でしょ。二対二の特殊ルールとかあるし。私は行っておきたいかな」
国ごとの代表を選定して、国ごとに戦う、というのが今回の大会だ。
アマチュアからの勝ち上がりの二人は、こういうのでプロと交流してみてもいいかなって、思う。
そして、私は手元を見る。そこには、一枚のカードがあった。
――特殊招待枠『闇結天音』。
国の威信を賭けた大会でもある。このときばかりは、なりふりをかまわない。この大会が開かれるとき、いつも送られてきた。誘うだけタダと思われているのか。
こういうのは、昔の大会で活躍した人間に送られてくる……犯罪者は別だけど。いや、まぁ、国によっては大会で活躍したら、犯罪者に恩赦を与えるとかもあるか。ともかく、都合の良い話ではあるが、この大会の時ばかりは、私はヒーローだったと思う。
***
というわけで、合宿である。
私たちは、用意されたマイクロバスに乗っていた。
「闇結さんに、炎野ちゃんも……よくオッケーしてくれたよね」
「俺はマネージャーだぞ! 全力でサポートする!」
「あははは」
四人一緒にの移動だった。ちょっと頼んでみたんだけど、マネージャーって形なら、一緒に連れていっていいって許可をもらえた。
言ってみるものだ。
どうして、俺が参加できるのか……それは内緒にしておくことにした。きっと、びっくりするはずだ。
ふと、乗っていたマイクロバスが道を外れて止まる。そして、バスのドアが開いた。
「目的地?」
「まだ早いの。どこなの」
休憩所とか、そんなところでもなかった。ただ、一人、ドアの横に止まる人間がいた。
仮面をつけて、スーツ姿の怪しい人間がいた。
「お嬢さん方、相乗りをさせていただきたいんだが」
男とも、女ともつかない声で、仮面の人物はそう言った。
「怪しいやつ! お断りなの!!」
光谷ちゃんが、ドアを無理やりに閉めようとする。それを仮面の人物は、手で押さえ、身体を捩じ込み、車の中に入ってくる。
「自己紹介が遅れてすまない。私はマスター・オブ・ブルーだ。もっとも、この怪しい風体で信じろと言うのは無理があるが……」
「は……?」
車に入った謎の仮面は、マスターと名乗った。女の子三人は、仮面から避けて、バスの隅に固まっている。
仮面は、バスの運転手の方へと少し歩く。
「すまないな。急に連絡を入れて」
「いえ、ぜんぜん」
「くれぐれも、安全運転で頼む」
「まかせてくださいよ」
運転手には、話が通っているようだった。
それだけに混乱をする。この仮面を信じていいかどうかだ。
というか、そう。ブルーって、あれだ。コバルトちゃんの復讐の相手だ。どっちにしろ、ヤバいやつじゃん。
「闇結天音だな?」
「は? そうだけど」
他のだれでもなく、私に声をかける。
「少し確かめたいことがあった。ファイトをしようか」
「いいけど」
もし、これが本当に青のマスターってやつなら、前哨戦ということになるかな。
真のファイトじゃないから死ぬこともないし、ちょっとやってみようか。
このマイクロバスには、当然のようにバトルボードがあった。互いにデッキをセットする。
「私が先攻か」
粛々とドローをして、マナとジェムをセットする。
私も同じく……一ターン目に動きはない。
「本当に、マスター・オブ・ブルー?」
「別に信じなくてもかまわない。二コスト、『チャージアウト』」
二枚引いて、一枚捨てる。青のドロースペル。デッキ圧縮…… そのカードにより、手札の質は高められる。あるいは墓地肥やしが目的だろうか。
「じゃあ、私は二コストで、『青の信徒エリー』を召喚。ジェムを一枚手札に戻して能力を発動。次の相手のターン、最初のドロー以外で相手がカードを引いた時、相手の手札を見て、カードを一枚捨てる」
「……!?」
仮面は、こちらを二度見した。その気持ちはよくわかる。
このカードはメタカードだ。特定の相手に対してのみ効果を発揮する……こんなカードを多くデッキに入れていては、特定の相手以外には構築が歪んでまともに戦えない。
だから、そう。このデッキは、対青のマスターを想定したデッキってことだ。
「ターンエンド」
俺はドヤ顔で、ターンの終わりを宣言する。きっと、勝ったに違いない。
「手札……というのは軽視されがちだ。わかりやすく打点を増やすジェムの追加。コストの高いカードを早期に使用できるマナの加速。それに比べて、地味……ということは否めないが」
「…………」
「カード一枚は一枚……。それがわかっているからこそ、お前は強い。だが、三コスト『スペル・タクティクス』」
「……っ!?」
山札の中を見て、スペルを一枚手札に加えるスペルだった。これは、ドローじゃない。だから、『青の信徒エリー』の効果も発動しない。
「私は、『クアトロ・アクア』を手札に加える。ターンエンド」
それは、青らしく手札を増やすカードだった。問題は、その手札の増やし方だ。
「三コスト。『エナジー・チャージ』! 山札を二枚見て、一枚を手札に、一枚を土地に置く。『青の信徒エリー』の能力も発動」
そうして、次のターンに五コストにたどり着く。
ちょっと遅かったかもしれない。
「なら、こちらは四コスト。『クアトロ・アクア』により、山札を四枚見せる。その中にある青のカードを好きなだけ手札に加える」
手札に加える……ドローではない。『エリー』ちゃん。肝心なときに役に立たない子だ。
それにしても、あのカード。一枚で四枚手札を増やす。かなり驚異的なカードだ。
五コスト……どうする?
ピーピングハンデス……相手の手札を覗いて捨てる……それがあれば私は間違いなく使っていたが、『エリー』の能力以外で、そんなカードはない。
「五コスト、『波浪と荒野の災禍』!」
とりあえず、マナを奪う。ハンデスは焼石に水だが、十枚に到達されると、何をされるかわからない以上、やっておいた方がいい。
「なかなかだ。だが……スペル『流るる蓮』。青以外のカードが土地にないとき、このカードはコストを支払わずに使用できる」
「……!?」
「さらに、青のカードを好きなだけ、手札から捨てる。そうした場合、次に使用する青のカードのコストを捨てた手札につき、一少なくする」
「そんな……っ!?」
手札のアドバンテージがそのまま、土地のアドバンテージに変わるようなカードだった。
「十コスト、『渦潮の魔カリュブディス』を召喚」
「緑のないところで、これほどの高コストを……さすが、青のマスター……!?」
「ジェムを墓地に、能力を発動。墓地にある青のカードを、全て手札に戻す」
「…………」
まずい。当然ながら、さっき使った『流るる蓮』も手札に戻った。この次に来るカードは、だいたい想像がつく。
「ドローは軽視をする人間は多い。だが、自らの手札を捨てられたとき、卑怯だなんだと喚くその姿。私は滑稽だと思うのだが……」
「三コスト、『ソウル・チャージ』。三コスト、『青の使徒エリエル』。『エリエル』の能力で、次の自分のターンの初めまで、自分が手札からカードを捨てられたとき、墓地から好きなだけカードを手札に戻す」
ジェムの追加と、手札補充を同時に行うカードに、ハンデスへのメタカードを設置する。
正直に言って、焼石に水だ。本来行うべき解答は、モンスターを除去し、同時に手札を全て捨てさせることだ。
だが、どちらも無理だった。あとは、祈るほかない。
「堅実な判断だ。だが、時に人生は、なにをしようがどうしようもなならないこともある」
「……っ!?」
手札から、仮面は白のカードを一枚、土地のエリアにおいた。青単色だと思っていた。少なくとも、これなら、『流るる蓮』は無条件の踏み倒しではなくなるはずだ。
「四コスト、『流るる蓮』を正規のコストを払って唱える。そして、青のカードを六枚捨てよう。」
「…………」
「八コスト、白青。スペル『廻天』。私は、このターンの後、もう一度、私のターンを行う」
「……なっ!?」
エクストラターン!?
この世界で、エクストラターンは初めて見る。だが、これは……。
「そして、『渦潮の魔カリュブディス』の効果で、全ての青のカードを手札に戻す」
スペルの『廻天』には、青も含まれているため、回収対象。
「これって……」
「ここから、私は毎ターン、無限にエクストラターンを行う」
***
「よしよし、元気出すの」
「まーけーたー」
毎ターンエクストラターンとか、インチキすぎるでしょ。
仮面のあいつは、確かめることは終わったとか言って、車から飛び降りていった。
どうせ真のファイターだろうから、怪我はないはずだ。ファイト以外で死なないし。
「それにしても、あんな闇結さん、初めて見る」
「いつもなら、土地、石、手札の破壊ばっかりなのに、今回は、メタカードがん積み。ちょっと、怖かった」
今回の反省点は……相手に好き放題動かれたこと。想像以上にメタカードが刺さらなかったことだ。
相手はカードパワーの化け物みたいなデッキだった。王と戦ったときの恐ろしさを思い出す。
まぁ、でも……あれなら勝てるか。
【最強闇のカード決定戦:『三天の使徒ラキエル』】
「はーい、緑だよ。今日も『最強闇のカード決定戦』、やっていきましょう」
「今回紹介するカードはこちら。三天の神器、その親玉! 『三天の使徒ラキエル』です!」
「能力は、こちら! 相手の、ハンド、ジェム、マナを一枚ずつ墓地に送るというシンプルながらも強力な効果です」
「このカード、八コストですが、コスト論を考えましょう、ハンデスで1.5、ランデスで3.5、ボーデスで3.5、モンスターで2……合計で、10.5のコストです。ただ、三色であること、さらに6コスト以上の大型であることを加味すれば、適正なコストとも言えなくはないです」
「おっと、さらに下に何か書いてありますね」
「このモンスターを召喚する時、墓地から『抑制の翼』、『反転の矢』、『浄界の輪』を一枚ずつ手札に戻してもよい。そうした場合、このモンスターを6コストとして召喚する」
「手札に戻すのは、二体目がさらに早期召喚されるのを防ぐためでしょうか? 素晴らしい調整ですね。いや、デッキに戻せよ」
「このモンスター。『災禍』スペルから繋がる六コストのモンスターとして、闇結氏のデッキで、大活躍をしました」
「一ターンに引けるカードは二枚。一ターンに、リソースの消費なしに三枚を奪うこのカードが着地したら、どうなるかは目も当てられません」
「スペルを使ったり、モンスターの能力を使用しようとした場合、回収した『三天の神器』が飛んでくるわけですし、このモンスターの六コストでの着地はほぼ詰みでした」
「『三天の神器』のどれかを使われないように動けばいい? では、かつての闇結氏のデッキを見てみましょう」
【三天の神器・ver1.0】
2青 『さざ波』 2
2青 『チャージアウト』 1
2 緑 『エナジープラス』 3
3青 『チャージ・ウェイブ』 2
3青緑 『エナジー・ウェイブ』 3
4 赤『号哭』 2
4 緑 『荒野』 1
5青 赤『号哭と波浪の災禍』 3
5青緑 『波浪と荒野の災禍』 2
5 緑赤『荒野と号哭の災禍』 3
5青 赤『戦鬼海妖イグヌス』 3
7青 『津波』 1
7 赤『抑制の翼』 3
7 緑 『浄界の輪』 3
7青 『反転の矢』 3
7 赤『正義の鉄槌』 1
8青緑赤『三天の使徒ラキエル』 3
9青 『アクアマリン・ジ〜』 1
青24 緑18 赤18
誘発10 多色17
「特筆するべきは『戦鬼海妖イグヌス』ですね。ジェムの墓地送りで、使われない『三天の神器』を墓地へと送る。能力でのデッキ掘りや、打点を形成してクロックを刻む……無駄なく使えてお得なモンスターでした」
「まぁ、ともかく……能動的に墓地に送る手段があるため、『ラキエル』の六コストでの着地は必至でしたね」
「ただ、『三天の使徒ラキエル』は単独では、正直、重く使いがたい。『三天の神器』ありきのカードでした。『三天の神器』が闇のカードになっている今、『三天の使徒ラキエル』が闇のカードになっている理由は果たして……」
「では、次回。安定した四キルを実現した、あのドラゴンを紹介します」