カードゲームの悪の組織で幹部をやってます。闇のカード(禁止カード)が強いです 作:カードショップの闇結さん
「ここが、この国一番のファイト街」
途中、検問みたいなのがあったが、津雲ちゃんがファイトで軽く倒してやってきていた。
そう、この街は、ある程度のファイトの実力がなければ、入ることすらできないのだ。
「カードショップがたくさんある……」
コンビニより、カードショップの数の方が多かった。青専門店とか、緑専門店とかはもちろん、1コスト専門店なんてのもある。
「私たちの田舎とは大違いだね」
お上りさんの気分で、三人はキョロキョロしていた。まぁ、カードを揃えるために、昔は私もたまに来たことはある。
でも、高いんだよな……ここの物価。同じカードでも、私の店の三倍くらいはある。地価とか、店員の質とかかな?
「このビルだね」
スマホを見て、津雲ちゃんは確認をしている。目の前にあるのは、セントラル・ファイトタワーだ。今回の合宿の会場になる。
このビルに寝泊まりして、って感じだ。ファイトの交流会場も、このビルの施設として入っている。ビルの中に入って最初に目についたのは、やっぱりテナントのカードショップだった。
入り口の受付の人から、エレベーターキーをもらって、私たちはエレベーターまで歩いてから、到着を待つ。
ちょっと、長い。足止めだった。
「なんや、お前。闇結やないか」
「……!?」
ふと、後ろから話しかけられる。
「あんま、変わらんな。お前」
「知り合い……じゃないか……。どなた?」
知らない人間だった。知らない人から、話しかけられて、ちょっとびっくりする私だ。
「いや、待てい。何度も戦ったやろ? プロリーグとか、トーナメントでも……」
「…………。ごめん、他にもたくさん戦ったし、印象に残ってないから。そもそも、かなり前だし、あんまり話さなかったでしょ?」
今チャンピオンをやってるあいつならギリ覚えてるけど、それ以外は、みんな同じに見えていた。その頃の私は、そんな感じだ。
「東宮選手なの!」
「しっているの? 光谷ちゃん」
私が知らないってことは、優勝争いにも絡まない選手だ。メジャーな選手は嫌でもテレビや広告で見るわけだしね。
そんなマイナーな選手を知っているなんて。
「リーグ戦での安定した勝ち越し、国内で最多の試合回数を記録した、息の長い選手なの。ただ、各大会の優勝争いに絡んだ回数はゼロ回。体力だけが取り柄とか、よく言われているの」
「おい……」
「ちなみに関東生まれ、関東育ち……。なぜ関西弁かと言えば、かつて魔窟となった関東エリアからおめおめ逃げ出し、関西エリアに移住したからなの。関西かぶれなの」
「やかましいわ!!」
光谷ちゃん……口が悪い。
この子、これからみんなに反感を買わずにやっていけるだろうか。昔の俺みたいにならないか、心配だった。
「この子、根はいい子だからね。虐めないでね」
できる限り、フォローをしよう。それが保護者の役目だろう。
「そんなみみっちいこと、俺はせんからな。つーか、闇結。ガキらの引率か? あの、お前が」
「いや、そうだけど……なんか変?」
「なんつーか、昔のお前って、ばちばちやったやろ? 闇のカードのアレがあって、いのうなったのも不思議なくらいやし。そも、一回目の闇のカード指定のときは、普通にデッキ変えてたわけやろ?」
まぁ、『三天の神器』の闇のカード指定が発表されても、俺は次参加するデッキを考えていたくらいだ。あのまま何もなければ、普通に次の大会も違うデッキで参加していただろう。
「本当に大切なことに気がついたからね」
「大会の優勝以外か?」
「まあね」
いろいろあったけど、今の方が人生に充実感がある。大会を優勝すれば全て手に入る……なんて、思えるような年頃でもない。
「つまらんやつになったな……」
ふと、呟きが聞こえる。
こんな私の心境の変化を、そう捉えるのもおかしくはないか。常にプロとして活躍を続けていた人間にとっては、特にそうかもしれない。
「ファイトするの」
気がつけば、光谷ちゃんが前に出ていた。
理由は私には分からなかった。
「どうせ、交流戦に出るんやろ? その時に嫌でも当たる」
「ファイトするの」
断固として譲らない光谷ちゃんだった。
「まぁ、いいか。相手したる」
***
エレベーターを登り、交流合宿用に借りてあるファイトホールへとやってきていた。先についたプロの選手たちがちらほら見えるなか、空いているバトルボードの一つに立つ。
「先攻なの! ドロー、ジェム、マナをセット」
「なんや、後攻か……俺もセットや」
相手は、関西ブロックで活躍する東宮。安定した強さを持つ選手で、ああは言ったが、決して弱くはない。プロの中では上の方。自分が通用するかは、カードを信じる他にない。
「二ターン目、ドローと、ジェムとマナでエンドなの」
「じゃあ、俺のターンや! 二コスト、『ダスト・ロボ』を召喚。ジェムを外して能力を発動や。山札の上から一枚を捲る。それが、『ダスト』のモンスターだった場合、ジェムとして場に出す。当たりや」
名称に『ダスト』を含むカードを使用したデッキだ。赤を基軸としたビートデッキで、盤面展開に長けている。それは試合を見たことがあるから知っている。
「三コスト! 『光の尖兵』を召喚するの。能力を使用」
これで、次のターンに召喚する光のカードのコストが、二、少なくなる。
「一コスト、『ダスト・シューター』。二コスト、『ダスト・ボート』」
「く……っ」
二枚の盤面展開。かなりの初動だ。さらには、『ダスト・ボート』は青のカード。
「ジェムを手札に返して、『ダスト・ボート』の能力を使用や。山札を一枚めくって、それがダストとつくカードなら、手札に加える。当然あたりや」
「青の手札補充……」
色を跨いだ名称サポートは、珍しい。こっちは『光』のデッキを使うが、白以外に見たことがない。
単色と比べて、できる行動の幅が広く、混色のデッキは強い。
「『ダスト・ロボ』でアタックや」
「通すの」
一点、刻まれる。
誘発札は使わない。ジェムを増やすか、アタックかで、相手はアタックを選んだ。つまりは、そういうことだ。
「ま、こんなもんやな」
こっちを倒す道筋を、相手はすでに考え終えている。
「六コスト、『光騎士クレス』。ジェムを未使用状態に、能力発動なの!」
四枚の土地から、軽減分も合わせて、六コストのモンスターが召喚できた。
ただ、行えるのは手札の補充。三枚とも光だったが、スペルの封殺効果は今の段階では、ほとんど意味がないはずだ。それに、防御札を引き込めなければ、この状況に対しての手札補充はクリティカルな行動とは言えないだろう。
「『ダスト・プリズム』を召喚」
「…………」
三コストのモンスターの召喚だった。深呼吸をして、身構える。これから、なにが起こるかは知っている。
「『ダスト』と名前につくモンスターが四体いるとき、一体選ぶ。『ダスト・シューター』を指定。そのモンスターに山札から一枚ジェムを追加し、そうした場合、このモンスターに進化させる!」
「コスト踏み倒し……」
「『スターダスト・メテオロード』!! 急襲!」
このモンスターは重い。だが、問題はそこじゃない。
「さらに、『ダスト・プリズム』のジェムを焼いて、能力! 『ダスト』のモンスターが他に二体いる場合、次の自分のターンの初めまで、互いに土地エリアにあるカードの数よりコストの大きいカードをプレイする時、代わりに手札を一枚引く」
これにより、『光の尖兵』でのコスト軽減……さらには、誘発の防御札を封じられた形になる。
盤面には、二点の『スターダスト・メテオロード』、一点の『ダスト・ボート』に『ダスト・ロボ』がいる。
「合計四点!」
「通すの」
一ターンに、四点のダメージが入る。
残り、五点。もうすでに半分削られてしまったことになる。
「次のターンで、しまいや!」
「…………」
そうだ。次のターンで負ける。
七コストの『光龍ダイヤモンド・エンドレス・ドラゴン』は召喚できない。ライフが増やせない。防御札である『逆光』も七コスト。次のターンの攻撃は、通すしかない。
「ふぅ……。しかたないの」
一つ、息を整える。
二枚のドロー。ジェムと、土地を置く。土地の数は五枚。それより多いコストのカードをプレイすれば、ドローに変換されてしまう。
「五コスト。『命数秤るアストライヤ』」
なら、そうだ。もう始めるしかない。
***
闇結天音と、光谷弥生の出会いは、五年ほど前に遡る。
光谷弥生は、裕福な家に生まれて、なに不自由なく暮らしてきた。
代々『光』のカードを扱う一族だった。父親は婿養子で、全国カード議会で地方から選出された代表であり、また重役を担う存在であった。その権力により、カードに不自由することすらなかった。
「このカード、弱いの……」
「なにを言っているのかな、そこの女の子」
新しくできたカードショップだった。地方にカードショップというのは、そこそこに珍しい。大抵、出店してもならず者に襲撃されてカードを根こそぎ奪われるのがオチだ。
ただ、このカードショップは期待ができた。
「自分のライフを減らすなんて、弱すぎるの」
「いや、いや、いや。わかってないね。そこの君」
この新しいカードショップの店員。彼女は、あの闇結天音だ。
かつては世界大会の常連。個人では何度も準優勝の経験があり、国別の対抗戦では、この国を優勝に導いた功労者でもあった。
今でこそ、活動はしていないが、美人で強い……大会が好きで、いろいろなアーカイブを掘り返して何度も繰り返し見た光谷弥生にとって、彼女は憧れの存在だった。
「でも、ライフがなくなったら負けるの」
「逆説的にいえば、ライフがゼロにならなきゃ負けないってわけだ」
「……でも、減ったら負けやすくなるの」
たとえば、ライフが一の状態なら、相手の攻撃を一つ通すだけで負けてしまう。
ライフが減るっていうことは、それだけ負けやすくなるということだ。
「そんなに心配する必要はないかな。バーンスペルとか、能力とかって、なんかライフはゼロ以下にはならないって、但し書きがついてるし。最後の一点は、必ずモンスターのアタックを決めなきゃいけない」
「だから、なんなの?」
「たとえば、この『逆光』。相手のモンスターを全て止める防御札だね。このカードなら、相手のモンスターが、一体だろうが、百体だろうが変わらない。確実に一ターン稼げるわけ」
「でも、条件が……」
この『逆光』の条件は、自分のライフが、相手の攻撃するモンスターのジェムの数以下の時だ。正直言って、悪あがきとしか思えない効果だった。
「だからさ、『逆光』を抱えたまま、このカードでライフをリソースに変えるっていうのは強いよ。次のターンに反撃できるし」
「……っ!」
「それにさ、このカード『光の制裁』。このカードってさ、ほら、相性抜群でしょ?」
闇結天音は邪悪な笑みで、私に笑いかけてきた。
そのコンボで実際にファイトをしてみて、あまりの強力さに心奪われる。
ただ、闇結天音は弱かった。近所の子どもにも負けるくらいだ。
それでも、カードショップはならず者の襲撃に遭うことなく続いている。きっと、だから、彼女が自分たちに使うデッキは、たぶんテーマこそ同じだが、サブデッキだ。
本当の闇結天音は、すごく強いんだろうと思う。ただ、それは自分の胸に秘めておくだけでいいことだと、光谷弥生は考えていた。
だって、カードショップでカードの強さについて語る彼女は、大会で戦うときより、すごく楽しそうだった。
***
「『命数秤るアストライヤ』を召喚なの」
「そのカードと、『光の制裁』で、どうにかするつもりなんやろ。でも、無理や無理。計算があわへん。同じタイミングで、誘発は二枚使えんやろ。どうあがいても勝てへん」
そうだ。たとえば、相手がアタックしたとき、自分がそのタイミングで発動する誘発札を二枚抱えていたとする。その場合、二枚使うことはできず、一枚選んでの発動になる。
「まず、『光騎士クレス』の能力。山札の上から、三枚を見るの」
なんとか、『光の制裁』を拾うことができる。ひとまずは安心。だけど、ここからだ。
「だから、無駄やって」
「『命数秤るアストライヤ』の能力。ジェムをデッキの一番下に送ることにより、発動。自分はライフを一つ、失う。その後、次の三つのうちから一つ選ぶ」
カードを二枚引く。
山札の上から一枚、土地エリアへと置く(未使用のマナを使用し、誘発とあるスペルを一つ唱えてもよい)。
山札の上から一枚、ジェムをモンスターにセットする(モンスターがいない場合は、バトルエリアに置く。こうしてジェムをセットされたモンスターはもう一度能力を使用できる)。
この三つだった。
「これを残りのライフが一になるまで繰り返すの。まず、土地を増やすの」
だから『アストレイア』の能力を使用すれば、残りのライフは必ず一になる。それが、このカードのリスクだが、どうせ次のターンに負けるのなら、関係はない。
「まぁ、土地を増やすか……そうやろうな」
これで、土地が六枚になる。コスト六の『光の制裁』が解禁される。
「さらに、もう一度……ライフ減少に、『光の制裁』を誘発させるの。次は、二枚ドローを選ぶの」
「ん……?」
いま、『光の制裁』で二点のダメージが入り、相手は首を傾げた。
「もう一度……ライフ減少に、『光の制裁』を誘発させるの。次も、二枚ドローを選ぶの」
この『光の制裁』の誘発はそう……自分のライフの減少時。さらには、
「……っ!? クソガキが……!!」
気がついたのだろう。三点のダメージが入った。
この『命数秤るアストライヤ』は、一度にライフを減らさない。一度のライフ減少に、二つの『光の制裁』を発動させることは誘発のルール上不可能だが、一つずつ減らしていくこのカードの場合、一つライフが減るたびに『光の制裁』を誘発させていくことが可能だ。
そう……だから、問題はここで引けるかどうか。
「二枚ドロー!!」
「……っ!」
「ライフ減少に、『光の制裁』を誘発!! さらに、山札から一枚を土地エリアに!」
ついでに、『逆光』が使用可能な土地枚数へと加速を終える。これでケアは万全だった。
四点のダメージが相手へと入る。
二、三、四とダメージが入っていき、相手のライフは残り一点。『光騎士クレス』の能力で、スペルは完全に封殺されている。
「『光の尖兵』でアタックなの!」
***
「さすが、闇結の弟子やな。えげっついコンボ使うわ」
「勝ちなの」
「流石にあのカードは強すぎやわ……」
「勝ちなの」
光谷ちゃんがよくわかんない選手をボコボコにした。やっぱ、『命数秤るアストレイア』は強いな。私がおすすめしたカードなだけある。
「というか、光谷ちゃん。なんで急に? そんなにファイトしたかったの?」
「……天音はバカなの」
「私、バカ……!? え……」
よくわからないままに光谷ちゃんが戦って、よくわからないままにボコボコにした。私からはそう見えただけだった。
「まぁ、俺が悪かったわ。あの闇結が、こんなふうに慕われてるなんてな……」
「別に慕ってないの」
光谷ちゃんは言った。正直、なんの話かはわからないけど、光谷ちゃんはツンデレだから、まぁ、思ったことをそのまま言わないんだろう。
「代表選では、こうはいかんからな?」
「かかってくるの」
プロ相手にシュシュっとシャドウボクシングをして威張っている光谷ちゃんは、ちょっと可愛かった。
最強闇のカード決定戦はお休みです。
この作品が青評価になる悪夢を見てしまった……。高評価があると嬉しいです。
補足2
モンスターはジェムを、アタックフェイズ中に指定されたゾーンへ外すことで能力を使用できます。
山札の下、墓地、手札、土地に送る、または場に外すだけ……というパターンがあります。ジェムを各ゾーンに送るの、何かキーワードにまとめたいです。
それと、今はアタックフェイズ中ですが、アタックフェイズとメインフェイズの間に、モンスターの能力使用のフェイズを入れるように書き換えるかもしれません。
次話で、実験的にジェムの移動をキーワード化しているので注意です。