カードゲームの悪の組織で幹部をやってます。闇のカード(禁止カード)が強いです   作:カードショップの闇結さん

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解説の闇結さん

 

「いやぁ、間に合ってよかった」

 

「道草食い過ぎ……。私まで遅れるところだった」

 

 私は、選抜の本戦の会場に向かうところだった。その道中、男女の二人組に、出くわす。

 

「あ、闇結」

 

「なんか、久しぶりだけど、二人とも。ていうか、珍しい組み合わせだけど……知り合い?」

 

 緑川ちゃんと、チャンピオンの男だった。

 正直、二人の接点がわからない。というか緑川ちゃん……黒のマスターも緑川ちゃんのことを知っているような感じだったし、謎の女である。

 

「ちょっと世界を飛び回っててね。最後の便が一緒だったんだ」

 

「ん、そんなとこ……」

 

 なんというか、この時期に世界を飛び回ってるっていうのもなんか匂う。

 普通ならこのチャンピオンは、交流合宿に参加していたはずだったんだけど、なんかあったんだろう。

 

「じゃあ、私は先に……」

 

 緑川ちゃんに裾を掴まれる。

 

「一緒に行こ?」

 

 

 ***

 

 

 

「実況の緑川ツバサと」

 

「解説の闇結天音です」

 

 お仕事だった。

 私は、『月の化身ツクヨミ』のコスプレをしている。緑川ちゃんは『陽の化身アマテラス』のコスプレをしていた。どちらもレプリカが博物館に置いてあるくらい、この国の成り立ちに関係があるカードである。

 

 主役は選手だけど、大丈夫かな……と思えるくらいの格好で、私たちは解説席と実況席に座っていた。

 具体的には、着物改造したドレスみたいな感じだ。派手派手である。衣装スタッフは大丈夫だろうか。

 由緒正しき服装……? そっか……。

 

「代表選抜戦DAY1、国内年間ランキング二十一位以内のプロ選手、さらに東ブロック、西ブロックと予選を勝ち抜いた選手たちによる総当たり戦。三つのブロックに並行して試合が行われていますが、まずはAブロックの模様をお伝えいたします」

 

 いつもでは考えられないほどハキハキと喋って、緑川ちゃんは説明をしてくれている。

 

 A、B、Cの三つのブロックに分かれて戦うことになる。

 Aブロックに津雲ちゃん、Bブロックにコバルトちゃん、Cブロックに光谷ちゃん……という感じだ。同じ予選を勝ち抜いた選手は別のブロックにって感じだ。

 一ブロックが九人という長丁場の試合になる。

 

 全部で三十六マッチ。マッチ一つ三十分くらいで、サクサク進めば十八時間くらいで終わる。

 一日六マッチ……三時間目安で、DAY6までやる感じだ。その後にある決勝リーグと合わせて、合計で十二日の長丁場になる。

 

「闇結さん……今日のマッチの中で注目はというと……」

 

「津雲選手と、天皇寺選手の試合は個人的に注目していますね」

 

「天皇寺選手といえば、闇結さんと一緒にこの国の代表として優勝を経験したチームメイトでもありますけど」

 

「実力でいえば、天皇寺選手が勝っているでしょう。ただ、デッキ相性で言えば、津雲選手に分がある。そこをどう捌いていくかですね」

 

「なるほど。津雲選手は、闇結さんの教え子という話も聞きましたけど……どちらの選手ともに、闇結さんと縁のある選手でもある」

 

「ええ、どちらにも頑張っていただきたいですね」

 

 こういう時、解説がどちらかに寄った発言をするのはまずいだろう。そこら辺は、ちゃんとわきまえている。

 最後までなにが起こるかわからないのがカードゲームだ。彼女たちに期待していきたい。

 

 二人の試合は、今日の三マッチ目だった。

 

「では、入場です。奇跡を起こすのは、いつだって彼女! 世界を手にしたミラクルをもう一度! 天皇寺アリスだ!!」

 

 彼女が入ると会場が湧く。選抜のための試合だというのに、会場は満員だ。選手ごとにファンがいて、試合ごとに観客が増減しているが、今は満員だった。

 国の代表として、世界をとったという実績に、彼女の人徳もあるのだろう。

 

「青単使いの超新星! 王たる龍で敵の全てを押し流す! 津雲ミオだ!」

 

 堂々たる入場だが、観客の反応は良くない。みんな、アリスっぴを応援している。完全にアウェーだった。

 

「さぁ、始まりました。まずは先攻後攻……先攻は、天皇寺アリス! どうですか? 闇結さん」

 

「やはり奇跡連鎖デッキ。奇跡の発動のために手札を積極的に減らしていきたいので、先攻というのはいいですね」

 

「このマッチは二デッキ制、二本先取。先攻後攻が交互に交代のため、もし三試合目にもつれ込んだ場合ももう一度先攻でプレイできる。そう考えると、天皇寺選手の有利なように見える」

 

「果たして、この試合を取れるかどうかですね。ここをもし取れないとなると、厳しい戦いになるでしょう」

 

 まず、天皇寺アリスは、初手から熟考に走る。やはり、最初のマナにジェムの置き方は重要だ。それが試合を決定づけることさえある。

 それ以上に、一コストから動く彼女のデッキだ。ここでの動きが試合全体の流れを決めることになると言っても過言ではないだろう。

 

「というか、闇結さん。津雲選手のあの手札……なんなんですか? かなり特徴的なカードだと思うのですけど」

 

「アレは『水面から誘うもの』ですね。特殊タイプのカードです。最初に必ず手札の一枚に加えなければならず、手札以外の場所にあると負ける……ただ、相手のカードの効果で手札以外に送られる時、相手にカードを引かせることで、手札に残る効果があります。相手が十六枚目のカードを引いた時に場へ出てきますね」

 

 例のカードである。

 勢いであげちゃったけど、まさか使うとは思わなかった。なかなかの女である。

 

「手札が、一枚ほとんど使えない状態というのは、かなりのデメリットに見えますが、どういう意図での採用でしょうか?」

 

「おそらくは……」

 

 と、言いかけた瞬間に動きがある。

 

「おおっと……ここで天皇寺! 一ターン目に『フル・ディスカード』。自身の手札を全て捨てた……!?」

 

「おそらくは、『スーサイド・ウェーブ』への対策でしょう。セルフハンデスをされた場合、『水面から誘うもの』を捨てることで、相手に五枚の手札を引かせることができる。手札が増えた場合、機能不全に陥るのが、奇跡デッキの特徴ですから」

 

「つまり、手札をなくすには、こんなふうに『フル・ディスカード』を唱えるしかないと……よく考えられてますね」

 

 登録したデッキは、このブロックの予選が終わるまで変えられない。ここまで思い切った理由は、天皇寺アリスさえ抑えられれば、他はカード一枚が使えないハンデ戦でも勝ち切れると判断したからだろう。

 なかなかに、彼女は思い切りがいい。

 

 天皇寺アリス ターン1(先)

 ボード 0(1)

 ランド 0(1)

 ハンド 0

 

「視聴者の皆さんへ説明です。ディスプレイ左上のカウンターでは、試合状況が簡略化されて表示されています。ボードの横の数字がモンスターにつけられたジェムの数、カッコ内がジェムの総数。ランドの右にある数字が未使用のマナの数で、カッコ内が土地にあるカードの総数です」

 

 オンライン配信に、会場のモニターには、そんなカウンターが表示されていた。

 ライフ数や墓地、デッキの数だったり……それらは必要に応じて表示されることになる。

 

「ファイチューブでご覧の方は、好きな時に墓地や土地など、詳しい試合状況やカード詳細を確認することができます。まだの方は画面右下のQRコードから、是非、ダウンロードを!!」

 

 スポンサーへの忖度を忘れない。

 完璧な実況と解説である。

 

 津雲ミオ ターン1(後)

 ボード 0(1)

 ランド 1(1)

 ハンド 5

 

 そんなことをしているうちに、後攻一ターン目が終わる。マナ置き、ジェム置き……進行としてはいつも通りだ。

 

「さぁ、天皇寺アリス! 運命の二枚ドロー!」

 

 一ターン目に手札を全て捨てた天皇寺アリスだった。そう……すでにミラクルが使用可能。

 

「《スーパー・ミラクル》!! 『奇跡の語り手ミサリー』を召喚だ!!」

 

 奇跡が発動する。ここで発動しない可能性も十分にあったが、こうなってしまえば、あとはもう奇跡でもなんでもない。

 

「『奇跡の語り手ミサリー』の能力は強力です。《スーパー・ミラクル》の条件である、手札に加えられた時……さらに《ミラクル・チャンス》の条件である、手札にこのカードのみとなった時……どちらも誘発させることができる効果となっています」

 

「えっと、それは……」

 

 赤単色……『奇跡の語り手ミサリー』の能力が発動する。

 能力は自分の手札をジェムとして場に置く。そうした場合、ジェムから一枚カードを手札に戻すというものだ。

 

 赤の手札交換……それだけの能力だが、このデッキにとって、その能力は大きすぎる。

 

「最初のターン、天皇寺選手はジェムに『奇跡の導き手セレナ』を置いていました。手札で一枚となったため、《ミラクル・チャンス》が発動します」

 

「おおっと……ここで、天皇寺が一枚ドロー、そして、『セレナ』を召喚!」

 

「最初の『フル・ディスカード』の手札全捨てから、ジェムとして置くことで、キーカードの『セレナ』を逃がしていました。良プレーですね」

 

 まぁ、このデッキを使うなら、定石といえばそうかもしれない。私だってこのデッキ使ってればそうするし。ただ、こういうとこでは、とりあえず、褒めておけばいい。

 

「『ミサリー』から『セレナ』へと、ジェムのバトンが渡されました。さらに、『セレナ』でワンドロー!」

 

「あぁ……繋がりませんね……」

 

 このドローでミラクルできなかったのは、少し痛いかもしれない。

 

 天皇寺アリス ターン2(先)

 モンスター 2

 ボード 0(1)

 ランド 1(1)

 ハンド 2

 

「対する津雲……この状況、どう裁くか」

 

「どうでしょう……このターン、動く価値はあまりないですが、動くとしたら……」

 

「二コスト、『荒れ狂う海』! 手札に戻すのは……『奇跡の導き手セレナ』!」

 

「『セレナ』!?」

 

 動くとしたら、バウンス呪文……そう思ったが、『セレナ』を戻したのは完全に予想外だった。

 

「闇結さん、これはどうでしょうか……」

 

「いや、これは……かなりの悪手ですね」

 

 津雲ミオ ターン2(後)

 ボード 0(2)

 ランド 0(2)

 ハンド 4

 

 そうして、津雲ちゃんはターンを終える。なにか、狙いがあるならいいんだけど、大丈夫だろうか。

 

「闇結さん。悪手……というのは?」

 

 天皇寺アリスの二枚ドロー。ジェムと、マナを置き、カードのプレイに入る。

 

「天皇寺選手の手札は今、三枚。ここで一枚、なにかしらのカードが使えるはずです。そうなると残り二枚。さらに、『ミサリー』の能力が使える」

 

 手札から、『セミ・アナライズ』をプレイ。山札から一枚選んでデッキトップに固定。これで、手札が二枚になる。さらに、『ミサリー』の能力が発動。

 

「ジェムと手札の交換をしますが……これは……っ!? これは……っ!!」

 

「『ミサリー』の能力は、手札から一枚をジェムに置き、それからジェムを手札に回収するというものです。こうすることで、一瞬でも手札に一枚になった『セレナ』が《ミラクル・チャンス》で召喚されます。さらに、山札の上はさっき仕込んだカード。加えて、手札に戻したジェムでも、《スーパー・ミラクル》は発動する」

 

 つまりだ。『奇跡の導き手セレナ』、『奇跡の担い手ラーリャ』、『奇跡の救い手アリーラ』が一度に召喚される。

 

「なんてことでしょう!? 三ターン目に四体のモンスターが並んでしまいました! これが奇跡連鎖! これが天皇寺アリスなのか!!」

 

 派手なモンスターの踏み倒しに、会場は湧いた。

 私がちまちまジェムとかマナを破壊してる時は、お通夜みたいな感じなのになぁ……と思わなくもない。

 

 そこから、『セレナ』、さらには『ラーリャ』の順で能力を発動させていく。津雲ちゃんはかなりピンチだ。

 

 天皇寺アリス ターン3(先)

 モンスター 4

 ボード 3(5)

 ランド 1(2)

 ハンド 1

 

「津雲選手、非常に厳しい……。先ほど、手札に戻すスペルを唱えなければ、『ミサリー』か『セレナ』は消滅していたため、ここまでの展開を許すことはなかったでしょう」

 

「津雲。『ダブル・チャージ』で二枚ドロー。非常に苦しい展開ですね」

 

 とはいえだ。まだ青の誘発がある。勝負はここからだろう。

 

 津雲ミオ ターン3(後)

 ボード 0(3)

 ランド 0(3)

 ハンド 5

 

「さぁ、天皇寺のターン。手札は三枚となるため、ここで《スーパー・ミラクル》は発動しないが……」

 

 ジェムとマナを置き、ついで、『ミサリー』の能力。ジェムから手札に加えられた『奇跡の救い手アリーラ』の二体目が召喚される。

 

「ジェムは十分。『ラーリャ』の能力を発動し、このターンいくでしょうね」

 

 二ターンで倒し切れる量のジェムは揃っている。相手が誘発を抱えていても、ここでいくべきだろう。

 

「アタックフェイズ! アリーラでのアタックを宣言! 誘発は……『荒れ狂う海』! 『セレナ』が手札へと戻されます!」

 

「ただ、今、天皇寺選手の手札はゼロ枚。つまり、手札に戻され、一枚となり、再び《ミラクル・チャンス》が発動します」

 

 召喚したばかりのターンのモンスターはアタックできない。

 そのおかげで、アタックは『アリーラ』だけでこのターンを終えることができる。

 

「だが、《ミラクル・チャンス》! ワンドローにより……引いたカードは……『奇跡の導き手セレナ』!! さらにワンドロー……これは……《スーパー・ミラクル》!!」

 

「これが、奇跡連鎖の恐ろしいところですね……」

 

 二体目の『セレナ』、さらには『奇跡の裁き手アルテラ』が召喚される。

 盤面には七体ものモンスターだ。

 

「ライフ減少により誘発! 『水の加護』。カードを二枚ドロー! この状況……焼石に水か……!?」

 

 天皇寺アリス ターン4(先)

 モンスター 7

 ボード 8(10)

 ランド 3(3)

 ハンド 0

 

 現在、形成されている打点は八打点。次のターン、ラーリャの能力が発動すれば、十三打点だ。対して、津雲ちゃんのライフは八点。四ターン目にして、かなり厳しい状況だった。

 

「四コストで、この状況を打開できる札があるかどうか」

 

「津雲ミオ……カードをプレイせずターンエンド! これにはたまらずか……」

 

「まだわかりません。手札が全て誘発で、温存した可能性もあります。勝負は最後まで分かりません」

 

 津雲ミオ ターン4(後)

 ボード 0(4)

 ランド 0(4)

 ハンド 5

 ライフ 8

 

 ただ、口ではそう言っても、もう勝負の行方はわかってしまった。ここから勝者が変わることはないだろうと思う。

 

「さぁ、天皇寺! ツードロー! 勝負をかけて、ラストターンになるかどうか!!」

 

 このドローで、《スーパー・ミラクル》は引かなかった。マナ置きにジェム置き……バウンス対策に、手札をゼロにしておくことにも余念がない。『ラーリャ』での打点増強を挟み――、

 

「アタックフェイズ! まずは『アリーラ』でのアタック! 誘発は……発動せず……!? さらには、『セレナ』で……これも誘発はなし……!!」

 

 三点、三点と削られていく。残りのライフはたった二つ。

 

「来ますよ? 決まりです」

 

「さらに『アリーラ』でラストアタック!! 天皇寺アリス! 幸先のいい一勝を……!!」

 

「誘発『ウォータースパウト』。相手のアタック時、自分のライフがそのモンスターが持つジェムの数より少なかった場合に誘発。相手のモンスターの一体を山札に戻し、そうした場合、相手は山札からカードを一枚ドローする」

 

 津雲ちゃんが、誘発札を使う。

 

「ただ、一体戻したくらいでは……」

 

 隠された能力が発動する。アリスっぴはドローをした。ちょうど、十六枚目だ。

 

「『水面から誘うもの』を召喚」

 

 ――《異神漂着》。

 

 バトルエリアに出た『水面から誘うもの』か裏返る。『青神スリツ・フラド』が現れ、敵対する全てのモンスターを手札へと戻す。それは、【奇跡連鎖】にとって致命的な効果だった。

 

「十六枚目のドロー、初期手札が五枚、増やしたジェムが十三枚。デッキに戻したカードが一枚。現在デッキは七枚。つまり、天皇寺選手に残されたターンはあと四ターン」

 

「それは……」

 

「幸い、『フル・ディスカード』は二枚しか見えていない。『ミニマム・リターン』もある。四ターンで、残り二点のライフを削れるかの勝負です」

 

 天皇寺アリス ターン5(先)

 モンスター 0

 ボード 0(17)

 ランド 4(4)

 ハンド 7

 デッキ 7

 

 苦しい……ただ、チャンスが完全に失われたわけじゃない。それが奇跡デッキだ。

 

「おおっと、津雲……! 『青神スリツ・フラド』の能力を発動! 手札から好きなスペルを……『絶望の未来図』を二枚!」

 

「『絶望の未来図』は、相手の山札を見て、そこから一種類のカードを選ぶ……そのカードを全て山札から墓地に送る効果です。これは……」

 

 津雲ちゃんが選んだカードは、『フル・ディスカード』に『ミニマム・リターン』だった。

 これで、手札を全て捨てることを、天皇寺アリスはできなくなる。

 

「決まりました! ライブラリアウト!! 勝者、津雲ミオだ!!」

 

 会場が騒然としている。

 なんというか、私が勝ったときと雰囲気が似ている気がする。津雲ちゃんは大丈夫だろうか。

 

 ちなみに二戦目、アリスっぴは『フル・ディスカード』を引けずに負けた。完全な相性負けだった。

 引けなかったのは、たぶんメンタルの問題だろう。

 







 スレッドはあまり好評じゃなかったですね。
 今回は新しいテーマデッキを考えなくていいと思ったら、デッキ枚数を表示させる時にカード一枚足りなくて泣きそうになりました……。ちゃんと解決はしましたけど……天皇寺アリスが危うく反則負けするところでした……。

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