カードゲームの悪の組織で幹部をやってます。闇のカード(禁止カード)が強いです 作:カードショップの闇結さん
アンケートから、公式戦の時だけカウンターを表示します。よろしくお願いします。
「なにこれ?」
カードストレージをいじっていたら、なぜか見知らぬカードがあった。
たまにあるんだよね、こういうこと。
記憶を頼りに、ストレージから見知らぬカードを弾いていく。
「ん……? 無と青?」
メインとしては、そんな感じだ。弾いて四十枚、割と初心者向けのデッキが出来上がる。
「三、四、五のカーブで……防御札はこの誘発……なるほど……」
だが、そんなんじゃ物足りない! 魔改造だぜ!
***
「恐ろしいデッキができてしまった……」
私はデッキを持って、ふらついていた。連日続く大会の疲れ…… そんな中、ストレージに混じる新しいカード。当然、まともなテンションで組んだデッキではない。
そういうわけで、適当な店で適当に相手を見繕って戦おうって、そういうわけだ。こういうテンションで組んだデッキは、理想の動きだけ凄くても、全然回らないとかあるし。
「あれ、天音っち……?」
「だれ……?」
なんか知らない女の人に声をかけられる。
「え……嘘!? ひっど!? 覚えてない? え……もしかして私、そんな老けた?」
いや、でも……この感じ。なんか覚えあるぞ……。
この調子の……。
「あ……天皇寺アリスの……。……友達の」
オマケって、口に出しそうになったのを堪えて、ちゃんと友達といえた。
私にとっては知り合いの友達って感じなんだけど、この子なんか距離感近かったんだよね。接触回数もそこそこだし……だから、ちょっと覚えてる。
「その感じ、天音っちは変わんないなぁ」
「ごめん……」
いや、でもかなり前だし……。
携帯端末を取り出して、さっと検索をする。あ……いたいた。朝日山ナオミ。Bブロックで参加してるっぽいね。
「天音っち……。さすがにそうやって調べるのはないよ……。ほんとに覚えてないなんて」
「あ……ごめん。ナオミさん」
いつのまにか、後ろに回って私の端末を覗き込んでいたナオミさんだ。
「さん付け……? そんな、距離取られるの? 私」
「今のところ全勝ね。いい感じじゃない。ナオミさん」
「まぁ、まだ三戦だし。ここからここから。それとさん付けやめてくれない?」
昔は、そんなに強い印象はなかったんだけど、頑張ってるみたいだ。
私も明日からはBブロックに解説がシフトする。ずっとAブロックの解説でいいと思ってたんだけど、謎の力が働いていた。
「わかったわ。ナオミ」
「あと、そのキャラ作りもいいから」
「ちょっと昔を思い出して」
あの頃はこんな口調だった。なんというか、今はそんなことないけど、自分が女ってことを意識しすぎてた感じがあった。
やっぱり、自然体が一番かなぁ。
「天音っち。このあと用事ある? お茶する?」
「適当な店でデッキを回すところだったんだけど」
「お、いいねぇ。相手になっちゃうよー」
なんか乗り気だった。これで、正直、作ったデッキがクソ雑魚だったら悲しいんだけど、まぁ、都合はいいか。
***
「そういえば、交流会にはいなかったみたいだけど」
チャンピオンと同じく、この子の姿も見かけなかった。私のことを見つけて話しかけてくるような奴だし、いたら間違いなく絡まれていたはずだ。
「あぁ、ちょっと実家のいざこざがあってねぇ」
「ふーん? 先攻はこっちか」
土地に一枚カードを置く。
「じゃあ、こっちも、マナとジェム……」
「ちょっと待って……そういえば、そのカードなに?」
相手の土地エリアを見る。ナチュラルに置かれていたカードがあった。
「これは、『地底から出ずるもの』だよ? 実家から引っ張ってきたカードで……相手が八枚目のカードを土地エリアに置いたら、出て、裏返る」
「ふーん」
裏面が『緑神ワンズ・エルダ』。
多分、『青神』と同じサイクルなんだろう。手札を一枚占領しないぶん、これの方が誇張抜きで百倍強い。というか入れ得な気がする。
効果をさらっと見るが、まあ大体、サイクルって感じの効果だった。
「じゃあ、ターンエンド」
「ん、二コスト。『チャージ・アウト』。ターンエンド」
二枚引いて、一枚捨てる。
まぁ、悪くないかなって感じだ。
「こっちは……ターンエンド」
相手のデッキは緑デッキだった。
たぶん、『エナジー・プラス』が入ってるか。でも撃たなかったってことは、引けなかったか、ハンデスで手札を減らされるのを警戒したか。
「なにもしないんだ。じゃあ、三コスト。『無の信徒リリー』を召喚。ジェムを除外して能力。次の自分のアタックフェイスの終わりまで、相手はカードを帰還させられない」
「ん……? それって……」
「あぁ、一応……この効果の終わったときに、この効果で帰還できなかったカードを全て帰還させるから、タイミングを失って帰還できなくなることはないよ」
除外する際は、帰還するタイミングの指定をして除外する。その帰還を防いだら、永久除外になってしまうわけで、それは良くないということだろう。
「無色……ね。まぁ、三コスト! 『草猫ニャリニャン』を召喚。ジェムを土地に、能力発動。おいたジェムが、このターン初めて土地に置かれたカードでなければ、マナから一枚手札に戻す。さらに次の自分のターンの初めまで、相手がスペルを唱えた時、一枚ブーストの効果を発動。ターンエンド」
スペルに反応するカードだ。相手の動きを止めるわけじゃないけど、かなり厄介なカードだった。
「四コスト、『異空』。さらに、『無の信徒リリー』の能力を追加で発動」
「『ニャリニャン』の能力で、マナを追加」
相手のマナが四枚になる。
この『リリー』がいる状態での『異空』は、実質の二枚のリソースを奪う効果と言える。対して、相手のマナ加速は一枚。なら、撃っておいても、まぁ、いい。
「ターンエンド」
「ドロー……は、できない」
発動した『異空』の効果により、引くはずだったカードが除外される。本来なら、ジェムやマナに除外されたカードを代替させることが可能だ。だけど、このターン、そのカードたちは戻ってこない。
「『リリー』の効果で、あなたのその除外されたカードは使えない。どうする?」
「マナと、ジェムを溜めて五コスト! スペル、『絡みつく森』。相手のモンスターを一体選んで土地に」
「誘発『波浪』。相手の手札を裏向きのまま選んで一枚捨てる」
「お願い!!」
この感じ、『絡みつく森』は一枚しかないのだろうか。それとも、他にキーカードがあるのか。
「じゃあ、このカードで……」
「うん……これなら。『絡みつく森』を発動! 『リリー』を土地エリアに! 『ニャリニャン』の能力を発動!」
この猫……っ。しっかり強い。
こちらの得意なリソース勝負にしっかりついてきてる。
「じゃあ、こちらは……『波浪と異空の災禍』」
なぜかストレージに混じっていたカードだ。唱えるにしても、これ以上ないタイミングだっただろう。
「手札、奪いすぎじゃない?」
「そういう戦略だから」
「ふーん」
これで、相手の手札は残り一枚になる。
「そして、残った一コストで『スーサイド・ウェーブ』を唱える」
「は……?」
正気とは思えないカードだった。
自分でも、なんでこのカードを入れたのかわからない。おかしなテンションだったんだと思う。たぶんピン刺しだ。
互いに一枚ずつ手札を墓地に送った。こちらは唱えた『スーサイド・ウェーブ』の分も合わせて二枚の損失になる。普通に考えて割に合わない。
ついでに『ニャリニャン』のマナ加速も入っていく。
「ターンエンド。あなたの手札は、もうゼロ枚。ゼロ枚の手札でなにができる?」
「でも、『リリー』はいない。除外されたカードを帰還させて、マナとジェムを増やすくらい……」
「できないけど」
「え?」
「ほら、手札からカードを移動させる代わりに、でしょ? 手札がゼロ枚なら、無理に決まってる」
「……なっ」
「『ニャリニャン』の能力は使う? どうする?」
「……っ。使わないかな……ぁ」
つまり、ジェムの供給が不可能となったということだ。ここでイタズラにジェムを減らしても、よくないという判断だろう。
ま、ここからは詰めに入るだけだろう。
「まず、三コスト、『リリー』を召喚。さらに、四コストで、『異空』。『リリー』の能力を使ってターンエンド」
「く……パス……」
「『号哭と異空の災禍』」
「……パス……」
「『異空』」
「パス」
「『波浪と異空の災禍』」
「パス」
「『ミドル・リターン』。『異空』を墓地から手札へ。『異空』」
「パス……ぅ」
「『号哭と異空の災禍』」
「殺して……もう、殺して……」
相手がなにもできないまま、七ターンが経った。目から生気を失い、自ら死を望むくらいに衰弱している。
ジェムもなくなり、厄介な猫は消えたし、もう潮時だろう。
「じゃ、こっちのターン。一枚マナにカードを置きます。八枚です」
「『地底から出ずるもの』をバトルエリアに。《異神降誕》……相手の全てのモンスターをマナへ。『緑神ワンズ・エルダ』に裏返る」
「『緑の信徒サリー』を召喚。能力を使ってターンエンド」
まぁ、こんなものでしょ。
「ぐす……っ。 『緑神ワンズ・エルダ』が消滅する時、代わりに土地エリアに置く」
「『サリー』の能力で、土地エリアに最初のマナ置き以外でカードが置かれた時、土地エリアから好きなカードを選んで捨てます。『緑神ワンズ・エルダ』を指定」
「このカードが土地、バトルエリア以外にあるとき、私はゲームに負ける……ぐわー」
おしまいである。特殊敗北ありきでも、十分強いとは思うんだけど、まぁ、こっちの回りが良かったからだろう。
「いい勝負だったよ」
「うわーん! 天音っち嫌い!!」
泣かれた……!? 大の大人に……!
「これは、勝負だよ。情けは無用でしょ」
「うぅ、アリスっぴがファイト一回やめた理由がわかっちゃったかも」
そんなにだろうか。
というか、天皇寺アリス……ファイトやめてた時期あったのか。俺が競技から離れていた間に、いろいろあったに違いない。
「でも正直、この戦法微妙かなぁ」
「こんなにボコボコにしてくれたのに……!?」
「いや、まず『リリー』がいないとハンデスが決まらないし……」
「ん……? あ、そっか。除外された山札のカードは、捨てられる手札を代替させることができるわけね」
このデッキの目的は、相手のリソースの供給を断つことを第一に組まれている。ただ、モンスターや、スペルをうまく使えば、場にあるリソースだけで循環させることも可能だ。だから、同時に場にあるリソースも干上がらせる必要があった。
正直、コンセプトとして、やることが多すぎる。
決まったときは一方的でも、決まらなかったときは惨敗だろう。
「まぁ、ネタが割れてれば対策は容易かな。初見殺し用に持っといても損ないだろうけど」
もっとすごいパワーカードがあればいいんだけど。
ロック状態を続けていくのもかなり綱渡りだったし、まぁ、でも、このコンセプトは……ダメか。昔使って、闇のカードに指定されたカードを入れたあのデッキを思い出す。
あのデッキは強かったなぁ。
「初見殺しって、真のファイトとかやってる感じ」
「そんなことないよ」
真のファイトと初見殺しは切っても切り離せない関係だろう。
見誤って通したカードが、コンボの起点でやられて死ぬなんて、普通にある話だ。
「へぇ、ふーん」
「ま、ともかく。明日はコバルトちゃんと対戦なんでしょ」
「あー、あのアマの子ね。強いの?」
「今、私、二連敗してる」
「ガチ?」
「ガチ」
とはいえ、私は光谷ちゃんにも、津雲ちゃんにも負け続けだった。えーん。
各地で活動を開始する異神たち。それに対抗するべく目覚めるのは……古代の遺物として禁忌とされた無の力を取り込みながら、己が持つ力さえ振るう戦士たちだった!
神話編、第一弾カードパック『
みたいなことになっているのかもしれない……。