カードゲームの悪の組織で幹部をやってます。闇のカード(禁止カード)が強いです   作:カードショップの闇結さん

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たぶん、事故みたいなもん

 

 

「緑ちゃんの、先行パック体験!」

 

「いぇーい」

 

 なんだ、これは? いったい私は何をしているんだ?

 謎のスタジオに私たちはいた。

 私も緑川ちゃんも謎のモンスターのコスプレをさせられている。これは、なんのモンスターだ?

 

「タダーンと、一カートン、カードが用意されています。さぁ、これを開けていきましょうか!」

 

「おー!」

 

 正気か……? これ全部開けるまで、どうやって間を持たせるつもりなんだ……?

 

 ちなみにこれは、試合の間に挟まる予定の謎企画の謎番組である。主に大会主催であるエクスアーム社のコマーシャルというわけだ。テレビのCMの代わりにこれを流すそう。頭おかしいんじゃないだろうか。

 

「抵抗勢力により各地で活動を行っていた神は鎮められた。だが、そこに残るのは、神を降臨せしめし祭壇だった。その奥に眠るものとは……。神話編、第二弾カードパック『神器(アーティファクト)招来(・リザレクション)』! 近日発売!!」

 

「わーい」

 

 神話編? 神?

 言っておくけど、別に一個前のパックに神のカードなんて入ってなかった。凄そうなストーリーだけど、すごいカードは入ってない。エクスアーム社のパックって、毎回そうなんだよなぁ。

 

「じゃあ、まずボックスを一つ取り出します」

 

「カッコいいロゴ! この剣はいったい……!」

 

 ボックスに書かれているカッコいい剣だ。

 ちなみに、こういうボックスに書いてあるカードは、当たらない。なぜなら、トップオブトップのレアは、販売したパックの中で、全部で一枚しか入ってないとかあるからだ。宝くじかよ……。

 

 一枚ならデッキに入れても……って感じるかもしれないが、噂によるとトップオブトップのレアはカード自体が入っているわけではなく、そのカード三枚との引き換え券らしいと聞く。エクスアーム社の出張所に届け出ると、秘密裏に輸送してきてくれるとか。

 

「はーい。じゃあ、まず一パックを取り出してー」

 

「あ、緑ちゃん? そのパック当たりだから、後にした方がいい」

 

「え?」

 

「私、思うのよ。当たりはやっぱり後の方がワクワクするって」

 

 緑川ちゃんも、私も、謎のキャラ作りをしている。私のやつは、昔選手だった頃と同じキャラ作りだ。

 

「当たりってわかるの?」

 

「え、見ればわかるでしょ?」

 

 当たりのパックは、まず出ているオーラが違って見える。こう、俺はできるやつだ……って、気合いの入ったオーラが出ているのだ。

 

「えいや!」

 

「あー!!」

 

 緑川ちゃんは、私が指摘したのにも関わらず、袋を開けてしまった。当たりなのに……。

 

「これは……アーティファクト『滅却の魂玉』」

 

「《ジェムコスト8》のアーティファクトね。相手のジェムの増加に反応して、ジェムを一つ砕く機能を持っているみたい」

 

 魅力的な効果ではあるけど、流石に重い。ジェム全部破壊した後なら、蓋として機能しはするだろうけど、下準備が大変だ。無理にジェム増やしてこれ出したとしても勝てないってところがちょっとね。

 

 ちなみにこれは、SRらしい。これでか……。

 

(ゆい)ちゃんの得意なボーデス戦略を補強するカードだよ! よかったね!」

 

「えぇ、そうね……」

 

 私のデッキを弱くするつもりだろうか? 私のデッキでジェム八個もたまらないって……。

 

 それにしても、ここでは私は結ちゃんと呼ばれるらしい。闇ちゃんでも私はいいと思うんだけど、可愛くないからダメって言われていた。

 

「じゃあ、あとは当たりじゃないみたいだから、バリバリ剥いていっちゃおうか!」

 

 緑川ちゃんは手際良くパックを剥いていく。

 ちょっと乱暴に見えるかもしれないが、この世界のカードは傷つかないし折り曲がらない、水に触れても大丈夫な謎の物質だ。例え地球が爆発してもカードだけは残るだろうと言われている。

 だから、まぁ、多少パックを雑に開けてもカードにダメージはない。流石に汚れたりはするけどね……。

 

「うーん、低レアかぁ」

 

 すでにあるカードの互換だったり、再録だったり、名称違いだったり、あとはアーティファクトサポートのモンスターか。微妙なカードばかりだった。

 アーティファクトも中にはあるけど、ピンポイントメタって感じのが多くて汎用カードはなかなかない。

 

 ハズレパック……というほどではないけど、強くはないよね。そんなことを思いながら、カード名やら、能力やらを読み上げていく。

 

「あ、見てこれ! 今の結ちゃん」

 

「そうね……可愛いイラストね」

 

 カード名は『死霊技師パニパ』。ジェムを墓地に送り、アーティファクトを一枚墓地から甦らせる能力持ちだった。

 黒いとんがり帽子で、肩の空いた長袖のトップスに、黒いふんわりスカート。まぁ、今の私と同じ格好の女の子のイラストだった。

 

「結ちゃんも可愛いよ?」

 

「そうね。知ってるわ」

 

 俺が可愛いのはともかく、ジェムを消費するモンスターにアーティファクトのサポートをさせるのはミスマッチかもなぁって、カードを見て思ってしまう。

 でも、可能性はありそうだから、ストレージにとっておかれるくらいはするかもしれない。

 

「SRパックは後で開けるとして……じゃあ、次のボックス行っちゃおー! 結ちゃんはこっちを剥いてね」

 

「おー!」

 

 ボックスに一つ、SRパックというのが入っているが、SRが一枚のみ入ったパックのことだった。楽しみは後に取っておこうということだろう。

 

 ベリベリと、パック開封をしていく。新しいカードが見えたら、その都度、どういう能力か、使い道かを二人で話していくお仕事だ。

 

「これは、『森の女王・吸血器師シンドラ』」

 

 緑の髪の小さい女の子のモンスターカードだった。

 牙に、黒い羽根に、吸血鬼って感じのモンスターで、なんか武器とかいっぱい浮かせてる感じだ。胸元を開いたゴスロリ系の服装をしている。

 

「あ、私だ。緑ちゃんがいる」

 

 緑川ちゃんを見る。おんなじ格好だった。

 

「なるほど、このモンスターの衣装だったのね」

 

 似合ってる。緑川ちゃん、身長かなり小さいけど、胸はけっこうあるんだよね。おかげで、こういうモンスターのコスプレが映える。

 

「吸血鬼だぞー! がおー」

 

「きゃー」

 

「血ー、吸っちゃうぞー。がぶー」

 

「きゃー」

 

 緑川ちゃんが、私の首筋に噛み付くフリをする。抱きしめて、頭なでなでしちゃう。

 

「ふっふっふ。これで結ちゃんも我が眷属」

 

「は……緑ちゃん様の仰せのままに……」

 

 何やってんだろ私たち。

 

「はーい、じゃあサイン書いちゃおうねー」

 

「了解したわ。緑ちゃん女王様」

 

 私も緑川ちゃんも、コスプレしたモンスターのカードにサインを書く。普通のペンで書き込んだら簡単に消えちゃうんだけど、特製のペンだからカードに書いてもなかなか消えないらしい。

 

「よし、完成。このカードたちが出るたびに、私たちがサインを書いていっちゃうよー。視聴者プレゼントだから、みんな! こぞって応募しちゃってねー!」

 

 まるで台本でもあったかのような視聴者プレゼントだが、私はサインのことを知らされていなかった。たぶんアドリブだろう。

 

「そういえば、『森の女王・吸血器師シンドラ』の能力見てなかったわね。えっと」

 

「ジェムを土地に置いて、マナにあるアーティファクトを場に出す効果だね。結ちゃんの『死霊技師パニパ』とお仲間って感じの能力!」

 

 やっぱり、ジェム減らしちゃうのがなぁ。

 まぁ、マナから出せるっていうのはかなり強いし、デッキによっては入るか。

 

「さで、じゃあ次も剥いていくわね。ん、このカードは……」

 

 なにか、パックからオーラを感じる。この弾を開封してきて感じたことのないオーラだった。

 パックを開けて、オーラにより光り輝いて見えるカードを手に取る。

 

「それは……ええと、アーティファクト『創星の骸樹』」

 

「これは……強力な効果ね。《ジェムコスト5》……相手のスペルが唱えられた時、自分のマナをそのスペルのコストと同じ数回復する。その後、手札からスペルを一つ使っても良い」

 

 一回限りだが、コバルトちゃんの緑の不死鳥と同じ効果を使えるカードだった。そのまま空中戦が続いたら壊れるだろうけど、かなりいい効果だと思う。

 

「え……」

 

「あと《マナコスト5》もあるみたいね。このターン、このアーティファクトの起動条件が満たされたとき、このアーティファクトは必ず起動する。その後、相手の手札を見る。その中から一番コストの大きいスペルを一つ選んで使う。……は?」

 

 あからさまにカードパワーが一段、二段と違った。というかよく見ると、パックのカード特有のレア表記がない。真のカードじゃん。

 

「すごいね、結ちゃん」

 

「え、ええ……。パックのカードが真のカードに変わってるなんてよくあることよ」

 

 これ、パックの販促になるのだろうか?

 いや、カットすれば大丈夫か……。

 

 たまにあるんだよね、そのパックのコンセプトに合った真のカードが当たることが。もちろんエクスアーム社は真のカードを封入したりはしていない。この世界の不思議である。

 

 それから、じゃんじゃん開けていく。だいたい七ボックス開けたくらいで、新しいカードももう滅多に出なくなった。

 

「結ちゃん、結ちゃん。提案があるんだけど」

 

「なんだい緑ちゃん」

 

「この箱、一番レアなカードの入ったパックはどれ?」

 

「あ、これね」

 

 私は一つ選んで、ビリッと開封する。中のカードをさっと取り出して、中身を確認する。SRのカードを拾い上げる。

 

「SR……コスト六、『戦場の絡繰士ファーレン』。ジェムを外して、能力。次の自分のアビリティフェイズの始めまで、アーティファクトを起動する時、そのターン初めて起動するアーティファクトだった場合、ジェムを戻す……なかなかいい効果ね」

 

 レア度が高いだけはある。アーティファクトを使う上で、かなり頼りになる効果だ。

 

「うん……本当にわかっちゃうんだね……」

 

 なにか緑川ちゃんがドン引きしてた。いや、王なんて見ないでカードの名前当てるんだから、このくらいで引かれても……。

 というか、緑川ちゃん。もしかして、わからないフリしてからかってる?

 

「一応、言っておくけど、デッキに混ざってたらわからないわよ。カードも勝つために本気だからかしら?」

 

 まぁ、カードに真剣じゃない相手なら、相手のデッキの何枚目にいいカードがあるかわかる時もある。

 でも、基本的に非公開情報のカードがオーラ満載ってことはない。ちゃんとカードと向き合ってるならね。

 私のカードも、相手に悟らせないためにちゃんと、オーラとか出さないし。

 

「箱に残ったパックはスタッフさんが開けるの手伝ってくれるみたい。じゃあ、残りのボックスは結ちゃんパワーで、レアリティの高いカードだけ拾っていこうー!」

 

「おー!」

 

 なぜ意地でも開けさせるのか……そう、サインカードを作ると言ってしまったためだった。『死霊技士パニパ』と『森の女王・吸血器師シンドラ』を拾うために、パックを開けないわけにはいかなかった。

 

 頑張ってあげるスタッフさんを横目に見つつ、私たちは残りの箱を物色していく。

 一つ、私は光り輝く箱を見つけた。

 

「……この箱、すごい当たりな気がするわ」

 

「え、そうなの?」

 

「このパックね」

 

「えー、どんなカードが……」

 

「これは……」

 

 パックの中から出てきたそれに、思わず固まる。というか、それはカードじゃなかった。

 

「え、どうしたの? 結ちゃん」

 

「レジェンドレア。アーティファクト『不敗の神剣』……の三枚引き換え券」

 

 初めて見る。引き換え券ってこんな感じなんだ……。

 

「あ……放送事故……」

 

 これは、あれだ。宝くじの一等が、もうないです……というようなものだ。

 

「ねぇ、この箱って、宣伝用に用意したやつかしら? 試供品的な」

 

「……工場から適当に持ってきたやつらしい」

 

「そっか」

 

 それなら、そういうこともあるだろう。

 これはピーアールの一環とかじゃなくて、普通に事故みたいだった。どうするんだろ。

 

「じゃあ、結ちゃん。気になる効果の方を見ていこっか」

 

「そだね……」

 

 さすがか、切り替えが早い。

 

「アーティファクト『不敗の神剣』。《ジェムコスト10》」

 

「十!?」

 

 あまりのコストの大きさだった。バカ?

 

「ゲームに負ける時起動。相手の手札、ジェム、マナから二枚ずつカードを山札の下に置く。その後、ライフを十回復し、墓地にあるカードを好きな順番で山札の下に置き、自分がゲームに負ける、あるいは相手が勝つ状態を一つ無効化するを発動」

 

「バカみたいな効果ね」

 

 確かにこの効果なら、出せれば負けないだろうけど……出すのにかなり工夫がいる。

 いや、ジェムがバカみたいに増えるデッキにお守りとして採用ならアリか……? たぶんこの剣、あれば負けないだろうし。

 

 まぁ、色々あったが、最後にSRパックを全部開けて、パックを全部開け切ることに成功する。そして、まだ箱の底に眠る小箱があった。それを緑川ちゃんが開封する。

 

「じゃーん! これが、オマケ! 今弾の好きなSRカードとの引き換え券だよー! 店頭で一カートンセットを購入した場合、もれなく付いてくるので、たくさんカードを集めたいなら、ぜひカートンで購入してね!」

 

 この世界、恐ろしいことだが、カートン売りを前提としたオマケがある。店舗に卸されるボックスバラ売り用のカートンではなく、顧客への販売用のカートンだった。梱包の段ボールもカラフルで、こう特別感がある感じのやつである。

 

「ワンボックスには、通常パック三十パックの他にもランダムなSR一枚を封入したオマケパックもついてきます。ボックス購入もぜひ!」

 

 ちなみにこの間、私がチャンピオンに買わせたやつは、普通にボックスのオマケもないパックバラ売り用の箱だった。負けたんだから仕方ない。

 

「じゃあ、次回! 今回開けたカードで、デッキを作って実際に体験してみるよ! みんなも、また見てね!」

 

「じゃーねー」

 

 なんか、番組の締めに入ったけど、私には疑問が残っている。このクソデカコストの引き換え券どうすんだろ……。

 

 

 

 ***

 

 

 

「さてと……第一目標は神のカードの奪取。次点で、真のカードの収集ね……」

 

 大会本戦の開催にあわせての奇襲だ。真のカードの収集は質より量と言われたが、おそらくは長居はできない。

 選手の中でも弱いやつを一人か二人倒せればいい方だろう。

 

 大会の前に放送されてる新パックの販促番組を見つつタイミングを測る。ていうか、アーティファクトって、弱いカードしかなくていつの間にか誰も使わなくなってたやつだろう……いまさら掘り起こすもんかよ……。

 そういえば、昔……エクスアーム社が意図不明のアーティファクト高価買取りやってたよなぁ。

 

「やっぱジャンヌはこねぇな……」

 

 陽動なしに一人でやらなきゃならない。選手相手なら負けないと思うが、真のファイターに当たったらわからないか。

 特にこの番組に出てる姐ちゃんたちだ。

 

「ま、やるしかねぇなぁ」

 

 これが終わったら、リーダーとも貸し借りなしだ。適当に離脱して、世界中見て回ろう。特に今はいい時代だ。危険な航海をせずとも、世界中、いたるところへ行くことができる。

 

 そう思い、歩を進める。

 

「や、今日はいい日だね」

 

 声をかけられる。振り返る。

 女……たぶん、女だ。中性的な容姿に、そいつの周りには、三色の妖精。

 

「……っ! 真のファイター!!」

 

「あー、やっぱり、この子達のこと見える感じか。手練れだね。ファイトでもしていかないかい?」

 

 わからない。なぜ、声をかけてきた。

 わかるのは、圧倒的な強者としての異質さ。

 

「すまないが、急いでるんだ。悪いが他をあたってくれ」

 

「最近は、闇のカード委員会もおとなしいし……ちょっとこの子達も不満でね……」

 

「な……っ」

 

 真のファイト空間が生成された。

 逃げられない。俺のファイターとしての力では、弾くことができなかった。

 

 まぁ、いい。勝てばいい。そう俺の相棒も言っている。

 本番前の肩慣らしだ。

 

「先攻はこっちみたいだね」

 

「あぁ、そうだな」

 

 後攻だが、最初の手札は完璧だ。

 これなら、三ターン目に決着すらつけられる。あとは、相手の妨害次第だが、こちらにはそれをケアする手段さえある。

 大丈夫だ。負けはしない。

 

「ボクはモンスターを召喚する」

 

「は……?」

 

 意味が、わからなかった。

 

()()()()

 

「……っ!?」

 

 相手の土地の色を確認する。赤じゃない……『突撃兵アルス』じゃない……。

 

「『隔たりの妖精シレネ』を召喚」

 

 無色。長くファイトをやってきたが、一コストのモンスターは『突撃兵アルス』以外見たことがない。直感する……このモンスターはヤバい。

 

「はは、そんな小物で何ができるっていうんだよ?」

 

 そんな不安を覆い隠すために口に出す。

 

「自己誘発。『妖精術・緑』」

 

「なんだ……意味がわからない……」

 

 土地が、増えた。

 まだ一ターン目だ。なのに土地は二枚になった。

 

「さっ、ターンエンドだ。こっちは順調だよ?」

 

「く……マナと、ジェムを置いてターンエンド」

 

 一ターン目に動けるカードはない。それが普通だ。まだ二ターン目、だというのに嫌な予感がする。

 

「じゃあこちらのターンだ。『隔たりの妖精シレネ』を進化させ、『緑の妖精王マナリカ』を召喚」

 

「そいつが……」

 

「『妖精王マナリカ』の能力を起動。ジェムを土地へ送る。土地から四枚、墓地から一枚の妖精のカードを回収。そして、回収した数だけ山札から土地に置く」

 

「なんだと……!?」

 

 相手の土地が五枚になる。まだ二ターン目だ。こんなことが許されていいのだろうか。

 

「『終わりの妖精イトギス』を召喚。『妖精術・赤』。さらに『鎮魂の妖精イヌグス』を召喚」

 

「なぜ、召喚を……?」

 

「あ、言ってなかったか。『マナリカ』の能力で戻したマナなら、このタイミングで妖精のカードをプレイしてもいいんだ」

 

「なに……?」

 

 アビリティフェイズにカードをプレイできるなんておかしいだろう。

 マナの回復、増加も考えると、アタックこそできないものの、自分のターンを二度行っているようなものだ。

 

「まず、『鎮魂の妖精イヌグス』の能力を発動しよう。ジェムを外す。このターン初めて破壊される自分のモンスターを、破壊の代わりに裏返す」

 

「ジェムを増やす、それが……」

 

「さ、『終わりの妖精イトギス』の効果だ。ジェムを墓地に送る。このモンスターを破壊し、山札の上から一枚をジェムとして一体のモンスターに置く」

 

「その効果はなんだ? ……俺にはモンスターを一体破壊しただけに見える。ジェムの数は差し引きゼロ。いや、今はもう一体の能力で代わりにジェムになったが、それでも……」

 

「『マナリカ』にジェムを追加。こうしてジェムを置かれたモンスターは、もう一度このジェムを使い能力を使ってもよい」

 

「なん……だと……!?」

 

「『マナリカ』の能力を再起動」

 

 五枚の土地、二枚の墓地が回収されていく。そして七枚のマナが土地エリアに集まる。

 

「なんだ……これは……? 俺は一体なにをされているんだ……?」

 

 また、このマナが使える。ターンがもう一つ追加されたようなものだ。次は何をされる?

 

「『マナリカ』を『青の妖精王ハンドラ』に、『イヌグス』を『赤の妖精王ジェムニ』に進化」

 

「よ、妖精王!?」

 

 身構える。さっきまでめちゃくちゃをしたカードと同じ名を持つカードだ。何をされるかわからない。

 

「まず『ハンドラ』。手札から妖精のカードを捨てて、同じ数山札から引く。この時捨てた数と同じ数だけ、このターン、相手のスペルを無効化できる」

 

「誘発封じだと!?」

 

 誘発封じは基本的に、攻めに入るターンに行う。もしかして、俺、もう死ぬのか!?

 

「さぁ、『ジェムニ』の能力だ。墓地、手札、ジェムから妖精を山札の下に好きなだけ戻す。同じ数だけ、山札の上からジェムを妖精のモンスターに分配する」

 

「……っ!?」

 

「そして、このターンアタックできない状態を全て無視してアタックできる。『赤の妖精王ジェムニ』でアタック!!」

 

 意味がわからない。

 

「ま、まて! せめて情けをくれ! お、俺、マナとジェム置いただけなんだが……!? 一枚くらいカードを……」

 

「アタック。うん、今日はとてもいいファイトだった」

 

「ぐわぁあああ!?」

 

 

 ***

 

 

 ここは、どこだろうか。

 

「あ、マゼチー。おひさー」

 

 聞き覚えのある声がする。全身に包帯を巻いた女だった。

 

「て……テメェ、ジャンヌじゃねぇか!! 今までどこに! ……て」

 

「敗北者空間じゃん」

 

 周りを見渡す。どうやら、現実世界ではない。

 

「あー、つーか……ここアビスかよ。話には聞いてたが、クソみたいな仕組みだよな」

 

「それは同意じゃんねー」

 

「ていうか、誰に負けたんだ? お前ほどのやつが」

 

「んー? 黒い私?」

 

「意味わかんねーよ、それじゃあ」

 

「いや、名前とかわかんないし……ただ、そだね。ジャンヌとそっくりだったとしか……」

 

 包帯を解いて、素顔を見せる。

 白い髪に、白銀の眼。顔中に火傷の跡があることを除いて、その顔には見覚えがあった。

 

「闇結……天音か」

 

「たぶん親戚かなんかじゃんねぇ」

 

 包帯を巻き直すジャンヌだった。やっぱ女か、顔の傷見られるの嫌なんかね。

 

「親戚はないんじゃないか? お前のいた場所に時代に、離れすぎだぞ? 難しいだろ。他人の空似だと思うが」

 

「マゼチーが偉大だったからじゃない?」

 

「そりゃ、まぁ……俺は偉大だが」

 

 考えれば、確かに今は世界の行き来が容易い。まぁ、そういうこともあるんだろうか。

 

「へぇ……。じゃあ、マゼチーもあの子に負けたんだ」

 

「いや、確かに負けたが真のファイトじゃねぇ。俺が負けたのは妖精使いの変なヤツだ」

 

 思い出したくもない。あんなの絶対反則だろう。

 

「およ? お主、まさかあの妖精使いにやられたのかえ?」

 

「テメェはなんだよ」

 

「かか、奴の三ターンキルよ……何もできずに負けたわけよな」

 

「先攻二ターンキルだよ……」

 

「…………」

 

「俺、マナとジェムしか置いてねぇ」

 

 場が、葬儀のような雰囲気になる。ジャンヌや俺につっかかって来た女も、スンとなった。

 

「札戦の天運はあざなえる縄の如し……ともいう。次の札戦では、良い引きになるであろう」

 

「マゼチー、元気出して。きっといいことあるじゃんね」

 

「お、おう」

 

 この空間でいいこともなにもないとは思う。だが、その優しさは沁みて来た。

 

「マゼチー、ファイトする?」

 

「あ? ……カードねぇんだけど」

 

 魂だけがこっちに来てる。カードは置いてきたわけだ。

 

「へ、へ、へ……こっちにある……このアビスに封じられた闇のカードでデッキ組めるじゃんねー。汎用カードもちゃんとあるし」

 

「そりゃあ、面白そうだ。これとか良いカードだしな」

 

「じゃあ、ファイトじゃんね」

 

「おう!」

 

 二ターン目に完成した馬鹿みたいなコンボで何もできずに負けた。ジャンヌの、バカ……。









アビリティフェイズにカードプレイできるのはバカ。

前回、評価、感想ありがとうございました。モチベ上がりました。

とはいえ、ちょっと他に書き上げたい作品があるので、また少し時間を空けます。
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