カードゲームの悪の組織で幹部をやってます。闇のカード(禁止カード)が強いです 作:カードショップの闇結さん
「はいはーい。緑ちゃんだよー」
「結ちゃんでーす」
「では、公式放送ミラー配信、やっていきましょう!」
「いぇーい」
コメント欄
はじまた
まってた
今日もかわいー
いぇーい
コメント欄である。
今日は実況と解説ではなく、配信を見てはしゃぐだけという感じだった。
というか、コメント多いなー。最初のちょっとは読めたけど、すごい速度で流れていってそれ以降はあんまり読めない。これが緑ちゃんパワーか。
「今回、実況を務めます、朝霧アオイと」
「解説の東宮ジンヤです」
テレビの実況と解説の人だった。実況の人は、確かフリーのアナウンサーの人である。解説は……えっと。
「緑ちゃん。解説の人って誰だったかしら? 確かどこかで見たことがあるような気がするのだけど」
「結ちゃん、予選Cブロックにいた東宮選手だよ。一緒に実況解説したよね?」
「あー、思い出したわ。光谷ちゃんにボコボコにされてた……。予戦を突破できずに解説落ちしたのね……」
たまにあるんだよね。予選で負けた選手を本戦の解説で呼ぶことって。
でも大きい大会は、いつもはだいたい引退した選手を呼んでるイメージなんだけど、予定が合わなかったりしたんだろうか。
解説落ち……
闇結ひどい
東宮のファンガチギレ
炎上する
明日のネットニュースはこれか?
「選手時代は勝つ度に炎上してたわ。慣れてるわよ」
「結ちゃん……」
そうだ。俺は戦う度に炎上してた思い出がある。
「例えばそう、『執拗なマナ破壊、上がる悲鳴、なぜ彼女はトドメを刺さないのか』みたいな記事でね」
「そだね」
デッキ切れの方が安全に勝てるからに決まってる。あと、二本先取の一戦目なら、相手のデッキの中身も全部見たいし。
なぜ、そんなわかり切ったことを聞くのだろうか。不思議でたまらなかった。
「では、準備が整いました。試合の方、見ていきましょう!」
どうやら、始まったようだ。
まず、トップバッターは津雲ちゃんみたいだ。本戦にちょっと緊張している姿が見える。
「津雲ちゃんの相手は、……濁雨選手ね」
「うん、相性のいい相手っぽいね」
たしか、光谷ちゃんのいたCブロックを三位で通過した人だった。つまり、解説落ちの人が勝てなかった選手ということになる。
濁雨だ!
こいつ、キライ
代表になってほしくないな……
津雲ちゃんガンバレー
コメント欄では濁雨選手がネガられてた。
「濁雨選手は、赤青黒のボードコントロールを主軸としたデッキを使うよ!」
バトルボードの前に立つのは、髪の長い、目にクマのある不健康そうな、いかにもって感じの陰気な男だった。
「みんな、コントロールキライよね……」
割と、これがこの世界のモラルだった。
というか、濁雨選手がこんないかにもな格好をしてるのは、ヒール役を自ら買ってるからって噂がある。まぁ、噂は噂だ。
「では始まりました。まず、津雲ミオの先攻です!」
津雲ミオ ターン1(先)
ボード 0(1)
ランド 1(1)
ハンド 4
濁雨タクト ターン1(後)
ボード 0(1)
ランド 1(1)
ハンド 5
二人とも、マナとジェムを置いてパスだ。一ターン目は順当と言える。
「じゃあ、二コスト。『ディープ・ソルジャー』を召喚します」
津雲ミオ ターン2(先)
ボード 1(2)
ランド 0(1)
ハンド 4
立ち上がりとして、津雲ちゃんは普通だろう。今回はあの神のカードを手札には入れていない。さすがにアレはアリスっぴ対策で、予選だけだったんだろう。
「クク……二コスト。『死水の魔アルトラ』を召喚する」
「このカードは……!」
「ジェムを墓地に置き、能力。相手は自分の手札を選んで捨てる」
黒青のハンデスモンスターだった。
その効果は悪くない。ジェムと手札の交換を毎ターン行える。
津雲ミオ
ハンド 4→3
「これは、毎ターン相手の手札を奪う強力なカードや。津雲選手、かなり苦しいなぁ」
すかさず解説が入る。確かに間違ってないんだけど……。
「とはいえ、セルフハンデス。これなら、手札を減らされるといってもドロー札を温存できるわ。津雲ちゃんは青単だからドロー札はたくさんあるしそこまで問題じゃない。しかも二ターン目から相手は使い始めてるわね。こうなると、盤面にモンスターが並べられない」
毎ターンこの能力を使った場合、ターンの始めにあるジェムは一枚になる。そうなると、二体目以降のモンスターは消滅していき、一向にモンスターが並ばない。
「このモンスター一体じゃ、青単を相手するにはきついから、どこかでジェムの加速を使って、盤面を広げたいところだね」
緑川ちゃんの合いの手が入る。
緑川ちゃんが実況だったら、解説は全部私に任せて、どうでしょうとか聞いてくるけど、今はそんなんじゃないから、雑に解説を加えてくる感じだ。
ほえー
緑ちゃん賢い
このモンスター、予選でめっちゃ強かったんだけどキライ
濁雨はミスしたってこと?
おかしいな……選手じゃなくてもこれくらいわかるはず。コメント欄のみんなはパッションでファイトをしているのか……?
まぁ、ファイト人口は多いし、中にはよくわからないままカードを叩きつけるだけの人もいる。そういうこともあるのだろう。
濁川タクト ターン2(後)
ボード 0(1)
ランド 0(2)
ハンド 4
ターンが終わり、今度は津雲ちゃんのターンだった。
「じゃあ、三コスト。『チャージ・ウェーブ』を使います」
濁川タクト
ハンド 4→3
「ハンデス合戦を挑むつもりや! だけど、相手はモンスターでずっと手札破壊ができる! これは、あかん」
「なるほど、津雲ミオ! 厳しい戦いになるか!」
「……流石にハンデス合戦は挑まないわよね?」
津雲ちゃんの唱えた『チャージ・ウェーブ』は手札を一枚ランダムで捨てる以外にも、手札を一枚引く効果もある。
ハンドリソースを失わずに相手の妨害ができるから、とりあえずお試しで撃った感じだろう。
「緑ちゃんも、お試しハンデスだと思うよ」
まぁ、これでキーパーツが抜けたら御の字って感じだろう。
「そうね。まぁ、そこまで大事なカードではなかったみたいだけど」
切り札落ちてるー!
すごく大事なカードっぽい
いや、ここでこのカード落としても意味ない
これは、勝ったか?
「あー、別に今落ちたカード、この場面で絶対いるってわけじゃないわよ? そんなに影響ないわ」
んー、でっかいコストのカードが落ちたから騒がれてる感じだった。
でも、このタイミングで落としたいのはそのカードじゃない。本当に落としたいのは三コストのカードだろう。
ランダムハンデスは強い。なぜ強いかといえば、相手のプランをぐちゃぐちゃにできる可能性があるからだ。
例えば、手札に四枚のカードをキープしているとして、コストが三、四、五というふうにカードをキープするのが普通だ。マナの溜まるプランに合わせて持ったカード……その勝ちへの道筋が、ランダムハンデスにより墓地に落とされ、途切れてしまう。
これが、ランダムハンデスの強さだ。
そういう意味で考えると、落ちたカードはあまり良くなかった。
それでも、なんでコメント欄の人がこんな反応なのかと言えば、想像がついてしまう。この世界のたいていの人間は、カード資産が貧弱で、切り札一回落とされただけでおしまいだからだ。
私、悲しい……。
「『ディープ・ソルジャー』の効果を使いターンエンド」
津雲ミオ ターン3(先)
ボード 0(2)
ランド 0(3)
ハンド 4
アクア・ソルジャーの効果を使った結果、ジェムが手札に戻っている。相手はジェムを墓地に置いてのハンデス。
「あー、これだとジェムとジェムが対消滅してるように見えるわね……コスト軽減でテンポ取れてる津雲ちゃんが有利だわ」
「そだね」
このことについて、解説の人は触れなかった。まぁ、見たらわかるし言う必要ないか。
「ヒヒ……『ダブルチャージ』を唱える。二枚ドロー」
「なんというか、堅実なコントロールね」
三ターン目に二枚ドローするコントロールだ。かなり普通。
「結ちゃんって、『ダブルチャージ』入れてないよね。なんで?」
「コントロール対決で一対一交換を繰り返したら、ドローだけのスペルを積む量が多い方が負けるわ? 入れる理由ある?」
「結ちゃんって、結構生き方ロックだよね」
「そうかな?」
ジェム貯めなきゃドロースペルなくてもカード自体は足りるし、最低限だ。一応、ドローソース兼アタッカー生成機の『戦鬼海妖イグヌス』くんは結構入れてること多いし、問題ない。
「『死水の魔アルトラ』の能力を使う。ヒヒ……手札破壊」
「あ、手札からスペル『波乗り』を捨てます。誘発。このカードは、自分の土地に三枚以上水のスペルがあった場合、手札から捨てられた時に詠唱。唱えた後、このカードを手札に戻すを発動します」
「……ヒ?」
「なんや、このカード……。唱えた後、手札に戻す以外の効果がない……? 相手が手札破壊を使わなきゃ意味ないやないか……!」
「対策をしていたということでしょうか! 津雲ミオ! 相手の手札破壊を無効化!!」
ん……?
「あのカード、おかしいわよね」
「そだね」
緑川ちゃんも同意してくれる。おかしいカードなのは間違いない。なのにみんな反応悪いなぁ。
「とはいえ、濁雨選手はジェムを焼いて、相手の手札を破壊できなかった。これは完全なアド損。ハンデスを防ぐなんて……あのカード、ひどいカードね」
ハンデス使いがなんか言ってます
ハンデスの方がよっぽど酷いって
手札破壊なんてするから
もう手札減らせないね!
実際、ハンデスは強い。
ドローカードを使わずに戦い、ジェムとマナを順当に貯めていった場合に、組み立てたプランの中で使えるカードはたったの四、五枚。それを使う前に一枚のカードとして処理し、減らしていくハンデスが弱いわけがない。
対策を怠った相手ならば簡単に蹂躙できるだろう。対策をされたら……まぁ、うん。どんまいかなぁ……。
「ターンエンド」
濁雨タクト ターン3(後)
ボード 0(1)
ランド 0(3)
ハンド 4
ジェムが無意味に犠牲になってしまったのが痛そうだ。次に、津雲ちゃんのターンに移る。
「五コスト、『マジック・コーラル』。ジェムを手札に、能力を使用。次の自分のアビリティフェイズまで、使用する青のスペルのコストを二少なくする」
「これは、強力な効果や。五ターン目に七コストに手がかかるわけや。七コストには『津波』もある。これが決まれば、コントロールはおしまいやな」
「この危機、濁雨選手、どうするのでしょう」
どうやら、津雲ちゃんが『津波』を撃つという話になっているらしい。おおむねそうなるだろうと思うけど、ちょっと違和感がある。というか胸騒ぎだ。
「ターンエンド」
津雲ミオ ターン4(先)
ボード 1(2)
ランド 0(4)
ハンド 4
結果として、手札は変わらず、モンスターを使い、ジェムを消費する形でテンポを取っている感じだ。
結局、これって手札破壊の撃ち合い?
能力使わないなら、殴れよ
津雲ちゃんも可愛いけど戦い方が……
二コスト軽減はズル……ウチの子ないちゃった
コメント、勝手だなぁ。
割と試合内容を批判する意見が強い。これでもスタッフによって不味そうなのは流す前に消されてるらしいから、なんだかなぁって感じ。
「ヒヒ……そのモンスター、危険すぎる。四コスト、『崩壊』」
「ここで確定除去! 『マジック・コーラル』を葬った!!」
この『崩壊』は基礎的な破壊札だ。黒の確定除去。四コストで相手の好きなモンスターを破壊できる。
「結ちゃんって確定除去入れてないよね?」
「今、基本的に黒を使わないからね」
「でも、赤なら裏返すとか、緑なら土地送りとか、青なら手札に戻すとか、確定除去なら色々あるけど」
「それだと、相手のカードの総数が変わらないわ。ジェムを減らして消滅させればなんてことはない」
「ほら、やっぱりロックだ」
直接的な除去じゃない分、即効性に欠け、相手に盤面を作られた後にどうこうすることは難しい。
当然、早期に盤面を形成するデッキには弱いわけだ。速攻とか、速攻とか、速攻とか。
「起点となるモンスターを破壊されてしまった津雲! これは厳しいか」
確定除去、というのは強力だ。なぜなら、どんなに頑張って出した高コストのカードも、同じ一体のモンスターとして処理してしまうからだ。
うわ……
可哀想
相棒がやられたトラウマ蘇った
酷い……
こんなふうに、嫌う人もいるだろう。まぁ、気持ちはわからなくない。
ただ、この確定除去、ちょっと弱い。
「私のターン。七コスト、青のスペルを唱えます」
なぜなら、大抵のモンスターは出たターンに能力を使ってしまう。後出しで処理をしても、後手に回るばかりだろう。
「七コスト青、『花開く睡蓮』。このターン、コストを支払う時、支払うマナの代わりに手札を捨てても良い」
え、なに?
意味わからない
手札あと三枚なんだけど
七コスト無駄にするの?
「私は、三コスト『水霊の灯籠祭』を一コストで唱える」
これは、デッキの一枚目を公開し、手札に加える……それが青のカードだったら、唱えた後手札に戻るカードだ。
***
人生というのは理不尽だ。今まで培ってきた自信も、価値も、一瞬で打ち砕かれることすらある。
俺は、強かった。
地元では、俺に敵うものはいない。プロの世界でもそう……俺よりも強いやつは確かにいた……だが、コントロールでは少なくともこの国で一番なのではないかと、俺は思っていた。
「なぜだ……なぜ六ターン目から二ターン、土地にカードを置かなかった! 俺を舐めていたのか……!」
「お互いにジェムを置かないコントロール合戦。そうなると、ドローソースのほとんどないこちらが不利になる。なら、リソースで勝つにはマナを諦めるしかないじゃない?」
「……っ!?」
勝てないと思った。
その判断は難しい。ジェムを置かないことすら、俺にとっては苦渋の決断だった。なのに、この女は、マナを置かないことすらやる。それを顔色一つ変えずに、間もおかず、息をするようにやっている。
練度が違う。ファイターとしての格が違う。
そして、俺の目の前で今行われているプレイもそうだ。
俺は俺のデッキで、コレに勝てるビジョンが、まるで浮かばない。その少女の瞳には、まるで海底の深淵が映っているかのようだった。
***
「ループ証明が完了しました。私はデッキから手札を好きな数引きます」
そうして、津雲ちゃんの手札には、大量のカードが加えられる。
「東宮さん! これは一体!!」
「なんやこれは……何が起こっているんや」
解説諦めんなよ……。
「えっと、説明するわ。今、津雲ちゃんは『水霊の灯籠祭』を一コストで唱えられる」
「そうだね。二軽減がモンスターの効果で入ってるから」
「それで、そのコストは手札を捨てることで賄えるわけ。だから『波乗り』を捨てたんだけど……」
「『波乗り』には手札から捨てられた時に手札に戻る効果があるね」
そう、『波乗り』の効果が発動するのは、相手から捨てられた時限定ではなかった。自分のカードの効果で捨てても発動する。
「津雲ちゃんのデッキは青単で、『水霊の灯籠祭』は使えば必ず手札に帰ってくる無限リソース。そうなると、コストとして捨てた『波乗り』と、使った『水霊の灯籠祭』は手札に戻ってくる」
「それに加えて、『水霊の灯籠祭』の効果で手札は一枚増えてるね」
「こうなれば、あとは好きなだけ手札を増やしていくしかないわね」
そうやって、手札のカードが増えていく。こうなれば、もう止まらない。
「手札を五枚捨てて、『絶望の未来図』。誘発使いますか?」
「使わない……」
「『絶望の未来図』は追加で二枚使いたいんですけど、一緒に処理で大丈夫ですか?」
「三枚……あるのか!?」
「あ、その時手札から捨てるのは『湧水の祈り』です。これは手札から捨てられた時に唱えられるカードで、自分の墓地にあるカードを全て山札の下に戻すカードです」
「こ……降参だ……」
こうなってしまえばやりたい放題だった。
私がショップで死蔵してたカードと、黒のマスターが昔使っていたカードが合わさり作り出されたコンボだった。
完成した時、とんでもないコンボができたと私たちは大はしゃぎだった。今回が初お披露目だけど、目の前で起こるおかしな動きに作るのに協力した私もちょっとドン引きだ。
津雲ちゃんは決勝リーグに合わせてデッキをブラッシュアップしていたのだろう。予選リーグで使っていれば、こんな目立つコンボ、今ごろは対策をされていたはず。なかなかに津雲ちゃんも意地が悪い。
「濁雨選手! 降参をすると、このファイトだけでなく、今回の二本先取のマッチを降参することになります! 構いませんか……?」
「……あぁ、構わない」
は? 何やってんの?
最後まで戦えよ
それでもプロか?
自分が勝つ時だけねちっこく痛ぶるくせに!
コメントが荒れた。
まぁ、なんで降参をするとマッチ全部落とすかというと、ファイトは降参が許されないから……いや、正確には、相手が認めないかぎり降参はできないと言った方が正しい。
今回の場合、『絶望の未来図』は相手のデッキを見るカードだ。相手に自分のデッキになんのカードが入っているかを知られることはできるだけ避けたいだろう。次の相手のプランにも関わってくる。
だから、それでデッキを見られるのを防ぐために、今回のファイトでは負けが確定したからこそ降参をしたいわけだ。でも、相手はデッキを見たい。降参なんて認めるわけがない。
小規模な大会なんかでは、ここで軽微な反則をして、ファイトを中断して二本先取の一つだけを負けにする事件が起きたりもしたが……まぁ、その対策もあって、降参するという行為、さらに軽微な反則も、ゲームそのものの負けという扱いになった。
ついでに言えば、モンスターで殴ってトドメを刺した方が、観客のウケがいい。スカッとする。だから、まぁ、降参はしないのが普通。
例えば二本先取で二本取られる直前に降参する行為も、場合によっては逃げと取られて叩かれることが多いのが実情だろう。
「どうして、降参を……?」
津雲ちゃんが聞く。
「俺じゃ無理だ。カードパワーが足りなすぎる。この先戦えない。この大会が終わったら引退を考えるべきかもな……」
一人、選手が舞台から消えていった。
それだけ、降参というのは重い決断だったのだろうか。その背中は悲しげだった。
***
「はぁ、今日は散々やったな……」
建物から出て、人心地つく。所属するプロの事務所へのオファーで、半ば強制的にやらされた仕事だった。
本来なら解説をするはずだった引退した選手が、何者かに真のファイトで殺され、回ってきた仕事だ。各国のファイト力を示すための祭りを前に、物騒になるのはいつものことだ。嫌になる。
「ていうか、解説なら闇結でいいやろうが」
試合前のパック開封番組でも出てたし、ツラのいい女だ。最近のガキは、アイツの尖ってた頃もしらねぇだろうし。
いや、覚えてるやつは覚えてるか。案外、苦情も来ているのかもしれない。
というか、やろうとしたことがあった。電話をかける。
「よぉ、元気しとるか濁雨」
「……東宮……」
「やぁ、今回は散々な負け方やったなぁ」
「うるさい……」
ま、落ち込んでる。あんなこと言って舞台を降りて行ったやつが落ち込んでないわけがない。
「なんや、闇結にやられた以来やろ、お前が辞めるって言い出したの」
「そこそこなところで、満足してるお前にはわからない。俺だって、世界の頂点目指してたんだ。続けてたら、いつかは、たどり着けるって……でも」
「俺たちの世代はそうやな……優秀なヤツから辞めていった。俺はまだ諦めてへん」
「っ……!? そうか……っ。あぁ、そうだな……」
「ははーん。そこで同意するってことは、俺よりもお前、優秀なつもりでいるな?」
「そうだが?」
成績もどんぐりの背比べと言っていいか。そんなに差があるとは思っていないが、まぁ、いいだろう。
「しがみ付けよ……予選でお前がボコった俺の分までな」
「……っ!?」
勝者は敗者の気持ちを背負って前に進む。ことさら、これは国の代表を決める為の戦いだ。そんな簡単なことも忘れていたと言わんばかりに、ハッとした息を漏らした。
「なんや、これから飲みにいくか?」
「いや、明日も試合だ。叢雲の予選のデッキを仮想敵に最後の調整をやる。……それに俺は酒は好かない」
「そっか。じゃあ、邪魔したら悪いなぁ? 切るぞ?」
どうやら、大丈夫なようだった。
まぁ、敵に塩を送る……とは言えたかもしれないが、俺は生涯現役で行くつもりや。ふ、濁雨は最後までついてこれへんやろ。
「ありがとう」
切る直前、そんな感謝の言葉が聞こえた。
おまけ ループパーツレポート(闇のカード委員会提出用)
『波乗り』
オーソドックスなハンデス対策。手札交換時に捨た場合に戻ってくる挙動も想定内。問題なし。
『花開く睡蓮』
おそらく『流るる蓮』の関連カード。コストが高く、通常の使用ではほとんど問題がない。
『マジック・コーラル』
スペルのコスト2軽減の効果が強力。ただ、5コストと一定の重さがある。このパーツの中では、単体で闇のカードに近い。
『水霊の灯籠祭』
無限リソースとは言え、3コストと高く、色の縛りもある。通常の用途で使用する限り問題はない。
結論
『水霊の灯籠祭』および『マジック・コーラル』により引き起こされる強烈なループコンボであるが、なんらかの手段で『水霊の灯籠祭』のコストが2軽減された場合、類似の現象が引き起こされる可能性がある。
『マジック・コーラル』を再警戒カードとしながら、『水霊の灯籠祭』を要監視カードとして、動向を見守ること。
他の作品が全然書けないので投稿です。コメント欄の民度悪くしすぎたかも……。
白紙のカードを買ってしまった。ペンで書いて、デッキ作りました。
実際に回すとわかることがありますね……。闇結さんの普段のデッキ速攻に弱すぎます……本当に。