カードゲームの悪の組織で幹部をやってます。闇のカード(禁止カード)が強いです   作:カードショップの闇結さん

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ガチデッキ対決!

 

 

 

「津雲、なぜループ中にドロー札を使わなかったのですか?」

 

「え……? いや、そしたら時間かかるし」

 

「『花開く睡蓮』は公開後のドロー。デッキを一周した場合、あなたのデッキの全てを公開してしまいます。通常のドロースペルでできる限りは誤魔化すのが常道。なぜそうしなかったのですか?」

 

「……時間が……かかるからです……」

 

「制限時間はまだありました。反省なさい」

 

 試合の終わったあとだった。ここは津雲ちゃん用の控え室だ。遅くなったから、私は大人として津雲ちゃんを送ってあげようとしたんだけど、なんか先に絡んでる奴がいた。マスター・オブ・ブラックだった。

 

 ちょっと雰囲気が悪い。ここは俺が間に入るべきだろう。これが、大人としての責務だ。

 

「いやぁ、勝ったんだから、そんな責めないであげなよ。今日はお祝いでいいでしょう?」

 

「闇結さん!!」

 

 こっちを見て、津雲ちゃんはパァッと顔を明るくした。

 ブラックと、私と、津雲ちゃんとの三人で調整してたときもこんな感じだった。ブラックは、すまなそうにこちらをチラッと見る。絶対こいつフォロー役がいればどんなにキツく当たっても大丈夫とか思ってる……そんな顔だ。

 私はブラックの心が読めるようになってしまっていた。嫌すぎる……。

 

 呆れてブラックに視線を返した時だった。

 

「あ、すみません」

 

 チラッとブラックは腕時計を見たあと、携帯の端末を取り出す。そこからは聞き覚えのあるBGMが流れてくる。これは……エクスアーム社情報番組の公式放送のBGM!?

 

 まさか……!!

 

「あ、この番組……楽しみにしてたんだよね」

 

「え? でも、そんなはずは……こんな時間じゃ……」

 

 そう、大会の開始時間直前の特番のはずだ。こんな夜更けにありえない。

 

「再放送ですよ。昼観られなかった人もいるでしょう? 当然です。このあと試合の編集版の放送もやりますから」

 

「前番組からやらなくても……」

 

 まぁ、たぶん、この再放送分、私にはギャラが積まれてるんだと思う。そう考えると、別に悪くはないんだけど、あの時のはっちゃけ具合を思い出すと、素直に喜べはしない。

 

「では……よっと」

 

 黒のマスターが、なにか端末のボタンを押した。

 そうすると、空中に映像が浮かんだ。

 

「え、なにそれ!?」

 

「最新技術です。モンスターの立体投影にいつか使うべく温めてる感じですね」

 

「へぇ……」

 

「空中に……私が……」

 

 スクリーンなしで映像が投射されてる感じだった。後ろから見ても鏡みたいになってないのは不思議だ。最新技術ってすごい。

 

「どんなデッキが出てくるんだろ。吸血デッキ強くなりそうだよね? 使われるかな?」

 

 でも、津雲ちゃんはそんな最新技術よりも、新パックが大事なようだった。最近の若い子はカードにしか興味がないんだろうか? 私が最新技術に動揺している間に、椅子を持ってきて座って、完全に映像を見る体勢だ。

 

「さぁ、どうでしょうね」

 

 黒のマスターも、端末を机に置いて、椅子に座ってリラックスをしていた。

 

「えっ? というか今見るの! 私がいるここで!?」

 

 我に帰って、抗議に声をあげる。

 

「あ、闇結さんはネタバレ禁止だから」

 

「実は私も放送前に何度も見ましたが、内容は黙っておきましょう」

 

「え、じゃあなんで再放送付けたの!?」

 

「録画もバッチリですよ?」

 

 意味がわからなかった。

 そうこうしてるうちに番組が始まってしまった。

 

「緑ちゃんとー」

 

「結ちゃんのー」

 

「ガチデッキ対決ー!! イェーイ!!」

 

「パチパチぱちー」

 

 うわー、テンションたかー。

 改めて、こう客観的に見ると自分のテンションに引いてしまう。でも、こんな番組、無理やり上げないとやってけない。

 ちなみに、前回の番組と続けての二本どりである。

 

 前回のパック開封は開会式直前の特番で、今回は本試合開催前の特番だ。

 

「闇結さん、美人なのずるいよねー。スタイルもいいし。これで歳取らないっていうんだから」

 

 番組が始まって、津雲ちゃんの感想がそれだった。私のコスプレ姿が目に入る。

 

「やはり素晴らしい衣装。天音の勇姿は全世界に届きました」

 

「え、ちょっと待って、これ全世界放送だったの……!?」

 

「えぇ、全世界の代表選の前番組に使われてます」

 

 知らなかった……。

 いや、でもエクスアーム社の未発売パックの開封動画なら、全世界放送もおかしくないか。私が適当に説明聞き流してたのかもしれない。

 

「この番組ではー、パックから出た新弾カードを使って実際に対決していくよー」

 

「ふふ、私はデッキはもう決めたわ。素晴らしいデッキが出来上がったの」

 

 私はいい感じの笑顔を浮かべて、デッキをカメラに構えて見せていた。非常に決まってると思う。

 

「闇結さんって、テレビだとこういうキャラなんだよね。なんというか、暗黒微笑って感じの」

 

「ええ、天音は昔の選手の頃からこういうキャラですよ? 暗黒微笑って感じの」

 

「や、やめてよ……死んじゃう……私、死んじゃう……。どうしてそんな酷いこと言えるの? 本人の前で」

 

 人として、思いやりとかないんだろうか。

 カードゲーマーの頂点に立つ人間の姿がこれでいいのか?

 

「ほら、はじまりますよ?」

 

 画面の中の私たち二人は、デッキを持って向かいあう。

 そうすると、ファイチューブで出力されるデジタル式の対戦用画面に切り替わった。そっか……最近はもう上から直撮りもやらないんだよね。ファイチューブができる前はそうだったんだけど、時代の進歩に少し寂しさを感じる。

 小窓に私たちの顔が映って、リアクションが見える感じだ。

 

「じゃ、先攻は私からね」

 

「へぇ、魔導デッキかー。結ちゃんにしては珍しい」

 

 置いたマナに、緑川ちゃんが反応する。デストラクション戦術が基本の私だ。もうちょっと違う感じでくると思ったのかもしれない。

 

「それで、そっちは吸血デッキ」

 

「そう。がおー、結ちゃんを虜にしてやるー」

 

 吸血鬼衣装の牙を見せて、緑川ちゃんはそんなことを言った。

 

「ふ……。もう虜かもしれないわね。可愛いわよ」

 

「きゅーん」

 

 緑川ちゃんは顔を真っ赤にして、顔を両手で覆って体をくねらせる。

 

 それを見て、津雲ちゃんは首を捻った。

 

「なにこれ?」

 

「だ、だって緑川ちゃんから渡された台本に書いてあったし……」

 

「可愛いわよ、天音」

 

「あ、うん、ありがと」

 

 なんというか、女同士を仲良くさせることで男の影を見せないようにする作戦だろうか。女性をキャラクターとして売り出す時によくやる奴だ。

 それで男と結婚して、絶望したファンが集めたグッズをボロボロにする奴だろう。緑川ちゃん、罪な女だ。

 

「さて、いくよ? ジェムコスト2で、『吸血王の棺』を場に出す」

 

「相手のモンスターの召喚に反応して、墓地からそのコスト以下の『吸血』とつくモンスターを踏み倒すアーティファクトね」

 

「さらに二コスト、『チャージ・シャドウ』を唱える。三枚引いて、二枚を墓地に置く」

 

 動きとしてはかなり完璧な初動だ。墓地からの踏み倒しのアーティファクトの設置に、墓地肥やしを兼ねる動き。

 

「うーん。『吸血王の棺』……。確かに強いけど、ちょっと物足りないね」

 

「相手の召喚時に合わせた踏み倒しですから、相手はアビリティフェイズで対処可能。そもそも、モンスターを面展開する用の効果ですから……。ジェムが足りなければモンスターを展開できない以上、このアーティファクトにジェムを食われるというのも痛い」

 

 まぁ、悪い効果ではない。十分に採用の価値があるだろうと思う。

 

「じゃあ、こっちのターン。『魔導公女ララリア』を召喚する。『吸血王の棺』は?」

 

「発動しない」

 

 妥当だろう。相手のジェムは二枚。『棺』の維持に二枚必要な以上、モンスターを踏み倒す余裕はない。

 というか、二コストのモンスターを召喚するならさっきやってるだろう。そっちの方が『棺』を壊さないで済むし、能力も使える。

 

「ジェムを外して『ララリア』の能力を発動する。『魔導』とあるモンスターではないカードを一枚デッキから選び、山札の上に置く。『魔導詠唱「転生」』を山札の一番上に」

 

 こっちはいい感じの初動だ。

 

「光谷ちゃんの『光』デッキもそうだけど……名称指定って、ジェム外すだけなのが多いよね」

 

「そういうデッキはモンスターがモンスターを引っ張ってくるのが普通ですからね。ジェムを消費するようでは強力な盤面を形成できない。歴史の闇に消えていったカードも多くあったでしょう」

 

 基本的に汎用モンスターは赤以外、ジェムを消費してしまう。そういう汎用カードを多く積んだデッキでは、基本的にターンに一つしか貯められないジェムをどう管理するかが大事で、プレイヤーの手腕が問われることになる。

 

 対して、まぁ、テーマデッキでは、ターンに一回のモンスターの追加から、モンスターの能力をたくさん回してアドバンテージを取っていくことになるだろう。

 

「じゃあ、こっちのターン。三コスト支払い『吸血コウモリ』を召喚。ジェムを外して能力。次の自分のターンの始め、自分の土地にあるカードの枚数以下のコストを持つ、土地エリアにある『吸血』とつくモンスターとこのモンスターを入れ替える」

 

 自分の土地エリアとの一対一交換のカードだ。ラグもあるし、出せるカードも限られている今の段階では、そこまで強い効果ではない。このカードの本領はマナが貯まった後だろう。

 とはいえ、能力を使ってもジェムが減るわけじゃない。使い得という判断だろう。

 

 ここまでくると、だいたいデッキも見えてくる。黒青緑で墓地と土地の干渉手段に富み、臨機応変にモンスターを引っ張り出してくるデッキということだ。

 

「じゃあ、こっちのターン」

 

「その瞬間、誘発『空中楼閣』。山札の上から三枚を土地エリアに置く。次の自分のターンの初めに、土地エリアのカードを三枚墓地に置く」

 

「うぇ!?」

 

 それは画面の向こうの俺のうめき声だ。

 

「は……?」

 

「緑川翼……本気ですね……」

 

 そして、画面を見てる場が凍った。『空中楼閣』……効果自体は地味だ。マナを増やすが、ターンの初めに墓地に行くから使えるわけではない。一見、なにがやりたいかわからないカードに思えるだろう。

 

 タダで使える墓地肥やし……しかもマナにあるカードから選べるところもずるい。

 まぁ、このカードの本領はそこばかりではない。

 

「くくく……気がついたかい? 結ちゃん。次の私のターンの開始時、六コストのモンスターが『吸血コウモリ』と入れ替わる」

 

「なんですって!!」

 

「結ちゃんはまだ三マナ。つまり、結ちゃんよりも、倍早く、倍強いモンスターが場に出るということ!」

 

「く……っ」

 

「くっくっく……さて、どうするかな?」

 

 その倍々理論に画面の向こうの私は歯噛みをする。実際、六コストからモンスターのスペックは跳ね上がる傾向があるから、倍の強さじゃ済まないんだけど。

 

「でも、『吸血コウモリ』を除去すれば終わりだよね?」

 

「天音が除去を積んでいると思いますか?」

 

「あ、うん……」

 

 純粋な解決法はそれだ。とはいえ、三コストで使える除去といえば、バウンス――( )手札に戻すスペルくらい。あとは、ジェムロックだけど、入れ替わる『吸血コウモリ』には意味がない。

 

「三コスト、『魔導学徒ナナミィ』を召喚する」

 

「『吸血王の棺』を起動。墓地から、『吸血信徒』を場に出す」

 

 ついに棺から出てきた吸血モンスターだ。相手のジェムは三枚なことを考えると、『吸血王の棺』の維持はここで諦めるという感じだ。

 

「闇結さん厳しい……」

 

 津雲ちゃんがこぼした言葉はその通りだ。

 でも、私には必殺コンボがあった。

 

「まず、『ララリア』の能力を起動。山札の上を『魔導詠唱「転生」』に固定。『ナナミィ』の能力を起動。ジェムを外して能力。山札の上を捲る。それが『魔導』とあるコスト四以下のスペルなら唱える。それ以外なら墓地に置く」

 

「……これって……」

 

「『魔導詠唱「転生」』を無料詠唱。『ララリア』を破壊。そうした場合、それよりもコストが一大きい『魔導』とつくモンスターが出るまでデッキを捲り、召喚する」

 

「……!?」

 

「四コスト。『ララリア』を進化させ、『魔導師範オルトレイ』。能力を発動。墓地にある五コスト以下の『魔導』とあるスペルを唱える『魔導詠唱「転生」』を選択。こうして唱えられたスペルは山札の下に行く。『オルトレイ』を破壊」

 

「……!! ……??」

 

「五コスト、『魔導士クノン』を召喚する。ジェムを外して能力。手札からコスト四以下のスペルを唱える。『魔導詠唱「転生」』を唱える。『クノン』を破壊」

 

「……? ……??」

 

「六コスト、『魔導死術士ハイドラ』を召喚。能力を発動。墓地から、このターンに破壊された『魔導』と付くモンスターを蘇生する。『ナナミィ』の上に『オルトレイ』を進化。さらに『クノン』も再召喚。『オルトレイ』の能力で墓地にある『魔導詠唱「転生」』を再起動。『魔導死術士ハイドラ』を破壊」

 

「……?? ……??」

 

「七コスト、『魔導教皇フォビリア』。山札から、好きな魔導と付くスペルを手札に加える。『魔導詠唱「転生」』、『魔導連唱「反撃」』、『魔導斉唱「相殺」』を二枚ずつ手札に。『魔導士クノン』の能力を発動、手札から『魔導詠唱「転生」』を使用。『魔導教皇フォビリア』を破壊」

 

「……! ……!!」

 

「八コスト、『魔導技士バーテックス』。ジェムを外して能力。山札からジェムコストが五以下のアーティファクトを選び、場に出す。その後、山札の上からそのジェムコストと同じ数のジェムを置く」

 

「アーティファクト!?」

 

 ここにきて、ようやく『魔導詠唱「転生」』以外のカードが踏み倒される。

 

「ジェムコスト五、『増幅の魔導陣』。そして、『バーテックス』の能力はまだ終わらない! それが魔導とあるアーティファクトなら、マナコストの効果を起動してもよい」

 

「な、なんだって!!」

 

「マナコスト五を踏み倒し起動。私は虚空からスペルカード『魔弾』を取り出し詠唱する!」

 

 すると、画面がいったん盤面から切り替わる。私がなにもない虚空からカードを取り出して、カッコよくキラリと使用する映像だ。

 

「えっ、これ、編集!?」

 

「ふ、ふ、ふ」

 

「真のファイターともなれば、虚空からカードを取り出すことなど造作もありません」

 

「え……? えっ?」

 

 真実は闇の中、ということだ。

 

「『魔弾』の効果で、ライフを二点破壊」

 

 ジェムを集める都合上、打点が少なくなるのはアーティファクトデッキの弱点だ。それをこのカードは補うことができる。

 

「……きゃー……! ずっきゅーん!」

 

 大袈裟にのけぞる緑川ちゃんだ。撮ってる時も思ったけど、銃の発射音、撃たれる側が言うのおかしくない?

 

「そして、スペルが詠唱された時、『増幅の魔導陣』のジェムコスト五を起動。このターン唱えたスペルを山札の中から一つ選び、唱えることができる」

 

「……!?」

 

「そう、この虚空から取り出したスペル『魔弾』は唱えられた後、山札の下に行く」

 

「それって……!」

 

「山札から、『魔導詠唱「転生」』を唱える。『バーテックス』を破壊」

 

「知ってた」

 

 デッキがまた、開かれていく。その先にいるのは至高の一体。

 

「九コスト! 『魔導師範オルトレイ』を超越進化! 『魔導開祖ララリアーシェ』」

 

「魔導の真理を追い求め、転生を繰り返し、ようやく解脱した姿がこれですね……」

 

 九コストという大型なコストに加えて、超越進化という進化の上に重ねる二段階進化の恐ろしい召喚難易度を持つモンスターだ。

 

「『魔導開祖ララリアーシェ』の能力を発動! お互いスペル以外のマナを全て破壊!! オールランドデストラクション!!」

 

「闇結さん……歪みないなぁ……。結局マナ破壊……」

 

 津雲ちゃんが言った。

 まぁ、安全に蓋できるしね。

 

「そして、追加のロック効果が発動! 相手はモンスターを召喚できない!! 私の勝ち!」

 

「あ、相手のカードの効果によって、マナが破壊される時、誘発します。『世界樹の祈り』。このターン、私のマナは破壊されません」

 

「ぴょ……?」

 

 お互いのマナ破壊のはずだったが、なんか、私のマナだけなくなってしまう。画面の中の私……かわいそ……。

 

 ついでとばかりに、『増幅の魔導陣』もオーバーヒートして墓地に行った。

 

「じゃあ、私のターンだね」

 

「で、でも、そっちはモンスターを召喚できないわよ。私の方が有利!」

 

「まず、ターンの初めに『吸血コウモリ』を六コストの『吸血鬼女カラミィ』と入れ替えます。これは入れ替えなので、召喚じゃありません」

 

「はい……」

 

 さっき使った『ララリアーシェ』のロックがすり抜けられた。こういうことって、あるよね……。

 そして、緑川ちゃんの土地からは、三枚のカードが墓地に置かれた。同じタイミングで、『吸血王の棺』もジェム整理で墓地に置かれた。

 

「さらに『吸血鬼女カラミィ』の能力を発動。ジェムを墓地に、この能力は場に『吸血眷属』が存在せず、墓地に『吸血眷属』がある時のみ発動できる。相手一体を指定して、このモンスターが場を離れるまで除外」

 

「……あっ」

 

「魔導開祖、『ララリアーシェ』を指定」

 

「ま……っ、待ってよ……ねぇ、お願い」

 

 ちなみに、『吸血眷属』は三コストで、なんの能力もないカードだ。能力のないカードといえば『突撃兵アルス』が有名だが、そちらは一コストだった。だが、【吸血】デッキには、ほぼ必ず『吸血眷属』が入っている。それはなぜか……。

 

「私の墓地から、『吸血眷属』を除外される『魔導開祖ララリアーシェ』と入れ替えて、私の場に出す……今除外された『魔導開祖ララリアーシェ』の名前と能力は、入れ替わって出てきた『吸血眷属』に与えられる」

 

「…………」

 

「『吸血眷属・魔導開祖ララリアーシェ』爆誕!」

 

「う……うぅ」

 

「いぇーい。結ちゃーん、見てるー? 結ちゃんの頑張って出した魔導開祖だけど、私の隣でチューチューされちゃったよー!」

 

「ひーん……」

 

 どんなに強いモンスターも、チューチューされてしまったらおしまいだ。敵に寝返ってしまったのだ。

 

 一応、除外されるカードとの入れ替えで場に出ている点は優しいのかもしれない。カードは基本、エリアをまたいで動いたら、別のものとして扱う。ただ、除外されたカードの復帰は別……元の状態を引き継いでまた戻ってくる。

 

 だから、『吸血鬼女カラミィ』を場から離して、『ララリアーシェ』を復帰させれば、入れ替え先だった『吸血眷属』は、入れ替え失敗となり、自動的に元あった墓地へ退くことになる。

 

 でも、入れ替えだから、召喚ロックに引っ掛からなかった。

 

 ただ、そう。入れ替えはジェムの状態を引き継ぐ。『ララリアーシェ』はジェムのついてない状態だった。『ララリアーシェ』の能力は、このターン、使えない状態だ。

 

「『吸血信徒』の能力を発動。自分の場にある『吸血』モンスターの能力を使用。『吸血眷属・魔導開祖ララリアーシェ』の能力を使用」

 

 まぁ、便利なモンスターがいたんだけど……。

 

「ねぇ、緑ちゃん。私、もうモンスター召喚できない?」

 

「うん、そだね」

 

「さっき、手札に加えた私のスペル……アレで全部なんだよ?」

 

「うん、スペルカウンター系誘発だね」

 

「さっきのコンボでデッキ、たくさん削っちゃってる。ずっと能力使う? 私のデッキがデッキでなくなるまで?」

 

「うん、負けだね」

 

 そこで、対戦の映像は終わって暗転した。

 この後、実は『魔弾』で醜く争ってみたりはしたのだが、カットされたようだった。まぁ、あんなの映しても仕方ないか……。

 

 すぐに次の場面に入る。

 

「う、嬉しいか……?」

 

「え……っ?」

 

「対人メタで勝って嬉しいかと聞いているー! このー!」

 

「きゃー!」

 

 対策札を入れるのはいい。いいけど、絶対あの『世界樹の祈り』は許せない。

 普通に考えて、対策札とデッキの出力はトレードオフだ。対策札を入れるというのは、デッキを歪ませる苦渋の選択なのだ。私のデッキタイプが流行ってるわけでもないのに、そこまでして、私のデッキに刺さる札を入れるなんて……酷すぎる!

 

「そういえば、闇結さんの衣装ちょっと変わってない?」

 

「『吸血眷属・死霊技士パニパ』のコスプレです……」

 

「あー、負けたから?」

 

「はい……」

 

 そう、負けた私は『吸血眷属』にされてしまっていた。具体的には赤いカラコンに加えて、牙をつけて、コウモリの羽をパサパサした感じである。

 

「ふっふっふ……我が眷属よ。罰ゲームだ! 三回まわってワンと鳴くのだ!」

 

「はい……。くる、くる、くる……ワン!」

 

 あぁ、これが全世界放送か……今更になって、ちょっと涙出てきた。これが、私の勇姿だ……。

 

「天音……とても可愛いですよ! いつみても可愛い!」

 

「はい……」

 

 ブラックが、喜んで、テンション高くそう言ってきた。こいつは私の敵かもしれない……いや、そういえば、敵だったなぁ。

 

 そんな私の罰ゲームには目もくれず、津雲ちゃんは自分の端末をいじっていた。

 

「うわ……すご……。『魔導開祖ララリアーシェ』暴騰してる……三百万……?」

 

 九コストの超越進化とかいうどうやって出せばいいかわからないカードだった。それに道筋がついたことにより、価値が生まれ、みんなが一斉に集めようとしている。投資目的の人間もいるだろう。

 

「『魔導詠唱「転生」』には一千万ついてますね」

 

「やっぱり全世界に放送した影響力かなぁ」

 

 世界中の人間が、今のムーブを見て欲しくなっちゃったわけだ。

 

「それじゃあ次回! 新弾のカード限定、四十枚での対決をしちゃいます! あの超超レアカードも実際に使ってみた……!? 乞うご期待!」

 

 そう、まだ撮りだめがある。前番組はまだ終わらなかった。






まずは、なにも考えずに、次のURLをクリックしてください! いいですか? なにも考えずにクリックして、そこに行くだけでいいんですよ? そうしたら幸せになれるかもしれません!

新規で読んだ人は四話にあったやつと同じなので大丈夫です。

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最近のAIはすごいですね……。
試しに作ったラキエルの絵とかありますけど……AI絵はなに言われるかわからないので、とりあえずパスで。
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