時は過ぎて目標ホロウの入口にて集合。
「点呼を取りましょう。V.IIスネイル 現着。」
アーキバスからの支給武装を身に纏う男女の隊員と自身に最適化された装備を身に纏うスネイル、ボンプ(パエトーン)が場に揃う。
『今回のガイドを努めさせて貰うプロキシ、パエトーンだ。よろしく。…所で、ホロウからの脱出方法は』
点呼を終え、当たり前であるが欠員は居ないようで作戦内容の再確認を行う。
「今回の目的と作戦内容はしっかり覚えていますね?」
「はっ!今回の目的は《幼生ホロウの縮小、または消滅》を望むことです、スネイル閣下!」
「そして今回の作戦は《戦闘は控え、ホロウの奥にある火薬庫の爆破を狙う》です、閣下!」
「ええ、そうです。あんな些末なホロウに、この私も出るというのですから余計な事はしませんよ。脱出については、そこにある輸送ヘリを私に追尾させます。そして私たちのガイドをするプロキシは…」
スネイルが可愛らしいポンプに目をやると1歩前に出て役割を話す。可愛いね。
『僕の役割は3人のガイドだ。主に敵性反応のある所を避けて通るよう誘導したり、ホロウの裂け目に吸われないようにサポートしたり、裂け目を使って近道を案内したりするよ。ホロウの侵食状態に対抗する薬も十分持ってきているから安心して。』
小さく弱いホロウであるのに周到な用意に隊員は訝しげだが、あるならあるに越したことはないと納得したのか直ぐに真剣な表情に戻った。
「移動中は私語、勝手な行動は慎むように。弱小と侮った結果に早死したければ1人でしてください。では、ヴェスパー行動開始です。」
「「はっ!」」
スカーフを巻いたボンプが3歩先を歩き、その後ろを1列になって着いていく3人。その進行スピードはゆるりとした物ではなく、基本的に早歩き、エーテリアスやゴロツキが居たら隙を見て静かに走り抜けるなど、割と早く移動している。それでもまだまだ目的地には程遠い。
『ここ、近道になる裂け目があるから通っていこう。先に行くから着いてきて。』
「分かりました。」
「閣下。プロキシの言うことが正しいのであれば、この先の裂け目を通って行けるのでしょうが…」
「本当に大丈夫、なんでしょうか…申し訳ありません、閣下の信頼するプロキシであろうと一抹の不安が拭いきれず…」
「…ホロウでは道無きところが道となり、道が道で無くなる異常空間。ですからプロキシというのは信頼と信用が何よりも大切な仕事。こんなことは知っていて当然です。…私とパエトーンの付き合いも浅くは無い。パエトーンがわざわざ私たちを嵌めて得られるメリットは無いこと、そこまで薄情では無いことを知って正式に依頼しているのです。このことは帰ったら日記をつけておきなさい。」
壁を指して着いて来るように言うポンプに対して、スネイルは当然のように返事をするもまだ完全に信用が出来ていない2人は本当に大丈夫なのかを聞く。
「申し訳ありません、閣下。」
「了解です、閣下。」
裂け目を通って行った3人と1匹はまた代わり映えのない道を進んでいく。
『待って。この先にエーテリアスの反応がある。ただ、迂回出来る道は無いから危険だけど戦うかゆっくり通り抜けるかしか出来ない。スネイルさん、どうしますか?』
新人2人が僅かに体を強ばらせるが、一層気を引き締めてスネイルの言葉を待つ。
「…ふむ。エーテリアスの数と種類は?」
『反応から見て数は6体、種類までは分からないけどそこまで強いエーテリアスじゃないみたいだ。きっとそこの2人でも戦い抜ける相手だと思うよ。』
「ならばここは私たちが。」
「閣下とプロキシは俺たちの戦い方を見ていてください。」
スネイルがタイマーをスタートすると同時、2人はそれぞれの武器を手にエーテリアスに向かって飛び出して近くにいたヤツを瞬殺。
襲撃に気づいた他五体が頭を震わせ威嚇し、爪を尖らせ飛びかかる。2人は左右に展開し五体の圧力を分散させて各個撃破にかかる。
「…っ、はぁっ!ふっ!」
女隊員がエーテリアスAの突進をギリギリで回避してエーテリアスBからの爪の攻撃を振りかぶったところで発砲する。攻撃体勢を崩されたことで大きく仰け反り隙をさらしたエーテリアスBに足払いをかけて転倒させると間を置かずに背後からのエーテリアスAの飛びかかり攻撃を足払いの勢いのまま振り向き撃ち抜き撃破。エーテリアスBは体勢を立て直していたが、動きは緩慢でそのまま撃ち抜かれた。
「ラスティ第4隊長に倣った身のこなしとフロイト第1隊長に付き合わされた結果身についた剣術。得と味わうといい、怪物。」
一方男隊員はエーテリアス三体の猛攻をブレードと軽い身のこなしで凌ぎ、3体の連撃の中にできた隙をつき一体撃破。正面に2体、機を伺うように居る。
が、男隊員は人睨みするとふっ、と振り向き、エーテリアス達に背を向けた。当然、エーテリアスはそれを見逃すことなく揚々と襲いかかる。
「G…?GRUUAAA!!」
既に掃討完了の旨を報せる2人に対して2体のエーテリアスは同時に、間にあまり距離が無いまま駆け出して……
「ただいま掃討完了致しました、スネイル閣下。」
「お待たせして申し訳ありません、閣下。」
ボンッ
「GYUAAAA!?」
2人の隊員が後ろに放った爆弾をもろに食らって消滅した。
「新人にしては、よくやったと言っておきましょう。では引き続き些事は任せますよ。」
スネイルやパエトーンはもちろん、新人の隊員であっても連れられるだけの能力があり、訓練されているメンバー。近道や隠密をしくじることの無いメンバーで順調に進んでいく。道中ではちまちまとエーテリアスが襲ってきたりはしたが、全て2人の隊員の糧となった。時にスネイル達とちょっとした話もしながら進んでいくと……
『到着だ。スネイル、ここで合ってるよね?』
「ええ、ここです。では中の火薬庫の着火は私が行いますのであなた達はここで待機しておくように。脱出については輸送ヘリを追尾させていましたので、そちらに乗り込んでください。運転は私がやりましょう。」
スネイルはそれだけ言うと施設の中に姿を消した。スネイルは何を目当てに、そしてなぜホロウを潰す選択をするのか。それは下っ端である隊員にも、部外者であるプロキシにも、知り得ることではなかった。
To Be Continued……
報酬:9万ディニー
内訳:【伝説のプロキシ】パエトーンを雇うにあたっての適切な価格。ホロウの規模が小さく、時間も短い簡単な依頼の為。
備考:あのホロウのキャロットデータがあった、戦力は申し分ない、どころかスネイルはあのホロウについて何やら知っているようだった?なぜパエトーンとして自分たちを雇ったのか意味がわからないほどだ。キャンドル社の上層部としてはプロキシを雇うなんて判断はしないはず、つまり彼の独断。おそらくパエトーンの名前と価値を計っていたと思われる。…悪い人ではないが、やはり彼も企業の人間だ。あまり深い付き合いはしない方がいいだろう。
次回─「元防衛軍所属」