AC動きます(挨拶)
みんな大好きあの人ですよ!
現在スネイルは、仕事を一通り終わらせて会社から出てきたところだ。実に50連勤ぶりの自由である。それには相応の理由があるのだが……
「……ふぅ。これでひと段落と言っていいでしょう。今日中の物は全てカタをつけましたし、この後は白祇重工に行かねばならん…だが、これも全ては【ホロウ探索用人型戦闘兵器】を、【アーマード・コア】を作るため。特許申請が通れば、誰も彼もがアレを欲する。防衛軍然りTOPSしかり、反乱軍然り……」
「おや、そこに居るのは……」
色々と考えているスネイルの近くを1人の男がすれ違う。その男はスネイルに気づくと声を漏らし、漏らした声に反応したスネイルがその男を見る。
「誰です?不躾に人を見るのは……ちっ」
「お久しぶりですね、身企貴!ああ、こんな所で偶然会えるなんて。やはり私達は何かしらの縁があるのかもしれませんね…もしそうならば、素敵だ!」
「…何ですか、貴方は。」
その男は爽やかな風貌をした、青い髪の偉丈夫。名を──
「おや、私の事を忘れてしまったのですか!?会えない日々は、いつしか記憶を風化させてしまったのですね…悲しいですが、新たな縁を結べるなら、この【ブルートゥ】!悲しみを乗り越えましょう。」
現在彼はスネイルが居るルミナスクエア付近ではなく泅瓏囲に住んでおり、時折山をぐるっと回って澄輝坪の雲嶽山やら良い品屋やらに顔を出して、飲茶仙で偶にある依頼をこなしている。ホロウレイダーとして日々ホロウで戦いに明け暮れている哀しい男でもある。
「ふん、忘れられたらどれだけ良かったか……暇なんですか、貴方は?元防衛軍がホロウレイダーに堕ちるとは、いつ考えても──」
「ああ、ご友人!ご友人が【ご友人】ならば、その話題に触れないでいただきたい…そこはとても、ええ。軍にもとっても私にとってもデリケートな話題ですので……お喋りに興じたいのは山々ですが、それについては切に触れないでいただくようお願いしますね、ご友人……」
50連勤の高い密度の仕事を終えて気が回らなくなっていたとも、気が緩んでいたとも言い訳は出来る。しかしスネイルは数少ない友人をこんなくだらないことで失いたくはないと、下げ慣れた頭を軽く下げて謝罪する。
「……ええ、少々踏み込みすぎてしまったようですね。すみません。私としても軍とことを構えるだなんて面倒なことはしたくないので触れないと約束しましょう。」
「久しく会う友人との会話が暗いとは悲しいものですね…ここからは明るく行きましょう。ご友人、昔から夢だと言っていた例のロボットの進捗はどうですか?」
「順調と言わざるを得ないでしょう。今や重要機密の企画となりましておいそれと話すことはままならないですが…」
「それならば良いのです!ああ、友人の夢がもう少しで叶うとは。このブルートゥ、我が事のように嬉しく思います!スロー、スロー、クイッククイック、スロー…!」
「こんな場所で踊るな!」
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「コホン。まぁ私の方はACの目処が立っていて完成機の作成完了まであと一歩という所までは…教えておきましょう。知られて困るものではない。盗むことも、技術を登用することも叶わない設計です。」
「それはそれは、完成が待ち遠しいですね。」
「……一応とはいえ、友人だからとACを見せることも、ACに乗せることもしませんから。RaDの技術屋に見せては以前あったようにされては面子が立たない。まったく…あの時の私は未熟でした。貴様の性格を知っていて友人だからと根拠なく信頼しMTを自慢したなど……戻れるなら、あの時の私を止めますよ。」
「ええ、あれは素敵なプレゼントでした!カーラも、チャティも大層喜んでいました!『新しい、面白そうなおもちゃが手に入った!』と。改造されたものは私へのサプライズとして1週間、どんな時でも驚かせてきたのはとても楽しかった…!」
そこで一区切りを付けるような空気が流れ……
「一度着いた火種はそう簡単に消えない。讃頌会の例がある以上、大佐ともなる軍人なら分かるはずですが…まぁ、過去という苔むした石のしたからミミズのように出てくるとは思わないですか。」
「あぁ……私のミルクトゥースも意気消沈の相を浮かべている……」
「【ブルートゥ】。分かっていますね?」
「ええ、彼女の行動は把握しました。1人のときを狙って、確実に情報をお渡ししましょう。彼女は聡明…激昂してすぐに行動などしないでしょう。なにより、旧くからの友人ならば信じたい。」
…それからしばらく、最近のブリンガーの様子がおかしいこと、たまに見る狼のシリオンがどこかで見たような気がする等、他愛のない世間話をした。
「おや……長いこと留めてしまってすみません。そろそろ私も何かしら依頼を探さなければ。ではまたお会い出来ることを願っています。お元気で、ご友人!」
2人はそこで別れて、ブルートゥは仕事を探しに、スネイルは会話の中であった情報をまとめていた。
「……さて、パンチャーとキッカー…でしたか。安全装置を取り外し、その分だけ動力エンジンを搭載。スピード、パワーにそれぞれ特化させたピーキー機体にするなど。やはりエーテル漬けのホロウレイダーの考えることは理解できん。」
「会いたくなかったが、それでも新たな情報を得ることが出来たのです、仕事と割り切っておきますか。」
(……防衛軍のロレンツ大佐とポーセルメックスのCEOが1人、ルクロー。かつてのホロウ災害における癒着と汚職、収賄。それにより勇敢なる隊員のラマニアンホロウで起きた無駄な死。これはいいネタになる。何せ……コレを適切なタイミングで、あの日死にぞこなったあの軍人に流せばその者の能力如何に寄るものの大なり小なり軍は混乱を避けられず、そうなれば封鎖されるだろうが秘密裏に零号ホロウの調査へ行けるというもの。)
「……あの時、キャンドル社の上層部を告発して【死神】に一掃して貰って本当に良かった。会社を解体する危機でもありましたが…まぁ、私こそが企業だったと言うだけ。そうでなかったら今頃はどうなっていたことか…」
どこか遠くで聞こえてきた限界社畜の絶叫に身震いしながらifの自分を想像しないように澄輝坪の空を見上げた。
次回─「そんな、私は企業だぞ!?」