入学試験
騎士団に入るため幾つか準備を終わらせすぐに王都行きの馬車に乗り出発した。
入団したら最短でも三年は王都で生活することになるので知人への挨拶も済ませてある。
冒険者のレーヴェ先輩に話したらかなり驚いていたので王都の騎士団はやはり凄い所なのだろう。
いまいち実感はないけど。
ちなみにここ最近で一番嬉しかったことは強くなる手段を得たことでも、尊敬の眼差しを向けられたことでもない。
その嬉しかったこととは宿場町でいつも泊まっていた宿での出来事だ。
最低三年も戻らないので部屋は引き払うしかないと最初は思っていた。
だが戻るまで部屋を空けておいてくれるらしい、理由は綺麗に部屋を使ってくれていたからだとか。
角部屋は埋まりやすいのもあってかなりありがたかった。
「……そしてここが試験会場でもあり、私が通うことになる学園か」
私の周りには私と同じく騎士団に入団するためにやって来たであろう人がこちらを横目で見ながら道を流れていく。
そしてその先にはなかなか立派な建物と案内兼警備員の役割を持ってそうな騎士がいた。
先ほど学園と言ったのは文字通りここが学校のような役割もあるからだ。
多くの人はこの学園で学んだ後そのまま騎士団に所属する。
学ぶ内容も騎士になるための授業が基本だが文官になるための授業も学ぶこともでき、騎士になれなかった人は文官などに就職するらしい。
……この世界の識字率はどのくらいなのだろう? 少なくとも王都はこの学園のおかげで高そうだ。
そして私も入団……入学するため試験会場へ向かう。
この学園 実は入学方法が二種類ある。
簡単に言うと平民用と貴族用の二つだ。
まあ王都というぐらいだし貴族社会もまだまだ健在、入学方法が二つあるのも容易に予想できた。
だが私が貴族用の入学方法で入るのは流石に予想出来なかったよ……
おかしいな? 私は農村出身のバリバリの平民なんだけど。
ヴィーラの手を借りて入学することができるわけだが、もしかしてヴィーラって凄い高貴な身分だったりするのだろうか。
これは足を向けて寝れないな。
法律に不敬罪とかあるのだろうか?
そんなわけでヴィーラの権威に怯えながら試験会場に来たわけだが、前世の学生の頃のような試験勉強などは特にしていない。
理由は簡単 必要がないからだ。
試験内容は面接と実力試験が中心で筆記試験はおまけらしい。
そしてその筆記試験も計算や歴史を答える問題では無く、文字を一通り書けるかの確認のようなものだとか。
多分筆記で良い点を取れたら入学後、文字を習う授業が免除されたり後方勤務に有利になったりするのだろう。
なので体力作りなどを主に頑張るのだが私はもうすでに冒険者として鍛えてある。
もっと言えば産まれた頃から鎧を着るために鍛えたのだ。
体力に関しては何の心配もいらないだろう。
筆記がおまけなのは私が貴族として入学しているのもあるかもしれない。
大半の貴族は幼少の頃から学ぶことができるので筆記はあまり心配いらないんだとか。
私が幼少の頃から村を駆け回って文字を学んでて良かった ナイス過去の私。
「____ッ」
ヴィーラに教えてもらったことを思い出していると試験監督らしき人がやって来た。
そしてこちらを見て一瞬硬直していたように見えたが気のせいだろう。
ちなみに私の服装はいつもと同じだ。
ヴィーラに聞いた話では入学した後に制服が配られるのでそれを着なければならない。
だが入学前は平民からも募集していることもあって服装は自由なんだとか。
つまり私は一応貴族として入っているので美男美女が豪華な服を着ている中で一人だけ全身鎧を着てることになる。
きっと他の人から見たらかなり異質だろう。
私以外の人もどこかそわそわしている気がするけど、まあ 別に問題ないよね。
一番最初 ここでは筆記試験を実施するとのことだ。
次に実力試験 最後に面接試験の順で貴族は試験をするらしい。
「では……筆記試験 始めッ!」
試験監督から震える手で試験用紙を受け取った後、監督の合図で書き始める。
と言っても用紙すら見ないような奴もいるので形だけの合図だろう。
私は戦闘に関係無い座学の授業を減らして実技を増やしたいので埋めれるとこは全て埋めた。
本当に文字をちょっと書いただけなので正直試験になってない気がするけど。
そして試験時間が終わり用紙も回収された。
名前や事前に配られていた番号札も記入漏れなく書いているはずなので無効にはならないだろう。
試験とも呼べない筆記試験を終わらせた後、次の試験会場へ向かう。
しかし この学園凄い広いな、迷わないように道を覚えておかないと。
目的地は屋内から屋外へ、グラウンドのような感じの広場だった。
ちょうど今 広場で試験をしているであろう受験者は木剣で筋骨隆々の試験官と打ち合っているようだ。
そしてその周りに人が並んでいるのか、それとも野次馬として集まっているのか分からないぐらい人が大勢いてすごく邪魔くさい。
列の最後尾がどこか探していると一際大きな歓声が人の群れから上がる。
「おおっ! 姫騎士様だッ!」
「すげぇ 美しすぎるだろ」
「キャーー こっち向いてーー!」
白色の鎧を身に纏った金髪縦ロールが次の受験者のようだ。
まさしく西洋らしい顔立ちで姫騎士の名に違わず誰が見ても美しいと言えるだろう。
しかし剣の構えがあの有名な蜻蛉の構えに見える。
もしかして日本からやって来たのだろうか? それか大和魂を身に宿してるのかもしれない。
「てえぇぇいやあぁぁぁぁ!」
その女は空気を震わせながら木剣を振りかぶりに行く。
その気迫だけで人を殺せそうな勢いだ。
ええ……雄叫びあげながら試験官に突っ込んで行ったよ。
そして渾身の一撃は簡単に流されてそのまま峰打ちで沈んだ……
もっとこう……何とかならなかったのだろうか。
「姫騎士様っ! 次こそは勝利をッ!」
「すげぇ 勇敢すぎるだろ」
「キャーー 監督こっち向いてーー!」
試験官に一太刀も浴びせてないけどそれで良いのか……
それでも声援が送られるとは……姫騎士と呼ばれてるだけあるな。
そして姫騎士のファンじゃなくて試験官のファンが一人いたな。
よく分からないことに感心してる内に私の番になった。
さてどうしようか 剣術なんて知らないから碌に実力見せれないと思うんだが。
……いや そこも含めて実力試験なのかもしれない。
ゴリ押し徒手空拳としょぼい剣術を試験官に評価してもらうか。
私が歩みを進めると先ほどまで騒いでいた野次馬も静かになった。
解せぬ。
「……よろしくお願いします」
「おう 全力で来い」
試験官が言い終わると同時に飛びかかる。
ほとんど奇襲に近いが全力で来いと言われたので問題ないだろう。
「______ッ!」
「これで終わりじゃないだろ?」
脳天目掛けた唐竹割りは防がれた。
ので膝蹴りを顎に喰らわす。
「危なッ」
これも避けられた。
地面に着地すると同時に試験官の足元を払う
「足癖が悪い……ぞッ!」
「ぐッ」
反撃として頭を蹴り飛ばされた。
鎧越しなのにかなり痛い。
痛かったので木剣を目に向かって投擲する。
目を防ごうと試験官の腕が反射的に動いた。
「流石にそれは危ないなッ」
同時に肩を前に突き出し体当たりを仕掛ける。
しかし体当たりは当たらず私は地面に転倒した。
いったい何故?
「ふぅ……どうやら対人戦はあまり得意じゃないみたいだな」
いつのまにか足を掛けられていたようだ。
まさか必殺技の体当たりが避けられるとは……こんなことは初めてだ。
……案外そんなことないかも。
「よし 実力試験は終わり、最後にあっちの会場に行ってくれ。あと面接の時は兜脱いでおけ」
「あ ありがとうございました」
結局木剣二回しか振らなかった……そのうち一回は投げてるし。
ここから剣術を学んでどうにかなるのか?
まあ とりあえず次の試験が最後だから頑張ろう。
どうやら面接試験は一対一のようだ。
なにを聞かれるのだろう……志望動機とかだと答えるのが難しいかもしれない。
強くなりたいから入学しにきました。
うーん、騎士らしくないって理由で落とされたりしそうだな。
久しぶりの面接、それも前世ぶりなので緊張しているといつのまにか会場のある建物へ着いていた。
一人一人連れて行く方式なのだろうか。
建物の入り口に待機していた騎士に執務室っぽい部屋まで連れてかれた。
「失礼します。例の生徒 お連れしました」
騎士がハンサムな声で扉をノックする。
ここまで案内してくれた騎士は声からするとかなり若い。
そして私には聞こえなかったが中から返事があったのだろう。
騎士が身振りで入るように促してくる、このまま入らなかったらどうな「どうぞ 団長が待っておられます」
面接官は騎士団の団長ですか……おかしいと思うのは私だけですかね
「……失礼します」
「いいよ いいよ そこまで畏まらなくて」
高級そうな赤い絨毯や本棚などで埋め尽くされた部屋の中心に禿げた男が座っている。
身体がでかいのに加えて顔も厳ついのでかなり強そうだ、顔に残る傷痕からも歴戦の騎士であることは疑いようがないだろう。
「ふぅん 君が……」
手元にある紙に目を通しながら男はこちらを見る。
な 何だ? そんなにまじまじと見られると怖いんだが。
しかも私を知っているのか? 何故?
そして意味深に呟いたきり何も喋らないのやめてくれませんかね。
怖いんですよ、雰囲気が。
「そうだねぇ 君はこの先何を成したい?」
手元の紙を見るのをやめてこちらを覗き込むように男は見つめる。
え? いきなり将来何したいか聞かれたんですけど。
しかもどうやら私が答えるまでずっと目を見つめてくる。
これが噂の圧迫面接かな?
「…………そう、ですね。私はこの学園で学べることは全て学び、私の夢を叶えます」
うごご 緊張しすぎて何の捻りもなく答えてしまった。
世界を救いたいとか言うべきだったか? でも薄っぺらい嘘をついてもこの人には見破られそうだしな。
それよりいつまで目を合わせれば良いんだ?
怖いよ 威圧感が凄い、前世の就職活動でもこんなに怖い面接はなかったぞ? どうなってんだ私の人生。
私が答えてから何分経ったのだろうか。
時々男が手元の紙を捲る音が聞こえるだけで部屋は静寂に満ちている。
団長である男も、兜を外している鎧の私も一言も発さずに時間は過ぎて行く。
気が遠くなるほど無音の世界が続いて胃が裏返るような錯覚を覚えて来た頃。
面接官はようやく口を開く。
「……では 面接官 兼 団長として言わせてもらおう」
こちらを見据える青色の目はどこまでも見通せそうだ。
「ようこそ 今日から君も学園の一員だ。明日から学業に励むように」
こける これ方言なの知らなかった
そして騎士団入団がいつのまにか学園入学になっていた
何を言ってるのか分か(ry