フルアーマー女騎士   作:雷神すねこすり

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学園初日

◆前回の団長視点◆

 

 

 

 数日ぶりの執務室で学園に入学する生徒の中でも特に見込みのある奴をリストアップした書類を眺める。

 今 私がいる執務室は埃の一つも見当たらないほど隅まで掃除が行き届いていた。

 おそらく綺麗好きな副団長が掃除してくれたのだろう、後でお礼を言いに行かなければ。

 

 しかし東への遠征任務が終わって王都に帰還したばかりだというのに……

 すぐに学園の入学試験を始める上に面倒事を押し付けやがって、まったく学園長の爺め。

 少しぐらい休ませてくれたって良いだろうに。

 

 そして面倒事とは面接試験の面接官のことだ。

 面接試験は一対一。

 学園に入学する理由を知るために実施している。

 また残念ながら面接官を買収して確実に入学できるようにもなっているのだ。

 

 さすが貴族 汚い手段が大好きのようで。

 そんな方法で入学した奴は騎士団には絶対入れさせないけどな!

 

 そんなわけで私は貴族が大嫌いだ。

 声を大にして言いたい、貴族は腐っている。

 王都の癌そのものだしそいつらがいなければ騎士団はもっと進歩するはずだ。

 東への遠征任務も貴族達の横槍がなければもう少し先に進めたのだが……

 まあ過ぎたことはしょうがない。

 

 ここまで貴族を毛嫌いしている私だが全ての貴族が嫌いなわけではない。

 中には真っ当な貴族もいるのは知っている。

 貴族の受験生には何の罪もない その親が腐っているのだ。

 

 ふぅ……少し冷静にならなくては。

 これからある受験者を面接官として見極めなくてはならないのだから。

 側近の騎士に執務室まで連れてくるよう指示する。

 

「失礼します。例の生徒 お連れしました」

 

 指示を出してからいくらも待たないうちに扉がノックされる。

 例の受験者は情報によると全身鎧を着込んでいるためすぐに見つけることができたのだろう。

 そして本当に鎧を常に着ているのなら実力はある程度保証できる。

 

 いつもの癖で返事として机を指で二度叩く。

 見ていてあまり気分が良くないらしいのでこの癖を治すように副団長に言われたんだったか。

 まあ今日はまだ一回しか癖が出てないから大目に見てくれるだろう、絶対次はしないぞ 多分。

 

「どうぞ 団長が待っておられます」

 

 背筋を伸ばした姿勢の良い例の受験生が入室する。

 兜は外しており顔が見える 美青年と表すにふさわしい見た目だ。

 ……仮に入団したら貴族のご婦人方の人気を集めそうだな、騎士団の広告塔のような役割を任せても良いかもしれない。

 

「……失礼します」

 

「いいよ いいよ そこまで畏まらなくて」

 

 やはり緊張はしているのだろう。

 どこか動きや声が硬く感じる。

 しかし真剣に面接に臨もうとしているところは好印象だ。

 

 名前はアルトリア 鉄下級の冒険者で鋼鉄の二つ名持ち。

 

「ふぅん 君が……」

 

 そして本来政治的な都合とやらで北方の貴族の子が入学する予定はずだったのだが。

 今回 その代わりとしてこの受験者は入学することになった。

 私はあの北方貴族には何度か助けられている。

 なので個人的な感情と恩から代わりに入学させるということを手伝ったのだ。

 

 まるで私の嫌いな買収みたいだが多分気のせい。

 なんたってお金は一切貰ってないからな。

 

 あの北方貴族が代わりに寄越したのなら正直何の問題もないとは思う。

 実力もきっと十分な下地があるだろうし精神面でも心配することは特にない。

 けれどそのまま通すだけでは汚い手段で入学した奴らと同じだ。

 だから私自身を納得させるため 自己満足ではあるが一つだけ質問させてもらおう。

 

「そうだねぇ 君はこの先何を成したい?」

 

 子の代わりとして適当に選んだ奴を入学させたのかもしれない。

 もしかしたら騎士団 その先の王国に牙を向くことになるかもしれない。

 

 答えによっては北方貴族には申し訳ないが代わりでも入学させるなど出来ない。

 

「…………そう、ですね。私はこの学園で学べることは全て学び、私の夢を叶えます」

 

 その答えが真実かは分からない。

 だがその目には確固たる意志を感じられた。

 

 夢が何かは分からない。

 しかしその声は確かに信念を持っていた。

 

 彼が答えてからどれほど時間が経ったのだろうか。

 執務室は静寂に満ちている。

 私も、兜を外している彼も一言も発さずに時間は過ぎて行く。

 

 正直 彼の答えは面接試験としては良くないのかもしれない。

 

 だが、なぜだか彼の生き方が眩しいものに見える。

 なぜか彼が羨ましいと、感じてしまった。

 ならばその夢を応援し支援してあげるのが団長としての私の役目だろう。

 

「……では 面接官 兼 団長として言わせてもらおう」

 

 こちらを見返すその目は今まで見てきた戦いに赴く仲間と同じ強い意志が宿っているように思えた。

 

「ようこそ 今日から君も学園の一員だ。明日から学業に励むように」

 

 

 

◆◆

 

 

 

 そうして入学して晴れて学生になったわけだが、最初の一年間は平民・貴族関係なくだいたい同じ授業を受けることになるらしい。

 同じ授業ということは平民と貴族を同じ教室に入れるということだろうか、なんか階級差別とかいじめが横行しそうで面倒くさそうだな……

 私も一応貴族として入学したのでそういった面倒事に巻き込まれる可能性が高い。

 

 私がそう感じたのも学生は寮で暮らすことが義務付けられている上に平民寮と貴族寮に分けられているからだ。

 寮生活を強制しているのはおそらく寝床すら無い平民も学業に集中できるように、貴族は実家の財力などにかまけて学業を疎かにしないようにするためだろう。

 これは自身の勘と学園内で見かけた学生の体格や顔つきから予想したものだ。

 

 学園内では必ず着用しなければならない制服も配られたのだが、これもまた平民と貴族で分かれている。

 ええ……ちょっと差別意識高過ぎませんかね。

 前世はここまでの差別は無い現代日本だったので中々衝撃的なことばかりだ。

 

 貴族用の制服は白を基本に金の刺繍とかがしてあるので凄く高級感が溢れている。

 平民用に配られていた制服は白基本は同じだが、金では無く青や赤の刺繍だ。

 正直言うと平民用の方がセンスがいいような気が……いや、どっちも同じくらいか。

 

 ちなみに私はロングスカートである。

 服の採寸をする際、採寸のおばあちゃんたちに「あら〜 貴方女の子だったのね。かっこいい顔で分からなかったわ」とか言われてそのまま口を挟む間も無くスカートにされてしまったのだ。

 戦う事を考えたら動きやすいズボンの方が嬉しかったのだが……まあ仕方ない。

 武器とかをスカートの中に隠せるので別にこのままでも良いだろう。

 

 

 

 スカートに隠せる武器を私は持っていないことに無いことに絶望感を抱きながら貴族寮の自分の部屋を出て教室へ向かう。

 隠せる武器として一応投げナイフがあるがホルダーがないので残念ながら持って行くことはできない。

 代わりにいつも冒険で草を刈るのに役立った愛用のマチェットを腰に下げて登校した。

 

 学園内はかなり広く迷いかけたが何とか目的の教室にたどり着いた。

 建物内の構造は日本の学校と大体似たような構造だったのは運が良かったと言えるだろう。

 平和な授業ができるように願いながら教室に入るとすでに喧嘩が起きていた。

 ああ……私の学園生活終わったかも。

 

「テメェ! オレより評価が高いからって調子に乗るんじゃねェぞ!」

 

「あら? 平民の中でも威張ることしかできない貴方はこの学園に相応しくないわ。帰って畑作業でもしてなさい」

 

「______テメェッ!」

 

 教室の中では大体三つのグループに分かれて混沌を極めてていた。

 

 ひとつは試験の際に見かけた姫騎士と呼ばれている人が前線に立ち、男と言い争っている。

 姫騎士グループが着ている制服からして貴族が中心のようだ。

 

 その姫騎士グループと先ほどから喧嘩をしているのは赤いモヒカンの青年だ。

 モヒカングループは平民が中心のようだがなぜか不良みたいな見た目のやつしか居ない。

 

 そしてどれにも属さず遠巻きに見ている人たち。

 第三者のグループは貴族と平民まばらで共通点を特に見出せない。

 おそらく言い争いをするのが面倒くさい人達だろう。

 なら私も遠巻きに見させてもらおうか。

 

「「______ッ!」」

 

 席が決まっているということも無さそうなので喧嘩に巻き込まれないよう後ろの方に座る。

 すると先ほどまで言い争いをしていた二人は急に押し黙り、こちらを見てくるでは無いか。

 

 え? 何故こっちを見るんだ! 私を気にせず二人で仲良く喧嘩してろよ!

 

 そんな私の願いも虚しく教室は静寂に包まれる。

 どのグループも私を注視しておりとてもじゃ無いが先ほどの騒がしさに戻りそうに無い。

 

 謎の空気が教室を満たした頃、教室の前の方の扉が開けられる。

 

「今後 この学園で生活する際に注意すべき点と行事などに関して簡単に説明する。お前ら席に座れ」

 

 教師が大声で着席を促すと変な空気のままそれぞれ席につきはじめた。

 そして着席したのを確認すると先ほどの言葉通り注意点と今後の予定を話し始める。

 初日からこれとは……幸先がかなり不安になってきたぞ。

 

 ちなみに喧嘩が止まった理由は血で錆びたマチェットを持ってきたヤバい学生がいたからである。

 

 

 

 学園で生活する際の注意点はそこまで意識しなくても良さそうなものばかりだった。

 制服が無いと学園内を出歩いてはいけない、また学園外に行く際は必ず脱ぐこと。

 無くしたり破損した場合は規定の額で販売してくれるそうだ。

 

 貴重品は金庫に保管するなどして自身で管理する。

 消灯時間後は自室から出ることは禁止するなどのセキュリティ面の注意もあった。

 

 他にも敷地内での攻撃魔術やそれに類する魔道具の使用は原則禁止。

 お金の貸し借り等は禁止 万が一そういった行為を発見した際は停学、または退学。

 仕送り可能な物品や金額の上限。

 決闘システムの詳細とそのルールなど学園らしい……うーん、決闘システムは絶対おかしいよね。

 

「ここまでで何か質問は?」

 

 私以外に決闘システムに疑問がある人はいないのか手を挙げる人はおらず説明はそのまま進む。

 

 行事に関しては外部の人も呼び込んで行う大掛かりな闘技大会。

 王国以外からも挑戦者を集うらしくかなり力を入れているのがわかる。

 

 厳しい環境下でどれほど冷静に活動できるか訓練する長期遠征。

 北方の山岳地帯や南方の砂漠地帯などを予定しているらしい。

 

 さらには訓練生として騎士団の業務の一部を体験する職場体験のようなものなどまであった。

 

 どれも中々楽しそうな内容だと思う。

 だがその考えは二度目の生を受けた私特有の考えなのか他の学生は緊張しているようだ。

 それか既に私は冒険者としてある程度過ごして経験を持っているからかもしれない。

 

 ちなみにあの赤モヒカン青年と大和魂を身に宿した姫騎士は特に緊張していないようだった。

 

「よし 以上説明は終わり、後は授業内容の確認といくつか選択制の授業を選んだらあとは自由だ。学園内は広いから探索でもすると良い」

 

 授業内容の確認と選択制の授業を選ぶ。

 学園に来た理由が徒手空拳以外に戦う技術を学んで強くなることなので悩むこと無く選ぶことができた。

 

 少し残念な点としては攻撃魔術が原則禁止されているため魔術への対策などが出来ないことだろう。

 原則らしいので特例で攻撃魔術を使うこともあるかもしれないが。

 

 ……さて このまま寮に戻って自室で寝てても良いのだが、せっかくだから学園内を探索しようか。

 これから三年以上ここで生活することになるのだから早めに覚えておいた方がいいだろう。

 脳内に地図を作成しながら私は広すぎる学園内の探索を始めた。

 

 




なんか重たい学園になっちゃった
もっと気軽な感じで書きたいね
そしてこの作品ランキングに載ったんですよ
改めて見てくださる方に感謝!
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