フルアーマー女騎士   作:雷神すねこすり

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学園日常

 あれから私は数日かけて学園を隅々まで探索したので迷うことは今後ないだろう。

 また王都も放課後に当てもなく歩いたので王都の立地に関してはかなり詳しくなったと言える。

 ただ学園内にある騎士団の本部と思われる建物は関係者以外立ち入り禁止で入ることができなかったので学園の全てを網羅しているわけではない。

 

 学園内には学園らしい食堂や大きな訓練所の他に図書館まであった。

 図書館に収められている本はどれもトレーニング法や人体について書いてある本が中心で前世の知識程ではないがいくつかは参考になりそうだ。

 他に興味深かった建物としては円形闘技場みたいな場所や薬草を栽培しているであろう建物が挙げられる。

 まあ闘技場はともかく薬草を栽培している建物に行く機会はそんなにないと思う。

 

「さて……次の授業は何だっけ? 体力作りの走り込み?」

 

 誇張されすぎている王国と騎士団の歴史を学ぶ授業が終わったので教室を出て次の授業のために移動する。

 歴史の内容は王国は今まで錬金術の力で発展してきたこと、そして騎士団は錬金術で対処出来ない敵を対処するため設立されたらしい。

 錬金術で発展してきたと言われてもここ王都では全く錬金術らしいものを見ていないので疑問が残る所だ。

 もしかしたら王国の秘術として錬金術に関する情報は国家機密になっているのかもしれない。

 

「違いますわアルトリア様。次の授業は模擬戦だと教師が仰っていたでしょう?」

 

「そうだよアルトリア! 今日こそ君に勝つから覚悟してね!」

 

 そして私の呟きに答えてくれたこの二人は簡単に言うと取り巻きと言っていいだろう。

 私の名前に様をつけて疑問に答えてくれたのが貴族の中の貴族みたいな見た目のイリーゼ。

 どこか犬を連想させる元気いっぱいの子がフェルネだ。

 

「今日は模擬戦だったのか、教えてくれてありがとうイリーゼ。なら場所は訓練所だな」

 

「あら、このくらいなんことありませんわ」

 

「ちょっと 無視しないでよー!」

 

 イリーゼはかなり優秀でこの学園内で私の右腕のような存在になっている。

 何故騎士団を育成する脳筋気味なこの学園に入学したのか謎だ。

 フェルネは真面目に相手をするとかなり面倒くさいから無視したわけではない、そう たまたま返事をする気分じゃなかっただけだ。

 

 

 

 目的の訓練所まで迷うこと無くたどり着く、天気も雲ひとつないので絶好の運動日和と言えるだろう。

 弓の的であろう案山子や真剣を練習するための干し草などが隅に積み上げられている。

 今回の模擬戦ではこれらは使わない。

 

 模擬戦では入学試験の時に使った木剣では無く、刃を潰した武器を使うので当たりどころが悪ければ死ぬこともある。

 一応治療魔術などが使える神官が一人常駐しているとはいえ危険なのは変わらない。

 とはいえ今のところ私のクラスやそれ以外のクラスでも死者が出たこというのは聞かないし、皆真面目に取り組んでいるのでその可能性も低いだろう。

 

 そんなスパルタ並みに厳しく危ない模擬戦の授業だが、みんな真面目に取り組んでいるからと言って連帯感とかで仲が良くなっているなんてことはない。

 なんなら入学初日よりも仲は険悪になっていると言えるだろう。

 主に二人が原因なのだが……

 

「その見下した態度も今日までだ。今度こそテメェに訓練所の土を味合わせてやるよ……」

 

「……言いたいことはそれだけ?」

 

「テメェ……!」

 

 授業が始まると同時に口喧嘩を始める二人。

 テメェを口癖のように繰り返しているのが赤いモヒカンの不良青年、バリアン。

 相変わらず喧嘩しているのは渾名が氷の姫騎士に進化したエリザだ。

 何でも態度が氷のように冷たいだとかで姫騎士に氷が付け足されたんだとか。

 

 より険悪に変わった二人の他に変わった事としてクラスは入学当初の三つ以外にいくつか派閥ができた。

 その内の一つは私がトップなのだが。

 どうして……どうして……

 

 氷の姫騎士、貴族グループとヤンキー平民集団、そしてどこにも属さない傍観者たち。

 そこに加えて新たに私がリーダーの少人数グループと喧嘩を仲裁する中立のグループが私が知る限りでは生まれている。

 

 私のグループは貴族のイリーゼと平民のフェルネを副リーダーとして平民と貴族が関係無く集まっている。

 関連する事といえば学園に来た理由が強くなるための者が多い事だろう。

 喧嘩に参加するつもりは無いが邪魔をするなら潰す、みたいなグループになっている。

 ええ……怖。

 

 そして中立のグループはイリーゼの情報によるとなんと勇者候補がトップなのだ。

 その名もゼロ。

 ええ……なんか君の名前だけ浮いてない?

 どうやら私以外の人も彼の名前に違和感があるようで偽名疑惑があるらしい。

 

 ……ところで勇者候補って何?

 

「貴方はそんなに土が食べたかったのね、気づいてあげられなくてごめんなさい。次からは気をつけてあげるわ」

 

「クソがぁ……」

  

 勇者候補については皆知っているのが当然みたいな反応で結局聞くことが出来なかった。

 今度こっそりイリーゼに聞いてみよう。

 

 そんなことを回想しているうちにバリアンとエリザの模擬戦が終わっていた。

 今回もエリザの圧勝のようだ。

 貴族グループが歓声を上げて不良グループは人を殺しそうな目で睨みつけている。

 

 最初は中立派もこの喧嘩を仲裁しようとしていたが特に被害が周りに出ていないので最近は諦めている節を感じられる。

 そして勇者候補のゼロは何故か私を見ているような気が……

 いや 流石に自意識過剰だろうきっと うん。

 私が模擬戦をしている最中ずっとガン見してくるけど、多分気のせいだ 気のせいだと思いたい。

 

 

 

「…………そろそろ私の番だな、フェルネ かかって来い」

 

 あんまり無視しすぎても可哀想なのと私との模擬戦を望んでいたことだし一番初めにフェルネを指名する。

 模擬戦は事前に約束をして戦う他に対戦相手を指名したり逆に挑戦することで模擬戦の相手が決まる仕組みだ。

 

 派閥のトップは挑戦される以外で戦わないみたいな謎ルールが広まっているのだが、正直挑戦者を待ってたらいつまで経っても戦えない。

 なのでいつも私は私の派閥の片っ端から指名して模擬戦をしている、強くなりたい人が集まる私の派閥ならではだろう。

 おかげで入学して初めて模擬戦の授業が行われてから今までずっと連勝中だ。

 

 また 当然他の派閥から挑戦を受けることもある。

 ゼロとエリザとはまだ戦ったことは無いがほとんどと戦って勝ってきた。

 一応授業なので評価対象が勝利数なら私はクラス内でもダントツで点数を稼いでいることだろう。

 

「よぉし! 今日こそ勝つよ!」

 

 フェルネが前に出てきたので武器を構える。

 

 少ない期間ではあるが一通りの武器を学んだのでどんな武器でもある程度扱える自信がある。

 その中で私が選んだのは剣と盾のオーソドックスな騎士らしいものだ。

 最初は二刀流にしようと思っていたのだが、二刀流はもともと防御の型でとても攻撃向けの型では無い。

 肉体強化の魔術でゴリ押せなくは無いが労力に合わないのでやめた。

 

 フェルネの選んだ得物は巨大な大剣である。

 身の丈ほどある大剣を振り回して戦うスタイルなので気を抜くことが出来ない。

 とてもじゃ無いが寸止めなどできそうに無い勢いで振るうし何より一振りごとに大地を抉っていくのだ。

 今までよく死人が出なかったなと思う。

 

「いくよ!」

 

 フェルネもその大きな大剣を構え戦う準備ができたようだ。

 犬っぽかったその雰囲気はそこには無い。

 

「____はぁ!」

 

 フェルネが大地を舐めるような低重心で突っ込んでくる。

 元から四足歩行であったかのような速さで接近。

 

「どりゃぁあ!」

 

「ふッ」

 

 大地を削り

 空気が唸りを上げ

 弧を描きながら大剣が振り下ろされる。

 

 私の持つ盾では防ぐことはおろか逸らすことすらできないだろう。

 ステップで横に避けつつ素早く突きを放つ。

 

「おるぁぁ!」

 

「!?」

 

 それを読んでいたのかフェルネは上体を僅かに逸らして突きを避けられた。

 

 まさか避けられるとは思わなかった。

 

 振り下ろされた大剣はそのまま大地を粉砕。

 舞った土ごと横に薙ぎ払う。

 

「______ぐッ」

 

 今の体勢から避けることは出来ない。

 盾を間に入れてできる限り衝撃を和らげる。

 

 薙ぎ払われた大剣を完全に受け止めた。

 全身に衝撃が走る。

 受け切ると思って居なかったのかフェルネは動きを一瞬止めてしまう。

 

 攻勢に出るにはその一瞬で充分だ。

 

「なっ!?」

 

「はぁッ!」

 

 盾で大剣を押し除ける。

 足を払いフェルネの体勢を崩す。

 

「____ッ!」

 

 たまらずフェルネが大地に倒れる。

 すぐさま喉元に剣を突き立てた。

 

 刃が潰されていなければ首が切れて居たことだろう。

 ならば今回の模擬戦は私の勝利だ。

 そして連勝記録は今回も途切れることは無さそうだ。

 

 

 

 フェルネとの模擬戦の後、私の派閥の人たちを順番にボコボコにして模擬戦の授業は終わった。

 フェルネの戦い方は簡単に言うとかなり攻撃特化していて初見殺し性能が高く対応できる人は今のところほぼ居ない。

 そのためその獣のような動きや豪快な戦法を真似ることで比較的楽に私の派閥の人たちを倒すことが出来たというわけだ。

 ちなみにクラスでは猟犬の渾名がついているらしい、普段が犬っぽいからだろうか。

 

 また大剣という一撃の重い武器に合う戦い方ではあるものの攻撃の姿勢や距離の詰め方など大いに参考にできる。

 ある意味私の師匠のようなものかもしれない。

 

 真似ているうちに自分なりに落とし込むことも出来てきた。

 なので今の私はゴリ押しと獣と剣術が合体した独自の戦闘スタイルになりつつある。

 問題は今は軽い制服で戦っているのだが重い鎧を着た時に同じ戦闘スタイルを発揮できるかどうかだ。

 ……とりあえず今後の課題として頭の片隅に入れておこう。

 

「くぅ〜 今回も勝てなかった〜。でも次は絶っっっ対にに勝つからね!」

 

「流石ですアルトリア様。今日も美しい勝利でしたね!」

 

 相変わらず元気なフェルネと時々模擬戦の内容をを言語化してくれるイリーゼが労ってくれる。

 今回のイリーゼは言語化しない日のようだ。

 言語化してくれると中々参考になるのだが、残念ながら言語化しない日は美しいしか言わない。

 

「ちょっと! 少しくらい私も応援してよねー!」

 

「そうですね……まず大剣でゴリ押そうとするのを止めてから言ってください」

 

「もー けちー」

 

 フェルネが拗ねてイリーゼがそれに返す。

 応援というよりアドバイスでは?

 そしてそのアドバイスは少しだけ私にも刺さるからやめてくれ……

 

 たしかこの後は特に用事や授業も無かった筈だ。

 先ほどの模擬戦で私の戦い方に改良できる点を見つけたのでそれを改良したい。

 せっかくだしイリーゼとフェルネも誘い一緒に考えてもらおうか。

 

「二人とも この後時間空いてるか? 一緒に考えて欲しいことがあるんだが」

 

「もちろん一緒に考えますわ! どんなことに悩んでいますの?」

 

「おおー! この私の全力で考えてあげよう!」

 

 うう……なんて良い友なんだ。

 常に喧嘩している派閥やずっと私を見てくる勇者候補など。

 面倒事に苦しまされていた私の胃が治るような気がする……




複数連載してる人すごいですよね
ほぼ一日一話で力尽きてしまう
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