いよいよ今日が闘技大会だ。
少し早めに目が覚めてしまったが武器などの手入れをするのに丁度いい。
闘技大会に出場する学生は制服でなくても良いんだとか。
まあ 確かに学園外から来る人はゴリゴリに武装してるだろうし妥当な判断だろう。
ただ制服も戦闘に一応耐えれるように作っているらしいので制服のままでも良いらしい。
私には全身鎧があるので必要ないが他の学生達は戦闘用の装備とか持っているのだろうか?
貴族は金の力で何とかなりそうだがお金に苦労する平民は難しそうだな。
もしかしてその為の制服ってことだろうか、流石だな学園。
制服の存在価値に思いを馳せているうちに武器の手入れは終わった。
次は命を守る大切な防具、鎧の手入れをしよう。
遠くから見ると特に傷も無いように見える。
だが近くで見ると結構凹んでいたり傷がついているので近いうちに修理すべきかもしれない。
故郷の村を旅立ってから長いこと鍛治はしていないのでまずは感覚を取り戻さなければいけないだろう。
その為にも大会が終わったら鍛治場をどこかで借りなければ。
……そういえば王都の鍛冶師と知り合いだったから頼めば貸してくれそうだ。
「よし 鎧の手入れは終わったから次は____
お腹の虫が大きく鳴った。
そういえばまだ朝ごはんを食べていなかったことに今更ながら気づいた。
____腹が減っては何とやら。朝食を食いに行くか」
一度鎧を着てしまったので再び脱ぐのは面倒くさい。
学園内では制服を着なければならないが今日は闘技大会があるので何とかなるだろう。
身分証明の代わりになるかもと思い一応制服を手に持って食堂へ向かった。
学園内で唯一の巨大食堂へ向かう。
そこまでの道中でも冒険慣れしてそうな人やピッカピカで装飾がたっぷり付いた鎧を着た人、普通に制服を着ている人などが見れた。
冒険慣れしてそうな人は多分学園外から来た参加者だろう。
新品みたいな鎧を着てる奴は貴族、そして少し意外だったのは制服を着ている人に平民の他に貴族も居たことだ。
装備に頼らないで勝てるという自信の表れだろうか? 本当に強いならかっこいいな。
私の心は貴族ではなく冒険者なので勝つ為には何でも利用するの精神で全身鎧も当然着る。
まさしく勝てば良かろうなのだぁ!
……おや? あそこにいるのはすっかり右腕ポジに落ち着いたイリーゼじゃないか?
せっかくだし朝食に誘ってみよう。
「おはようイリーゼ。朝食はもう済ませたのか?」
「 ? 」
え? 首を傾げるので私まで首を傾げてしまった。
まるで初対面の様な反応だ。
どうしてだろう? 寝たら忘れるなんてことはないはずだが。
「…………え、と 貴方はどなたですの? その……せめて兜を外してくださらない?」
はっ!? そういえば今、私は全身鎧を着てるんだった。
それに入学してから鎧を着てなかったから私だと分からなかったのか。
なるほど 疑問が解けたぜ。
「すまん 鎧を着ているのを忘れてた」
「あっ! アルトリア様でしたの!? ご ごめんなさい気がつかなくて。えっと……朝食はまだですわ、その アルトリア様と一緒に食べようと思って」
どうやら本当に誰か分からなかった様だ。
しかし声とかで分かりそうなものだが。
「そうか なら丁度良いな。一緒に食べよう」
「ご一緒させていただきます」
「そうなのー? アルトリアは変な所でおっちょこちょいだねー」
フェルネが席を確保してくれていた様でスムーズに座る事ができた。
注文した料理が来るまでの間ついさっき起こったことをイリーゼが話している。
しかし今日の食堂は朝だと言うのにかなり混雑しているな。
やはり闘技大会当日であるのが原因だろうか。
それとも食堂が何故か注文形式なのが原因だろうか、多分両方だろう。
食券とかで販売すればより効率的になると思うが……この時代に食券方式は早すぎるのか?
「ご注文の品三点でございます 今後もこの食堂をご贔屓に〜」
いつの間にか店員……食堂だから食堂員か? とにかく三人分の料理を置いた後、再びいつの間にか居なくなっていた。
この速さが注文形式でもやっていける理由なのかもしれない。
「あら アルトリア様は肉料理を頼んだのかと思っていたのですが、何と言うか意外ですね」
私が頼んだのはトマトスープとパンというこの後、闘技大会で運動する人には少々物足りない品だ。
まあ パンを別途で注文して増やしてあるのでその心配は要らないだろう。
だが数ある料理の中からこれを選んだのには理由がある。
「食堂の料理の中で一番美味かったからな」
そう 一番美味かったのだ。
……と言うか他の料理がそこまで美味しくなかったと言うのもある。
まず肉料理は何と胡椒が無いのだ。
無くても食べれるがあった方が美味しいだろう。
この世界はインドに相当する国は無いということだろうか? いつか東南の方へ行って胡椒を探してみよう。
次にサラダ系料理はドレッシングやマヨネーズが無い。
これも肉料理と同じ様に無くても食べれない程ではない。
しかし私は前世で二つの神器を掛けたものの味を知っている為満足できないのだ。
他の料理も大体同じ感じで食べれるが足りないと言ったことになる。
食事の面ばかりは前世の記憶が私を虚しい気持ちにさせた。
その影響で実は今まで店などにあまり入らず基本的に自炊をしていたのだ。
自炊なら調味料が少なくてもそれなりにできる。
それでもやっぱり少し足りない気持ちになるが。
そしてこのトマトスープは塩味が基本なのだが、絶妙な加減でとても旨いのだ。
この味は前世では味わうことはできないだろう。
そしてパンは硬いパンだが、普通のパンなので特に言うことはない。
強いて言うなら焼きたてで美味しいことだろうか。
「うっ……相変わらず美味くて涙が……」
「ええ……」
「……そんなに?」
美味しすぎて思わず感動の涙が流れてしまった。
私は感動していた為イリーゼ達が何か呟いていたのは聞こえなかった。
そしてあっという間に美味しく完食した私は闘技大会へ向けて最後の準備をする。
と言っても私はもう済ませているのでクラスへ向かい教師が来るのを待つぐらいだろうか。
一回目の対戦相手は学生のみ、各自のクラスで発表されるのだ。
わざわざ当日まで分からないのはおかしいと思うが……まあ試合前に言ってくれるならそれで良いか。
外で一足先に対戦相手を確認しようと思っていたのだが、どこにも対戦表らしき物が見つからなかった。
謎だ……外部の参加者はどうやって対戦相手を知るのだろうか。
残りの二人もいつの間にか食べ終わっていた様なので引き連れてクラスへ向かう。
「…………泣くほど美味しいのなら私も一度食べてみようかしら」
「……そうだね 普段、表情筋が死んでるアルトリアが泣くほどだからね」
クラスへ向かう途中も私の頭の中は対戦相手の事でいっぱいだったので後ろで二人が再び何か呟いていたのに今度は気付くこともできなかった。
一位優勝を目指して! 頑張ろう!
みたいなことを教師は言っていた様な気がする。
一位は一人しかなれないんですよね、知ってます? 教師さん。
ちなみにクラスのいつもの問題児二人は変わらず喧嘩をしていたことをここに記す。
肝心の一回戦目 私の対戦相手は特に見知らぬ学生の誰かだ。
私の知らない名前だったので私と同じクラスではないのだろう。
と言ってもすぐに始まるわけではない。
私より先に他の対戦から始まるので私の番が来るまで待っていよう。
ただ待つのも暇なので開会式の言葉みたいな事があるようなので聞きに行こうか。
イリーゼは興味が無いらしいので私とフェルネとその他のみんなだ。
会場に着くとすでに司会らしき人が喋っている。
「今回の闘技大会は様々な地域から挑戦者が集い、稀に見る大盛況となりましたァ!」
中央の試合をするための台座の真ん中で観客席を見渡しながら話しているがかなり独特な話し方だ。
しかし いくら大きい声でも司会がいる所から観客席までは聞こえないはずだが……魔術とかを使ってるのだろうか。
不思議なことは大体魔術のせいにしておけば考える事が少なくて楽だ。
…………どうやら別に何か使っているわけでは無く、あれは自力で出しているらしい。
「そして今回の闘技大会ではなんと! 金上級の冒険者、黄金のレイシオ様が観戦なさってくれます」
金色に光る鎧を着た男が王族などの為に用意された特別席から姿を表し手を振っている。
それに従って会場の観客達が歓声と悲鳴で大盛り上がりだ。
間違いなく彼がレイシオに違いないが、そんなことより太陽の光が反射して凄く眩しいので何とかしてほしい。
「我が一番好きなものは勝つ為に死力を尽くす者だ。死力を尽くし限界を超えるその瞬間の輝きは他者に感動すら与える。だから諸君 今日この闘技大会で限界を超えて更なる高みを目指してほしい」
よく通る声でレイシオが演説を始めた。
私的にはどうでも良いのだが、周りの人達はこの話に感銘を受けているようだ。
フェルネは聞いてるのか聞いていないのか良く分からない顔をしていた。
「そして今回は我だけで無く、国王までもがこの大会を観戦する」
特別席で演説をしているレイシオの後ろから王冠を被った威厳のありそうな髭を生やした国王が現れた。
遠くからでも身につけている物の高級さが感じられる上に本人も高貴な生まれだとわかる。
まさに王族の名がふさわしいだろう。
周りの人達は国王を直接見るのはあまりない様でざわざわと騒がしい。
つまり頻繁に戦場に直接出向いて敵を殲滅する、みたいな王では無い様だ。
だとするとあまり外に出ない王ということなので知略とかが優れているのだろうか。
「出場するだけでは栄誉は得られない。故に諸君らは全力を尽くしこの大会をより栄光を与えるに相応しい試合にしてくれ!」
言い切ると同時に全ての観客が湧き立つ。
「うおぉぉぉぉ!」
「栄光ある戦いを!」
「レイシオ様、バンザーイ!」
あまりの盛り上がりに会場全体から熱気を感じる。
試合まだ始まってすらいないのにこの調子で最後まで持つのだろうか。
あの後は司会の言葉で締めくくられてしばらくの準備時間が入った。
会場の熱狂を少し冷ましてから試合をさせるつもりなのだろう。
出場者のメンタル的にも一試合目なのにあの興奮の中で戦うのは辛いと思うからこの判断は良いと思う。
……話の内容もそこまで重要じゃなかったので別にわざわざ開会式には出ない方が良かったかもしれない。
気づかない内に私自身も会場の熱に当てられたのか何もしてないのに疲れた。
万全の状態で試合に挑む為にも少し仮眠を取るべきかもしれない。
「フェルネの試合はいつぐらいだ?」
「んーとね 結構後だったはずだよ。アルトリアの次の次くらい」
つまり かなり最後の方ということだ。
なら余裕がありそうなので私にとって重要な頼み事をする。
万が一寝過ごしてしまったら不戦敗で敗退してしまうのだ。
そんな悲しいことは避けたい。
「なら 今から仮眠するんだが私の試合の一試合前ぐらいには起こしてくれないか? 面倒なら断ってくれても構わない」
「一試合前ね、いいよーん。アルトリアを起こすのは私、フェルネに任せなさい!」
即答してくれるとは……心強い。
そしてありがたすぎて拝みたい気分だ。
今度今回のお礼として何かしてあげよう。
くっ 安心したら急激に眠気が……いち早く仮眠を取らなければ……
最近フルアーマー要素があんまり出てないと思って今後どう出すか
そういえば主人公まだ食事させた事ないな とか考えてたら遅れました
毎日投稿を目指しながら毎日投稿しないという矛盾