三回戦を突破した私は勝ったことよりもボロボロになった剣に意識が向いていた。
短時間に槍を弾き続けたのが一番の原因だと思うが今まで真面目に手入れをしていなかったのもあるだろう。
別に鈍器として使えないこともないが、できれば刃こぼれのない剣を使いたい。
工房で直すのも時間が無いし、誰かから大会の間だけ武器を借りようか。
……そういえば短剣は結局使わなかったな。
短剣を剣の代わりに……いや、普通に借りよう。
ちなみに試合の後にレーヴェ先輩本人から聞いたのだが、観戦せずにすぐ帰るそうだ。
理由は依頼をこなして金を稼がなければ冬が越せなくて結構やばいらしい、なので観戦せずに帰るのも当然だろう。
私はまだお金はあるし、そもそも寮暮らしなので寒さや飢えとは無縁である。
「アルトリア! その表情……私には分かるよ、勝ったんだね?」
「はぁ……鎧で顔も見えないのに貴方は何が分かるんです?」
救護室の扉を開けると、相変わらず元気な声と呆れた声が聞こえた。
前試合で怪我をしていたフェルネとその付き添いのイリーゼだ。
「ああ、勝ったぞ」
「いえーい! 適当に言ったのに当たった! もしかして予知能力の兆し!?」
「そんな訳ないでしょう……アルトリア様、三連勝おめでとうございます」
再びここに救護室に来たのは二人の様子を見に来たのもあるが、一番の目的はフェルネから大剣を借りるためでもある。
「そう、それでフェルネ、大剣貸してくれないか」
「ん、良いよ? もしかしてイメチェン?」
「まあそんな感じだ」
すんなり了承をもらえたので、武器について悩む必要は無くなった。
「アルトリア様、もしかして剣が壊れてしまったのですか?」
「? ああ、そうだ」
「良かったら私の剣を使いますか?」
なに? イリーゼは剣使いだったのか。
ならイリーゼから借りるべきだろうか? いや、試合に必要だろうから借りれな……
……そもそもイリーゼは試合に出てたか? 記憶に無いのだが。
「……そういえばイリーゼは試合に出場したか?」
「そう! イリーゼってばアルトリアの試合を見るために一回戦目で降参したんだよ! 勿体無く無い!?」
ええ……まじか。
「うるさい、アルトリア様の試合を観戦できない方が勿体無いです」
ええ……どうなの、それは。
まあ価値観は人それぞれか。
……ならフェルネの付き添いとしていた三回戦目は観れなかったということか、なんかその熱の入れようだと悪いことしたかもな。
「あー、それなら三回戦目は……?」
「大丈夫です、途中からですが観に行きました」
「! イリーゼ途中から居なくなったと思ったら観戦してたの!? ずる!」
なんだかフェルネが可哀想に思えてきたな。
今度何か甘いものでもあげよう……
「あ、四回戦目は最初から観戦しますよ!」
「あ、ずるい! じゃあ私も!」
なんか二人の精神年齢下がっている気がするな。
そして怪我人が観戦するのは良くないでしょう。
怪我させたの私だけど。
「イリーゼはともかくフェルネは怪我してるだろ」
「激しく動かなければオッケーだって治癒してくれた人が言ってたから大丈夫!」
あ、そう。
とにかく、二人とも四回戦目は観戦してくれることがわかった。
そんな感じでだらだらと話しているうちに対戦相手が決まる。
四回戦目は……冒険の仲間であり、私の成長のためにこの学園に入ることを勧めてくれた、ヴィーラだ。
会場も試合が終盤に近づきつつあるためか、より盛り上がっている。
一試合目を除けば偶然にも対戦相手は全て知り合いだ。
それは相手の戦い方を知っており、そして私のことも知られていると言うことである。
手の内がバレているというのは戦い辛くはあるが自分の限界がより理解しやすいと言えるかもしれない。
──ここで勝てば四連勝となるアルトリア! 再び華麗な一撃を見せてくれるのか──
フェルネから借りた大剣を両手に持つ都合で盾は置いてきた。
守りを捨て、攻めの姿勢で今までと同じように速攻を仕掛けるつもりだ。
……対人の読み合いを放棄しているに等しいが、最終的に勝てば良いのだ。
ヴィーラは戦鎚を片手に仁王立ちをしている。
そして以前無かった細い剣を腰に佩ているが、腹筋は前と変わらず見える寒そうな格好だ。
──対するは鉄下級のヴィーラ! 鉄下級とは言いましたがそれに見合わぬ実力で──
「ついに戦えるな、嬉しいよアルトリア。もちろん手加減はしない、互いに全力で楽しもうか!」
「もう少し再開の余韻に浸ったりしなくて良いのか」
「いいや、いらないね。それよりあたしを退屈させてくれるなよ?」
──アルトリア対ヴィーラ! 試合開始ィ!
開始の合図。
まずは接近しなければ何事も始まらない。
全力で駆け出して加速し、その速度を大剣に!
「ハァッ!」
そうだ、読み合いなど要らぬ!
初撃で決める!
大剣が地面を削り取りながら振り上げられる。
下から上に、渾身の一撃はそのままヴィーラに命中!
一 撃 必─────
…
……?
「ッ!!」
「お、流石だな」
一体何が起こった!?
私は今、一撃で試合を終わらせようと大剣を振るった筈……
なのに司会の勝利宣言が聞こえてくるどころか、何故私は床に倒れているんだ!?
「……ちょっと強めに殴っちまって焦ったが、鎧のおかげで大丈夫そうだな」
あ、頭が痛い……
もしかして、今の一瞬意識が飛んでいたのか?
「アルトリア、戦いはまだ終わってないぜ」
「うおおおっ!」
慌てて身体を回転させ、大剣を抱えてヴィーラから距離を取る。
先程までいた場所は戦鎚で粉々に砕かれていた。
攻勢に出るために立ち上がるもよろけてしまう。
「ハッ!」
「──くッ!」
その隙をヴィーラは見逃さない。
戦鎚が、唸りを上げながら胴体に叩き込まれる。
それを大剣の腹で咄嗟に防ぐ。
しかし、戦鎚の衝撃を受けて再び体勢を崩してしまう。
「逃げてばかりかぁ!」
「グッ、ッ」
戦鎚による怒涛の連続攻撃が繰り出される。
そして打撃は鎧では軽減できず、そして全ての攻撃を避けることができずに喰らってしまう。
一方的に殴られており、さらに戦鎚の一撃も重く痛い。
とにかくこの状況を打開しなければまずい!
「ハァァァッ!」
「うお!」
大剣を大きく振り抜き、空気を切り裂く。
幸運にもちょうど戦鎚と噛み合い、連続攻撃を弾いた。
弾かれた、そして弾いた反動で互いに構えを崩す。
生じた一瞬でアルトリアは跳躍して距離を取り、体勢を整える。
ヴィーラは弾かれた際に手首を痛めたのか戦鎚を持つ手を入れ替えた。
その僅かな隙に攻撃を仕掛ける。
「ハァッ!」
一歩、二歩と大地を踏み締め、アルトリアは次の瞬間には空を跳んだ!
「ハアアアアア!」
「ッ!」
空から脳天に目掛けて、鋭く大剣が振り下ろされる。
もし、その一撃が当たればあらゆるものが両断されることだろう。
だがヴィーラは横に跳んで避けた。
その一撃はあまりにも迫力と圧力があり過ぎたのだ。
大剣は勢いのままに大地を割り、石の破片が周囲に飛び散る。
さらに大剣は勢いもあり過ぎたがために地面深く刺さってしまい抜くことができない!
「くそッ」
「くらいなッ!」
思わず悪態をついてしまったが状況は好転しない。
そして戦鎚がその隙を狙って襲う!
大剣は手放し、腕で戦鎚の打撃を受け止める。
「ぐうっ」
その一撃で腕の骨が折れる音がした。
腕に強く感じる痛みからも勘違いでは無いだろう。
治療するまではこの腕では何もできない。
ならば反対の腕で攻撃をするのだ!
「──フッ!」
「ぐッ」
無事な腕で顔面に向けて鎧で包まれた重い拳を放つ。
戦鎚の攻撃が防がれた直後であることもあり、綺麗にカウンターが決まった。
カウンターで体勢を崩すと考えていた、隙が出来ると踏んでいた。
しかし、ヴィーラは倒れない。
「対人戦はッ!」
戦鎚を反対方向に回転させ、大きく振りかぶる。
太陽光と重なり、影が死神の姿を幻視させる。
「まだまだ、だなッ!」
カウンターが全く効かないとは思わず、硬直してしまう。
その大きな隙を轟音をたてる戦鎚が、私の意識を刈り取った。
戦闘が凄い難しい
難し過ぎて途中何書いてるか分からなくなる