フルアーマー女騎士   作:雷神すねこすり

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冒険する者

 あれから鎧の完成までだいたい数日ほど経った。

 家族へのお土産の約束をして、お世話になった人達へ挨拶も全て済ませた。

 また、少なくともしばらくの間は村に帰る予定は無い。

 

 旅に必要な道具もあるだけ準備した。

 前世のキャンプの経験がどれほど生きるかはわからないが無いよりはマシだろう。

 

 技術力や素材の問題で前世で存在した道具を満足に用意できなかったという不満点はあるが、用意した道具を見て従軍経験のある父が関心していたようだったので多分大丈夫だろう。

 それにあまり気を詰めすぎてもよく無い。

 

 ただ、思いついたものを適当に身につけてまくっているので正直邪魔だ。

 鎧も重いのも考慮してもっと考えるべきだった。

 見た目が凄くダサいかもしれないと思うとなんだか恥ずかしい。

 だがそこは経験と場数を踏んで改善していけるだろう。

 

 

 

 村から数人に見送られて街道沿いに歩いて行く、当然一人旅だ。

 この世界の四季も前世と同じかどうかはわからない、だが麦が取れる時期なのでおそらく今は夏の中旬頃だ。

 村の外には妖精とか精霊とかが居て、季節を操っているなどの超常現象がないなら順当に行けば次の季節は秋、そして冬。

 農村出身だったこともあって冬の厳しさは今世でも身に染みて感じている。

 本当は春まで待ってから旅に出るべきだったかもしれないと今更ながら少し後悔しているが……まあなんとかなるだろう。

 

 少しぬかるんだ地面を避けて歩く、昨日の夜の間に雨が降ったせいだろう。

 空からワイバーンが来るわけでもなく、フェンリルとかその辺の神獣が怪我をして倒れているわけでもない平和な道を歩いて行く。

 平和すぎて眠たくなってきたかもしれない、その辺の地面に聖剣が埋まってないかな、などと考えていたのがいけなかったのだろうか。

 道の脇から幾つかの人影が包囲するように鎧を着ただけの臆病な私を取り囲んだ。

 

「 ⬛︎⬛︎⬛︎! ⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎! 」

 

 現れた人影は背丈が小さく、体色は緑色、顔は醜悪な上生態も醜いファンタジー定番の魔物ゴブリンだった。

 全世界醜さNo.1を誇るゴブリンは号令のような何かを叫び包囲網を縮めて行く。

 ちなみに全身甲冑で身を包んだ私は特に刀剣を腰に佩ていないし、そもそも持ってもいない。

 

「 ⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎ 」

 

 そのことに気づいたゴブリン達は笑顔を浮かべる。(おそらく)

 警戒を解いたのか友人に挨拶をするかのような気軽さで真っ直ぐ距離を縮めるゴブリン達。

 

「ふッ」

 

 地を蹴り一息で距離を詰める。ゴブリン達は先ほどまで棒立ちだったものが動くとは思っていなかったのか驚き固まっている。

 

「オラァ!」

 

 拳を頭に向かって振り下ろす。

 ゴブリンの頭蓋骨では鎧を着るために鍛えた筋肉、特化された身体強化魔法、そして半端なく重い鎧を受け止めることはできなかった。

 一体目を潰した勢いのまま次のゴブリンへと襲いかかる。

 棍棒で防ごうとしたものはそのまま叩き折られる、死体漁りで得たのであろう薄汚れた鉄兜もまるで意味を成さない。

 そして全身金属の化け物に傷をつける手段はゴブリン達には、無い。

 

 

 

 ゴブリンだったものがあたりに散らばる、おそらく全部で四体だろう。

 この怪事件を起こした犯人は近くの木陰で前世の記憶を活用して作ったハイテク水筒を使って鎧に付いた血や肉を洗い落としていた。

 

「思ってたよりも命を奪うことへの抵抗が無かったな」

 

 感じたことをを一人呟く。

 前世では既に加工された命を多く食べていたため命を奪った感覚はあまり無かった。

 今世では狩猟では食べるために、生きるために命を奪っていた。

 今回は危ない要素は特に無かったが一応自身の命を守るために命を奪った。

 

「山賊のような犯罪者、同じ人間を相手に同じことが出来るだろうか」

 

 冒険者として活動するならきっと盗賊狩りの依頼なんかは定番だろう。

 しかし前世でも今世でも人の命をまだ奪ったことはない。

 

「冒険者として荒波に揉まれれば慣れてくるのかね……」

 

 一先ず一生ついてくるであろう課題を頭の片隅に追いやり、街道を歩き始める。

 問題を放置しただけでなんの改善でもないが、難しいことは時間が解決することもあるという前世の記憶の経験則である。

 まるで冒険者であるかのように言っているがまだ冒険者ではない。

 

 

 あれから時々ゴブリンや狼の群れなどに遭遇したり、ハイテク水筒が破損するなどのトラブルに見舞われたがそれ以外では特に問題が起きることなく街に着いた。

 遠くからでもよく見える城壁、その入り口らしき場所にはまばらながら人が行き来している様子が見て取れる。

 人だけでなく馬車も出入りしていることからかなり活発的な街なのだろうか。

 

「どうも鎧の旅人さん」

 

 入り口らしき所に向かう。

 すると街の門番らしき兵士が呼び止めてくる、しかも鎧の人呼びだ。

 いくらファンタジー世界でもやはり全身鎧は不審すぎるのだろうか、今世でも職務質問を受けることになるとは……

 

「えーっと、なんで落ち込んでるのか知らないがとりあえず出身地と名前、この街に来た目的を言ってもらうぞ」

 

 おや、職務質問では無かったようだ、ただの門番としての業務のようだ。

 特にやましいことはないので素直に質問に答える。

 

「たしか風の村出身、名前はアルトリア、ここに来た目的は旅をするのと冒険者になるため」

 

 私の出身村には特に名はなかったはずなのだが、どうやら風の村と呼ばれていることを行商人から聞いたので風の村だと答える。

 この街に来た理由は旅の通過点のほかに冒険者登録をするためでもある。

 風の村には冒険者になるための冒険者ギルドがない。そのため冒険者になるには風の村に一番近いこの街に来る必要があるのだ。

 冒険者になる理由は免許証のようにあると便利な他、名を揚げるのにも便利だからだ。

 ついでにファンタジー世界を冒険したいという純粋な気持ちもある。

 

「風の村出身、名前はアルトリアさんね、そんで目的は旅と冒険者」

 

 門番の兵士は復唱しながら手元のカードらしき物に何かを書き込む。

 

「よし、ようこそ水の美しさが自慢の宿場町・カスケードへ」

 

 通行許可証をもらった。これがあれば次回はこのカードを見せるだけで止められることなく入れるようになるそうだ。

 貰った許可証を無くさないように仕舞う。この街は水の美しさが自慢らしいが日本のように飲めるほど綺麗な水なのだろうか。

 

「あ ちょ、ちょっと待って」

 

 いざ鎌倉、門を潜ろうとすると門番に止められた。

 説明し忘れがあったのだろうか。

 もしかして未解決事件(ゴブリンの惨殺事件)の犯人が私であることがバレたのか? おかしい、目撃者も含めて証拠隠滅したはず。

 

「兜を脱いでもらうのを忘れてた、指名手配かどうかの確認のために一応見せてくれるかな」

 

 違ったようだ、別に兜を脱ぐと死ぬわけでもないので素直に脱ぐ。

 兜を脱ぐと狭い場所に収められていた金髪が解けて散らばり、顔が外気に晒される。

 やはり長髪は凄く邪魔くさい、何度切ろうとしたことか……その度に母と父に泣きながら止められたため結局切らないことにしたのは良い思い出だろう。

 

 おや? 門番の様子がおかしい、私の顔を見たら固まってしまった。

 

「あっ、じょ女性だったんですね、失礼しました。どうぞもう兜を着けても大丈夫です」

 

 若干しどろもどろになりながら話す門番、一体何があったのだろう?

 

 ああ わかった、この反応は知っているぞ、憧れの俳優なんかに出会った時の反応だ!

 農村ではほとんど見た目について反応が無かったので忘れていたのだが、私はかなり美しい部類に入るらしい。

 それで私の顔を見て美しさのあまり固まったのだろう。

 つまり、そんな美しい私が鎧を着ることで鎧の魅力が倍増するということだ。

 くくく、我ながら鎧を着こなすためにあるかのような才能が恐ろしい。

 

 

 

 門をくぐると白いタイルが敷き詰められた大きな街道とその脇には沢山の店や露店などが立ち並んでおり何処も繁盛しているようだ。

 屋台や店では食べ物が売られている。他にも薬局っぽい所や魔道具屋なんかもあるようだ。金運アップのアクセサリーや竜王の卵など胡散臭いものも売られている。

 道の先には大きな広場があり、その広場の真ん中には水を大量に出すすごく現代的な噴水が置いてある。

 噴水の前では大道芸っぽいことをしている一団が見える。

 ところで中世ヨーロッパの時代にあんな噴水を作れるのだろうか? ……色々自分なりに考えてみたが地球の歴史を当てはめてはいけないことがこの一件でよく分かった。

 

 そんな世界観ぶち壊しの現代アートから目を逸らせば通りを通る人々が目に入る。

 こちらはそこまで流石に現実離れしていないようだ。

 普通の服を着ている人が多く見られるが、武器やマントを身につけている冒険者らしき人もチラホラと見て取れる。

 中には 大きく 分厚く それは正に鉄塊だった を背負う集団なんてのもいた。

 やはりというべきか私のようにフルプレート鎧の冒険者はいないようだ。全身鎧は珍しいのかわずかに視線を感じる。

 

 逆に私から見て珍しいものもいる。周りは当たり前のようで気にしていないが。

 耳が明らかに長い人、動物みたいな顔や体毛を持った人、二足歩行の爬虫類がいる。

 さらにはクソでかい人間に子供みたいな小ささの髭もじゃおじさんなど。

 前世の記憶を持つ私にとって大変見覚えがあり奇妙に見えた。

 

 

 

 観光するのも良いがまずはこの街に来た目的を果たそう、先ほどの門番の元に戻り冒険者ギルドの場所を聞きにいく。

 門番は私を見るとまた緊張していた、うける。

 ちなみに目的の冒険者ギルドは噴水広場の割とすぐ近くにあったらしい。

 

 冒険者ギルドを見つけた。

 荒くれ者が屯していて治安が悪いイメージがあったが特にそんなことはなさそうだ。

 冒険者登録がわかりやすい仕組みだと助かるのだが、そう思いながらギルドのなんだか古臭い扉を開ける。

 室内に外の光が差し込み私の影が差す、それと同時になぜかギルド内がとても静かになる。

 おかしい、勢いよく開けたわけでもうるさく開け放ったわけでもないのになぜ静かになるんだ。

 割と真面目に疑問に思いながら受付と思しき場所へ向かう。

 

「こちら受付です。本日のご用件はなんでしょうか」

 

 完璧な営業スマイルからこの道のベテランであることが伺える。前世で会社員をしていなければ気がつけなかっただろう。

 そしてここが受付で合っていたようだ。たまにあるのだが受付を間違えるとそのまま心が折れてしまうのは私だけではないだろう。

 

「冒険者になりに来た、登録の手続きを頼む」

 

 受付嬢の完璧な営業スマイルから彼女の仕事の大変さを慮り簡潔に要件を述べる。

 

「かしこまりました。では、こちらのシートに必要事項をご記入ください。代筆が必要でしたら言っていただければ」

 

 書類を渡される、このシートに書くだけで終わるのだろうか、かなり楽だ。

 今世での文字はもちろん勉強済みだ、しかし村には学校などない。

 なので村を駆け回り色々な人から文字を学んだ。村の人全員が間違った文字を覚えていなければ大体は合ってるだろう。

 手早く必要事項に記入をしていく。

 

「書き終わったようですのでこれはこちらでお預かりします。次に冒険者ランクの仕組みについて説明させていただきますね」

 

 どうやら冒険者ランクは大きく分けて六つになるらしい。

 低い順から 石 銅 鉄 銀 金 金剛石 であり、金剛石が一番ランクが高い。

 さらにそこからそれぞれ 下級 中級 上級 に分けられるという。なお最高ランクの金剛石は等級分けはされない。

 冒険者は最初は 銅 中級 から始まるとのこと、また各ランクの上級から次の下級になるには試験を受けなければならないそうだ。

 

「銅より低いランクの石にはどんな意味が?」

 

「石は冒険者の年齢が幼すぎる場合に振り分けるランクですね。後は銅級の冒険者が一定期間ギルドに貢献しなかった場合石に落とします」

 

 銅級のみ一定期間任務をこなさなかった場合等級が一つづつ落ちるとのことだ、つまり銅級程度であぐらをかくなって意味だろう。

 後他に変わった仕組みとしては、教会から派遣された冒険者は 銀 から 金 ではなく 水銀 白金 のランク分けになるらしい。

 また国家の命令により特例ランクとして ミスチル が存在するとのことだ。国の命令でミスチル冒険者が生まれるのならいずれミスチルまみれになりそうなものだがならないよう規則がしっかりしているのだろうか。

 

「他に何か質問はありますか? 無いようなのであなたはこれから銅中級冒険者として活動してもらいます。金上級を目指して頑張ってくださいね」

 

 いい笑顔で金上級を目指すよう言っているがほとんどの冒険者は皆鉄や銀で止まるらしい。

 しかも銀上級から金下級になるためには国王の推薦か金中級以上の冒険者の推薦と実力試験が必要なんだとか。

 とてもじゃないが目指してなれるものでは無いと思う。

 

 

 

 冒険者ギルドで登録は済んだので宿を探して寝ることにしよう。

 幸いまだ路銀は尽きていない、明日から活動しても問題はないだろう。

 だが贅沢するほど多いわけでは無いので、ごく普通の一般的な値段の宿を取ることにした。

 

 ごく普通の宿の部屋の内装は特に目立つものもなく可もなく不可も無い広さだった。

 鎧の手入れを丁寧にして、これからの旅の計画を立てた。

 ありえんほどの重さを持つ鎧を脱ぎ宿の床が抜けないか心配になりながら久々のベットにダイブするとすぐに睡魔が襲ってきた。

 明日は早速依頼を受けてみよう。

 




戦闘シーンを書いててr15つけるべきじゃないか?って思ったのでつけた
次回は他人から見た主人公を書いてみたい
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