フルアーマー女騎士   作:雷神すねこすり

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同好の士・上

 今日も快晴で良い天気だ、雨雲は一つも見当たらない。

 まさしく散歩するのにぴったりな天気と言えるだろう。

 

 そんな天気の中私は今、いつもの利用している普通すぎるのが特長の宿で王都に行く為の荷造りをしている所だ。

 ちなみに王都までは馬車で移動するがしばらく街を離れるのは変わりないので今まで借りていた部屋を約二週間くらいのお金をまとめて先払いしてキープさせてもらった、あまり宿の部屋は埋まって居なかったのでこのくらい別に問題ないだろう。

 そして荷造りといっても村から持って来た荷物は野営するための道具が沢山入った鞄ぐらいしか無いので、荷物を纏めたりはしないのだが。

 

 昇級試験が終わって宿に戻ってからも私は冒険する仲間について何日も考え続けていた。

 しかし、いくら考えてもいい案が出ないと感じたので息抜きと散財を兼ねて経済の中心地である王都に旅行をすることにしたのだ。

 ちょうど王都へ向かう馬車の護衛依頼がギルドにあったのでそれを受注した。

 

 それにより王都行きの馬車をタダどころか報酬まで出るというまさしく一石二鳥だ。

 帰りは王都側で馬車の護衛依頼が出てるかわからない、しかしキングベアを討伐した時に貰った報酬がまだまだ残っているので問題ないだろう。

 今まで受けたことがあり、完了した依頼が薬草採集だけなのが少し自分でも気になるが……これから沢山依頼を受ければいいか。

 

 もちろん共に冒険する仲間について考えるのを止めたわけでは無い。

 王都は経済の中心地、そのため物だけで無く人や情報も集まると考えられる。

 その豊富な情報を見てからでも遅くは無いと考えたのだ。

 

「おや? あんたにしては珍しく大荷物じゃないか、どこに行くんだ」

 

「どうもレーヴェ先輩、馬車の護衛で王都に行くんです、ついでに観光もしようかなと、先輩もどうですか」

 

「なるほど、護衛の依頼か、だが残念ながら俺はもう依頼を受けちまったから行けねぇな。だから俺の分まで楽しんできてくれ」

 

 護衛依頼を出した馬車はギルドの近くに停まってあるのでギルドへ向かう。

 その途中で先輩と出会ったので幾つか話をした後別れる、どうやら先輩が以前持っていた鋼鉄の代わりに黒鉄の二つ名を貰ったらしい。

 二つ名は必ず意味のある熟語でないといけないなどの規則が実はあったりするのだろうか。

 

 馬車の護衛依頼は複数人でも受けれる様だったが私以外にあと他に一人しかこの依頼を受けて居なかった。

 冬がそろそろ近いからだろうか、それなら逆に受ける冒険者も依頼する商人も増えそうなものだが、意外と冬に重ならないよう綿密に計画を立てているのかもしれない。

 この依頼を受けた冒険者がどんな人かは知らない、しかし最低でも鉄下級、ギルドから提供される情報でも確認すると募集要項に書かれて居たので性格破綻者が来たりはしないだろう、ギルドから提供される情報とはおそらく人格面や依頼達成度とかだと予想できる。

 なんと私は脅威の依頼達成率百%だ、一角兎の討伐は常駐依頼なので達成率には入れてない。

 

 

 

 ギルドの近くに二頭の馬と荷台と一体化したよくここら辺で見かける馬車が停めてある。

 そして作業員が荷物の積み込みを行なっていて、見た所もうすぐ積み込みが終わりそうだ。

 

「あなたが鋼鉄のアルトリアさんですね、王都までの間馬車の護衛を頼みます」

 

「ええ、任せてください」

 

「ありがとうございます、もうじき荷物の積み込みも終わりますので荷台で待っていてください。もう一人の方も既に荷台に居ますので」

 

 赤いベレー帽を被った小太りのお爺さんが依頼人の商人の様だ。

 なかなか優しそうな雰囲気だが、手や顔に刻まれた皺の多さから社会の荒波に揉まれ様々な戦場を潜り抜けた歴戦の商人の気配がする。

 そして荷台の後ろに作業員とは明らかに装備や雰囲気が違う人がいる、おそらくこの護衛依頼を受けたもう一人の冒険者だろう。

 

「どうも初めまして、同じ依頼を受けた風の村出身のアルトリアです。一緒に冒険する者としてよろしくお願いします」

 

 やはりどんな場面でも人は挨拶から交流が始まる、それを証明する為にも丁寧に挨拶する。

 

「おお! あのアルトリアか! こっちこそよろしく頼むぜ、あたしの名はヴィーラ、出身地は北方の雪国だな」

 

「それとそこまで硬く無くていいよ。あたし敬語使われると鳥肌が立っちまうんだ」

 

「分かりま……分かった、よろしく」

 

 ヴィーラさんは私と同じ鉄下級の冒険者で筋肉が美しい女性だ、でも雪国出身なのにお腹を出すのはどうなんだろう。

 しかしあのアルトリア? そんな有名になることをした覚えは無いんだが、北方にも私の名は轟いているというのか。

 どんな形で私の名が広まっているのか非常に興味深いと同時にかなり怖い。

 だが悪い名声とかでは無いだろう、多分。

 

 

 

 人の口に戸は建てられないというように、いつの間にか広まっていた私の名声に恐怖しながら王都への馬車護衛の旅は始まった。

 太陽の光を荷台に付いている白い屋根で遮り、劣悪な道を揺られながら馬車は走っていく。

 先ほど出発する前に自己紹介をした際に気になったことを聞いてみる。

 

「ところで、ヴィーラさんは私のことを前から知っていたようですが、何故北方まで有名になっているんですか?」

 

「ん? ああ いやあたしがアルトリアの事を聞いたのは宿場町だ、多分北の方どころか王都にもまだ知られてないと思うよ」

 

 なん……だと……

 

「ふふっ 鎧越しでも落胆したのがわかるよ、でも あれ? 言って無かったっけ、あたしは主にここら辺で活動してるんだ、だからここら辺の情報しか知らないよ」

 

「……聞いてないですね……」

 

「あー それは悪い事をしたね、勘違いするような言い方ですまん!」

 

 逆に何もしてないのに有名だったら怖かったから勘違いで良かった……本当に良かった。

 まあ期待してなかったと言ったら嘘になるけど。

 嘘です、超有名になってるのを期待してました、本当に悲しい。

 

「……そういえば、ヴィーラさんが冒険者になった理由は何でです?」

 

 心に強い傷を負ったので話題の転換を図る。

 このままでは護衛任務どころか私の命が危ない。

 

「そうだねぇ……あたしが冒険者になった理由は色々あるけどそのうちの一つは武具を集めることさ!」

 

「武具を?」

 

「冒険者になれば自然と色々な土地に行くだろう? それで様々な土地の武具を集めるのさ、これは理由ってよりどっちかというと趣味に近いかもね」

 

「あたしの周りには武具の良さが分からない人ばかりでね、使い易ければ何でも良いだろうってつまらない考えの人だらけで……」

 

 そして今まで集めた武具の長所や短所、デザインや作られた経緯などについてヴィーラは熱く語る。

 

「あ ええと、そのあたしだけたくさん語っちゃってすまないね。普段聞いてくれる人が居ないからつい熱が入っちまって」

 

 おお! つまるところ前世の鎧を収集する趣味とほぼ一緒ではないか?

 まさか今世でもこの趣味を分かち合える人が現れるとは感涙ものだ。

 私は女なのに男だと間違われることなどこの感動の前には些細なことだろう。

 今すぐこの感動は共有しなくては!

 

「ふむ 私も似たような理由ですが……」

 

「ほ 本当かい!?」

 

 身を乗り出すようにしてヴィーラは目を輝かせる。

 

 それから私の自身の前世からの夢である鎧を着て旅をするという事を前世に関する部分を少しぼかしながら説明した。

 白熱した武具談義の途中でヴィーラは泣き始めてしまう、感涙ものとは言ったが本当に泣くとは流石に思わなかった。

 どうやら今まで気軽に武具談義ができる相手が周りに一人もおらず非常に居心地が悪かったのだという。

 しかしそこに私が現れたことで気が緩み涙が出てしまったらしい。

 

 私から話を振っておいてなんだがよくここまで生きて来れたなと思う。

 前世ではインターネットという世界と繋がれるものが有ったため一人ではなかった。

 しかし今世ではそんなものは無い、そのため武具でけで無く普通とは少し違う趣味嗜好を持つものは孤独感に苛まれてしまうのだ。

 日本のような様々な考え方が集まる国などがあれば良いのだが、この時代にそれを求めるのは難しいだろう。

 

 

 

 そんなこんなで自己紹介の時に感じた疑問を聞いたらいつの間にか武具の良さについて語り合い、最終的には何故かメンタルセラピーのようなことになってしまった。

 だが過程はどうあれ仲は凄く良くなれたとは思うので良い結果だと言えるだろう。

 そうして会話を続けていると今まで走っていた馬車が止まる。

 まだまだ日は落ちていない、野営を始めるには少し早すぎる時間だ。

 

「冒険者のお二人さん、話しているところ申し訳ないですが、護衛の仕事を頼みます」

 

 御者台から赤いベレー帽を被った商人がやや焦った声でこちらに話しかける。

 護衛の仕事、つまり馬車を狙う不届きものが現れたということだ。

 

「おう! このヴィーラとアルトリアに任せて大船に乗った気で居な!」

 

 言うや否や荷台の奥に置いてあった戦鎚を手に取り外へ駆け出す。

 それを追いかけるように私も荷台の外に出る。

 

 どうやら今回の馬車の襲撃犯は狼の群れのようだ、肉の匂いでもしたのだろうか。

 馬車を取り囲んだ狼達はガタイがかなり大きく、犬歯も大きく発達していてまるで剣がくっついているようだ。

 狼というよりサーベルタイガーの方が近いかもしれない。

 

 狼達は地を足で踏み締め今すぐにでも襲ってきそうだ。

 しかし 私は慌てず、焦ることは無い。

 いつでも迎撃できるようにマチェットを腰から引き抜き構える。

 

 群れの中で一際大きな狼が一つ天へと吼える。

 すると周りの狼が一斉に大地を蹴り、歯を剥き出しながら風と共に飛びかかってくる。

 

「ふっ!」

 

 実は昇級試験以降、レーヴェ先輩と定期的に模擬戦を行っている。

 ただ武器を扱う技量が全く足りていないので鎧の性能でゴリ押さない場合は負け続けているが。

 

 しかし、それでも槍の突きより遥かに遅い狼達ではまるで相手にならない。

 一息で正面から飛びかかってきた狼の胴体を両断しその流れに乗って他の狼の首を落とす。

 

 一つ 二つ 三つ……

 

 途中から狼が怯えて立ち竦んだり、背を向けて逃げ出したので投げナイフを脳天に目掛けて投擲する。

 逃げ出した狼達もも残らず地に伏した。

 

「はあああ!」

 

 馬車の方に寄ってきた狼と逃げ出した狼をあらかた片付けたのでヴィーラの方を見るとリーダー格と思われる狼の足を折り頭を戦鎚で叩き潰し終わった所だった。

 そしてその周りの地面には数匹頭の無い狼の胴体が転がっている。

 ええ……戦い方グロすぎるだろ、ヴィーラ本人に至っては血を浴びて真っ赤になってるよ……

 

 

 

 非常にスムーズに襲撃を処理した後は馬車に乗るために荷台に積んでいた樽の水で主に返り血を流した。

 荷物や荷台に血の匂いが付くのは誰だって嫌だろう、それに武器が錆びたり消耗が速くなったりもしてしまうので尚更だ。

 予備の水を入れた樽もある上にこの先しばらく進むと川があり、そこで水を補給できるので水の心配はいらない。

 

 それからは特に襲撃されることも車輪が壊れることも無く平和に道を進み、日が沈む前に野営の準備をした。

 ちなみに宿場町から王都までは天候にもよるが片道三日掛かるらしい。

 

 記念すべき野営一回目の食事に出たのは干し肉と塩スープそして干した果物だった、塩スープっていったい何だ? まあ体の芯から温まるあたたかい味だったので文句は無い。

 馬車を引く馬を長時間操縦したり狼の群れに遭遇するなど疲労に慣れていないであろう商人には先に寝てもらい、冒険者二人で交代で見張る。

 王都に近づくほど盗賊などの犯罪者や魔物が少なくなるので二人だけでも何とかなるのだ、理由としては王都の選ばれた精鋭騎士が周辺の魔物や野盗を軒並み滅ぼしている、というのが冒険者内の酒飲みが考察した考えだ。

 実際のところは分からないがその程度余裕で出来ると思われるくらい王都の精鋭騎士達は強いらしい。

 

「少し、いいか」

 

 星々と月の光があっても暗い空の下で、焚き火が消えないよう木片を随時追加しながら周りを見張っていると、日中血塗れになりながらも笑顔だったヴィーラが話しかけてくる。

 

「交代にはまだ早いが、どうしたんだ」

 

「アルトリアはチームを組む仲間はもう決まっているのか?」

 

 な なにっ! もしかして共に冒険する仲間について考えるのを半分くらい放棄して王都に行こうとしていることがバレているというのかっ!

 ありえない、思考を読むなどそんなファンタジーはあってはならないっ!

 

「いいや、まだ考えている所だな」

 

「ならちょうど良い、アルトリアはあたしの長年の悩みも解決してくれたし、戦闘に関しても強いことが狼との戦いの時に横目で見てて気付いたんだ」

 

「それに久々にあたしの好きなことに関する会話もたくさん出来た」

 

「だからあんたの冒険にあたしを入れてくれないか?」

 

 なん……だと……




新キャラが濃い気がして主人公が薄く感じる
最後の方はテンションがおかしくて変な文になってるから後で修正したい
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