今回は陰陽術の呪術の自己解釈が含まれています。というか、ほぼメインです。
言葉足らずなところもあると思いますが、なにとぞ広い心で…
では、本編どぞ。
「さて」
春虎の決意が決まったことでレティシアが口を開く。
「魔王を倒す、と軽々しく口に出す君たちの実力は如何程かな?」
第9話 決闘~春虎チート化への道だそうですよ!
[れ、レティシア様!?」
入ってきた黒ウサギが慌てる。この問題児たち相手にそんな挑発めいた事を言ってしまうと—————
「気になるか?なんなら直接相手してもいいぜ元魔王様?」
案の定釣れた。
「も、元魔王!?」
初めて聞く事実に驚く飛鳥。いきなり魔王に遭遇するなどと思ってもいなかったからだ。春虎もコミュニティの元仲間が元魔王と聞いて驚いている。
「てことは、ノーネームは少なくとも昔、一度は魔王を討伐していたのか」
「それは少し違うな。私は
「怖気づく?むしろ逆だね。イイぜ、元魔王様。この俺の、
「威勢はいいな。悪いな、黒ウサギ。中庭を借りるぞ」
■
中庭で向き合う二人。
両者の距離は十間ほどだ。二人の手にはレティシアがギフトカードから出したランスが握られている。
「ルールの確認だ。お互いランスを一撃ずつ撃ち合って最後に立っていた方の価値でいいな?」
「ああ。シンプルで分かりやすい。先手は譲るぜ。そっちのが実力がわかるだろ?」
「ふっ。減らず口を。後で泣いても知らんぞ?」
ふわり、とランスを手に宙へ浮かぶレティシア。
「へえ?箱庭の吸血鬼ってのは翼があるのか」
「ああ。翼で飛んでいるわけではないがな。制空権を握られるのは不満か?」
「いいや。ルールにそんなことは言ってなかったしな」
なるほど、気構えは十分か。あとは実力が伴うか否かだが…
投擲用のランスを掲げる。
「ふっ———————!」
呼吸を整え、一つ翼を羽ばたかせる。全身を大きくしならせた反動に、体のひねりをも加えて撃ち出す。
あまりにもの衝撃に大気に波紋が広がる。辺りで見守っていた春虎たちの元へ衝撃波が届くより早く、摩擦熱により真っ赤となった槍は十六夜へと落下していく。
「しゃらくせえええええええええ!」
■
なんだ今のは。
槍を殴りつけて打ち返す?
そんなわけがあるか。
目の前の光景が信じられず、惚けてしまう。
だが、眼前にせまりくるのは打ち返されたランス。
あまりの破壊力に形がひしゃげ、今の私には避けられない速度で迫りくるそれを前に私は思う。
ああ、これほどならば…
今はまだ、あの魔王には及ばないだろう。だが、現段階でこれほどの実力を持つ者がいる。これならば、いずれコミュニティの復活も叶うだろう。
黒ウサギと飛鳥が叫んでいるのが聞こえる。
ああ、すまない。だが安心した。がんばれ、黒ウサギ。
覚悟を決めた瞬間、体を引っ張られた。
■
それに気づいたのはたまたまだった。
十六夜たちの決闘を見に中庭は出た後、先ほどのレティシアとの話のこともあり元魔王の霊格を詳しく視ようと普段より呪力を練りこんで視たところ、中庭へと接近する一団が見えた。
より強く見鬼の才を意識するまで気づかない、という事態にかなり驚くがすぐにある程度落ち着く。元の世界にも隠形術に優れた術者はたくさんいた。大友先生などは姿を消すこともできたから耐性があったのかもしれない。
落ち着くと同時に周りを見てみる。
全員決闘に意識が向いていて気づいていない。だがレティシアの位置は危ない。
空に浮いているので一団との距離が心なしか近いのだ。しかも攻撃に意識が集中している。この状態で襲われでもしたらなす術もないだろう。
そう思うと懐から一枚の呪符を出す。
ガルドとのゲームのあと、約束通り白夜叉に借りた陰陽術の本に記されていた呪符だ。
時間がなかったので一枚しか作れなかったうえ、効果も記されていたものしかわからない。
ぶっつけ本番で新術は危険だが現状春虎の持つ術で即効性のあり有用なものはこれしかない。
呪符を足にかざし、唱える。
「
呪力の込められた赤いラインが足に奔る。
春虎が読んだところまでに文献に記されていたことは二つ。
物や術者の体に直接呪術を掛けることで特定の効果を得る”呪装”。もちろんリスクもあるが今は置いておく。
そしてもう一つはその呪装の種類。
とりあえず一番初めに書いてあった飛天駿脚を習得しようと呪符を創っていた。
飛天駿脚の術式は単純だが高度なものだった。
符術はともかく、今まで春虎の使っていた術はそれぞれの力を司る神仏へと呪文という祝詞を介してアクセスし、その一端を術者の呪力を媒介に召喚するという、一種の降霊術だった。
だが、呪装は違った。
符術と同じように呪符にそれぞれ意味のある模様や文字が書かれるが、その内容は簡略化した降霊術の術式。
そして媒介とするのは物や体などという、呪力とは違い形のあるものなのだ。
符術は呪力を呪符に通し発動する。
呪術は呪文という言霊に呪力を通して発動する。
だが、呪装は呪符を介し、呪力で呼び込んだモノを
外へと作用する他の術と違い、内へと作用する術なのだ。
呪装により韋駄天の霊力を足に纏う。
動き出しが早かったおかげで十六夜が槍を打ち返す前にレティシアに向かって飛び出せた。
間一髪槍と衝突せずにレティシアを抱えて離脱する。
その動きは全員の虚を突いたうえに速かった。
「お、うおおお!???」
だが。
初めての呪装。完全にコントロール出来たわけではなく勢いを殺せずに体が流れていく。
そのうえ、呪装も解除されてしまった。
「お、
慌ててガルド戦の時にも使用した鴉の式神を使い体制を立て直す。
「は、春虎さん!お二人ともご無事ですか!?」
「なんとか!」
黒ウサギにそう言い、いまだ距離があるとはいえ迫りつつある一団を警戒しながら地上へ向かう。
「どうして」
と、レティシアに声を掛けられた。
「どうして私を助けた?間に合うタイミングじゃなかったはずだ」
「どうしてってもなあ…いろいろ理由はあるけどまああれだ」
なんとか十六夜たちの近くへと着地し、呪符を取り出しながら答える。
「見えないものが視えた、からかな?」
取り出した火行符を放ち、発動させる。
枚数は少なかったが相手の不意を突いたこともあり先手を取れた。
「「なっ!?」」
驚く黒ウサギとレティシア。いきなり春虎が虚空に術を放ったと思ったら人が爆炎に包まれたのだから。
「へえ。やるな春虎。無言で人様の土地にやってきた集団ってか?おいおい、骨のある奴はいるんだろうな!」
瞬時に状況を把握した十六夜も落ちていた小石をぶん投げて次々と撃墜していく。
「く!早くギフトを使え!商品だけでも連れて帰るぞ!他はどうなっても知らん!」
「い、いきなり我々のコミュニティの領土にやって来てなんですかその態度は!」
「おそらくペルセウスの奴らだろう。私がいなくなったことに気付いてやってきた、というところか…!?ま、まずい!あの光、ゴーゴンの威光だ!」
突如放たれた灰色の光に反応が遅れる十六夜。黒ウサギも単身なら回避することも余裕だが、その場合仲間が石化してしまう。春虎も防げるような術を行使する余裕がない。
ここまでか…とレティシアが自分ひとりを犠牲にみんなを守ろうと思った時、彼女が前に出る。
「
その言葉が紡がれると同時にゴーゴンの威光を放つギフトカードを持つ敵の腕が勢いよく上に上がる。その結果、ゴーゴンの威光はノーネームには当たらず、襲撃してきたペルセウス内の同士討ちとなった。
「ようやく私の出番ね。
飛鳥の威光により、ペルセウスの面々は投降させられ、春虎たちに拘束された。
「こ、これほどとは…」
慄くレティシア。だが、悲しそうに飛鳥は答える。
「便利だけど、こんな力は望んでないわ。相手の意思を捻じ曲げてしまう力なんてね…」
「…何があったかはきかない。だが、これは覚えていてほしい。どんな力でも要は使い方なんだ。修羅神仏が集う箱庭では飛鳥のギフトが直接通じないほどの霊格を持つ相手も出てくるだろうし、外の世界には無い使い道もあるかもしれない。そう悲観せずに、今はただ君のギフトにここにいるみんなが救われたことを覚えておいてくれ」
元魔王の言葉は重く、力に悩んでいた飛鳥に一筋の光を示した。
レティシア先生マジ先生。
力を持っていた過去と常識人という使い勝手の良さが半端ないです。
今話で出てきた呪装はジャンプSQで連載中の双星の陰陽師にて登場したものです。
双星に比べるとステゴロ成分は格段に下がりますが、飛鳥ですらアルマという機動力を得る箱庭で戦わせるのにある程度の身体能力強化はいると思って陰陽術として機動性を上げました。
次話はいつになるかな…
がんばります。
一巻の流れはできているけど、二巻がヤヴァイ。
ペスト戦は思いつくけど、そこまでが…