【▼・ᴥ・▼】子犬に転生したのでフリーレンに命の儚さを教えることにする 作:ニヒツ
この物語はフィクションです。
実在の猫や犬などとは一切関係ありません。
完結から1年経っても高評価頂けて感謝です。
吾輩は猫である。名前は……今はない。
今世は親兄弟もおらず、荒野の風来坊である。
人間の街は便利である。
食べ物がそこいらにたくさん転がっている。
吾輩のキュートな仕草に人間は食べ物を献上するだけの奴隷と化す。
もちろん、乱暴者もいた。
同胞を売り捌こうとする輩。
食料運搬係の人間を襲う角付きの輩。
奇妙な光を操り吾輩を追いかける輩。
動物に乗り、長物を振り回す輩。
粘り強く何度も挑んできた長耳の輩。
みんな『黄金の右』でワンパンにしてやった。
それ以来、この街はだいぶ住みやすくなった。
心なしか人間からの献上品も増え、同胞達も毛並みも良い。
そんな吾輩は今日も今日とて日向ぼっこをしている。
「にゃあご!!」
不意に掴まれた尻尾で目が覚める。
すわ、何事か!?と突然現れた外敵に対し、戦闘態勢に入る。
しかし、そこにいたのは人間の幼子であった。
幼子は脆い。
それは猫も犬も人間も同じである。
ふと、親兄弟に囲まれていた前世を懐かしむ。
そして、共に居た同居人達を思い出した。
「にゃん、にゃん!」
吾輩は幼子の手から抜け出し、尻尾を左右に振る。
幼子は目を輝かせながら、両手を挙げてそれを掴もうと追いかける。
そして、ベランダから足を外した。
吾輩は失念していた。
ここは見晴らし良い高所であり、人間は着地が下手だ。
吾輩は『キラキラ』を使った。
少女はふわりと浮かび、見えない何かによって優しく地面に着地する。
吾輩は急いで幼子に駆け寄り、傷が無いか念入りに舐める。
「キャッ、キャ。きらきら」
幼子は嬉しそうに吾輩の体を叩く。
どうやら大丈夫らしい。
先ほどから『きらきら』と叫んで吾輩に催促してくる。
『キラキラ』
昔取った役柄である。
まだ名前があった頃、とある少女の見様見真似で覚えたものだ。
これが使えるおかげで、吾輩は安全に風来坊を続けられている。
「〜ルン。どこにいるの?ご飯できたわよ」
人間の住処から、声が聞こえる。
幼子はその声に反応し、住処の方を向く。
おそらく母親なのだろう。
幼子の無事も確認できたのだ。吾輩は踵を返し、その場を去った。
「まあ、フェルンたら猫ちゃんと仲良くなったのね。お父さんに似て動物が好きなのはいいけど、一人で外に出たら危ないわよ」
「にゃんにゃ」
吾輩は幼子に引き摺られ、人間の住処へ連行されていた。
どうやら遊び足りないらしい。
吾輩は猫である。名前はフラン。
聞き覚えのある名前だが、偶然である。
今世の同居人である幼子…いや、もう少女だな。
彼女の大好物の名前らしい。
少女によって無理やりファミリーにされ、既に何度も朝日が登っては落ちていった。
少女は今も元気いっぱいに吾輩を連れ回し、街を走り回っている。
吾輩が守っているため、変な輩はやってこない。
しかし、どこにでも例外はいるらしい。
見知らぬ人間が声をかけてきた。
「こんにちは、お嬢さん。■■■■家のお屋敷はここで合っていますか?」
「えっ、うん」
少女は見知らぬ大人に話しかけられ、普段のワンパク具合が嘘のように小声になる。
そして、少女が吾輩をその人間へグッと突き出す。
吾輩は下半身を脱力し、ぷら〜んと宙に浮いた状態で臨戦態勢に入る。
たいそう老いた眼前の人間を睨みつける。
しゃー
ナンヤワレコッチミテルントチャウゾドツカレタインカワレ。
老人はにこりと笑い、一歩後ろへ距離を取る。
そして吾輩は、ふと『懐かしい匂い』を感じた。
それは老人から漂っている。
吾輩は少女の腕から脱出し、老人の元へ駆け寄った。
待てやめろ撫でるんじゃない。その匂いの出所をはけ、さもないと……ゴロゴロ…上手いじゃないか。ん?それは魚か?献上せよ。美味い。なかなか良い人間だな。吾輩達との接し方をよく心得ている。……ん?そういえば何か探していたような?まあいい。おい、もっと撫でろ。あと、袖の下に隠してるやつも捧げろ。
「すごい。フランが知らない人に懐いてる!! おじいさんどうやったの?」
「ふふ、私は日頃の行いが良いですからね。女神様が素敵な魔法を掛けてくださったんですよ。あなたも良い子にしていれば、この子ともっと仲良くなれますよ」
老人が優しく少女の頭を撫でる。
少女は気持ちよさそうに目を細める。
「私はハイター。僧侶をやっています。君のお父さん達と話がしたくて尋ねてきました。良ければ、お屋敷まで案内してもらえませんか?」