【▼・ᴥ・▼】子犬に転生したのでフリーレンに命の儚さを教えることにする   作:ニヒツ

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【注意】
この物語はフィクションです。
実在の猫や犬などとは一切関係ありません。
どうすれば早く大人になれますか?


【おまけ】百薬の長

 

「ねぇ、フラン」

にゃあ

 

少女は抱きしめた。

腕の中でモゾモゾ動く暖かい存在に、大きな安心感を得る。

 

「お父様とお母様、私のこと嫌いになっちゃったのかな?」

にゅぐあ

 

フェルンには大好きな『家族(フラン)』がいる。

自分の記憶を遡ると、必ずフランが映り込んでいる。

 

初めてお外へ出かけた時も、

お友達と喧嘩した時も、

隠れてお菓子を分け合った時も、

お父様の仕事場に忍び込んだ時も、

お母様に内緒で遊びに出かける時も、

いつも一緒だ。

 

現在、フェルンはハイターという老人のところでお世話になっている。

もちろんフランも一緒だ。

しかし、母も父もここにはいない。

 

「フェルン、大丈夫です。貴方のご両親は貴方を嫌いになったわけではありません。大丈夫です。戦争が落ち着けばまた会えます。私が保証しますよ」

にゃぁ

 

少女は驚いた。

目の前の老人が彼女の心の中を言い当てたからである。

フランを抱きしめる力が無意識に緩くなる。

 

「本当?お母様もお父様もフェルンのこと嫌いになってない?」

 

「大丈夫です。私は大人ですからね。なんでも知っています。今、私の()()達が頑張ってくれていますからね。直ぐにまた会えますよ」

 

老人の手が少女の頭を優しく撫でる。

少女は表情を少し和らげる。

 

「大人って凄い!私も早く大人になりたい…です。ハイター様、どうすれば早く大人になれ…ますか?」

 

ハイター老人は複雑そうな表情をしつつ、そっと彼女を抱きしめた。

 

 

 

 

ぺろぺろ

今日のフランは甘えん坊らしい。

朝からずっとフェルンに付きまとい、顔を舐めている。

フランに心配ないよと伝えながら、少女は早く大人になる方法を考えていた。

そして、とある物を思い出した。

 

「あった!」

 

フェルンは棚の奥に隠されていた『とある瓶』を見つけた。

この瓶はよく知っている。

昔、父と母が夜にこっそり飲んでいる場面を見たことがある。

先日、夜トイレに行った際、ハイターが飲んでいたのも知っている。

 

「きっと大人になる薬なんだ」

にゃあ

 

フランが服を引っ張る。

分けて欲しいらしい。

瓶をテーブルに置き、フランを抱き上げる。

 

「フランも大人になりたいの?分かった。大人になってお母様とお父様に会いに行こう」

 

意を決して、薬へ手を伸ばしたその時。

にゃ

 

フランはいつものようにテーブルの上に『あるもの』へ手を添え、当然のようにそれは落下した。

驚いたフェルンは反射的に手を伸ばすが、フランの身体が瓶とフェルンの間へ割り込む。

瓶はくるりと宙を舞い、中身が床にぶちまけられた。

 

ガチッシャン!

にゃっ

 

大きな音が響き渡り、誰かが急いで近づいてくる音が聞こえた。

 

「フェルン! 大丈夫ですか!!」

 

大きな音に驚き、ハイターは急いでフェルン達の元へやってきた。

床に散らばるガラス片とフェルンが抱き抱えるフランの様子を見て、ハイターは状況をある程度理解した。

 

「ケガはないですか?二人とも」

 

そして、フェルンとフランに怪我がないか確認する。

幸いフェルンに怪我はなかったが、フランが散らばったガラス片を踏んでしまったらしい。

ハイターが慎重に破片を取り出し、女神様の魔法でその傷を癒した。

 

「うう、ごめんね。フラン」

に〜

 

フェルンがフランを抱きしめる。

フランはいつものようにその顔を優しく舐めて返す。

 

「フェルン、どうしてこんなことをしたのか説明してくれますか?」

 

項垂れる少女。

フェルンはハイターが怒った姿を初めて見た。

そして、『怖い』よりも『悲しい』という感情を強く感じた。

 

『いつも優しいハイター様を怒らせてしまった。そして、フランに怪我をさせてしまった』

 

それは小さなフェルンにとって大きな後悔となっている。

 

「ハイター様、私は早く大人になりたいのです。そして、お母様とお父様に会いたい。ハイター様に恩返しもしたいのです。でも子供の私じゃそれができない。だから大人になれる薬を飲もうとしたんです」

 

堪えきれず涙が溢れる。

大好きな人達の役に立てないのはとても悲しい。

迷惑になるばかりの自分が嫌だった。

早く父や母、ハイター様のようなカッコいい大人になりたかった。

泣きたくないのに涙は止まらない。

 

そんなフェルンをハイターはギュッと抱きしめる。

 

「フェルン、大丈夫です。大丈夫ですよ。ゆっくりで良いのです。焦って大人になる必要はないんですよ。今のうちにたくさんのものを見て、聞いて、出会っい、たくさん考えて、貴方のなりたい自分へゆっくりと進めば良いんです。私達はそのために戦ってきたんですか『にゃ』ら」

ぽんっ

 

フランの肉球がハイターの顔を押さえつける。

フェルンとハイターの間に挟まれて苦しいらしい。

フランの正当な抗議に対し、二人の顔に笑顔が戻る。

そして、フェルンの抱擁でフランは再び身動きが取れなくなるのだった。

 

 

 

 

「これは『酒』といって、大人にとっては()()()()なんです。ただ、子供が飲むと毒になってしまう厄介な代物なんですよ。だから、フェルンが大人になるまで飲んではいけませんよ」

 

「そんな凄い薬を……ごめんなさい」

 

「大丈夫ですよ。大人になったら簡単に手に入るものです。フェルンが心配することはない。ただ、瓶は割れると危ないので、今後触る際は注意してくださいね」

 

「分かりました。ハイター様はたくさん飲んで長生きしてくださいね」

 

フェルンに部屋へ戻るように促し、ハイターは割れた酒瓶を見た。

 

 

 

「お酒は…天国に行くまでお預けですね」

 

 

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