【▼・ᴥ・▼】子犬に転生したのでフリーレンに命の儚さを教えることにする 作:ニヒツ
この物語はフィクションです。
実在の猫や犬などとは一切関係ありません。
不思議な光を扱う少女『ヒンフリ』と出会って1年が経った。
つまり、吾輩ももう立派な成犬である。
そして、驚愕の事実が判明した。
吾輩は
つい最近判明したことである。
いや、これは吾輩がアホだから今更気づいたわけではない。
前世は孤高のメス猫であった。
殿方の姿など父くらいしか知らぬ。
そしてなにより、犬の雄雌など猫であった吾輩にわかるはずもない。
全部同じである。
ただ、亡き父のような立派なオスになりたいとは思う。
村が黄金に包まれたあの日、父は真っ先に危険に気付き、吾輩達を隠した。
そして、あの化け物に戦いを挑み一番最初に黄金にされた。
その様子を吾輩は隣で黄金になってしまった母や兄弟達と見ていた。
今世の吾輩は長男である。
前世でも長女であった。
前世のように今世も弟や妹達を独り立ちするまで守ってやるつもりだった。
そのつもりだった。
その『夢』はあの日見た父の背中と共に
あの時まで吾輩に守れないものはなかった。
同居人だって、その子供達だって最後まで守りきってきた。
吾輩は力が欲しい。
そして、いつか
吾輩の右手が疼くのだ。
やつに刻まれたこの
※ この時の吾輩は人間で言うところの13歳である
だから、吾輩の最近の日課は修行である。
猫のようにしなやかなステップと犬の力強い脚力で敵を翻弄し、
最強のコンボの完成である。
ポポポポトゥィーン
今日の獲物がお出ましだ。
この森でよく見かけるデカい虫のような鹿のような生物である。
強い割に倒すと消えてなくなるので、普段は狩らずに無視している。
しかし、今日はちょうど新しい必殺技ができたので試すことにした。
吾輩の
そして放たれた一閃。
哀れ虫鹿オバケは真っ二つである。
ポポポポという奇妙な鳴き声を上げながらチリとなった。
吾輩は最近気付いたのである。
なんか
使い過ぎるとちょっとばかし完全には戻せなくなるが、念願の力である。
これで今度こそ『ヒンフリ』を最後まで守るのである。
吾輩は誰もいない森の中でカッコ付けながら残心する。
敵の力を我が物として振るう邪道。
あの気高い父は認めてくれるだろうか?
いや、いくら考えたとて答えなど分かるはずもない。
…。
「おお、おおお!一撃。素晴らしい太刀筋!! 助太刀かたじけない。もしや女神様の『守護獣様』ではございませんか?」
そこにはむさ苦しい人間がいた。
むっ、気付かなかった。
風上にいたため匂いを嗅ぎ損ねたようだ。
「おお、やはりそうなのですね。村に古くから伝わってきた『女神の石碑』への参拝。まさか真の目的は『守護獣様』にお目通りすることだったとは!! この戦士アウゲンの目をもってしても見抜けなんだ」
敵意はなさそうだ。
何か元気に叫んでいるようだが、吾輩には分からない。
『ヒンフリ』と言う鳴き声が出てこないところを見るに、見た目ほど嬉しがってはいないようだ。
「ぜひ、このアウゲンに武の真髄を授けてくだされ。『守護獣様』。いや先生!」
何こいつ怖。関わらんとこ。
吾輩はその場を跳躍して離脱。
『ヒンフリ』が待つ家に帰った。
今日の晩御飯は魚だった。
「先生! お待ちしておりましたぞ!!」
いつもの狩場で修行をしようと思ってきてみれば、昨日の人間がいた。
少しスパイシーな匂いがするが、今日も敵意はないようだ。
まあ、念のためこちらにも敵意がないことを示しておこう。
「お、おお。この木の実を施していただけるのですかな。見たことない種だ。では早速いただきまする。パク」
ドサッ
木の実を食って倒れた人間。
吾輩は悟った。
これ毒や。毒の木の実や。
『ヒンフリ』が誤って食べてしまわないように処分しよう。
苦しむ人間をこのまま放置するのは忍びない。
なんとか『ヒンフリ』のところに連れて行って治療を…
「ガハッ、死ぬかと思った。しかし何か身体がポカポカ暖かい。これは毒に対する耐性か? 流石、先生の木の実!!ただの木の実とは思わなんだが、毒耐性を瞬時に得るものだったとは」
……元気そうならよし。
吾輩は帰って寝た。
「先生! お待ちしておりましたぞ!!」
またいた。
吾輩はそいつを無視し、狩りの獲物を探す。
見つけた。
上質な鹿肉だ。
吾輩が獲物へ飛びかかろうと構えた瞬間。
ビュッ
吾輩の横を何かが通り過ぎた。
それは矢というには早過ぎた。
そして斧というには小さ過ぎた。
飛んで行った何かが鹿の眉間に直撃し、獲物を一撃で絶命させた。
「どうですか先生。私もなかなかやるでしょう。任せてください。獲物の解体なら私は村一番なんです」
男は獲物に突き刺さった小さな斧を引き抜き、手際よくそれを捌いていく。
見事なものだ。
吾輩がたまに獲物丸々もって帰った時に【ヒンフリ】がやってくれる解体作業よりも断然早い。
こいつから学べることもあるやもしれん。
「あー、これ気になります?ハンドアックスという武器ですよ。先生にはあまり馴染みがなさそうですもんね。高速で投げて相手の初動を殺す武器なんですよ」
この人間、図体がデカくてノロマだが、武器の投擲は吾輩でも反応できないレベルの達人である。
吾輩はしばしこの斧男と行動を共にすることにした。
力はいくらあっても良い。
「先生、これ見てください。実はあのハンドアックスお手製なんですよ。私の力ではよく武器を粉砕してしまうので、むしろ使い捨ての武器が良いのです。修行以外の時間は大体ハンドアックスを作っております」
突然、衣をはだけて吾輩にその内側を晒す男。
その姿は昔同居人と不思議な箱を通してみた『タラレバガニ』の威嚇ポーズの如し。
威嚇する割に敵意の匂いがしないので、噛みつきはせなんだ。せなんだが……
男の衣の内側には、先ほど投げることで凄まじい破壊力のあった『ハンドアックス』なる武器が所狭しと貼り付けてあった。
衣の内側だけでなく、脇にも足にも胸にも尻にも『ハンドアックス』。
……。
何これ強そう!
吾輩も『身体中に武器』をつけて強くなりたい!
『ヒンフリ』を守るためにも、あの黄金のバケモノを倒すためにも、力はいくらあっても良い。
「おお、気に入ってくださいましたか! ではお近づきの印にお一つお納めいたしまする。どうぞこちらを」
尻に張り付いていた『ハンドアックス』なるものの一つを男が差し出す。
どうやらくれるらしい。
とてもワイルドな匂いがする。
たくさんの戦いを経験してきたのだろう。
吾輩はそれを咥えてルンルン気分で帰宅した。
「あれ?フランメ、今日は獲物取れなかったんだね。まあ、そんな日もあるよ。おいで、キノコと木の実で簡単なスープを作ってみたんだ。グルメなフランメの舌に合うと良いけど」
ぬかった!
ハンドアックスに気を取られて狩った獲物を回収し忘れておった。
残念無念また明日。
吾輩の舌は鹿肉の舌になっていたのに…
でも『ヒンフリ』の作ってくれたスープなるものは美味しかった。
後日、吾輩は気づいてしまった。
ハンドアックス吾輩使えないじゃん。
吾輩の手では持てない。
吾輩の身体にはあの男のようにハンドアックスをマウントするものがない。
吾輩が咥えて振るうという案もあったが、そのまま噛み付いた方がどう考えても強い。
……。
無念、ハンドアックスは物置に眠ることとなった。
「斧? こんなの仕舞ってたっけ? まあ良いや薪割りにちょうど良さそうだ」
ハンドアックスは小柄なフリーレンの薪割り斧に転生した。
「戻ってきたのか…」
勇者ヒンメルの死から31年後。
北部高原キーノ峠。
『女神の石碑』
その目の前にフリーレンはいた。
女神の石碑に触れたことで過去に飛ばされた彼女は過去のヒンメル達と協力し、ようやくフェルン達が待つこの時代に戻って来れたのだ。
「フリーレン様、森の奥なのにほとんど魔物がいませんよね。昔からそうなんですか?」
「そうだね。ここは『あの子』と暮らしていた頃から
「そういう場所もあるんじゃないか? 師匠と住んでた森にも魔物はほとんどいなかったぜ」
フリーレンたちは ああでもないこうでもないと話しながら、獣道と思われる細道を進む。
「フリーレン様…」
「大丈夫、人だ……ん?人か?」
「いやはや。こんな森の奥で冒険者に会うとは」
フリーレンたちは1人の戦士と出会った。
彼の話によると、この道は近くの村の戦士達が女神の石碑へ通う道だそうだ。
そして女神の石碑を守っている『
「そんな獣がいたの?魔物じゃなくて?」
「私も直接見たことはありません。しかし、私の先祖が命を救われ武の真髄を賜ったと言い伝えが残っておるのです。その姿は誇り高き狼であり、黄金に輝く右腕はあらゆる魔物を両断し、敵の攻撃から女神様を守る盾にもなったと」
『そんな獣がいたのか、出会わなくてよかったかもしれない』
フリーレンは500年ほど前、この辺りに『あの子』と一緒に住んでいた。
その頃にはそんな話は聞いたことがなかったので、その後にできた作り話なのだろう。
「へぇ、すごい獣がいるもんなんだね」
「黄金の狼ですか。ちょっと見てみたいです」
「俺も会ってみたいなぁ。『武の真髄(真)を賜る』とかいうの気になるし」
その後、ヒンメルの話で盛り上がった戦士とフリーレンたちは、帝国領へ入るために別れた。
「あのさぁ。誰も突っ込まなかったから普通なのかと思ってたけど、あの戦士の人ヤバい人だったのでは?」
「まあ、そうだね。全身に『ハンドアックス』付けてたし」
「頭にも付けてましたね…」
「俺はヒゲについてた『小さなハンドアックス』の装飾が気になって、ほとんど話が頭に入って来なかったんだけど」
フリーレンたちの旅は続く
■ 著者ニヒツのつぶやき
3話であまり評価が伸びなかったらしい。
ギリギリ目標評価数に達したので続投。
俺としては、魔族が如何にヤバい奴らか絵本で世間へ浸透させる方が重要なんだが…まあいい。
そんなことより最近聞いた噂に、魔族を主人公とした『物語』を書く物書きがいるらしい。
正気かそいつら?
人類が魔族に友好的になっちまったら全員食われちまうぞ!
見つけ次第、魔族図鑑やら魔族史やら俺が書いた論文全部持っていって認識改めさせてやるぜ!
【出版社より】
5話作成のため、『 お気に入り 』『 評価 』『 感想 』のご支援をお願いいたします。
■ 著者ニヒツ
メイン作品『シュラハトくん見逃して』の登場人物。
数百年死んだ幼馴染の影を引きずっている。
ヒンメルとフリーレンには自分と同じ結末を辿らせないために奔走中。
武器ってたくさん付いてる方がカッコいいよね?
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YES
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NO
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知らんがな
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もうこの作品に満足しました(続きは不要)