暗き月の王、狭間の地より来たり   作:Crimson Wizard

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毎日の11時間労働にパワハラ()で心も身体もボロボロです……。明日投稿出来るか分からないので短いですが置いておきます。
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死の支配者と暗月の王による華麗なるマッチポンプ劇『前編』

 

─城塞都市・エ・ランテル 西側地区・共同墓地最奥─

 

『シルヴィアよ、私だ……返事は必要ない。

今お前のいる場所から更に奥に来て欲しい。そこに私の召喚したアンデッドが居る。それを私と共に兵士達の前で倒して欲しい。』

 

「……ふむ。」

 

……返事は必要ないと言うが、そもそも私にこの様な魔術は使えんのだがな。

だがまあ、丁度いい。元凶を叩こうにも衛兵や冒険者共に止められてまともに先に進めなかった所だ。

流石に鬱陶しいので無視して先に進みはしたものの、盛大に出遅れた為既にモモン……アインズにより元凶は死んでいる筈だ。

 

「……来たか」

 

私の姿を視界に捉えたアインズが話し掛けてくる。

 

「衛兵共に足止めを食らってな……丁度霊廟が見えた辺りで、貴公の声が聴こえてきたという訳だ。」

 

「構わんさ……さて。シルヴィアよ、我々は現在協力関係にある。お互い冒険者として知名度を獲得するのに今回の事件は都合が良い。」

 

「……それでその死の眷属という訳か。自作自演は構わないが、私に手加減は無理だぞ。」

 

私がそう言うとアインズはそれは困る。と言葉を返す。

 

「私が必死に戦っている横で、お前が簡単に敵を倒していては私がただの道化ではないか。」

 

「それは、そうだが……そこの死の眷属はどの程度の攻撃まで耐えられる?」

 

「ふむ。そうだな、お前との決闘……でいいのか?あの場でお前の使用した雷属性の魔法などであれば、二発も耐えられないだろう。」

 

……魔術や祈祷との相性もあるのだろうが、それらを使ってしまっては苦戦している風を装う事は出来ないな。

 

「だが、今後私は魔法の出し惜しみをする予定は無い。……使える物を使わないのは不自然ではないのか?」

 

「心配するな……この世界の冒険者程度では、お前の実力を正確に把握する事は不可能だ。そうだな……こういうのはどうだ?」

 

アインズの語った筋書きはこうだ。

 

まず、冒険者モモンは異変を察知し真っ先に主犯であるズーラーノーンの幹部を潰した。

だがその主犯は最後の足掻きとして、隠し持っていた周囲の魔法を封じるマジックアイテムを使用しこの霊廟付近での魔法の使用を封じた。

モモンは咄嗟にそのマジックアイテムを破壊したが、その効果は持続したままであった。

そこに合流した冒険者シルヴィアは、魔法を使用出来ないハンデを背負いながらも冒険者モモン、そして魔法を封じられた魔法詠唱者(マジック・キャスター)であるナーベ

達と共闘し、見事奴の召喚したアンデッド達を打ち倒すことに成功する。

 

魔法詠唱者(マジック・キャスター)であるナーベはある程度剣を扱う事が出来ると事前に周囲に知られており、不自然には思われないだろうとの事。

 

「……よく咄嗟にそこまで思いつくものだな。」

 

私は素直に感心しながらそう口にする

 

「よせ、人より多少悪知恵が働くだけだ。」

 

「……至高の御方であれば当然です。お前達人間(ガガンボ)風情の尺度で物事を」

 

流れるように私を罵倒し始めたナーベにアインズが叱責する。

 

「それはやめろと言った筈だ───ナーベ。」

 

「申し訳ありませんアインズ様!」

 

「今の私は冒険者モモンだ。……今は彼女とは協力関係だ。一々目の敵にするな。」

 

「くっ!……申し訳ありません。」

 

謝りながら私を睨み付けるというある意味器用なその態度につい溜め息を零すアインズ。

 

「……もう良い。では、ある程度”観客”を共同墓地に招き入れるぞ。それから……」

 

そう言って、アインズは虚空から何かを取り出し、それを片手で砕いた。……当人にしか分からぬ事だが、ユグドラシルの課金アイテムである。

 

「時間制限こそあるが、これで本当に魔法は使えなくなった。まあ私も使えなくなるが、特に問題はないだろう。」

 

これは黎明期のユグドラシルでは特に戦士職に人気のアイテムで、逆に魔法詠唱者(マジック・キャスター)には敬遠されるアイテムだった。

ガチャでの排出率が高い為、かなりの数のプレイヤーが所持していたが、当初はあまりにも効果範囲が広く効果時間が長かった為、

特に魔法職であるプレイヤーから多過ぎる苦情が入り、速攻で弱体化(ナーフ)が入り産廃アイテムになってしまったゴミアイテムである。

 

弱体化後は効果範囲が三分の一程度にまで狭くなり、少し距離を取るだけで簡単に魔法が使える様になった為、

このアイテムを使用し、意気揚々とスキル発動の準備をしていると、一瞬で距離を取られて効果範囲外から魔法を叩き込まれる為、

弱体化後このアイテムを使う戦士職は魔法職達の絶好のカモとなった。

 

一応補足しておくと弱体化直後は、転移阻害系のスキルや魔法と併用する事でこのアイテムを使用する者たちも居た。

だが、それをするのであれば別にこのアイテムである必要は無く、

むしろ課金アイテムの中では使い勝手が悪かった為全盛期のユグドラシルでは誰からも忘れ去られていた。

 

 

「……確かに使えないな。」

 

アインズの言葉の通り、私が試しに魔術である【輝石の爪】を発動しようとしてみると、確かに発動する事は無かった。

 

だが……

 

【魔力防護】

 

「祈祷は問題なく使えるようだな。」

 

と、私が自身に祈祷を使用するのを見たアインズは……

 

「……」

 

(えぇ……?いや、本来はバフ系の魔法も使えない筈なんだけど。何でシルヴィアは使えるんだ?)

 

顎が外れそうな程落ちていた。十秒程経つと軽く発光(沈静化)し、コホンと咳払いをして先程外れかけた顎に手を当てて考察を始めていた。

……が、今は作戦の途中である事を思い出して一旦忘れる事にした。

 

「まあいい……とりあえず、魔法も、祈祷とやらも禁止だ。」

 

「問題ない。……だが、仮に魔術……魔法を使わなくとも、四体では少ないだろう。」

 

「ふむ……そうなると、」

 

《中位アンデッド創造》

 

アインズが中空に片手を翳すと、そこから漆黒の靄が生まれ、ソレが地面に滴り落ちるとおぞましき死の騎士(デス・ナイト)が姿を現す。

右手に持つフランベルジュからは赤黒いオーラが漂っており左手には禍々しい紋様のタワーシールドを構えている。

その腐敗した巨大な体躯を覆う全身鎧には血管の様な紋様が浮き出ており、所々棘の様なものが浮き出ている。

 

アインズはその動作を数回繰り返し、死の騎士(デス・ナイト)を更に四体創り出した。

 

この世界では一体で国を滅ぼせるアンデッドを、よりにもよって五体。そしてレベルで言うと更に上の蒼褪めた乗り手(ペイルライダー)を四体。

それこそスレイン法国の特殊部隊ですら下手を打つと壊滅するであろう過剰戦力である。

 

お前達は一体何処と戦争する気だと、この世界でこれらの存在を知る者達は言うだろう。

 

更に、カジットが死の宝珠で生み出していた骨の竜(スケリトル・ドラゴン)二体も消滅せずにここに居る。

 

「……まあ、これだけ居れば手加減はしなくても良さそうだな。」

 

などと言っているのはシルヴィアだ。

 

彼女は一対一ならば無類の強さを誇るが、対複数戦はハッキリ言って苦手である。……それこそ数に囲まれると遥か格下である犬や鼠に殺される事もある。

だが、あくまでそれは狭間の地の常識であって、普通は仮に戦った事の無い一般人であっても武器を持っていれば犬に囲まれても死ぬ事は無い。

それこそ鼠など、真に恐れるべきは持っている病原菌の方である。

 

明らかに狭間の地の犬や鼠が可笑しいのは明白だ。

 

……とはいえ、彼女が数の暴力に弱いのは間違いない。本来、彼女は敵の体力ではなく自身の心配をするべきなのだ。

 

 

「さて、ではそろそろ始めるか……」

 

アインズは特殊技能(スキル)で生み出したシモべ達に自分とシルヴィアを死ぬ気で攻撃する様に命令を下す。

そして、敢えて消していなかったスケルトンやゾンビといった低位のアンデッド達をナーベに片付けさせる。

 

 

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

 

 

 

ナーベの倒した低位のアンデッド達はその場で塵となって霧散し、数の減ったアンデッドに気が付いた冒険者や衛兵が墓地に入り込んで来る。

そして墓地の最奥にて……冒険者組合から加勢しに来た高位の冒険者や、衛兵達は信じられない光景を目にする。

 

「フン!」

 

漆黒の戦士が大振りでグレートソードを振るうと骨の竜(スケリトル・ドラゴン)の尾が根元から崩れ落ちる。

……余談だが、骨の竜が大人しかったのはアインズを同族(アンデッド)と認識していたからである。

 

その巨体を支える重要な役割を果たしていた尾を失った骨の竜(スケリトル・ドラゴン)は体勢を大きく崩す。

漆黒の戦士がその隙を見逃すはずもなく、大きく跳躍し、胸骨の辺りからグレートソードを振り下ろすと、

 

骨の竜(スケリトル・ドラゴン)は縦に両断され、その偽りの生を終えた。

 

その光景を見て呆然としていた冒険者達は墓地の更に奥を見て、英雄は一人では無い事を知る。

 

本来、スケルトン系のアンデッドに刺突攻撃や斬撃の効果は薄い。

なので本職が剣士だとしても、こういったアンデッド等を相手取る場合はメイス等の殴打武器を使う冒険者は多い。

 

だがまるで聖騎士の様な格好のその女は、漆黒の戦士と同じく骨の竜(スケリトル・ドラゴン)を相手取っているにも関わらず使用している得物は

一見何の変哲もない長剣である。

 

それを振るう度、骨の竜(スケリトル・ドラゴン)の巨体が少しずつではあるが欠けていく。

 

そして遂に───その女は長剣で骨の竜(スケリトル・ドラゴン)を打ち倒した。

 

それを見ていた冒険者や衛兵は英雄の誕生だと歓声を上げ……その直後、再び沈黙した。

 

 

何故なら、本来は上位冒険者であるミスリル級のパーティで漸く討伐可能とされる骨の竜(スケリトル・ドラゴン)を打ち倒した英雄達の背後から

 

まるで真打登場と言わんばかりに見た事も聞いた事も無い強大なアンデッドが九体、隊列を組んで漆黒の戦士と聖騎士の女を睥睨していた。

 




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