暗き月の王、狭間の地より来たり 作:Crimson Wizard
あのアンデッド共を消滅させた直後……倒れたフリをしているアインズを起こそうと近寄ろうとした私だったが、
駆け寄ってきた衛兵や冒険者達に囲まれ、身動きが取れない状況となってしまった。
「素晴らしい魔法でした!」
「聖女様!」
……その声に私は周囲を見渡すものの、誰の気配も無い。
「……誰だ?その聖女というのは、」
「勿論貴女のことです!あの様な魔法、見た事がありません!貴女は六大神の加護を受けし聖女様だったのですね!」
……私が、聖女だと?あまりにも見当違いの意見に、思わず鼻で笑ってしまいそうになる。
何処の世界に血塗れになりながら敵を殺し回る聖女がいるの言うのだ。とはいえ、この状況で否定するのも面倒だ。無駄な問答は避けたい。
「悪いが私も疲れた。そこの二人を叩き起して組合まで連れて来てくれ。特に、そこの大男には念入りにポーションでも掛けてやれ。」
私のその言葉に素直に動き出す冒険者達を尻目に、私は組合まで移動するつもりだったのだが……その移動の最中、予期せぬ出来事が起こる。
組合へ移動する前に、一度ラニから授かった祝福で休息を取るために人目のつかない路地裏へ来たのだが……
何処かで見た事のある猫目の女が服とも呼べぬボロ布を身に纏い、瀕死になりながら倒れ伏していた。
……あの女はアインズに預けた筈だったが、まさか逃げ出して来たのか?
軽い関心から私はその女へと近付き呼吸を確認すると、意識はないものの辛うじて息はある。
回復の祈祷で傷を癒してやり、一旦休息を取った後に私はその女を肩に担いで組合へと移動するとそこには既にアインズの姿があった。
「ナーベは何処だ?」
「……宿に寝かしてある。本来使用出来る位階を遥かに超えた魔法を無理に発動した影響で、未だ意識が戻らない。」
なるほど……そういう事にしてあるのか。
「それで……シルヴィアよ、その女は?」
「ああ、この女はそこの路地裏で死にかけていたので拾って来た。……使えそうだったのでな。」
私がそう言うとブツブツと何か独り言を呟いているアインズだったが、すぐに意識を切り替えたのか今回の件について話を始める。
「それで……今回の件で一応、組合長から昇級の話が来ている。すぐにとは行かないようだが、数日後にまた来てくれと言われた。」
ふむ、という事は当初の目的は一旦達成という事か。
目先の目標は達成したので、今後について頭を回しているとアインズがからかう様な口調で再び口を開いた。
「それはそうと……どうやらお前は六大神の加護を受けた聖女、という事になっているみたいだぞ?」
「フッ……私が聖女なら、貴公は勇者か?随分と見る目のない者たちの集まりのようだな、冒険者というのは」
……まあ、他人から何と呼ばれようと私の知った事では無い。
「さて、今回の件については既に私達の知りうる限りの情報を組合長にお伝えした。報酬の件と合わせて、数日後にまた組合に来ればいいようだ。それと……」
そう言うとアインズは懐から大きな布袋を取り出し、私に手渡した。
「現状で渡せる分の報酬らしい。後日また受け取りに来る必要はあるが、これで数日は凌げるだろう。」
ふむ……考えて使えば数日と言わず数ヶ月は積極的に依頼をこなす必要もないな。
「それと少し話したい事がある。宿屋に移動しようか。」
「ああ。」
話したいことか……十中八九、この女の事だろうな。
その後、宿屋の部屋へ入り、女を降ろした途端にアインズは口を開いた。
「その女についてだが、私の部下に預けていた筈なのだが、どうやら逃げられてしまったらしい。」
やっぱりシャルティアに預けるべきじゃ無かったかなぁ……等ボソボソ呟いているアインズ。
「本来はその部下への報酬として渡した筈だったので……私も好きにして構わないとは言ったのだが、逃げられるとなると話が変わってくる。」
シャルティアには罰が必要だな……と未だに呟いているアインズに私は話し掛ける。
「とはいえ、その者はこの女より遥かに強いのだろう?私としては良く逃げ出せたものだと思うのだが。」
「……確かに、シャルティアの周囲には
……また独り言が始まったか。私はアインズのその独り言を遮る様に口を開く。
「この女は貰ってもいいか?小間使いとしては使えそうなのでな。」
「ふむ……まあ、私としても今更その女に用は無いな。既に情報は抜き取っているし……あ、」
「どうした?」
「いや、漆黒の剣の者たちはこの女の容姿を知っている筈だ。なので外に連れ回すならせめて変装させてくれ。」
必要ならその為のマジックアイテムも幾つかあるというアインズの言葉に甘えて、幾つか預かる事にした。
「報酬と昇級の件で組合に行くまでまだ数日ある。前から招待したかったのだ。是非我がナザリックを見て行ってくれ。」
「……そうだな。では案内してくれ。」
こうして、私はアインズの拠点へと移動するのだった。
あせんちゅは今後、武技の習得を
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