暗き月の王、狭間の地より来たり   作:Crimson Wizard

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一日ぶりです。昨日投稿した話なんですが感想欄でも頂いた意見として、やはり違和感を拭えない不自然さが多過ぎて
アインズ様がポン骨太郎の狂人になってしまっており、自分としても同意見だったので起きて直ぐに修正を加えました。
流石に敵対ルートで進めたかったので話の展開自体は踏襲しつつ、違和感のある展開に修正を加えました。
本来はそもそも一度消して投稿し直すという事自体宜しくないと思うのですが、今回は流石に酷かったので修正させて頂きました。
未だナザリック側の勝利条件に違和感が残ってはいるのですが……まず、あまりにお見苦しい展開をお見せして申し訳ありませんでした。
まだ違和感残っている様でしたら感想欄にお願い致します。


【改訂版】暗月の王シルヴィアvs死の支配者 アインズ・ウール・ゴウン

 

あれから、凡そ半日程時間が経っているものの未だシルヴィアは溶岩地帯から抜け出す事が出来ていなかった

ルートが幾つにも分離しており行く先行く先行き止まりになっていたり、見た事のないモンスター等が出現したりで出口が見付からない。

もう間違いなくあの吸血鬼は回復しているだろうし、万全の状態でアインズ達が待ち構えている事だろう。

 

こんな事になると分かっていれば一度死んでおくべきだったな……とはいえ、ここまで来て自害するのも業腹だ。

既に遺灰は溶岩によるダメージで消えてしまっている。

 

「……漸くか。」

 

少しあからさまだが、分かりやすい出口を用意してくれているとは有難い。

 

 

私は霧を潜り、この亜空間を抜ける。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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──ナザリック地下大墳墓・第七階層 溶岩──

 

「……やはりアインズ様、玉座の間で迎え撃った方が良かったのでは無いでしょうか。」

 

「分かっているとも……ああ、よく分かっている。」

 

あの後、召集した守護者達に事情を説明し、直ぐにアウラにシャルティアの捜索をさせた。

不幸中の幸いというべきか、シャルティアは自力で逃げ出して来ておりアインズへと情報を持ち帰る事を優先したと話していた。

当然、アルベドに騙されたという部分には憤慨していたが、今はそれよりもアインズへあの女の脅威を伝える事に必死だった。

 

アインズはシャルティアを労い、直ぐに特殊なアイテムを使ってシャルティアを回復させた。

本来の彼女の性格であれば、自身に屈辱を味合わせたシルヴィアへの報復を真っ先にアインズへと嘆願したであろう。

だが、腐っても彼女はNPC、至高の御方に僅かでも危険が及ぶ可能性を考慮すれば、自らの我儘を押し通そうとはしなかった。

アインズはシャルティアの話を聴いて失いかけたNPC達への信用を多少取り戻し、現状を打破する手段について守護者達と意見を交わしあった。

 

当然、知恵者たるデミウルゴスとパンドラズ・アクターの意見は第八階層か、もしくは玉座の間にて守護者総員で袋叩きにする作戦を進言した。

アインズも、言われなくとも万全を期すのならば当然その意見に賛同する。

 

だが、第八階層まで来られてしまっては匿っているNPC達に万が一がある可能性が否めず、玉座の間を未知の手段で破壊されてしまえば

それ即ちナザリックの崩壊を意味する。

仲間との思い出に縋るアインズにとって、それだけは到底許容出来るものではなかった。

 

そして、仮に自力で山河社稷図から抜け出してきた場合……当然だが山河社稷図はシルヴィアの手に渡ることとなる。

それについては今更どうしようもないが、ならば山河社稷図から脱出した瞬間を狙って奇襲を掛けた方がまだ勝率が高いと言える。

山河社稷図は世界級(ワールド)アイテムの中でも特殊な効果を持つ代わりに脱出地点は固定されるという特性がある。

外部からの侵入が容易と言われる所以はここにある

ワールドアイテムの使用者であるシャルティアはその出口の位置が分かり、これは唯一と言ってもいいナザリック側のアドバンテージだ。

当然、彼女も奇襲は警戒している前提での動きにはなるが、まずアインズは謝罪から入るつもりだ。

姿を現すのはアインズとパンドラズ・アクターのみで、その他の守護者は特殊なアイテムを使って気配を完全遮断する。

 

その上で、本来希少なアイテムではあるが高レベルの傭兵モンスター達で包囲させ、彼女が敵対の意志を見せれば一斉に奇襲をかける。

その他のワールドアイテムの性能で何とかなるかを考えてみたが、脱出された時点で山河社稷図の所有権と共にシルヴィアへ”世界の守り”という

バフが掛かってしまいワールドアイテムの効果を受け付けなくなってしまう。

 

なので、これが唯一彼女を確実に殺す為の機会でありこれを逃せば彼女はまず間違いなくナザリックの驚異となってしまう。

一度殺す事が出来ればその間にこちらは体制を立て直す時間ができる為、今回程の危機に陥る可能性は限りなく低くなる。

 

「……シルヴィアは、まだ出てきていない様だな」

 

既に奇襲の準備を完了させ、出口となる地点を包囲する様にアルベドを除いた階層守護者が総員待機している。

そこにはヴィクティムの姿もあり、万全を期すというアインズの覚悟が見て取れる。

 

出口である地点の空間が揺らぎ───────

 

 

 

 

「……っ、来るぞ!」

 

そこからシルヴィアが顔を出す。

装備はボロボロで、全身が血塗れではあるものの未だ余力のありそうな雰囲気を醸し出している。

 

彼女はアインズとパンドラズ・アクターに視線を動かし──────口を開いた。

 

「……アインズ、まさか私を殺そうとしていたとはな。協力関係とはなんだったのか。」

 

第一に、彼女はアインズに対する非難を始めた。だが言い分は何一つ間違っていない。

今回ばかりは全面的に非を認めているアインズは、ゆっくりと膝を着いて、深々と地に頭を着けた。

 

それは───────土下座である。

 

「……本当に申し訳ない。今回ばかりは心から謝罪させて貰う。部下の暴走とはいえ、この組織の頭は私だ。

そして実行犯のシャルティア……吸血鬼はアルベドに騙されていただけなんだ。私は君に危害を加える様な指示は一切出していないし、

彼女も私の指示だと勘違いして行動を起こしたに過ぎない。……当然、君からすれば全て言い訳に聞こえるだろうが。

ただ許してくれとは言わない。君の望みを何でも一つ叶えよう。もし、それでも怒りが治まらないというのであれば……」

 

シルヴィアは話を遮ることなく聞いている。

守護者達も、今回ばかりは独断専行を行ったアルベド……つまりNPCの暴走が原因である為、自らの最も尊敬する御方が地に頭を着けているのを

黙って見ている。……隠れている守護者達は、自らの不甲斐なさとアルベドに対する怒りで握り込んでいる拳からは血を流している。

ここで自分達の勝手な感情で姿を現せばアインズ様の作戦は無駄になり、それと同時に主が我々の為を思って自ら泥を被っているというのに、

それを上から踏み付ける様な行為である。どれだけ激情に身を苛まれようと、NPC達は歯を食いしばり力むあまり血を流しても……

今すぐにでも暴れ出したいのを抑えて、自制している。

 

「……私の首だけで勘弁しては貰えないだろうか」

 

─────────が、アインズがそこで守護者達の地雷を踏み抜く。

 

「っ!……申し訳ありません。アインズ様、御身のご命令を無視してしまいました。」

 

中でも特にアインズへの忠義に篤いデミウルゴスには、どうしても我慢が出来なかった。

表に出てきたのはデミウルゴスだけではあるものの、今や他の守護者達も怒りのあまり殺気が漏れ出しており、

既に気配を遮断している意味が無くなってしまっていた。

 

「……デミウルゴスよ、まさかお前が私の言い付けを破るとは、正直に言って……私はお前を一番に信用していたのだがな。」

 

「……矮小なる我が身には持て余してしまう程のお言葉で御座います。御身の信用を、ご期待を裏切ってしまい……誠に申し訳ございません」

 

アインズのその言葉に、内心言葉にて言い表せない程の複雑な感情が渦巻くデミウルゴスではあるが、その全てを押さえ付けて口を開く

 

「しかし、これは私の単なる我儘ではないという事実だけは、御身に知っていて欲しいのです。……これは間違いなく全守護者、全NPC達の総意です。

我々は、御身のいない世界など心の底からどうでも良い!尊き御身を犠牲に生き残る位であれば、僅かでも御身のお役に立って死にたい……

それこそが我々が守護者として生み出された意義なのです!

なので、尊き御身を犠牲に我々を守るなど……至高の御方のお言葉であろうと、我々には到底納得できかねます。」

 

その言葉に、思わず沈静化が働く程に感極まるアインズではあったが、なぜこんな時に限って指示に従わないのかという感情も間違いなくあった。

 

「……その言葉は、心の底から嬉しく思う。お前達が、そこまで私を思ってくれているという事実にな。だが……それは私とて同じ事だ。

私はお前達を我が子のように思っているし、お前達に危害が加わるのであれば身代わりになっても良いと思う程度には、お前達を愛している。

……とはいえ、お前達にそこまで言わせておいて、素直に首をくれてやるのもまた、裏切りに近いだろう。」

 

そこまで言って、シルヴィアに身体を向けるアインズと、姿を現して各々武器を構える守護者達。

 

「悪いな、先程発言した私の首で……という部分は悪いが撤回させてもらう。無論、許して貰えるのなら此方は君の願いを叶える用意がある。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「……ふむ。」

 

なるほど……まあ私としては別に無理に戦う必要があるとは思わない。

だが単に許すのではアインズはともかく……彼の配下の者達には、嘗められてしまう結果となるだろう。

彼の配下はどうにも、自身の勢力を神の軍勢とでも思っている節がある。

 

私が一人なのであればそれも良い。アインズは最大限、こちらに謝意を示している。

配下を連れてきているという所に彼の臆病さが垣間見えるし、その対応にも問題はある。が、今は一旦置いておこう。

 

……最悪この場で私を殺すつもりなのにも目を瞑ろう。

 

 

 

先程、

ようやくあの空間を抜けた途端、知らぬ何かが私の中のルーンに返還され、アインズと見た事のない卵顔が現れ、謝罪を始めた。

恐らく本気でアインズはその様な指示を出していなかったのだろう。だがアインズが自らの首で……

という、私にしてみれば何一つ利のない発言をした途端、空間から滲み出る様にして一人の悪魔が現れる。

何か口上を述べ始めたので傍観していたのだが、話が終わると覚悟を決めた様な表情をして、各々の武器を構え出す。

先程の悪魔と同じように空間から滲み出たのは数刻程前に私と剣を交えた真紅の鎧を身に纏う吸血鬼、

ライトブルーの甲殻をまとった二足歩行の巨体を持つ蟲……胚に天使の輪と枯れ枝の様な羽が着いたナマモノに、

杖と弓を持つダークエルフの双子。そして本来私を案内するはずであった老執事。

 

……私の発言次第では、今この場で始末するという意思表示だろう。当然アインズにそのつもりは無いのだろうが、傍から見ればそれは脅迫と変わりない。

それにそもそも彼の配下の者は寧ろ私と敵対する事を望んでいるようにも思える。

それは私を甘く見ているというのもあるだろうが、仲間を傷付けた私が許せないのか……今後驚異となるなら今始末するべきだと考えているのか。

 

「そうだな……個人的な意見としては無理に敵対する必要性は感じない。……だが、」

 

私への対応に幾らか問題がある点を伝えようと、私が口を開いた所であの真紅の吸血鬼が私の言葉を遮る。

 

「おいテメェ!アインズ様がその尊き頭を地に着けているのにッ……!」

 

「っやめろシャルティア!……失礼したな。彼女らは私の事を神の如く崇拝しているんだ。どうか許して欲しい……!」

 

なるほど……今の対応で私の出方も決まった。

 

「……悪いがアインズ、貴公はともかく彼等は私の事を良く思っていない様だ。」

 

私のその発言に、アインズは思わず守護者達の方を振り返る。……守護者達は気まずそうにその顔を逸らす。

 

「今の状況は……私からすれば武器を突き付けて脅されているのと変わらない。それに、謝罪する気があるのは貴公だけ、

……配下の者の表情を見てみろ。現に私を親の仇の様な目で見ているでは無いか。」

 

「っそんなことは!……彼等も十分反省していたんだ!」

 

必死に弁明するアインズとは反対に、彼の配下達の私への視線はより鋭くなっていく。

 

「……それは崇拝する対象である貴公に迷惑を掛けた事に対してだろう。悪いが何れにせよ、私からすれば……

謝罪に見せ掛けた脅迫で私を丸め込むつもりにしか見えない。端的に言えば貴公らの対応には、誠意が見えない……といったところか。」

 

「っ…… そうか。ならばっ!……悪いが私も死にたくないのでな。存分に抵抗させて貰う!シルヴィアよ!」

 

「……部下を御せない貴公にも、私は問題があると思うのだがな。仕方ない。」

 

流石にこの人数を相手にしては逃げるのも倒すのも不可能だ。とはいえ、今回私に一切の非はない。

勝手に奇襲され、返り討ちにしたら勝手に恨まれ、そして謝罪に来たかと思えばそれは謝罪に見せ掛けたただの脅迫。

 

……流石に、舐められ過ぎている。私が侮られる分には構わないが、私はラニの王。このまま逃げ帰っては、ラニに面目が立たない。

この大墳墓には祝福を設置出来ていない。つまり死ねば私はこの墳墓の外で強制的に蘇る。

無論、この場で蘇る事も不可能とは言わないが、そんな隙を晒せばこの人数……袋叩きにされて終いだろう。

 

悪いが、手段は選ばない。

 

「……我が剣は、ただラニの為に。」

 

 

 

 

 

────────────お前は本当に不器用だな、我が王よ、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「……我が剣は、ただラニの為に。」

 

シルヴィアが俺へ向けて口を開いたが、またしてもシャルティアが遮ってしまったせいで結局戦う流れになってしまっている。

いや……そもそも俺が彼等を連れて来ている時点で、それは今更か。

NPCが俺やギルメン以外の為に自ら頭を下げるなど、不可能だという事を俺は知っていた筈だ。

 

彼等に全く非がないとは言えないが彼等をこの場に連れて来た俺が一番の戦犯という訳だ。

……恐らく、俺が一人で彼女に心からの謝罪をすれば、彼女はきっと受け入れてくれただろう。

 

 

シルヴィアは、今までとは違う……彼女が主と呼ぶ存在の名を口にし、剣を構えて誓いの動作を取っている。……本気で殺しに来る筈だ。

 

俺も、今この場で決着を着けるべくバフを掛ける準備を……始めた時の事だった。

 

 

 

 

 

────────────お前は本当に不器用だな、我が王よ、

 

 

 

 

シルヴィアの背中に覆い被さる様にして、半透明の魔女の様な格好をした複腕の青白い人形が姿を現す。

その顔には右目に重なる様にして更に薄い半透明の顔が寄り添うように重なっている。

 

……あれが、彼女の主という神か

 

 

『……はじめましてだな、死に生きる者とその配下達』

 

この一触即発の空気の中、まるで世間話の様な話の切り出し方は……なるほど確かに頂上の存在である事を感じさせる。

なんと答えるべきかとアインズが思考する中、彼女は続けて語り出す。

 

『先程の会話を聞いていたのだが……まるで出来の悪い芝居を見ているようだった』

 

「……、」

 

自身の対応を反省しているアインズは、彼女の言葉が図星な為につい口を噤んでしまう。

守護者達が余計な事を言わないか振り返ってみると、彼等は侵入不可能なナザリックに侵入した為か……

それとも単に神という存在に呑まれているのか口を開くことは無かった。

 

『ふふ、自覚はある様だな。……まあよい。一つ、お前達に忠告しておこう。』

 

 

 

私の王は、文字通りの意味で立ち塞がる全ての敵を打ち倒してきた。お前達の知らぬ、遥か遠い……異郷の地で

 

────古竜達の王を

 

────不滅の火を擁する巨人を

 

────神の影従の獣を

 

────祖霊達の王を

 

────暗黒の星の獣を

 

────神の子たるデミゴッド達を

 

 

 

 

────────────そして、神そのものを

 

 

 

 

 

『力こそ、王の故……というらしい。我が王が……私の名に誓うというのは……軽い事ではないからな』

 

雰囲気に呑まれ、動かないアインズ達を余所に、彼女はシルヴィアを名指しする。

 

『……我が王よ、私にここまで言わせたのだ。無様を晒すのは、赦さんからな』

 

 

そう言って彼女はシルヴィアの額へ軽くキスを落とすと、そのまま霧に溶ける様にして消えてしまう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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……ラニ、私が複数戦苦手なの知ってるよね?何であんなにハードル上げるの?これで負けたら私どうなるの?無様を晒すなって、この数相手に?

 

『……見ているからな、我が王よ。』

 

っ、流石にここまで発破を掛けられれば……確かに無様を晒すのは許されない。……ああ、許されないとも

 

 

「……いいだろう。とはいえ数は力だ。こちらも、増援を呼ぶとしよう。貴公らも、準備があるなら済ませたまえ。」

 

 

 

そう言い、一度アインズ達から視線を外すシルヴィアを見て、早速スポイトランスを構えるシャルティア。……守護者達も、各々準備万端だ。

 

「……待て、シャルティア。」

 

呼び止められたのを不思議そうに首を傾げるシャルティアに、アインズは口を開く。

 

「彼女もまた、主の名に誓い勝利を宣言した。……彼女の主が何を言いたくてこの場に現れたのかは分からない。

だが、最早我々の対立は引き返す事が不可能な所まで来てしまった。ならば、いい加減私も腹を括ろうじゃないか。

我々は『ギルド』アインズ・ウール・ゴウンとして、彼女を迎え撃つ。……これはどういう事か分かるな?」

 

デミウルゴスは神算鬼謀の持ち主であるアインズが、遠回しに正面から勝負すると言った事に対して驚きを隠しきれなかった。

反対に、デミウルゴスの友たるコキュートスはその言葉にいたく感激している様子……

 

そこまで発言したアインズは何やら武器を見つめているシルヴィアに声を掛ける。

 

「シルヴィアよ……まあ待て。」

 

「……どうした、今更辞めておくなどとは言うまいな」

 

ラニに誓った為、仮にそう言われた場合はむしろ斬り掛かるつもりであったシルヴィアは兜の中から刺々しくアインズを見つめる。

 

「……無論、だがこのような溶岩地帯では、我々の戦いの場に相応しくないのでな、これを渡しておこう。」

 

アインズが虚空より取り出し、シルヴィアに渡したアイテムを見て、守護者達は震え上がった。

 

「ア、アインズ様……、一体何をお考え」

 

「聞くな。……気が変わっただけだ。シルヴィアよ、準備が出来次第その指輪を使い……玉座の間へと来るがいい。我々はそこで君を迎え撃とう。」

 

シルヴィアにとって、アインズの言っている意味は何一つとして分からない。彼女にとって、戦いとは特別なものでは無く、単なる日常の一幕

場を整える意味も、私にこの様な指輪を渡す意味も分からないが、彼が宣言したギルドとやらに……何かしらの意味があるのだろう。

私がラニの名に誓った様な、大きな意味が。

 

アインズはたった今……生まれて初めて大きな覚悟を決めた。自らの犯した過ちに対して、自分の手で決着を着けるという覚悟を。

正面から彼女を打ち破り、自らの我儘を貫き通すことを。……元来、臆病な性格のアインズは卑怯な作戦に対する忌避感がない。

必要とあらば暗殺や人質なども選択肢に入れる。そんな彼が自身の一番大切な思い出である『ギルド』として、自らの決意を宣言する。

彼の覚悟は……感情はあっても、経験が浅く、未だシステムに縛られている以上、NPC達には決して理解できないことだろう。

 

ギルドの名を口にした時、アインズは過去のとある会話を思い出していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【──Nostalogic Memory──】

 

最盛期こそ過ぎたものの、まだギルドメンバーはある程度在籍しておりアインズもまだ純粋にゲームを楽しめている頃だった。

 

「あぁあああ!なんだよアイツさぁ!わざわざ掲示板で協力募ったのに生き残りゼロってどういう事だよ!くっそ、道中で拾ったクリスタル無くした……」

 

「まあまあ、ペロロンチーノさん……俺もこの間のガチャの当たりアイテムロストしたんで……」

 

「ていうかさ、最近皆集まり悪いよな。やっぱり別ゲーに流れちゃったかな?」

 

「んー、どうでしょうね……まあ確かに、イベント期間中くらいしかあまり来ないですね。」

 

「結局、全員揃って玉座の間で勇者を迎え撃つ展開はなかったかー。ウルベルトさんは、今でもまだ諦めて無さそうだけど……」

 

「そうですね……確かに、でもあの防衛戦以上となると難しいでしょうね。とはいえ……」

 

悪としてのロールプレイに重きを置いていたギルド【アインズ・ウール・ゴウン】では

モモンガ、ウルベルト、ペロロンチーノの三人でいるとよくこういった話題になることがあった。

 

カッコイイ魔法の撃ち方や、敵を倒した後の去り方……そして勇者に敗れた際のロールプレイなどにも力を入れていた。

 

「一回くらいは来て欲しかったですねー。せっかく振り付けも考えてたのに……」

 

「だよなぁ……まあ、その場合は玉座の間に座っているモモンガさんと、横で意味ありげに突っ立ってるウルベルトさんはいいけど」

 

ペロロンチーノの言いたい事が分かったモモンガはくすくすと笑いながら口を開いた。

 

「ペロロンさんは確か、アイテム使って横から勇者パーティの内、魔法職か盗賊辺りを一人遠距離で持っていくんでしたね……」

 

「そう……俺だけ役回りがコレジャナイ感あんだよなぁ。で、俺が一人倒したらモモンガさんがフッフッフ……ってネタばらしする予定だったよなぁ」

 

「そうそう!……って、笑い方全然違いますけど!でもまあ、こういう妄想してる時間が一番楽しかったですねぇ」

 

「確かに……まあ、このゲーム終わったら別ゲーやろうよ。俺、面白そうなの幾つか調べてるから」

 

「おっ、いいですね……でもまあ、俺は多分サ終するまではやってると思います、結構な額ぶち込みましたからね……」

 

「…………気持ちは分かるぜモモンガさん。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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……そんな事もあったなぁ。

 

俺は、所詮こんな身体を手に入れた所でただの凡人だし、今回も、結局大事な所でやらかしてしまったせいでこんな事になってしまっている。

そもそもアルベドの設定を最初から弄らなければ……いや、それこそタブラさんにもアルベドにも失礼かもしれない。

今回の件は、間違いなくアルベドに非があって……NPC達を危険に晒したんだから。

そして俺も、甘い見通しで行動した結果……引くに引けない所まで来てしまった。

 

彼女の言い分は当然だ。俺だって向こうに非があるのに大人数で武器を持った状態で囲まれて、

ごめんなさいと言われた所で、謝る気なんて無いだろとしか思えないだろう。

 

そしてあのラニという人形の少女の言葉で、この世界がゲームでは無いとハッキリ理解出来た。

やっぱり、今まで俺は心の奥底ではこの世界の事をユグドラシルの延長線上か、もしくは自分に都合のいい夢のように考えていた。

だからこそ特に意味もなく人間を殺したり、誠意ある対応を出来ず彼女を怒らせる結果に終わったのだろう。

 

 

都合よくやり込んだゲームのアバターになって異世界に降り立って、都合よく現地の人間に言葉が通じて……

そして都合よく自分の知ってるシステムに似ている。更に都合よく現地の人間達は自分達よりも遥かに弱い。

言い訳にはなるが、誰だってこんな状況なら正常な判断を下す事はできないと思う。

 

そもそも、俺はNPC達にすら本当の自分を打ち明けられない程に臆病な人間だ。……いや、もう人間ですらないのか。

 

思わず、失笑しそうになる。

 

不思議な気分ではある。……まるで丸腰の人間しか居ない中、一人だけ銃を与えられた様な全能感。

間違いなくナザリックは、この世界に害しかない存在だ。

人間なんて玩具程度にしか思っていないし、指先一つで周囲の全ての存在を殺せるとなればそんな存在を対等とは思えないのも仕方ない。

俺も、彼らと同類だ。今回の件の発端であるアルベドがシルヴィアに奇襲をかけた際、返り討ちにあったと聞いて一番初めに浮かんだ感情は怒りと恐怖だった。

 

それは勝手な行動で仲間の残したNPC達を危険に晒したアルベドに対して……そしてアルベドを殺したシルヴィアに対しての怒り。

そして、アインズと同等の強さを持つアルベドと、それを上回る強さを持つシャルティアを相手取って勝利したシルヴィアへの恐怖。

 

つくづく自分勝手だと思う。俺だって同じ事をされれば間違いなく不快に思うだろう。

 

一周まわってしまったのか、今は不思議と悪くない気分だ。……当時の記憶を思い出したからかな。

 

まだこの世界に来てからそれほど長い時間が経った訳じゃないけど、正直かなり色々と濃い日々だった。

結局俺はすごい力を手に入れた所で人間の時と変わらず臆病なままだし、NPC達に失望されない様に怯えながら行動していた。

 

 

 

まだゲーム気分が抜けてないのか分からないが、当時のやりとりを思い出してつい玉座の間でなんて言ってしまった。

普段の俺だったら有り得ない行動だな。雰囲気に呑まれすぎだ。

……負けたら死ぬかもしれないという事が分かっているからか余計な事も考えてしまうな。

 

正直、この世界に誰か一人でもギルメンが来てたらって考えも未だ捨てることは出来ないし、

自分で言い出しておいて負けたらどうしようなんて巫山戯た考えも浮かんで来る。

 

NPC達を巻き込む事に後ろめたさもあるが、ギルドとして迎え撃つと発言した以上。NPC達は間違いなく必要だ。

……むしろ彼等は喜ぶのだろう。俺と共に戦えるという事に。

戦うにしても、不死のシルヴィアをどうやって完封するかだな。有効な手段として考えていた山河社稷図は今や彼女の手に渡ってしまった。

まあギルド戦である以上、勝敗の条件は俺が死ねばこちらの負け、シルヴィアが死ねば勝ちと考えるべきではあるが……

NPC達は間違いなく俺が死んでも攻撃を続けるだろうから、事前に伝えておく他ないか。

 

……準備もあるし、そろそろ向かうか。

 

 

 

 

さて、格好付けた手前、俺が後から登場というのもな。……いや、それもそれでアリかな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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──ナザリック地下大墳墓 第十階層 玉座──

 

「さて……皆の者、よく集まってくれた。」

 

玉座の前に立つアインズが、大仰な仕草で口を開く。

そして本来、この階層に居るはずの無いNPCまでもがアインズへと跪きその言葉を一言一句聞き逃さぬ様、集中している。

 

「ふむ……アルベドが居ないので違和感こそあるが、壮観だな。」

 

アインズの眼前には階層守護者達が綺麗に整列して跪き、その言葉に対する感謝を述べている。

 

「今回、アルベドがまあ……やらかしてくれてな。我々の驚異となり得る存在を敵に回してしまった」

 

その言葉に歯噛みする守護者達を見てか、アインズはすまない、と言って話を続ける。

 

「……別にお前達を攻めるためにわざわざ集まって貰った訳では無い、それは単なるきっかけに過ぎないからな。」

 

俺にも原因あるし……とボソリと呟いて、アインズは再び口を開いた。

 

 

現在、このナザリック地下大墳墓には鼠が一匹潜り込んでいる。……我々からすればただの侵入者だが、彼女は現地の人間共からすれば正に勇者だろう。

何せこのアインズ・ウール・ゴウン……人類の天敵である我々にその刃を突きつけられる存在なのだから。

彼女が私達を倒す事が出来れば、この世界の住人達は我々という悪の脅威に怯えずに済む。

……まあ未だ、我々の名はこの世界に広まっては居ないのだが……だからこそ、だ。

 

我々がその勇者を打ち倒し、この世界に!我々の名を!悪の華アインズ・ウール・ゴウンの名を知らしめる時が来た!

 

アインズの演説に、配下の者たちが雄叫びを上げる。

 

「思い知らせてやろうでは無いか……我々が、我々こそがこの世界の覇者であると」

 

────その勇者とやらは、異世界の神をも殺す力を持つ王だという。

 

「……我々が勝利した暁には、宣言してやろうではないか!」

 

 

 

─────いずれ世界を支配する、アインズ・ウール・ゴウン魔導国の建国を!

 

 

「さて……そろそろか。名を呼ばれた者は表を上げよ……第七階層守護者、デミウルゴス」

 

「はっ!」

 

「今回私が指示を出せない場合、お前が指揮をとれ!」

 

「……謹んで拝命致します!必ずや、御身に勝利を!」

 

「第五階層守護者、コキュートス!」

 

「ハッ!」

 

「此度のお前の役割は、非常に大きなものとなる。……お前が、奴を打ち倒すのだ。火力において、お前の右に出る者は居ない。」

 

「……ハッ、御身ノ為、必ヤ勝利ヲ収メテ見セマショウ。」

 

「第一・第二・第三階層守護者、シャルティア・ブラッドフォールン!」

 

「はっ!」

 

「お前の役割は遊撃だ……他の守護者達の作った隙にダメージを稼ぐのだ。」

 

「っ畏まりました…… !もう、あの女に絶対に遅れは取りません!」

 

「第六階層守護者!アウラ・ベラ・フィオーラ、マーレ・ベロ・フィオーレ!」

 

「「はっ!」」

 

「お前達はサポートだ。他の守護者達の隙を埋め、ヘイトを稼ぐのだ。無論、攻撃する余裕があれば其方に回って構わん。……特にマーレは支援を頼むぞ。」

 

「「畏まりました!!」」

 

「第八階層守護者、ヴィクティムよ。」

 

ロエ!(はい)

 

「お前本来の役割だ……守護者達が危機に陥った際、その命を以て、彼らを守れ。」

 

ショデェシャミョベリャミョデェジョ!(かしこまりました)

 

「……セバス・チャン」

 

「はっ……!」

 

「お前はコキュートスがダメージを負った際、その拳でコキュートスが体制を立て直すまでの時間を稼ぐのだ。……そして詠唱中、無防備となるマーレを傍で護れ。」

 

「畏まりました、アインズ様。」

 

「最後に……パンドラズ・アクター!」

 

「ンゥハッ!」

 

「……その動きはやめろ。お前は私の前衛となり、詠唱の為の時間を稼ぐのだ。」

 

「畏まりました…!」

 

「……課金アイテムの使用も許可する。たっちさんの鎧を貸そう。」

 

「ンなななんと!!……それは責任重大で御座いますね、我が主よ。……畏まりました。全力で御身をお守り致します!」

 

「……うむ、頼むぞお前達。さて……もうかなり時間が経つ。そろそろ」

 

と、アインズが口を開いた所で、荘厳な雰囲気のある、巨大な扉が開き玉座の間へとシルヴィアが現れた。

 

「……玉座の間へようこそ、勇者シルヴィアよ。色々と言いたいことはあると思うが、まず宣言しておこう。」

 

アインズがシルヴィアを見下ろし、口を開く。

 

 

「我々、アインズ・ウール・ゴウンに敗北はない。我々が勝利を宣言した以上……お前の選択は我々へ服従するか、

愚かにもその剣を以って、我々へ歯向かうかの二択だ。

 

そして我々に歯向かうというのなら当然、お前は泣いて命乞いをする運命にある。お前は不死だというが、我々も当然対策済みだ。

お前の勝利条件はただ一つ。我が精鋭たる守護者達を相手にしながら、この私の首を落とすことだ。

流石に何度も互いに蘇生していては泥試合は避けられないからな。……この私を一度でも殺すことが出来ればお前の勝利だ。

その場合、我々はお前に全面的に服従すると約束しよう。アインズ・ウール・ゴウンの名において、これは確定事項だ。

そして、我々の勝利条件はお前の降参か、この玉座の間からお前を放り出す事だ。

無論何度死のうと構わないが、玉座の間から一歩でも外に出たらその時点でお前の敗北とする。

……そして玉座の間から外に出て尚、お前が敗北を認めない場合は

我々もお前の事をこの地より遥か遠くへと転移させてもらう。当然、お前が認めなくともその場合は我々の勝利という事になる。

そして我々が勝利した場合、お前には我がナザリックの為に今後その力を振るってもらう事になる。

当然敗北したら拒否権など無いので、存分に扱き使わせて貰う。……理解したか?シルヴィアよ」

 

「……良いだろう。」

 

 

シルヴィアの装備はいつもの装備ではない。アインズには具体的な違いなど分からないが、彼女が本気だと言う事は伝わる。

……孤牢装備一式、彼女が重装で挑むという事は本気も本気。

そして右手には黄金に輝く神の遺剣、左手には禍禍しい触手が忙しなく動いている気色の悪い大剣……冒涜の聖剣。

何時でも取り出せるように左手の裏に隠している……大いなる彼方の杖。

乱戦になった際、祈祷と魔術で、聖印と杖を切り替えながら戦うのはリスクを伴う為、ある程度威力を犠牲に汎用性でこの杖を選択した。

 

自分よりも大人数の敵を相手にする事が事前に分かっていた為、対策として範囲攻撃を選んだのだ。

 

そして彼女より後方……金色に輝く謎の文字列より半透明の人物が二人、現れる。

 

 

──純血騎士、アンスバッハを召喚しました ──

 

──血の貴族、ナタンを召喚しました──

 

 

『久しいですな、褪せ人殿……微力ながらこの老いぼれ、助勢致しましょう。我が血に掛けて……貴公に勝利を』

 

『……』

 

 

「……アンスバッハ殿、加勢に感謝する。」(……ナタン、結局誰なんだこの男は)

 

 

アインズが一度玉座へと腰をかける。……そして、配下の守護者達が近衛の様に陣形を組む。

 

「我が精鋭たる守護者達よ…!この者らを打ち倒し、我らアインズ・ウール・ゴウンの名を世界へ轟かせるのだ!」

 

 

「我が主、魔女ラニに誓い……貴公らを打ち倒さん…!」

 

シルヴィアのその言葉を聞き、アインズはゆっくりと立ち上がる。

 

 

 

……そしてその両手を大きく掲げ、死の支配者が宣言する

 

 

 

─────アインズ・ウール・ゴウンに栄光あれッ!我らを打ち倒さんとする勇者達よ……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

───────アインズ・ウール・ゴウンに敗北はない!私を殺したくば来い、人間共…!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今……ここに、互いの正義を掛けた戦いの火蓋が、切って落とされた。

 

あせんちゅは今後、武技の習得を

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