暗き月の王、狭間の地より来たり 作:Crimson Wizard
追記※次の投稿は恐らく25日になります。
─リ・エスティーゼ王国 城塞都市・エ・ランテル─
ここはヴァイセルフ王家が直轄領として治めている領地であり、
三重の城壁や地理、外交的な意味やその他様々な要素が絡み周辺国家の中でもかなり栄えている発展都市である。
この都市には城壁の外周部に城壁内の四分の一を使用した巨大な共同墓地がある。
西側地区の殆どはこの共同墓地で占められており、墓地という環境からアンデッドの発生を警戒して日夜兵士達が巡回している。
この地で普通の生活を送っている殆どの者は知らないが、実はこの墓地の最奥にある霊廟にはとある秘密結社の幹部が隠れ住んでおり、
日々アンデッドを使った悍ましい儀式に励んでいる。
秘密結社ズーラーノーン
盟主と呼ばれる強大な力を持つ存在がこの組織のトップであり、その下に十二高弟と呼ばれる幹部達とその弟子達によって、
今までに幾度も凶悪極まりない事件を繰り返し起こしている。
過去には小さいながら都市を一つ滅ぼしており、周辺国家からは常にその存在を警戒されている。
この組織の幹部である十二高弟は並の冒険者等とは比較にならない実力を有しており、更には貴重なマジックアイテムや殺した冒険者達から奪い取った
装備等で身を固めていて、それこそアダマンタイト級冒険者でもなければ対処するのは難しい。
そんな組織、ズーラーノーンの十二高弟、幹部であるカジット・デイル・バダンテールは憂鬱な気分で溜め息を零した。
つい先程までは順調だったのだ。長い年月を掛けて強力なマジックアイテムである死の宝珠に負のエネルギーを溜めてきた。
更には協力者であるクレマンティーヌ……あの女は頭がイカレているが、その出自から分かる通り実力は本物だ。
彼奴は周辺国家の中でもかなりの力を持つスレイン法国の特殊部隊出身。それこそアダマンタイト級冒険者でも一対一では敵うまい。
それにその女が国から盗み出してきたスレイン法国の最秘宝である叡者の額冠。
本来、このエ・ランテルを死の都へと作り替える儀式にはまだ時間が必要だった。だがこの神器、そしてこれを使用する為の
生まれながらの異能持ちの小僧のお陰でかなり計画の前倒しが可能となった。……筈だったのだ。
だが、その味方である内は心強い協力者もつい先程驚く程あっさりと敵の手に落ちた。
その神器を使用する為の生まれながらの異能持ちを誘拐する為、その小僧の店で潜伏していたのだ。
そして、その小僧の護衛である冒険者にあっさりとクレマンティーヌは敗れた。
……あの女の事だ。油断、慢心。幾らでも敗因は思い付くが、お陰であの小僧の誘拐は難しくなった。
それに、簡単に吐くとは思えんがあの女が精神系の魔法などで情報を引き出された場合、この霊廟の存在がバレるのも時間の問題だ。
「……仕方あるまい。叡者の額冠が使えん以上、死の宝珠のエネルギーは使い切ってしまうが、背に腹はかえられん。」
クレマンティーヌめ、しくじりおって……
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エ・ランテルの西区共同墓地前にて、城壁を乗り越えてくるアンデッドを必死に抑えている兵士達と冒険者達だが、
疲労を知らないアンデッドが相手な為、兵士達が押し負け徐々にスケルトン等が溢れ出てきており門も既に破られる寸前であった。
「門を開けてくれ」
「何を言ってんだアンタ!?ここを開けたらすぐにでもアンデッドが流れ出てくるぞ!」
「それがどうした?この私、モモンに何か関係があるのかね?」
門を守っている兵士からすればこの状況で巫山戯たことを抜かす冒険者を怒鳴り散らしてやりたかった。
高位の冒険者達が助力に来てくれたのかと思えば立派な全身鎧を身に着けてはいるものの首から提げているプレートは
「もういい……ナーベ、着いて来い」
「はい」
冒険者モモンに扮している
若年で第三位階魔法を使いこなす天才
「さて、と……貴様がこの騒動の主犯だな?カジット・デイル・バダンテール。」
共同墓地の最奥、霊廟のすぐ近くで弟子達と何かを話していたカジットは、愚かにも死地に飛び込んできた冒険者を見ても大した感情は浮かばなかった。
本来、今溜まっている死の宝珠のエネルギーでは精々、
だが、何故か自身が逆立ちしても敵わない強力なアンデッドが数体召喚され、命令に忠実に従っている。
原因が何かは分からないが、都合がいいのは間違いない。この力があれば本来の目的にかなり近付くはずだ。
「ふん、何か用か冒険者。この短時間でよく儂の名まで調べ上げたものだ……だが、儂の名を知った所でどうなる?どの道、お前はここで死ぬのだ。」
「随分と強気だな?一応私はこのアンデッドの群れを突破して来たんだぞ、呑気に会話していていいのか?」
モモンのその言葉をカジットは鼻で笑うと、両手を広げて大袈裟に語り出した。
「死の宝珠の力によって、国をも滅ぼせる強大なアンデッドを従えた儂に勝とうとは、お前こそ随分と強気な事だ。」
カジットのその言葉に、冒険者モモン、もといアインズは(なるほど、アイテムの力って事になってるのか)と改めて部下の優秀さに感心する。
「国をも滅ぼせるだと……?貴様、一体何を企んでいる!?」
「お前に教える義理は無いな……行け、アンデッドよ。この男を殺すのだ。」
(いや、アンデッドよって……使役している感覚が無いのによく気が付かないな……)
カジットが死の宝珠の力で使役していると思い込んでいるアンデッドは
通常の個体でもレベルにして凡そ55程度の強さがあるが、アインズのスキルによってレベル60程度まで強化されている。
そしてこの
(まあ別に誰も見てないし、この男の身柄か、死体だけでも確保すれば今回の件で俺達とシルヴィアは間違いなく昇級が出来る筈だ。)
というか、よく考えたら隠れてシルヴィアに
その場合は可能かどうかを確認して、難しいと言うのであれば彼女は大した脅威ではない。
まあ、俺にダメージを与えられる時点で
と考えていると、カジットの命令に従う様に指示してある
「くっ!」
「はは!お前は強いのかもしれんが、相手が悪かったな、冒険者よ。せめてもの情けに死体は有効活用すると約束してやろう。」
(似たような台詞を吐いて死んでいった奴を思い出すな……)
「さて、茶番は終わりだ。
アインズのその言葉に、カジットの近くに居た個体とは別の個体が三体程姿を現した。
「な、なにを……」
「簡単な事だ、カジット・デイル・バダンテール。お前は踊らされていたのだ。そのアンデッドは私のスキルで召喚したモノだ。
寧ろ、疑問に思わなかったのか?アンデッドを使役している場合、召喚者と使役されている側にはある種のパスが繋がるはずだ。」
「そ、そんなはずは……儂は確かに死の宝珠で、」
「ああ。お前の持つそのアイテムか。だが…… その宝珠とやらに、本来そこまでの力は無いだろう?」
「……」
一体、何時から自分がそのアンデッドの主だと錯覚していた?
「……悪いな、カジットよ。私は非常に我儘なんだ。お前の存在が私の計画にとって都合が良かったので、スケープゴートにさせて貰った。」
「……一体、何なのだ……貴様は……、」
我が名はアインズ・ウール・ゴウン……死の支配者だ。
その言葉と同時に、アインズは本来の骸の姿を露わにする。その姿を見ると、カジットはかつて信仰していたとある神の存在を思い出した。
「スルシャーナ様……」
「その哀れさに免じて、楽に殺してやろう。」
「……ご慈悲に感謝致します、神よ。」
どのような目的があったとしても、自分のした事は到底許される事では無い。
罪の無い人間を手に掛け、アンデッドへと変貌させ、更には都市に死を振り撒こうとした。
かの死の神は私の罪を裁きに来て下さったのだ。
……これでよい。この、嘗ての面影など何処にもない姿で、数多の人間の血に染まった手で、母に触れたくはない。
(いや、俺は神じゃないんだけど……)
「ゴホン!ではな、カジット・デイル・バダンテールよ。罪を悔い改め、来世では慎ましく生きるといい。」
(この男にも、何か事情があったのかもしれない。……でも、俺はナザリックを守らなくちゃならない。)
「……目的は果たした。この男の召喚したアンデッドは消えた。後は……お前達だな。」
アインズは召喚したアンデッドを眺めると顬に手を当てて、
『シルヴィアよ、私だ……返事は必要ない。
今お前のいる場所から更に奥に来て欲しい。そこに私の召喚したアンデッドが居る。それを私と共に兵士達の前で倒して欲しい。』
あせんちゅは今後、武技の習得を
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