いや、私は別に暗い過去も壮大な裏設定もないただの憑依転生者なんですけどね   作:美味しいラムネ

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 続いた
 皆様のお陰です



急募:地雷を踏んでしまった時の対処法

 

 

 うん、やっぱ直接戦闘とか無理。お客様は逃したし私たちも逃げよう。

 

 「...これ、絶対っ!個人に、対する、戦力じゃない...!」

 

 「ですわー!?」

 

 整列した射石砲から轟音と共に放たれる鉄球を回避しながら必死に駆ける。男爵令嬢のことをお姫様のように抱え上げ、2人と1人の追走劇が始まった。

 

 私が必死に走り続け、男爵令嬢が妨害の魔法を放つが全く距離が離れない。余波で街が壊れるが8割崩壊していたのが9割崩壊に変わっただけだから問題ない...よね?

 

 石畳を細かく砕き、砂利を散布する。街路樹を薙ぎ倒し、時には崩落しかかった建物の中を突っ切る。相手はおそらく戦闘慣れしているが、幸いなことにこの場所には逃げに利用できるものが無数にある。

 足りないアイディアも、決断力もスレ民が出してくれる。だったら私の脳味噌は、いかにして走り続けるか、逃げ続けるか。それに注力させればいい。

 

 立てかけてられていた丸太を蹴り飛ばし、拾ったロープを路地を塞ぐように腰の高さに固定して、ついでに地面に拾った釘やら何やらをばら撒く。本当に何やってるんだろうね私。何やらされてるんだろうね私。ひゃあ砲弾がぁ!!

 

 それを華麗にステップを踏んで回避して、令嬢ちゃんの魔法が炸裂!駄目だ効いてねぇ!!

 

 

 

297:名無しの転生者

これ追いかけっこしてても埒が明かねえな

お、ラッキー手前に戦闘跡。武器も結構転がってるな

 

 

 折れた槍も死体も、平等に同じように投げつける。武器よりもむしろ死体の方が敵からすると厄介なようだ。質量がある上に、下手に切り払えば血が漏れて面倒臭い。感染症のリスクもある。その概念がこの世界にあるのかは未知だが。

 まぁ全部射石砲で迎撃されたんですけどね!!

 

 若干男爵令嬢が吐きそうな顔をしているのは申し訳ないけど、そこは我慢してもらうしかない。

 

 

298:名無しの転生者

ここまで来ると下手に室内に入っても爆撃で詰みそうなんだよな

 

299:名無しの転生者

攻城兵器を対個人に用いるんじゃねえ!?

  

300:名無しの転生者

そこの店いいね、使えそう

 

 

 近くの店のカゴに積まれていたオレンジ擬きやらリンゴ擬きを後ろへ念動力で投げ飛ばす。ダメージを与えるというよりは多少の足止めになってくれないかな、という期待によるものだが。

 

 「なるほど、わかりましたわ!『土の第一層『硬化(ハード)』』『水の第一層『油脂(グリース)』』『火の第二層『小爆破(スモールバースト)』」

 

 幾つかの果物は硬化し、さらに脂を上からかけられることで即席のトラップにそして果物の幾らかは爆散し果汁が視力を奪わんと飛散する。

 ナイスですわ!これならそのまま投げるよりは多少効果も大きいだろうね。

 

 「貴様、何故私が食の呪い*1でリンゴに弱いことがわかったッ!!」

 

 想像の100倍効果あったわ。

 

 

301:名無しの転生者

運がいいとかいうレベルじゃないね

 

303:名無しの転生者

じゃあ弱点がわかったところで反撃と...

 

304:名無しの転生者

無理やりアップルパイでも食わせるか?

 

306:名無しの転生者

>>304 何その無理ゲー

 

307:名無しの転生者

冗談抜きでこのままだと埒が明かないんだけど、この近くに衛兵の駐屯所とかないの?

 

308:名無しの転生者

>>307 ここまでテロリストに侵入されている時点で抑え込まれているかグルなんじゃないですかね...? 

 

 

 

 「ん、この近くに衛兵の詰め所とか、ない?」

 

 3本だけ持ち歩いていた火炎瓶のうち一本を投げつけながら問いかける。本人には当たらなかったけどずっと気持ち悪い挙動で並走していた射石砲にクリーンヒット。熱でダメになって...と思ったら新しいのがすぐに生えてきましたねそうですかそうなんですか死ね!!!

 

 「丁度そのことを考えていたところですわ。このまま追いかけっこを続けていたらいつか狩られてしまいそうでしたし。

 ...この通りを真っ直ぐ突っ切って、右に曲がったあと。その奥に教会がありますわ。そこを左に曲がると詰所がありますわ。まだあちらからは火の手も上がっていない様子ですし、そこがいいでしょう」

 

 別にわざわざ私が倒す必要があるわけでもない、お客さんは逃したし、なんなら敵の首魁っぽいやつを孤立させて撃破しやすい状態に持っていったんだから上々だろう。

 

 多少脚は痛むがまだ走る分には問題ない。

 相手の攻撃にも慣れてきた。...と思っていたんだけどなぁ!!

 

 「ふむ。やはり型落ちの技術では駄目ですか。では、追加投資といきましょうか」

 

 誰が知るでもない、男の能力。それは、金銭による技術の再現。あらゆる技術は貨幣のもと成り立つという理論の元、貨幣経済成立以後現代までに一度でも使用された技術を再現する、今は()き貨幣神の巫女の魔法の残り滓。

 

 指パッチンと共に円筒状の物体が複数宙に出現したかと思うと、それらは逃げる2人へ殺到する。

 同時に背後には巨大な兵器──投石機(トレビュシェット)から礫岩が投げつけられる。

 

 「この円筒(みさいる)に関しては、いつどこで用いられたかすら不明ですが...まぁいいでしょう。感覚的に結構最近でしょうし」

 

 

310:名無しの転生者

おい待てお前今ミサイルって言ったかミサイルって

 

311:名無しの転生者

うわぁ、ホーミングしてるよホーミング

 

313:名無しの転生者

トレビュシェットって個人相手に運用するのは間違ってるよ、別に個人相手なら弓でも同じ結果生めるよ、逆に非効率だよ!?

 

315:名無しの転生者

そのうちマシンガンとか使い始めそうだなこいつ

 

 

 

 頼むから私たちに向けるその飽くなき情熱を他に向けてくれ。絶対間違ってると思うの、ひたすら私たちだけを追いかけるの。

 

 「匂いでわかります...少し妙な感覚もありますが、あなたたち、貴族でしょうからねぇ...殺さなくてはならないのですよ」

 

 多分お前が考えているような貴族じゃ無いぞ私たち、優雅な暮らしのゆの字も無いからね、日々生きるので精一杯だからね!?

 

 逃走劇は苛烈さを増す。 

 飛び交う技術は、魔法は威力も規模も増す。抱えている彼女の体が震えている。妙に体も火照っている。...そろそろ限界も近そうだ。

 

 「大丈夫、今しばらくは保ちますわ...何より、1番無理してるのは貴女でしょう?」

 

 普通の人間の肉体は、常にトップスピードを出せるようには出来ていない。今にもはち切れそうなほどに鼓動する心臓の音が聞こえる。

 ここまでトップスピードを維持できているのは単なる気合いだ。

 

 あのテロリストがトップスピードを維持できているのは...マジでなんでなんだろうね?

 

 

316:名無しの転生者

男爵令嬢ちゃん、魔力の使いすぎだね

 

317:名無しの転生者

まぁ、見た感じ容量も質も中の下からよくて中の中、平均も平均だったからなぁ

 

318:名無しの転生者

でも令嬢ちゃんいたから捌けてたところあったんだよなぁ、シンプルに手数2倍だし

 

320:全身ピカピカの新入生(配信中)

迎撃も足止めも全部私1人でやることになったらいよいよ詰みますわぁ!!

 

322:名無しの転生者

でしょうね

 

324:名無しの転生者

適当な一般人拾って洗脳して即席の前衛にでもするか?

 

326:名無しの転生者

>>324 頼む、一生ROMっててくれ

 

 

 いずれ詰みの見えている追走撃。その詰みを引き延ばし、無理やり勝ちを捩じ込むことを目指して走る。走って走って走って──

 

 そして詰んだ。

 

 単純に実力不足だった。片足にミサイルを喰らい、減速してしまったタイミングで追撃。なんとか自分達の身は守ったが、そのタイミングで周囲の建物を薙ぎ倒すようにして退路も進路も塞がれた。

 

 「貴女たちの命の終着点...そこが皮肉にも秩序の邪神の教会の前だとは」

 

 ちょうど今いる場所が教会の前。もう少しでゴールに辿り着いてはいた。

 

 「まぁ、ネタバラシをすると、あそこの駐屯所の衛兵は全員出動中でしょうがね。何せ襲撃直後に私たち自身で宣戦布告しましたから」

 

 ...目を逸らしてはいたけど、どっちにしろ詰んでたってわけかぁ。

 あーあ。

 

 

 

327:全身ピカピカの新入生(配信中)

次の一手

>>331

 

329:名無しの転生者

正面突破しかない

 

330:名無しの転生者

なんとかして逃げようにももう逃げ先がねえや

正面突破だな

 

331:名無しの転生者

全力でぶつかって、撃ち破る

 

 

 そう言われたのだから、私は必ず撃ち破る。元より、この程度で折れるほど私は柔じゃ無い!!死ぬまで折れない!だから過労で死んだんだけどねあっはっは...笑えないね

 

 メイン武器無し、退路無し、それでも両手脚が動くなら十分すぎる。

 爆発で傷ついた脚を魔法で治療しながら、敵を睨みつける。

 

 「...接近戦では、私は邪魔になるだけですわね」

 

 瓦礫を盾にするようにして男爵令嬢が後ろへ下がる。下手に捕まって人質にされると困る。なんならこのまま1人で離脱しても気にしない。

 

 「後衛からの援護に努めますわ、私の命、預けましてよ」

 

 責任重大だな、本当に。

 

 「おや?その治療魔法...ふむ。おやおや。少し興味が湧きました」

 

 

333:全身ピカピカの新入生(配信中)

戦闘スタイル

>>338

 

335:名無しの転生者

銃と拳を合わせた拳銃士スタイルで

 

337:名無しの転生者

キンタマ潰そうぜ、戦闘にルールは無用だよ

 

338:名無しの転生者

兵器を使わせない、超至近距離に張り付くインファイト

 

339:名無しの転生者

殴り合いだろ殴り合い

 

341:名無しの転生者

>>338 まぁそれが1番丸いだろうな

相手の手品がわかってないのがちと怖いが、兵器を使われるレンジで戦ったら不利すぎる

あともうこの距離まで行ったら投石機とかは気にしなくていいだろうな。現に消えてるし

 

342:全身ピカピカの新入生(配信中)

了解

拳での喧嘩とか小学生ぶりだよこの野郎

 

344:名無しの転生者

残念私はこれでも亡国のお姫様だ

 

345:名無しの転生者

まぁあの魔物にも勝てたしいけるっていけるって!

 

 

 

 彼女なら、自分の身は自分で守れる。何より、私以外に意識を向ける暇がないほどに畳み掛ければいい。勝負はここから、浮気なんてしてる暇はなくってよ?

 

 深く腰を落として、加速。超至近距離でなら、自爆のリスクもある以上、大型兵器は使用できないはず。能力の内容は不明、なんか色々出てくる程度の認識しかないけど、圧殺すれば問題ない!

 

 「速ッ...!」

 

 ふと前を見ると、その手に握られていたのはクロスボウ。だが、引き金を引く速度よりも、拳を振る速度の方が、速い!

 

 クロスボウを握った腕を殴り飛ばし、拳骨を顔面に叩きつける。武も、技術もない、不恰好な喧嘩殺法。殴って、殴って、殴った拳から血が出るほどに強く殴りつける。

 身に纏っている妙な鎧は、対物理性能はそこまでなのか、魔力でブーストされた拳なら十分貫けるっ!

 

 「最初は面食らいましたが」

 

 脚に何かが絡みつく。鎖...鎖鎌か!?

 そのまま鎖を引っ張られ、宙に持ち上げられる。私が軽いのか、相手が怪力なのか、蹴りに移行する一瞬の緩みのタイミングで持ち上げられた。

 

 「『土の第二層『石の短刀(ストーンナイフ)』!」

 

 男爵令嬢の魔法が鎖を破壊しなければ、そのまま落下地点に振り上げられていた大剣に両断されて終わっていた。

 

 「喧嘩は素人。やはりお貴族様でしたか」

 

 勢いを殺さず、転がりながら勢いのまま立ち上がり、落ちていた角材を思いっきり振るう。

 軽く弾かれるが、本命は口に含んだ鉄釘。それを吹き矢のように思いっきり吹き出し、視界を奪ったところで再接近──っ!今度はレイピアか!

 

 

 

346:名無しの転生者

もしかして、武器ならなんでも出せるのか?

 

347:名無しの転生者

限界がないならそれこそ不利がすぎるな

近距離戦は普通に接近戦武器が、離れれば今まで通り兵器群の登場と

 

348:名無しの転生者

でも、近距離の方がマシ感はあるな。だって、相手に多少なりともダメージは通る

次からは魔物戦と同じように念動力で手数補いながら近接戦してみないか?

 

 

 

 不利ではあるが、対話は成立している。

 何より、致命的なミスを補ってくれる貴女がいる。

 

 動き続けろ、一手が死につながる。逆に言えば、死ななければミスじゃない。何も考えるな。

 命を奪う凶刃が迫り続ける。鈍い光は流星のように視界内を巡る。

 

 切り飛ばされた髪が舞う。

 

 

350:名無しの転生者

右上、上段、振り下ろし

 

351:名無しの転生者

次は突きだな、甘いね、払ってカウンター余裕だね

やっぱこいつ突きがほんの少し苦手だ

 

 

 痺れる拳で男を殴りつける。歯が折れたようだ。

 傷跡に魔力の糸を結ぶ。

 

 

353:名無しの転生者

よし、致命的なのが入ったな。タマキンにやったようにやってやれ

 

354:名無しの転生者

口腔内の爆破、これで死なないなら人間じゃないが...念のため、男爵令嬢ちゃんにも合わせさせよう

 

 

 「爆破、合わせて!爆ぜろっ!」

 

 「なるほど!...ここで決め切ります、残存魔力を全部使った、とっておきですわ!『火の第四層『爆破(バースト)』』」

 

 送り込んだ魔力を爆発させる。タマキン爆破用の戦法が役に立つ瞬間が来るとは...

 これで終わり、頼むから終わってくれ。

 

 収束した魔力が、一瞬にして膨張し、肉を突き破る。

 肉片と体液があたりに飛び散る。間違いなく通った。焦げ臭い匂いが鼻を突く。

 下顎が吹き飛び、原型を残さない男を見下ろす。

 

 1秒、何も起きない。

 また1秒。飛び散った頭部の残骸だけがそこにある。

 

 やった。やったのか。

 まるで実感がない。

 

 

356:名無しの転生者

終わってみると呆気ないもんだな

 

357:名無しの転生者

まぁ、魔物と違って理不尽な耐久力とかはなかったみたいだし

 

358:名無しの転生者

いや待て、

 

そいつ死んでねえ

 

360:名無しの転生者

>>358 ハァ!?

しゃ、しゃがめ!

 

 

 

 「ちっ」

 

 しゃがまなければ、首と体が泣き別れしていた。

 男の顔が逆再生するように修復されていく。え、もしかしてこいつ人間じゃない?

 

 「ナノマシン、というやつですよ。貴女たちは知らない技術でしょうが...」

 

 

361:名無しの転生者

純然たる技術じゃねえか

ところでこの世界の科学レベルって...?

 

363:名無しの転生者

あの手の技術が発達した世界にいるからわかるけど、あのタイプのナノマシンは大分生命力というか魂を使うからせいぜい日に二度が限界なはず

 

364:名無しの転生者

それでもエリクサー持ちなのが判明したのは大分辛いぞ、何よりあれで決め切るつもりだったから不利が大きい

 

 

 「あの女の支援ももう望めないでしょう、さて。詰みではありませんか?」

 

 「全然?」

 

 だってまだ死んでないし。

 回復方法に限りがあるとわかった以上、それを吐き切るまで殺し続ければいい。

 

 瓦礫を囮に拳を、拳を囮に瓦礫を。

 

 

366:名無しの転生者

その位置、あの看板の位置に発砲。跳弾で後頭部に当たる

隠し札だが、このタイミング以外で吐くタイミングもない

 

368:名無しの転生者

>>366 どうしてそんなことがわかるんですかねぇ!?

 

369:名無しの転生者

計算方法は後で教える!

 

 

 「おやまぁ、また切り札を吐かされてしまいましたか。飛来物に対する迎撃システム。用意するのに金がかかって大変だったのですよ?」

 

 瞬時に展開されたバリアが弾丸を防いでしまう。

 同時に、そのバリアが消滅したのも感じる。使い切り、か?

  

371:名無しの転生者

今までの遠距離攻撃には一切反応しなかったよな、致命的とは言わないまでも傷をつけるようなのは多かったのに

 

373:名無しの転生者

回数制限が厳しいから本当に致命の一撃にしか使いたくなかったとか?

 

 

 

 また元の不利な戦いへ逆戻りだ。同じ方法は相当工夫しなければ通用しないだろう。

 コツン、と男の体に石が命中する。

 

 「投石ですか、健気なものですね...いよいよ、手詰まりな様子」

 

 本当に、最期まで一緒に戦ってくれるつもりなんだ。まだ出会ったばかりなのに、それでも見捨てないでくれるのか。

 眩しいな、本当に。

 

 「ですので、もう終わりにしましょう」

 

 一歩前の踏み込んだ足が、何かを踏みつけ──

 

 

 

375:名無しの転生者

あ、駄目だ

 

 

 

 

 激痛。一度たりとも感じたことがない灼熱。意識が掻き回され、命を手放したくなるほどの激痛。自切とは比べ物にならない。

 

 足元を見れば、右足が裂けていた。肉も、骨さえも。足首から下は無惨にも消し飛び、その上は腿までが文字通り、裂けて捲れ上がっていた。

 

 

 「インフェルノドラゴンの頭骨を利用した設置型の兵器です。かの悪名高き兵器と同じように、痛覚を増幅させる薬剤と、意識を覚醒させる薬剤も混ざっています。安心なさい、決して即死はしません」

 

 地雷、か

 

 

 「貴女の回復魔法からは...我々と同類の気配を感じましたのでね」

 

 

376:名無しの転生者

殺すためじゃない、戦のための兵器だな

 

378:名無しの転生者

えまってこの世界ってそういう兵器があるタイプの世界なんだ

 

379:名無しの転生者

反応はできそうか、イッチ

 

381:全身ピカピカの新入生(配信中)

 

383:名無しの転生者

駄目そう

 

 

 

 痛みに声をあげることすらできない。

 

 「ひ、『火の第四層『爆破(バースト)』!!」

 

 咄嗟に、彼女は魔法を放ってしまった。()()()()、最後の魔力を使って。

 

 

 

 痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛いイタイイタイいたいいたいいたい

 

 

 

 「投石や言葉も含めて全てブラフ...魔力を使い切ったと思わせたのは見事ですが、友人の危機に慌てて札を切ってしまう。未熟ゆえですね」

 

 魔力の使いすぎで鼻血を垂らすのも気にせず、彼女は男を睨みつける。

 

 

385:名無しの転生者

学生相手に無茶言うなよ

 

387:名無しの転生者

グッバイイッチ、フォーエバーイッチ

 

389:名無しの転生者

救えなかった...

 

390:名無しの転生者

まだ方法はあるはずだ、探せ

 

 

 

 「ふむ...同じ真の神を信仰するかもしれないものとして、貴女は見逃そうと思うのですが、そちらの未熟者は...処刑するとしましょう」

 

 「貴女だけは見逃します」

 

 痛い、痛い痛い痛い

 でも、それだけは

 

391:全身ピカピカの新入生(配信中)

打開策>>395

 

393:名無しの転生者

無事じゃないけど無事だったかイッチ!...今はやり過ごせ、もうイッチが助かるにはそれしかない。後でネクロマンシー技術は教えてやる

 

395:名無しの転生者

男爵令嬢ちゃんのことは忘れて見逃してもらえ

 

396:名無しの転生者

残酷かもしれないが、ここでどっちも死んだら復讐も、あるかもしれない蘇生もできなくなる

 

 

 

 

 「(全滅するよりはマシ、でしょうね?ごめんなさい、お父様、お母様。後ついでに先生。やっぱ今のなし。やっぱあんたぼったくってましたよね?)」

 

 覚悟を決めた目で、少女は足を踏み出した。

 

 「その言葉に二言はなくって?」

 

 燃えつきるこの命、少しでも有益に使うとしたら、目の前の敵の情報を彼女に持ち帰らせること。

 貴族として為すべきこと、民を守ること、その為に最も有益な命の使い方。

 

 

 それは、駄目だ。

 

 

 「駄目だ!

 

 

397:全身ピカピカの新入生(配信中)

ごめんなさい

 

 

 

 その安価だけには、従えない。

 今までの全てのレスを思い出せ、今世と前世、その全てを。勝利の可能性を。

 

 

 

 ──自己催眠の魔法教えるからさ、それで精神弄ろっか

 

 ──後でネクロマンシー技術は教えてやる

 

 ──元おじさんにパルクールをしろと!?いいよやってやるよ!念動魔法だろ念動魔法、ラジコン操作は得意だったんだよ!

 

 なんだ、あるじゃないか。 

 痛みさえ忘れて動く方法が。動かない部位を置き去りにする方法が。回復は最低限の止血だけでいい。むしろ、この傷を完全に回復させる時間で手遅れになってしまう。

 

398:全身ピカピカの新入生(配信中)

厚かましいようだけど、お願いがある

ネクロマンシーと、自己催眠の魔法を教えてほしい

 

399:名無しの転生者

よっしゃイッチから許可でたから教え放題だやったー!

これでも教えるのは上手い方だからな、上手すぎた結果ほぼ全人類が習得して世界滅んだんだけど

 

401:名無しの転生者

でも、そんなワイでも時間が足りない。言われた通りの魔力制御を10割の精度でこなしてもらうことになるけど、行けそうか?

 

403:全身ピカピカの新入生(配信中)

無理かどうかじゃない、やるしかない

 

 

 『出来ないは嘘つきの言葉だ』。今まで散々言われてきたじゃないか。あの言葉はきっと、この瞬間の為にあったんだ。そんなことがあってたまるか。

 

 1%でもできる確率があるのなら、できないとは言わない。絶対にやり遂げる。一回で1%を為せばそれは実質100%。それをやるしかない。

 

 

404:名無しの転生者

痛覚を捨てるって意味わかってんのか!?生存の上で1番大事なシグナルだぞ、気付かぬ間に死にかねんぞ

 

406:全身ピカピカの新入生(配信中)

気付かぬ間に死んだことあるし今更

じゃあ、いってくる

 

407:名無しの転生者

じゃあ指示を飛ばしていくからな、まずは──

 

 

 

 痛覚を消し、不要な感覚は全て取り払う。死滅した細胞をネクロマンシーで無理やり動かして、男に喰らいつく。

 感覚の大半が消えた状態で、念動魔法を使った身体操作のような細かな作業はできない。

 

 それでも、痛覚というリミッターを置き去りにしたことで、可能になった使い方がある。

 筋繊維が崩壊する勢いでの拳の加速。痛みが邪魔して今までは出来なかった、人体の限界を完全に超えた超機動。

 

 「あ、ぐっ!」

 

 一瞬戻った痛覚をすぐさま消し飛ばす。

 

408:名無しの転生者

よし、上手く消せたな、何があっても勝つまではその状態を手放すな

手放したら最後、確実に意識は飛ぶぞ

 

 

 

 「その目、その狂気..気味が悪い、なんなのだ貴様は!!」

 

 さぁ、踊り続けろ。正真正銘、最後の賭けだ。賭け金は命も尊厳も全てベット済み。決着(ショーダウン)の瞬間まで、踊り続けろ。

 

 額を思いっきりぶつけ合うようにして頭突き、喉仏を殴りつける。

 足を払い、投げつけられたナイフを蹴り飛ばし、至近距離で放たれたバリスタを絡みつくようにして避ける。背後に回り込み、サーベルを振るった男を、自分の肩越しに銃で撃ち抜き、自分ごと火炎瓶で体を燃やす。

 

 その奇妙な鎧で熱を防いでいたみたいだけど、そんなボロボロな具合じゃもう機能は停止しているでしょう。

 

 

410:名無しの転生者

消して新しいのに着替えないのは、消すのは少し大変とかあるんかな!

 

411:名無しの転生者

物質創造系の能力なら割とあるよな、もう既に世界に存在が固定されていると消すのは大変だって

 

412:名無しの転生者

>>411 割とあってたまるか、世界に存在が固定ってなんだよ俺の知ってる物質創造系の魔法は大体世界に否定されてすぐ消えてたよ

 

 

 水魔法で自身の火を消すのと同時に、相手も消火剤のようなものを噴射し、自身の火を消したのを確認する。

 

 あらかじめ準備していた分、私の方が一手速い。

 全身全霊の拳を、腹目掛けて捩じ込む。

 

 「き、貴様らはぁっ!!どこまでも、我らが神を否定するのかぁッ!きぁゃえぇええええっ!!」

 

 奇声を上げながら、男は地中から防御壁のような物を迫り出させる。だが、思ったほどの強度ではない。十分な強度のものを出現させるのには時間がかかる?そういえば、武器も質はそこそこの物ばかりで、傑作と言えるものはなかった。

 それでも、拳は壁にめり込み、その厚さの分内臓に届かない。

 

 「だが、我が神の導はぁ!!」

 

 「その、神の導とやらで貴方は死ぬんですの」

 

 胴体目掛けてクロスボウのボルトが迫る。先ほど男が放棄したクロスボウ。それを拾った男爵令嬢が、照準を合わせて放ったのだ。

 

414:名無しの転生者

よく弦引けたな...握力あるんだな

 

415:名無しの転生者

冷静に考えたらあの娘、学校に持ってきている武器メイスじゃなかったっけ

 

416:名無しの転生者

あぁ(納得)

 

 

 

 「触れるなぁぁっつぁああ!!」

 

 咄嗟に男はなんらかの力でクロスボウを消す。それによりなんとか直撃は免れたが、確実に一瞬硬直した。

 

 大きな隙だ。

 今なら、

 

 

418:名無しの転生者

いける

 

420:名無しの転生者

むしろここしか無いね

 

421:名無しの転生者

決めてこい、イッチ!!

 

 

 息を吸い込み、全力で、体全体をしならせて、全身全霊の力を拳に込める。念動力により更なるブーストをかけて、今出せる最大の力を。

 胸骨のあたりを、全力で殴りつける。

 拳を止めようと、ひび割れた両手が腕を掴み、爪を突き立てるが、それよりも私の拳の方が早い。骨を砕き、肺や心臓が破裂した感覚があった。

 ズブズブと沈み込んでいった拳が背骨に当たる。そのままそれを掴み、今度は拳を思いっきり、引く!それを捻り、滅茶苦茶になった状態で再度戻し、体内を蹂躙する。

 

 手は休めない、ここを逃したら終わりだ。

 

 ナノマシンを使わせる暇も与えない。細胞そのものを滅茶苦茶に、再生する余地も残さない。

 ここまで体内に腕が入り込めば、細胞を私の魔力で犯すことは充分に可能。ありがとうネクロマンシー、ありがとう名無し!

 

 

422:名無しの転生者

実際問題、最初のタマキン爆破凌いだのもナノマシンだろうし、もうナノマシンを使えるだけの生命力はないだろうけど念のためね

 

424:名無しの転生者

タマキンガードの真相はあれかぁ

 

426:名無しの転生者

やったか!?

 

427:名無しの転生者

>>426 馬鹿野郎フラグを立てるな!

 

 死んだ、殺したはずだ。

 

 「貴様が意地と気合いで動いているように」

 

 「俺達にも意地と使命があるっ!灼熱と毒の光を撒き散らすこの爆弾で、俺ごとこの街を焼き払う!!」

 

 文字通り、気合いだ。今のあいつは、医学的にも、魔術的にも死んでいる!

 

 

428:名無しの転生者

すっげぇ不穏な効果の爆弾だな、オイ!

 

429:名無しの転生者

発動前に全細胞を破壊するかでもしないと止まらねえぞ

 

431:名無しの転生者

後はあるとしたら、自分の魔力で完全に抑え込んで、発動自体を無効化するかぐらいだ

 

 

 「一か、八か...!」

 

 

 

 

 

 「いえ、その必要はありません」

 

 凛とした声が響く。

 

 「貴女達、本当に良く頑張りましたね」

 

 「一つ、貴女達が必死に争ったこと」

 

 「二つ、教会の前まで誘導してくれたこと」

 

 「三つ、貴女の上司が、必死に助けを求めたこと」

 

 「どれか一つでも欠けていれば、敗北でした」

 

 男の体が、何か強大な力で圧縮されていくように、潰されていく。

 

 「貴様は、せい...」

 

 「えぇ。私は秩序の使徒。巷では、聖女、と呼ばれるものです。あ、ちなみに同じ学校の生徒なんですよ、私」

 

 ふわり、と宙に浮いていた彼女が降りてくる。

 なんだよ、もっと早くこい...よ...

 

433:名無しの転生者

あ、まずい魔法が切れた

 

435:名無しの転生者

あまりの痛みに気絶したか...薬の方が早めに抜けててよかった

 

436:名無しの転生者

いやこれ血液が抜けすぎて薬も抜けただけじゃ...

 

437:名無しの転生者

あっ

 

 

 

 

 

 

 ♦︎♦︎♦︎

 

 

 様子見とか、そう言うのをする暇もなくギリギリでしたね、本当に。

 一手掛け違っていたら全滅でしたか。

 

 (うーん。想像以上に善性の存在っぽい。

 

 

あぁ...欲しい
)

 

 冷静に考えれば、私の特別なカミサマに負けた邪神の狂信者如きが、異界の邪神の狂信者に勝てる道理がない。いやそもそも異界の邪神なんてものがあるかどうかすら知らないけど、魔神のやってきた元の世界にもどうせ神様いるでしょ神様。知的生命体が誕生した時点で必ずどこかで信仰は誕生するっぽいし。

 

 あれだけ善性の存在ならば、あぁ...鞍替えしてくれないでしょうか。そうだ、一緒にいた彼女がいい感じに邪神ではなく秩序の世界に連れていってくれれば。まぁ、熱心な信徒というわけではなく国教だから形だけ信仰しているタイプでしょうが、彼女。

 

 いやはや、それにしてもよく間に合わせましたね、彼女達。

 褒めてあげましょう。

 

 

 

 

 

*1
地球でいうアレルギーのこと






感想、評価などありがとうございます!励みになります!続いているのは本当に皆様のお陰です

高熱でうなされている時の方が文字数が多いという謎

インフェルノドラゴンさんは可哀想な生物扱いをされていますが、本編のように正しい運用をすれば強いですよ
あと冗談抜きでなんの策略とか思惑とかもなく本当にベストを尽くした上で聖女さんはギリッギリで間に合っています
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