怪記異生録 ―空手部と迫真の裏技―   作:刺身フライ

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古来より、人類に干渉し
疫病を広め、大規模な災害を起こす存在がいた。

平安より伝えられた伝承には、その存在の名が遺されている・・・・



『此の折より千歳の歳月を経て、怪異の頭領が蘇り、此の土地を再び支配せんとす』――――

これは、怪異との戦いに身を焦がしていくとある3人の高校生と
          悲しき運命を背負った少女が、その周りを渦巻くの人々の思惑に動揺し、葛藤して行く物語。

    戦いの後にたどり着く、運命の結末とは・・・・・

          

      すべては、『神』のみぞ知る。


平穏レ○プ!怪異と遭遇した空手部(前編)

「あ~あ、やっと着いた」

日差しも届かないような森の中。僕たちはやっとの思いで旅館にたどり着いた。

 

「木村、どこか怪我していないか?さっきまで草を掻き分けて歩いていたから疲れただろ。バッグ持ってやるゾ」

「いえ、大丈夫ですよ。それより三浦さんのほうこそ・・・先頭きって歩いてましたので」

 

「あぁ、ポなら大丈夫ゾ。なにしろ鍛えてるからな。黒色の帯は伊達じゃないぜ」

 

 

「俺の心配もしてくれよなぁー。さっきなんて川に落ちて流されそうになったんだぜ?」

先輩がびちょびちょの服を抱えて、後ろから着いてきている。

 

「野獣、お前川の中に落ちてたエロ本獲ろうとして落ちただろ。同情はしないゾ」

「エロ本じゃないっすよ~?これ限定版の・・・」

 

「どうでも良いから、早く行きましょうよ先輩。風邪引きますよ」

 

 

僕の名前は【木村 直樹(キムラ ナオキ)】今年で16歳の高校1年生。

今日は、僕が所属する空手部の部長【三浦 沼九郎(ミウラ ヌマクロウ)】さんの知り合いが経営しているという

山の旅館に行くことになり、電車で5時間・山登り2時間という時間をかけてやっとたどり着いたところだ。

 

ここで、先輩ら2人の説明もしておこう。

 

先程も言ったが、部長の三浦さん、3年生。強く優しい人で、空手では幼少期から大会で活躍し黒帯を所持している。

 良くも悪くものんきなたまに抜けてる所があるんだけど、ここぞというタイミングで抜群の頭脳とリーダーシップを発揮するスゴい人だ

 

 

そしてもう1人。2年生の【田所 浩治(タドコロ コウジ)】先輩。年上年下関わらず皆から"野獣(先輩)"と呼ばれている(どうやら、過去に大会で獣のように暴れ、出場禁止になるほどの罰を受けたらしい。そこから来たようだ)

 

誰に対してもタメ口を使い、時には規則も簡単に破る破天荒な人だ。・・・でも、彼は優しくて、誰よりも頼もしい。

 彼のおかげで場の空気が上がり、いないと寂しくなる・・・なくてはならない人、って所かな。

 

とまぁ、そんな感じで・・・僕を含め、この空手部の部員数はたった"3人"。僕が入った高校の人数は500ほどで、30以上の部活があるが・・・この少なさはダントツである

 

 

・・・・僕がこの部活に入ったのには、理由があるのだが―――それは、のちのち話そう。

 

 

       {コンコン}

三浦さんが、旅館の戸をたたく。

「おーーい、秋吉。今開いてるか?まぁ、開いていなきゃ困るんだがなゾ」

 

 

『おう、開いてるぞ。後輩連れて入ってこい』

扉の横から声が聞こえる。どうやら、チャイムはないのにスピーカーは完備のようだ(なぜ・・・?)

 

ともかく、僕は先輩たちを追い、旅館の中に入った。

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

「中・・・外に比べて、なかなか綺麗な風貌をしていますね」

「それに結構すずしぃじゃねーか!良かったぜ~ッ森の中はジメジメして気持ち悪いからなぁ」

 

「おし、先にお前らはここで待ってろ。今から秋吉さんを呼びに・・・」

                    

                   『行く必要はないぞ?もうここに居るからな』

廊下を行こうとする三浦さんのすぐ横に、男がいた。

 

「おぉ、なんだもう来ていたのかゾ。久しぶりだなぁ、こうやって面と向かって話すのは」

『そうだな、半年ぶりか・・・・んで、ソイツらがお前の言っていた後輩、だな?』

 

「そうだゾ。改めて紹介する、あのウ○コみたいな見た目のやつが田所。そしてこっちが・・・」

 

 

    『木村くん、か。』

「おう、そうだゾ。・・・内輪話もしたいところだが、先ずは部屋に案内してもらおう。コイツらもずっと登ってきて疲れているからな」

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

「うぉーッ、めちゃ広いじゃねぇか!テンションあがるなぁ~」

『一応部屋は別々に用意してある。それぞれに鍵を渡しておくから失くすなよ。・・・それじゃ、何かあったら俺を呼べ。部屋の中に受話器があるはずだから、それで連絡してくれればすぐ駆けつけるからな』

 

 

『・・・・それと、木村。   いいや、やっぱり気にしないでくれ』

 

(?どうしたんだろう・・・・)

 

 

『そういや、名を名乗っていなかったな。

      俺は 秋吉 亮(アキヨシ リョウ) ―――――― ここで、旅館を1人で切り盛りしている。・・・・まぁ、めったに人は来ないんだがな』

 

 

荷物をそれぞれの部屋においてきた後、僕たちは再び1つの部屋に集まった。

 

「ところで、この旅館。 "サウナ"があるらしいゾ」

 

 

「ファッ!?」それを聞いた途端、目の色を急激に変える先輩。

 

「なんでそれ早くいわないんすかァ!サウナがあるって知ってたら山登りなんて一瞬で終わってましたよ~じゃけん早く風呂入ろうぜ」

 

「だそうだ、木村。お前も着替え持って早く風呂来いよ~っ、場所は玄関のすぐ横だから一目で分かるはずゾ」

 

そう言い残すと、先輩たちはそそくさと風呂へ向かった。

 

(そういや先輩、サウナに目がないんだったな。・・・早く行かないと怒るし、さっさと用意しよっと)

再び僕は自分の部屋に行き、着替えを取りに行くことにした。

 

 

ギシ・・・      ギシ・・・・

ゆがんだ床板を踏みしめ、風呂に向かう最中。ふと辺りを見回すと、光が差し込んでいることに気がついた。

月明かり・・・どうやら、もうとっくに夜になっていたようだ

 

 

(こんな森の中でも、光がくっきりと入ってくることなんてあるんだな)

そう思いつつ、窓の外を少しだけ眺めてみる。

 

「・・・本当に、動物の1匹も居ないな。悪いオーラでも放っているんじゃないか?」

適当につぶやき、窓から視線を背けようとしたその瞬間。

 

         ガサガサッ!

 

(うぉっ・・・なんだ、普通に居るじゃない・・・か?)

草が動く音がした。きっと小動物の足音だろうと、思った。・・・別に、どんな動物かは興味が無い。

しかし、それとは別に不可解なことがあったのだ

 

       (気配を、感じ取ることができない)

 

僕、木村は小さいときからとある特性を持っていた。

  ―――――周囲の生物の気配を、直接見ずして"把握"する事ができるのだ

 

範囲は半径約1・6km、気配の形でどんな生物かを読み取る事ができる(興味が無くても、勝手にどんな生物なのかを魂が教えてくれている)

 

あまり良い活用法は思いつかなかった為、部屋に入ってくる虫の場所がわかる程度の力だったのだが、少なくともこれで"生物か生物でないか"を知る事はできた。

 

―――そんな僕の力が、先程の草の音を[生物の出した音ではない]と僕に訴えてくる。

おかしい、確かに今の音は風程度で起こるような小さなものでは無かった。確実に今の音は動物が動いた時になるものだったのだ・・・

 

     

       そこから導き出される可能性が1つ。

 

(まさか、今の音を鳴らした生物は

          "生物ではない"とでも言うのか)

 

そう思った途端。僕は、その音を出した存在の正体が気になってしまったのだ。

(なにかが・・・!何かがあの草の向こうで動いている・・・!)

 

好奇心は猫を殺す、という言葉があるように

   気になったものに対して、人間という存在は強く惹かれてしまう。

 

それが、正と負どちらに転ぼうが関係は無い。行動原理のすべては"気になったからやってみる"という簡素なもののみ。

          たとえ、身を滅ぼす結果になろうと・・・解明せずには居られないのだ

 

 

                 「!?」

 

窓から見た方向に、白い人型の存在が。僕がそれを見ると、すかさずそれも僕を睨み返してきた

 

      そいつの顔は、大きな目玉1つと、真っ白な皮膚のみで覆われていた

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

あのを見た後、僕は数十秒ほど悶絶し、あろうことか自殺を図ろうとしてしまっていた――――そんな事と、あの顔を思い出し未だに心臓がバクバクと動いている。

 

          このままだと、死ぬ。

脳裏に、そんな言葉がよぎった。・・・咄嗟に僕は自分の部屋に戻り、秋吉さんに連絡をする

事にした。

 

 きっと、すぐ向かわなかった先輩は怒るだろうが、そんな些細な事を考える時間すら惜しい。

 

受話器を手に取り、深く息を吸い込む。

 

《どうした。虫でも出たか》

「・・・いや、あの・・・」ゼェ、ゼェ、まともに息ができない

 

《どうかしたか、まるで怯えたかのような・・・ ハッ!!わかった、今すぐ向かう!絶対に部屋から出るな、窓の外を見るな、俺が来るまで物音に反応するなッ!!分かったな》

 

何かを察したのか、秋吉さんは急いでこっちに来てくれた

 

「・・・窓の外から物音が聞こえて、覗いてみたら真っ白な奴がこっちを・・・」

 

 

『・・・・・木村くん、そいつは"邪視(ジャシ)"だ。顔を合わせたものに恐怖を与える厄介な【怪異(カイイ)】―――こいつはまずい事になりやがったな』

 

じゃし・・・? かいい・・・・?

不可解そうな顔をしていたのか、秋吉さんは僕に説明をしてくれた。

 

『お前は知らないだろうが、世の中には怪異という邪悪な存在がいる。そいつらは普段表立って活動する事は無いのだが・・・特定の場所・条件で現れ

対象の存在に危害を加える危険なやつらだ』

 

「そ、そんな物が・・・・・・?」

『あぁ、信じられないだろうが実際にいるんだ。そして、その中でもかなりヤバい部類に入るのが、木村君がさっき見たとされる邪視。』

 

『顔を見たものに自殺願望を与えた後、ゆっくりと対象に近づき呪い殺す。そんな悪質なヤローだ。なんとなく分かったか?』

 

「・・・はい、一応は。でも、どうするんですか?このままじゃ、僕・・・・」

 

『おい木村ァ!なんですぐ来ないんだよ~ッ、もう俺たちは十分ととのっちまったぞ!!』

部屋に先輩たちが入ってきた。(肌が異様につやつやしている)

 

『三浦、邪視だ』

「なるほど、理解したゾ。木村、まずは落ち着いてくれ。これから、どうすればいいのかを秋吉さんが話してくれる。聞き逃すなよ」

 

「えっ、三浦はん?どうしたんすか一体」「野獣、ちょっとアッチ向いてろ」

 

 

呼吸が落ち着いてきたころ、秋吉さんが話の続きを言い始めた。

『邪視は、さっきの説明のとおりとんでもなくヤバい奴だ。・・・しかし、とある方法で簡単に対処する事ができる。そして、君たち空手部はその方法を既に知っている!!!!』

 

「どっ、どういう事ですか・・・すでに、知ってる?」

 

 

『君たちが習っている空手。実は、本来の空手とは少し違う動きと構えをするんだ。・・・本当の空手よりもっと昔に誕生したその武術は【迫真空手(ハクシンカラテ)】と呼ばれている!!

     奴ら怪異には、その迫真空手が有効だ。・・・・まもなく、邪視は木村君の元にやってくるだろう。その時に、そいつに向かって蹴りでも喰らわしてやるんだ!!』

 

「迫真空手・・・なんで、そんなものを。でっでも、本当に通用するんですか!?」

 

『本当だ。それなら、俺と三浦で対処するところを見せてやるから隠れてみていろ。くれぐれも邪視のヤローに目を合わせるんじゃないぞ』

「秋吉さんもできるんですか」  『嗜む程度にな』

 

 

どっと空気が重くなる。すぐそこまで近付いてきている事を物語っているのだ。

「ここでは狭すぎる。ロビーに移動しよう、あそこなら迎え撃つ事ができる!」

 

 

「いや、だから一体何をいってるんすかぁ?頭イカレポンチにでもなったのかy・・・」バタッ

三浦が、先輩の首を突いた。

「当て身、てやつだゾ。野獣には関係の無い事だ、無理に巻き込むわけには行かない。ここで寝かせていよう」

 

先輩を置いて、3人でロビーに向かう。近づくたびに足が重くなっていくのをひしひしと感じ取れる。

(なぜだろう、本来ならまったく信じられないくらいの不可解な状況なのに、僕はすんなりと受け入れる事ができている。)

   精神が参ってしまったからなのかもしれないが、ともかく僕は三浦さんと秋吉さんを信じるしか道が無い。

 

そんな事を考えつつも、ついにロビーについた。

「奴はまもなく入ってくる。わざわざ扉を開けてくれたらありがたいんだがな」

 

ギギギ・・・

壁から音が聞こえる、邪視とやらが入ってこようとしているのだ。

 

     「・・・・・来るッ!木村は壁に隠れろ、秋吉さんは左に!ポは右から迎え撃つゾ」

『決して顔を見てやるんじゃねーぞ、見ちまった瞬間ジ・エンドだからな』

 

 

       

         {メキィ、バキバキィッ!!ガシャーッ!!!}

扉を無視して突き破ってきたそいつは2m以上のとんでもない体格をしていた。

(やせ細っている・・・そして、異様に腕が長い!本当にまともな生物じゃないんだな――――)

 

 

「いくぞッ!」 『おうッ、壊した壁分のストレス発散をさせてもらうぜ!お前をぶっ飛ばす事でな』

一瞬で、三浦さんと秋吉さんは邪視の背後にせまった。背中に殴りかかる2人。

   [ウグアアアアアアアッ]

 

(本当に効いてる!!それにしても、なんて速さだ)

怪異よりも奇怪な動きをする2人。邪視が背中の三浦を振り払おうとするも、その隙に秋吉が強烈なボディーブローをかます!

 

「すごいッ、お互いがお互いの動きをカバーしている・・・抜群のコンビネーションだ」

 

三浦が先陣を切り、秋吉が隙を突く。秋吉の攻撃でひるんだ所に三浦の重い一撃。

攻撃and攻撃の繰り返しにより、邪視はどんどん劣勢になっていた!

 

 

[ダト思ッタカ?]

三浦の攻撃を振り落とし、秋吉の不意打ちも防ぐ!

「うぉッ、マズい!!」

態勢が崩れ、一瞬でこちら側が劣勢になってしまった。

 

「くっ、お前の攻撃は痒くも痛くもねぇゾ・・・ッ!?」

なんとか仕掛けようと三浦が飛び上がるも、攻撃により視線が変わり、邪視と眼が合ってしまった。

「うぉああああああッ!?」

『三浦ッ!?いかん、木村走って逃げ』

と言い切る前には、もう邪視は木村の目と鼻の先まで近づいてきていた――――!!

 

 

           「うわぁぁーーーーッ!!」

 

 

 

 

「ったく、よくも首ぶったたいてくれたなぁ三浦!サウナ明けじゃかなったらぶっ飛ばしてる所だぞコンチクショーッ!」

 

寝ぼけた田所が、邪視の脳天を一突きで貫いていた

「おっお前野獣・・・!」正気に戻った三浦さんが走ってくる。

 

 

[ソンナバカナ・・・コンナヤロウニ負ケルノカ・・・・]怪異・邪視の体は青く染まり、その後すぐに砕け散ってしまった

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

『ともかく、今日起こったことは明日改めて話す。木村、お前は風呂に入ってすぐ寝る事だ。邪視の呪いが残っているかもしれないからな、お湯と一緒に流しておけ』

 

秋吉さんの言葉通り、僕はすぐに風呂を済ませ、バッタリと倒れこむように布団に包まり、5分も経たずして眠ってしまった。

 

 

「野獣は・・・動かすのが面倒くさいしこのまま廊下に置いておくか。そのうち自分で部屋に戻るだろう・・・ところで秋吉さん」

『おう、何も言わなくていい。・・・遂にコトが動き出したわけだ。準備を進めなければならない、明後日にでも家に帰れ』

「もちろんそのつもりゾ」

 

「ところで、気になったんだが。その子、誰ゾ?いつのまにかそこに居たから気がつかなかったゾ」

秋吉の後ろには、小さな背丈の少女が立っていた。普通の魔法使いのような風貌をした彼女は、三浦のほうに笑みを向ける。

 

 

『・・・そうだな、今は深く言えないが・・・強いて言うならば

 

 

           協力者、だ』

 

暑い真夏が始まり、物語は始まろうとしている




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