流るるままに異世界探索記   作:みるしー

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ちょっと変わった異世界です


第1話 - どうしてこうなったー!

 

俺は今、「アレーシア」という朝食処で朝ご飯を食べている。決してマレーシアではない。決して。

昨日は疲れて寝てしまったので、久方ぶりの食事だ。

アヒージョのタレもどきを付けてパンもどきにかぶり付く。

舐めていた、異世界飯。

意外とおいしい。ウイスの感動並ではないが。

 

正直、不味いと思っていた。

ドラ○ンボールでは、地球のカップ麺が美食中の美食として数えられるぐらいだし。

 

…いや、たまたまこのお店がおいしかっただけかもしれない。

やっぱり期待はしないでおこう。

 

 

 

 

俺は、23にして地球に別れを告げた。

死後は、竹林の中で永遠にいようと思っていたが、「生」を授かった。

 

やりたいことは「生」の世界で済ませる。

「死後」はただ佇むのみ。

そう思っていた。そのつもりだった。小学生の頃から、そう思って生きてきた。

 

大方満足な人生だった筈だ。

じゃあどうして。

見当は付くが、そんな理由で。

叶えられない欲、もとい、叶ってはならない欲。

生きている内に、その欲を叶えようともした。

だが、抗うことは到底不可能…な筈だった。

 

『欲に忠実に非ずんば、欲は生として残留す』

 

なら…

叶えろと言うなら、叶えようじゃないか。

 

 

 

俺は、異世界転生物を下らない文化として見ていた。

希望を抱き過ぎだと。浮かれていると。

あまりにもご都合主義な面が多く、妄想に過ぎない。

とはいえ、本当に異世界に来たのなら、それを認めて精一杯、「生」を楽しむべきだと思う。

 

 

 

 

朝ご飯を食べ終えて、街道を歩く。

目的は至極簡単。俺が襲われた理由を調べる為だ。

情報収集には本屋がうってつけと聞いた。

本屋に入り、目当ての本を探す。

だが、そんな本は存在する訳もない。

というより、どの本が該当するのか分かる訳がない。

なんか、騙された気分だ。

 

そんなつもりで書いた訳ではないのか?

メモには、「謎の刺客のことを知りたいのであれば、先ず本屋!知恵の殿堂!」と書いてあったのだが。

 

 

何故調べているのか、それは昨日の出来事に起因する。

 

 

俺はふっかふかの布団で寝ていた。

 

俺は森の中で寝ていた。背中の草はふかふかで…

唐突な殺気を感じた。何故こんなところにいるのか考える間もなく。

頭の上から襲い掛かってくる感じがした。

反射的に右手を挙げ頭の斜め上ら辺にやった。日差しを隠すジェスチャーのように。

 

斬撃音。

 

右手は耐えることもなく弾かれる。

死ぬんだと思った。

刹那、絞れる音が聞こえた。

嫌な予感がしたので、暫くしてから立ち上がった。

先の刺客の思しき人はいない。

その代わり、誰かが立っていた。

 

 

「(…何者ですか?)」

 

当然、何を言っているか分かる筈もない。

 

「何て…言ってるん…ですか?」

「…」

 

剣を持って近付いてきた。

後から聞いた話によると、俺のことを要注意人物と見ていたそうだ。

待って、待ってと両手を前に出す。

それが伝わったのか、その人は止まってくれた。

そして、その人は目線を右上、左下、右下へと動かして後、さっきの俺と同じく両手を前に出した。

 

俺がはてなまーくを掲げていると、その人は急に追い風を浴び、俺に何かを撃っていた。黄色いオーラ…みたいな。

死んだと思った矢先、その人は「ふぅ」と息を吐いてから話し掛けてきた。

 

「…あなたは何者ですか?」

「え、さっき変な言語喋ってたような気が…」

「翻訳魔法です。さっきの戦いぶりに関して話を聞かせてもらっても?」

「いや、手を頭の上にやってただけなんだけど…ですけど…」

「…自覚なし、ですか。右手に剣を持ってましたよ。」

「…え?んな、そんなことは有り得な…。そな、空想の世界のようなこと言わないでくださいよ…はは」

「…ここは現実です。仕方ない、私に付いてきて下さい。」

 

歩いている最中、最初にどこから来たのか訊かれた。

言ってはならない、と思っていたら、この世界は別世界から来た人が幾らかいると聞かされた。

 

「別に聞いたところで何かに使うということはありません。この世界との…価値観の相違に戸惑う可能性があるので。」

「えぇ?とまぁ…地球です。」

「…はぁ。前例なしの世界と。そういえば、戦闘の心得はどちらで?」

「…大したものじゃないですよ?」

「あるなら言ってくれると幸いです。」

「イメージで敵をつくって、動いていただけです。所詮ファンタジーですよ。もっと速く動ければ、空想世界にもリアリティがあったと思うんですけどね。」

「そうだったんですか。」

 

俺は昔ドラゴンボールに憧れていた。強い力とファンタジーめいた世界を以て、自由に生きてみたかった。

その成れの果てが空想世界である。

小1病かもしれない。

 

他にも様々な話をした後、宿屋らしきところに着いた。

いつの間にかこの世界に来た頃は恐らく昼だったと思うが、もう外は暗く、普段は賑わっているであろう街道も、今はピタリと静けさに身を落としている。

 

「ここは宿屋です。寝泊まり出来る場所がなければ、この世界、死んだも同然ですからね。」

 

背筋が冷えた。

 

扉を開けると、エントランスから木造建築の良い香りがする。

受付(?)のおじさんが出迎えてくれた。

 

「深夜にすみません。」

「あれ、久しぶりだなお嬢ちゃん。そこの奴は、…なるほど、そういう判断ね。」

「お久しぶりです。そうですね…」

 

おじさんは、その人を見ると複雑な顔つきになった。

 

「名前は?」

「水下瀬柘(せつ)です。」

「…これは何だ?」

 

名前を書いていると、おじさんはふりがなのところを指差して訊いてきた。

 

「これはふりがなです。『み·ず·し·た』と音を表しています。こっちが漢字で、意味を表す文字です。」

「なるほど。こりゃ代筆だな。意味を教えてくれ。」

「水下というのは…」

 

その後も何やかんやあって部屋を取った。

 

「あれ、お金は?」

「金?そんなもんこの世界には存在しねぇ。確かに今までそんなことを訊いてきた奴もいた、『ただ飯は食えん』と。だが、ここでは金より意義を探せ。嬢ちゃんから聞いたかもしれねぇが、この世界で死ぬ奴は、意義がない奴が大半だ。」

 

意義、思い当たるものがなかったのでまたゆっくり考えることにした。

 

「それでは私はこれで。書き置きを用意したので、読んでおいてください。これで何となくこの世界のことが分かると思います。」

「ありがとうございます。お名前だけ、良いですか?」

「…いずれまた会うことになりますよ。では。」

 

その人は、少女だった。

金髪ツインテール、所謂ありきたり。

ただ、何故か、どこか違かった。

 

 

 

『次会うときは敵だと思います。容赦なく、やりましょう。』

 

書き置きの中で、この部分だけは強烈に印象に残っている。

 

 

 

 

 

意義とは曰く、かわいげに溺れることだ。

 

 

 

 

お目当ての本もなかったところで、外に出てメモを見る。

『目当ての本がなければ、流為(りゅうい)探索協会に行くと良いです。探索者は刺激的で良いですよ。』

メモにある地図を手掛かりに協会へ向かう。

 

探索者…と言えば何を思い浮かべるだろうか。

原神の冒険者?はたまたあの洞窟の某探検家?まさか無職転生のギルドみたいな?それともその他?

結論はそう急がずとも良い。

そういえばメモには、探索者はこの世界においてなくてはならない存在だと書いてあった。

 

 

歩いていると、ずっとあの人のことが気掛かりでしょうがない。

宿屋を出るときに受付の人に訊いてみたけど、はぐらかされた。

『お世話になりました。』

『おうよ。もしまたあいつに会ったときは、よろしく頼むよ。』

『分かりました。そういえば、昨日は「お嬢ちゃん」って呼んでましたが、あの人は何者なんですか?』

『…あいつは、まぁ元探索者の中では実力は折り紙付きだな。』

『とはいえ今は、あいつはいつ死んでもおかしくない。命を狙われてるからな。古の強者が若人に殺されることなどよくある話さ。あいつは別事情だが。』

『そうなんですか。では、また機会があれば。』

『あぁ。最後に、これ持ってけ。代筆は時間が掛かるから、書いておいてやったぞ。』

『ありがとうございます。それでは。』

 

 

 

今更ではあるが、異世界に来ているのは衝撃である。

すんなり適応してるのも怖い。

 

 

「流為探索協会」らしき建物が見えてきた。

俺はちょっとの覚悟をして、その扉を開け…─




お気に入りや感想くれると有難いです

たまにはファンタジーのはっちゃけもあるので、楽しみにお待ちください
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