第2話と第3話を合わせて1つの話にしました。
実質2話分です。
「『お嬢ちゃん』って言ってましたが、あの人は誰なんですか?」
水下瀬柘と名乗るその男は訊いてきた。
だが、見ず知らずの人に彼女の正体を明かす訳にはいかない。ましてや、異世界人には尚更だ。
彼女は強い。想定外のことには滅法強い。
彼女は元探索者、これは本当である。
そもそも探索者というのは、この世界の安定剤そのものだった。
故に死なれたら困る。
だが、もう彼女はその立場を手放している。
故に、いつ死んでも良い筈だ。周りにとって彼女はいつでも死んで良い存在の筈だ。
だが、彼女の死はないと言いたい。
今まで探索者は使い捨て、探索者を辞めた人が死んでも、そうなんだふーん程度にしかならない。というより殆どの人は知ることもない。
だが、彼女の生死に関しては、関心が高い。
それほど優秀であり、"必要とされる"ということだ。
確かに探索者を辞めてからも活躍する奴は多い。だが、彼女はどこか違う。
まぁ、そんなことはどうでも良い。
彼女の正体は、簡単に言うと異世界人の処理をする人だ。
この宿の近くは異世界から来た人が異世界初日によく泊まる。
最近少なかっただけだ。
久方ぶりに異世界人が来た。
だが、彼女の様子がいつもと違かった。
まぁ分かる。
瀬柘の名乗るその奴は、……並ではない奴なんだろうと。
彼女からは、瀬柘という奴は生かしといて良いと判断されたんだと。
この道のベテランに反発する奴などいないだろう。
反対しそうなのはあいつぐらいか。
まぁ、彼女だって瀬柘、という奴を殺す可能性がある訳だし、まぁこれ以上考えたところで意味がない。
1番気になるのは、奴の動向だ。
流石に何年も宿屋をやっていると分かる。
こいつはああなりそうだな、といった具合に。
今まで見てきたどんな奴の目とも違う、異世界人の中でも増して雰囲気が違う。
面白そうだ。
奴はこの宿屋から出てくとき、何かの紙を持っていたが、恐らく彼女が渡しといたんだろう。
書いてある内容は推測が容易だ。
奴は探索者になるのだろう。
探索者というのは、物に困ることはないが、人に困る。
簡単に生き残ることの出来る世界じゃない。
お金のない世界に戸惑った奴が生き残れるのだろうか。
─無理な話じゃなくなるのかもな。
まぁ、楽しみにしとこう。
彼女は戦っていた。
アスタル*1の侵略者だ。逃がす訳にはいかなかった。
そこに男がいた。
そいつは急に右手から剣を創り出し、侵略者の攻撃を弾いてみせた。
その隙に彼女は前進し、剣を突き出して貫いた。
残り血は綺麗にしといた。
翻訳魔法とは言ったが、あれは嘘だ。
男の言語がこっちと同じかどうか測る為、先に変な言語を使ったのだ。
翻訳魔法、と見せ掛けたあれは単なる光の流れである。
男にとってはご都合主義かもしれない。
だが、相手は自分の言語を喋っているように見えて実は他の言語を喋ってるなど、精神的には少しキツい気がする。まぁこの世界から他の世界へ行った者は誰1人いないから想像でしかないが。
正体不明の男の正体が割れ、寝泊まり出来る場所も確保したところで、彼女は紙を用意し始めた。
その紙には、
この世界のこと
生き残り方
おすすめの今後の生き方
大体こんなところが書いてある。
元々、この世界に生活圏なんてなかった。
故に、運良く人間が生まれたところですぐ死ぬのが常だった。
だが、今から程遠い昔、様々な地域の特徴を理解し、活かし、生き永らえる、そんな奴が生まれた。
そこから、その地域性を活かしつつ発展する村が出て来た。
そうして、地域の特徴をよく把握する探索者によって、この世界は発展してきた。
だが、彼は生き残れるのだろうか。
普通に人は攫われ、殺され、売られ、そんな中でまともに生きているのはほんの一握りだ。
勿論探索者以外にも道はある。
だが、彼の興味の持つところ、等々を加味すると、やっぱり彼には探索者が良いと思った。
言って突き放した彼女に、責任などというものはない。
さて…と、久しぶりにフリーになったところで、声を掛けられた。
「S-47m3541迷宮に行ってくれませんか?」
「…分かった」
迷宮、それは死に場所である。
ド直球過ぎるが、これは事実だ。
世界の歪な歪みに自ら足を踏み入れようとして死んでいった奴の何と多いことか。
まぁ逆らっても良いことはない。
─よし、行こう。
「あいつ」、ちゃんと登場します。お楽しみに。
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·用語Tips ぱーと1
アスタルの侵略者···
簡単に言えば、利用価値のありそうな異世界人を早々に殺そうとする奴らである。
彼女やその関係者は、一旦「見る」なりしてから異世界人の生死を決めるが、アスタルの侵略者は「最初から」だ。
故に異世界人の処理をする彼女達にとってはこの上ない害悪な存在という訳である。
余談だが、アスタルというのは、何故かこの世界の衰微を望んでいる節がある。