異世界で出会い厨やってるけどなんか質問ある? 作:タコス
「嫌だって言ったら?」
『フッ、質問の意図が分からないが簡単だ。泣く事になるぞ?私が』
何なんだよその強者ぶってるキャラ。中身が伴ってないんだよ、千年早いよお前には。……でも仮にも魔王を泣かせたとなると面倒臭くなるのは確定だな。
仕方無く俺は、項垂れる様にして首をいやいや縦に振った。すると早速クライアント様から質問が。
『早速だが私は何をすれば良い?』
「うーん、何から手をつければ良いのやら」
何もかも足りないからな。やっぱり体力か?動くのには絶対必要だし、吹っ飛ばされただけで息切れしてたからな。基本体力を身に付けてから攻撃を学ばせたり、回避だったりだな。
「取り敢えず俺を担いで、魔王城を案内しながらジョギングしてくれ」
『疲れそうだな、明日で良いか?別にやらない訳じゃないぞ』
「お前みたいな奴の為に、明日やろうは馬鹿野郎って言葉があるんだよ」
嫌がる魔王を無理やり掴んで走らせ、魔王城観光ツアーが開始した。
「そもそも、何でこんなに弱いんだ?魔王の血を継いでるんだから少しは才能がある筈だろ?」
フラフラと今にも倒れそうな背中にそう声を掛ける。
『私は人間と魔王のハーフのいわば混血という奴でな。
そのミリ単位が、もしかしてその喋り方に使われてるって事か?遺伝子の無駄遣いだな。お父さん泣いてるぞ、とは言えないので。
「成程な。お前も苦労してたんだな」
ありふれた傷口にバンドエイドみたいなベタベタなセリフで誤魔化した。と言うか。
「遅いぞ」
『重い……死ぬ』
「ったく」
俺は死んでも復活するが、コイツはしないと思うので降りてジョギングしながら紹介して貰う。
「そう言えば、仲間は?」
『仲間?』
「部下とかさ、そう言うのはいないのか?秘書とかさ」
まさか、この広い城の中で独りぼっちと言う訳では無いだろ。
『そんなものはいない』
ただ淡々と当たり前の事実の様に魔王は言った。
「嘘だろ?」
信じられない。この広い城に一人で?そりゃあこんななるわ。
『私のこれは元々だ。小さい頃、私が父の真似をしていたら褒められてな。それから、ずーっとだな。今思えばアレが最初で最後の褒め言葉だったな』
重い。何なんだよ、テンションについていけない。更年期か?勘弁してくれ。どうすれば良いんだ俺は。なんか気の利いた言葉や、場を和ませる小粋なジョークなんて言えないぞ?
……と言うか、冷静に考えてみよう。まず、この状況がおかしい。ってか全部おかしい。
家の前に見知らぬ人が倒れていたら普通はそのまま放置して、警察に通報するのが最善だしわざわざ自分の部屋の寝室で寝かせるのはおかしい。それから、その連れてきて看病した人間に対していきなり命を賭けた戦いを挑む事がおかしい。最後に、出会って数時間程度のそんなに親しくないジャンル分けするならギリ顔見知り程度の人間に、突然自分の身の上話をするのもおかしい。
なんて感じで世の中にはおかしな事がいっぱいある。そもそもを辿れば、異世界転生ってなんだよ?って話だし考えない方が良いと思う。ただ、今の世の中には粗探しをしてそう言う所を突っ込む人がいるのも事実だから。一つ誤魔化しとこう。
ここは異世界、君達がいる世界とは次元が違うんだよ。
と。
と、じゃないや。何の話してた?
『普通はこう言う場面では、気の利いた言葉の一つや二つでもあるんじゃないのか?』
そうだ。それそれ。
「……きっと、勇者を倒したら褒められるじゃ済まないだろうよ。胴上げされるんじゃないか?」
『私が勇者を倒せると思うか?』
「思わない」
俺にすら負けるんだから、流石にそれは無理だろ。全身に生肉ぶら下げて、ライオンと戦って無傷で勝てる確率は何%だ?そう言う事だよ。
『おい、そこは……』
不満そうな顔をする魔王に、俺は言葉を続ける。
「"今は"思わない。コツコツ努力を積み上げれば、"いつか先の未来に"は勇者も倒せるぐらい強くなれるんじゃないか?」
『"いつか先の未来"か』
「ああ、頑張れば、きっとどうにかなるかもしれない。"いつか"勇者を倒す魔王が産まれるのかもしれない」
『最後でフワッとしたな』
「ちょっと日和った」
『おい』
それから、色々案内して貰って。動けないと騒ぐ魔王をおんぶして、部屋まで運びその日は終わった。