異世界で出会い厨やってるけどなんか質問ある? 作:タコス
「いやーおやっさん今日も汚れてますねぇ」
「あぁ、今日も綺麗にしろよ?」
「勿論でさぁ、それが俺の仕事ですから!」
そう言って少年は自分の胸を叩くと、親父さんと呼ばれた男からドロドロの服を受け取る。受け取る時には笑顔も絶やさない。
「お前はいつも楽しそうだな」
「ええ、皆さんの役に立つのが楽しいんで」
他の者からも同じ様に服を受け取る姿を見て、そう尋ねると少年はそう答えた。
な訳が無い。
はぁ、やっぱ人の金で食うタダ焼肉なんて罠に決まってるよな。チクショウ!腹減り過ぎて頭が幼児化してた。クソッ!
少年は内心そう毒を吐きながら、必死に頑固な汚れを落としていた。
あれから、俺は悲しい事に此処で奴隷として働いていた。何も楽しく無いのにニコニコ笑顔を振り撒くおまけ付きで。それには勿論理由がある。と言うか、全ての事柄には理由がある。
俺が奴隷になったのも、焼肉屋で奢られたのが理由だ。と言うかあの焼肉屋とグルだったみたいだし、どっちにしても俺は奴隷になってたのかもしれない。
それはそれとして、俺は奴隷として此処で働く事になった。主にやる事は雑用ばかりで、飯に目の眩んだ子供の奴隷と一緒に今日も仕事をこなす。
あ、給料は出ない。だって奴隷だもんっ。
何で俺は異世界で奴隷の経験だけ増えていくんだ。やっと、前の奴隷孤児院から抜け出したって言うのにまた奴隷か!
目が覚める。そして、息をつく間も無く支度を終わらせ店長に挨拶をする。朝から何やってるんだろうなと思いながら、俺達は腹からデカい声を出し挨拶をする。それに対し煩い!と一喝されて終わる。そんな朝から世界の理不尽を思い知らされるモーニングルーティンも早々に、開店の準備が始まる。
肉の用意、焼く担当、店長のヨイショなど仕事は死ぬ程ある。それが終われば、また次。その繰り返しだ。
三週間ぐらい経っただろうか?戦地よりはマシだが毎日毎日過酷だし、飯はケチられて脂身ばっかりだし何よりこのままずっと奴隷っていうのは辛すぎる。なので此処から抜け出そうと思う。と言っても平和に下剋上システムを使おうと思う。お礼もしてからな。
俺が下剋上システムを知ったのは三週間前、俺が此処で働く様になった初日の顔合わせの時の食卓でだ。
「皆お腹空いてるんだろ?俺はもう良いから、皆で食べてくれ」
ほんの少し自分の分を取った後、俺はそう言って皆にあげた。昨日最高に美味い焼肉を食ったからと言うのもあるが、兎に角情報が欲しかった。長く生きるには情報が大事だ。何が相手の地雷か分からないしな。
飯に釣られて奴隷になった奴等がそんな事を言われて断れる筈も無く、喜んで受け取ってくれた。その中で比較的年齢が高い女の子をピックアップして、俺は隣に座って話を聞いた。
「いつから此処にいるの?」
「親はいないの?」
「此処は楽しい?」
世間話で相手の話を聞いて、話をしやすい環境を作り。その後に本当に聞きたい話を切り出した。
「どうやったら奴隷から解放されるのか?」
そう聞くと、初めて彼女は困った顔を見せた。まるで嫌な事を思い出した様な顔だった。そんな彼女に何とか頭を下げて、教えてもらったのが下剋上システムだ。
奴隷達が辞めたくなった時の救済措置らしいが、使った者は見た事無いらしい。それはそうだろう。此処は楽しいかの返答は、「ちゃんと毎日ご飯が食べれて寝れるから楽しい」なのだから。それだけで彼女達が此処から離れるメリットは無い。此処から出れば、それが保証される確率など無いのだから。