オカルト研究部としての活動が終わり、アーシアが勇気を出して一誠との愛し合う者としての関係を深めようと情事をする事を要求し、一誠もそれに応じて高まり合った感情に雰囲気のまま本番へと臨もうとした時に切羽詰まったリアスが一誠の家に転移してくるというアクシデントがあって結局、情事をするどころではなくなってしまった。
せめてとばかりに一緒に風呂へと入ったり、裸で抱き合いながら眠った二人は朝日が昇った時に起き、そうしていつものように駒王学園へと一緒に登校し、授業を行った。
そうして、放課後にアーシアと共に『オカルト研究部』へと向かえば、祐斗と合流したのでそのまま一緒に移動していると……。
「祐斗、グレイフィアさん知ってるよな?」
「勿論だよっ、ていうか……イッセー君、グレイフィアさんと会ったのかい!?」
「ああ、深夜に帰ってからちょっとな。詳しくは聞かないでくれ」
「よろしくお願いします」
祐斗はグレイフィアと一誠に面識がある事に驚き、質問すれば一誠とアーシアはそれぞれ、微妙な表情で祐斗に頼んだ。
「わ、分かったよ。それでグレイフィアさんがどうかしたのかい?」
「今、来てるぞ。只事じゃ無いだろうな」
「え……」
祐斗は戸惑いながら、そうしてオカルト研究部の部室の前まで行けば……。
「イッセー君は凄いな。僕はここまで来てでしか気配を感じ取れないよ」
そうして、一誠は部室の扉を開く。
室内では機嫌の悪いリアス、微笑んでいるが冷たい雰囲気の朱乃とグレイフィア、そして部屋にいる者達と関わりたくないと部屋の隅で静かに座っている小猫がいた。
「うん、やっぱり只事じゃなさそうですね……グレイフィアさん、どうも」
「はい、あの時は本当にすみませんでした一誠様、アーシア様」
「良いですよ、別に」
「はい、仕方ない事でしたから」
グレイフィアからの謝罪に一誠とアーシアは応じる。
「それでどういう事なんです、部長?」
「ええ、実はね……」
リアスが一誠の質問に答えようとした時、部屋の床に描かれた魔方陣が光る。そして紋様もグレモリーのそれから変化していく。
「あれはフェニックスか……」
「うん、でもどうして……」
一誠が呟き、祐斗が答えながら疑問に思う中、室内を眩い光が覆い、魔方陣から人影が姿を現す。
すると炎が巻き起こり、室内を熱気が包み込んだが炎の中で佇んだ者が腕を横に薙ぐと周囲の炎が振り払われる。
「ふぅ、人間界は久しぶりだ」
炎を振り払ったのは赤いスーツを着た二十代前半の一人の男で短い金髪に整った顔立ちであり、スーツは木崩し、ネクタイもせず胸までシャツをワイルドに開いている。
「愛しのリアス。会いに来たぜ」
その男は部屋を見渡し、リアスの姿を見ると口元をにやけさせながらリアスに近づこうとし……。
「失礼。高貴な上級悪魔のお方……紋様からフェニックス家の者とお見受けしますがリアス・グレモリー様の眷属である我々は貴方様の事を何も知りません。なので、貴方様の事をお名乗りいただければ安心出来るのです。高貴な悪魔としての振る舞いをどうか、お見せください」
「む? リアス、俺の事を下僕に話してないのか?」
「話す必要が無いから、話していないだけよ」
「相変わらず手厳しいねぇ……では、名乗ってやろう。俺の名はライザー・フェニックス。リアスと同じ純血の上級悪魔の一族、フェニックス家の三男だ」
「自己紹介していただきありがとうございます、ライザー様。俺は最近、リアス・グレモリーの『兵士』となった兵藤一誠と言います。人間界でも伝承や漫画、テレビやゲームなどでも活躍して名高いフェニックスに関する者と実際に出会えて光栄ですし、嬉しいです」
「ふっふっふ、流石はリアス、良い教育をしているじゃないか。更に喜べ、俺はリアスの婚約者だ兵藤一誠、お前の事も可愛がってやるぞ」
ライザーは一誠の振る舞いと言葉に気を良くしながら、言った。
「それはありがとうございます」
「イッセー、ライザーにへりくだる必要は無いわよ」
「ですが、婚約者と言うのを抜きにしても純血にして上級悪魔である方とのそれ相応の振る舞いを出来ないようではこれから先、駄目なので」
「弁えているじゃないか、良いぞ」
リアスは不機嫌になって一誠に言い、ライザーは一誠の態度に満足する。
「では場を整えましょう」
一誠はそう言って、指を鳴らせば周囲の環境が変化する。それは悪魔にとっての活動領域である深夜そのもの、力は沸き上がるし居心地も最高になる環境へとなったのだ。
「っ、これは……」
「イッセー、貴方、空間まで弄れるようになったのね……」
「おお、居心地がだいぶ良くなったぞ。お前、優秀じゃないか」
グレイフィアは驚き、リアスは苦笑し、ライザーは喜びながら一誠を賞賛する。
「気に入っていただけたなら、嬉しいです。それでライザー様はどうして此処へ」
「勿論、愛しのリアスに会いに来たんだ。式の会場を見たり、日取りも決めないといけないからな」
「どこまでも勝手に……ライザー、貴方とは絶対に結婚しないわっ!! 私は私が結婚したいと思った者と結婚すると決めてるのよ」
「っ、リアス……俺もフェニックス家の看板背負った悪魔だ。この名前に泥を塗るようならいくら君でも許しはしないし、我慢にも限度があるぞ」
リアスの激昂に対し、ライザーも怒り始める。
「二人とも落ち着いてください。グレイフィア様、二人のこの状況はグレモリー家とフェニックス家の両家は予想の範囲内ですよね?」
「……鋭いご指摘、お見逸れします……その通りです。こうなる事は旦那様も私の主であるサーゼクス様、フェニックス家の方々も重々承知であり、これが最後の話し合いの場だったのです」
一誠の指摘にグレイフィアは僅かな苦笑をしながら、肯定しつつ言う。
因みにグレイフィアの主だというサーゼクスとはリアスの兄にして、悪魔にとっての世界である冥界にて悪魔を束ねる魔王の一人として君臨している者の名だ。
「話し合いで決着がつかない場合、最終手段として『レーティングゲーム』で決着をつけるようにとの事です」
「っ!?」
グレイフィアの言葉にリアスは驚愕する。
『レーティングゲーム』――それは眷属を有する悪魔たち同士で行うルールを設けた競い合いであり、戦い。
冥界の悪魔たちが熱中している物であり、この『レーティングゲーム』の成績が悪魔にとっての重要なステータスになっていたりもするほどだ。
本来は成熟した悪魔にしか参加を許されないが、非公式な物においては身内同士、御家同士のいがみ合いの解決のための手段として用いられるので今回はその条件に当てはまったのである。
「相変わらず、お父様方は私の意見を無視して勝手に……良いわ、ゲームで決着を付けましょう、ライザー」
「へぇ、受けちゃうのか。俺は公式のゲームをやっていて経験者なんだがそれでもやるのか?」
「やるわ、ライザー。貴方を消し飛ばしてあげる!!」
「良いだろう。俺に勝てたなら婚約については引き下がってやる。だが、俺が勝てばリアスには俺と即結婚してもらうぞ」
こうして、リアスとライザーによる『レーティングゲーム』の対決が決まった。グレイフィアはそれを確認すると両家に伝えるため、魔方陣で転移をした。
「せっかくだ、俺の眷属を見せよう」
ライザーが指を鳴らせば部室の魔法陣が光り、フェニックスの紋様に変化すれば光の中から総勢十五名の悪魔がライザーの元に集う。
全員が美女や美少女でつまりは一種のハーレムだった。
「どうだ、兵藤一誠。これが高貴な悪魔の威光というものだ。ハーレムすら簡単に出来るんだよ」
ライザーは一誠に対し、誇らし気に言い……。
「多くの女性にそういう関係となる事を受け入れさせているのは凄いと思います。男としての器量の深さが窺い知れます」
「ああ、そうだろうそうだろう。本当に良く分かっているな」
「折角ですし、紹介していただいても?」
「そうだな、お前たち自己紹介してやれ」
こうして体操服とズボン姿の姉妹の美少女であるイルとネル、道着に上着を羽織り、棒を持った美少女のミラ、青い髪と赤い髪の二人の猫又美女であるニィとリィ、踊り子風のシュリヤー、メイドの二人であるマリオンとビュレントの八人の『兵士』が自己紹介をする。
次にバンダナをした西洋の騎士姿の美女であるカーラマイン、大剣を背負ったワイルドな剣士のシーリスが『騎士』だと自己紹介。
『戦車』としてチャイナ娘の姿をした美女、雪蘭と顔の右半分に仮面を付けたスタイル抜群の美女であるイザベラが自己紹介し……。
『僧侶』としては十二単を着た美女の美南風と……。
「私はレイヴェル・フェニックスですわ……ライザーお兄様の妹です」
金髪を二つに分け、ロール状にしたお姫様を思わせるドレス姿の美少女が『僧侶』として名乗った。
「純血悪魔も眷属になれるんですね……しかし、ライザー様は妹想いのお方のようだ。常に自分の傍で守れるようにするとは」
「え……あー、そ「いえ、妹をハーレムに入れる事は世間的にも意義があるとかなんとか、そういった理由で付き合わされてるだけですわ」レイヴェル!!」
一誠からの称賛にライザーは戸惑いながら、乗っかろうとしたがレイヴェルは真実を明かした。
「……ならば、レイヴェル様が兄想いという事ですね。ライザー様の要望に付き合っている訳ですから」
「はい、そ「騙されるなよ、レイヴェルは結構なわがままでな。困らされてる」お兄様っ!!」
一誠の称賛に乗ろうとしたレイヴェルに対し、仕返しとばかりにライザーが真実を明かした。
「どうやら、兄妹としての仲は良好なようですね、なによりです」
「……お前、本当に口が上手いな」
「本当、お上手ですわね」
一誠の話術にライザーとレイヴェルはそれぞれ、軽く驚きながら指摘する。
そうして最後に紫の長い髪の妖艶な美女であるユーベルーナが『女王』として自己紹介する。
「では、次は此方から」
そして、次に一誠たちがリアスの眷属として自己紹介する。
「……リアス、俺たちはレーティングゲームの経験者でお前たちは未経験者だ。故にハンデをくれてやろう。そこの兵藤一誠がなかなか、気分良くさせてくれた事も含めて大サービスだ。ゲームは二週間後にしようじゃないか」
「……ハンデですって……」
「嫌か、屈辱か? 自分の感情だけで勝てる程、『レーティングゲーム』は甘くない。初めてのゲームで下僕の力を引き出せず、負ける奴らを俺は何度も見てきた。そんな無様を皆の前で晒してくれるなよ」
「……」
リアスは真剣なライザーの態度に沈黙していた。
「寛大なお心に感謝します、ライザー様」
「良い、さっきも言ったようにお前は中々、俺を楽しませてくれたからな。礼ぐらいはするし、婚約すればお前とも深く関わるようになるからな……精々励め、そしてリアスに恥だけはかかせるなよ」
「はい」
一誠の返答にライザーは頷くと眷属と共に魔法陣の元へと行き……。
「リアス、次はゲームで会おう」
そう言い残し、転移をしたのだった。
こうしてリアスとその眷属たちは二週間後にライザーとその眷属との『レーティングゲーム』で婚約問題についての決着をかけて戦う事が決まったのであった……。