兵藤一誠はフリードとバルパーの相手を木場祐斗、そして紫藤イリナとゼノヴィアを任せており、そのために戦闘用空間を作り出し祐斗たちを待機させたうえでフリードとバルパーを戦闘用空間へ送った。
そして……。
「バルパー・ガリレイ。僕は『聖剣計画』の生き残り、そしてあなたに殺された身だ。悪魔に転生した事でこうして生き永らえている」
「ほう、あの計画の生き残りか……こんな極東の国で会う事になろうとはな……」
祐斗は自分と同胞にとっての怨敵であるバルパーに憎悪と怒りを解放しながら自分の事を告げれば、バルパーはそう祐斗を馬鹿にしたように笑いながら語り出す。
フリードは面白そうなので敢えて聞く体勢になっていた。自信もあるからだろうが……。
「私はな、聖剣が好きなのだよ」
そして、自分がエクスカリバーを使えないが故に聖剣を使える者を人工的に創り出す研究に没頭するようになったと言い、しかもその研究は完成した事を告げる。
「なに? 僕たちを失敗作だと断じて処分したじゃないか」
祐斗はバルパーからの言葉に反論する。そして、そんな祐斗にバルパーは首を振る。
失敗と断じたのは教会であり、実験は成功していた。エクスカリバーを扱える数値ではないものの、因子を持つ者からをそれだけを抽出し、集めたのだと……。
「成程、読めたぞ。聖剣使いが祝福を受けるとき、体に入れられるのは……」
ゼノヴィアが真相に気づいて忌々しそうに歯噛みする。
「そうだ、聖剣使いの少女よ。持っている者たちから聖なる因子を抜き取り、結晶を作ったのだ。こんな風にな」
バルパーは自慢するかのように光り輝く球体を取り出す。聖なるオーラが迸り、眩い光を放っていた。
「なんて外道なの……」
「ヒャハハ、本当イカれてんよなぁ。バルパーの爺さんも」
イリナは顔を痛ましげにし、フリードは愉快だというように笑う。
「同志たちを殺して、聖剣適性の因子を抜いたのか?」
「そうだ、この球体はそのときのものだぞ。三つほどフリード達に使って、これは最後の一つだ」
「俺以外の奴らは途中で因子に身体がついていけなくなって死んじまったけどな……ふふ、俺様はスペシャルなんだ」
「バルパー・ガリレイ……どれだけ皆の命を……」
「ふっ、良いだろう……そんなに言うならこれは貴様にくれてやる。実験への貢献に対する報酬と冥途の土産変わりだ」
「おお、太っ腹だねぇ。なんてお優しい」
バルパーはそう言って、因子の結晶を祐斗へと放り投げてフリードは嘲笑する。
「……皆」
祐斗は静かに屈み込んでそれを手に取り、悲しそうに、愛しそうに、懐かしそうに結晶撫でた。
そして、そんな祐斗の想いと一誠による強大な力の残滓が充満した戦闘空間の影響によって因子の球体から魂が解き放たれ、青白く淡い光を放つ少年少女たちが祐斗を取り囲む。
「皆、僕は……僕は……」
祐斗は今まで抱えていた想いを同志の魂へと語る。
『僕たちの心はいつだって――ひとつだ』
そして同志たちは優しく、祐斗に語りかけ、最後に大きな光となって収束すると祐斗の中へ入っていく。
そうして、祐斗は至った――所有者の想いを糧にする神器が有する可能性の極限領域である『
「『
祐斗は神々しい輝きと禍々しいオーラを放つ剣を作り出した。それは聖剣と魔剣の性質が融合している物。そうして、その剣を構え戦闘態勢を取るのであった……。
二
一誠とコカビエルの戦いは凄まじいものである。
空間全域を疾走、或いは飛行する事で所狭しと移動しながら相手へと攻撃を繰り出す。
一誠のオーラで創り出された剣による閃光とコカビエルの光力で創り出された槍の閃光が刹那の間に数十、数百、数千、数万、数えきれないほどに何度も入り混じり、応酬される。
「しぃっ!!」
「ふっ!!」
コカビエルの槍が一誠に放たれるが、一誠はそれに対し『赤龍帝の籠手』を盾にする事で防ぎ、或いは受け流し、あるいは弾き逸らすと一誠は反撃として剣を振るった。
「ち、いいぃ……」
コカビエルは上手く回避するものの、その身には負傷が幾度も刻まれている。明らかに追い詰められていた。
「おおおっ!!」
そうして、コカビエルは槍を消すと光の剣を二つ作り出し、更に背の十枚の翼を刃として操る事で果敢に攻め込んでいく。
「良いぞ、それでこそだな」
それに対して一誠は『赤龍帝の籠手』と剣によって巧く捌き、回避していく。更に激しい応酬を交えていき……。
「遊びは終わりだ」
「うがぁ!?」
一誠は今まで祐斗やイリナ、ゼノヴィアという剣使いのそれに合わせるために剣を使っていたがコカビエルの実力に満足しているので本来の徒手空拳に切り替えた。
剣を使っていたそれよりも更に鋭く、流麗にして巧妙な拳と蹴りによる打撃の戦舞がコカビエルを襲い……。
「ぎ、くぁが……お、おおおっ!!」
コカビエルは光力を込めた打撃の戦舞で対抗するも無駄な抵抗であり、自身の攻撃は捌かれては反撃のそれに一方的に打ちのめされていく。そうして吹っ飛ばされて倒れ……。
「くそおおおおおっ!!」
コカビエルは全力を込めた巨大な光の槍を生み出し、一誠へと投擲した。
「ぬぅおおおおっ!!」
それに対し、一誠は両手で受け止めるとそのまま耐えきり、勢いが死んだところで挟み潰した……。
「ば…馬鹿な……」
「ふっ、中々楽しめたぞコカビエル……その礼に良い物を見せてやろう」
一誠は絶望するコカビエルにそう告げ……。
「
『
一誠の身を赤く輝く特大のオーラが包み込み、そうして巨大な赤きドラゴンをそのまま加工したような有機的なフォルムの全身鎧を一誠は纏った。
その全身鎧は籠手にあった宝玉がいつもの籠手は勿論、右腕にもある籠手の甲に両腕、両肩、両膝、胴体中央にあって、背中は大きな龍の翼、臀部には尻尾も存在する。
「な、なんだそれは……」
「俺が至った『赤龍帝の籠手』の禁手、『
「ふっ……殺せ」
「ああ、潔さに免じて痛みもなく、殺してやる」
只佇んでいるだけなのに自分を遥かに上回る実力を一誠から感じたコカビエルは降参を告げ、両手を下ろす。
そんなコカビエルに一誠は告げ、魔法を発動。時間の流れをひたすらに乱す事で時間に間隙を生む。すると一誠の存在も相手は行動も認識出来なくなる。
ただ正常な時間の流れの無い空間を歩くのは一誠にとってもまるで深海の底を歩くが如く、負担がかかるが禁手化している今の状態ではそんな負担も問題にならない。
一誠は移動してコカビエルへと近づき……。
「ふっ!!」
拳撃を放つとコカビエルの身は一瞬で破壊され、粒子が一誠の身に吸収される。
これは『赤龍帝の龍人鎧』に覚醒した事で得た力、倒した相手の魂を吸収し、相手の力や経験など全てを得る能力が発動した事によるものであった。
「さて、向こうも終わったかな」
一誠は時間の間隙に異界の展開、濃黒の闇を解除し、祐斗たちの元へと移動するのだった……。