真・女神転生:オタクくんサマナー外伝 ある少年のカルぺ・ディエム   作:ミートスパゲティ

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年度末のリアル事情もあって更新が大変遅れてました。
今後はもっと更新頻度を高めます(決意)


最悪な目覚めと、未来への積み重ね

目覚めた瞬間に映ったのは、目を潰す程に眩しい光だった。

直ぐに自分がベットに横たわっている事に気付き、起き上がろうとする。

だが何か硬く冷たい物に手頸、足首を引き寄せる形で押し留められた。

 

何が起きているのか目だけをやるとその手首、足首が鉄の輪で縛られている。

その冷たさを感じたその瞬間、胸を縛りつける圧迫感と裂く痛みが迸り

思わず叫ぼうとする、だが思考がすぐに離散し、呻き声しか絞り出せない。

 

苦痛から直ぐに逃げたい自分と、それを他人事として眺める自分が混濁する。

僅かにでもと足掻くが、動かない、いや、動けない。叫べない。

痛みと苦しみをただ感じる事しか出来ないのだ。

 

そんな苦しみながら呆けた見詰める影が二つ。

刺し込む逆光で、どんな表情を浮かべて僕を見下しているか分からない。

それでもその手に携えたメスをどう使うつもりなのかが分かる、いや理解してしまう。

 

「やっ…めて…」

 

想像しうる苦痛から恐怖が沸き立ち、止めてくれと懇願の願いを呻く。

頭が茫然を過ぎて鈍い痛みが走っても絞り出した願いは当然通じない。

 

躊躇もせずその鋭利な刃を僕の腹へ入り込む――その寸前にまた別の天井が視界に映った。

 

 

「最悪な目覚め……覚えてもない癖に…」

 

 

枷から解放された手を無意識に天井へと掲げる、痕も傷もない、真っ白な手そのものだ。

そのまま顔を撫で降ろし、眠りの誘惑を振り切って起き上がる。

 

そのまま準備のため冷気が漂う洗面所へと歩き、そのまま蛇口を捻った。

流れ出る冷水を掬いり、そのまま顔へと勢いよく浴びせ眠気を吹き飛ばす。

 

次の行動はと思考した瞬間、鏡に映った自分の顔と対面する。

しばらく時が止まったかのように見詰め合い、思わず噴き出す。

 

 

「ひっどい顔してるなぁ………もっと気を張れよ、僕」

 

 

髪がボサボサに乱れ、寝巻も皺だらけ。

なにより目立つのは目に皺が浮かべ、頬が弛んでいる、とても情けない顔をした金髪の少年。

 

「強くなるんだろ、情けない顔してる暇なんかあるかよ」

 

弛んだ頬を思い切り叩き、ようやく締まった顔をタオルで強く拭い取る。

熱さと痛みでより強く、鮮明とした表情へと顔を、外面を意識して作り替える。

 

 

「よしっ、今日も一日頑張ろう」

 

 

 悪夢に魘され、気を弱らせた自身を鼓舞し、またその日を生きる心構えを想い、正す。

そんな朝の儀式を終え、改めて朝支度を始めた。

 

 


 

 

簡単に朝支度を終えてから、朝食をとるために部屋から出て、食堂へ向かう。

窓から差す春の陽気に心地好さを抱きつつ廊下の先にある角に曲がると同年代の少女と出会った。

 

「おはよー、出音くん。温かくて良い朝だね」

「おはよう、イスマさん。こんな気温が続くと良いんだけどね」

 

       \カカカッ/

人間:川上 イスマ Lv15 耐性:不明

 

彼女は川上 イスマ、僕が間借りしている教会に住む少女で

艶やかな黒のロングヘア―に翠玉(エメラルド)の瞳が映えた、実年齢より大人びた少女だ。

 

だがその美しい系統の容貌と反して、その性格は――

 

「ねぇねぇ、今日は一緒に手合わせしようよ。 出音くん、筋が良いから戦って楽しいんだよね」

「【は】じゃなくて【も】でしょうに。 分かりました、僕も楽しいですから」

 

「ありがとっー!じゃあ、朝飯も食べに行こうかっ!」と元気のよいその姿は陽気と活発そのものだ。彼女の明るさに連れられ笑顔を浮かばせつつ、歩調を合わせて話をする。

 

「しっかし、この前の異界探査は無茶したねぇ、主まで倒さなくてもいいと言われてたのに」

「えんまくだん*1があったからこその無茶だよ。普通はこんな無茶はしないさ」

「いやいや、それでもだよ。この世界に入って間もないんだから無茶は駄目だって」

 

思い返すように数日前に攻略した異界の件を指摘される。

居候先の住民兼先達からは霊格(レベル)はやけに高いが経験が足りないと。

 

なので異界に行く際に「あくまで戦いを肌で実感するだけ、危ないかったらすぐ脱出して」と忠告されたにも関わらず、異界の主、ヤーカを倒すまで突っ走ったのだ。

 

実のところ異界を攻略し迎えの連絡を入れたその直後に、見守っていた人が現れていた。

「奥まで行くなと強く言ってない私達も悪いけど、無茶しちゃだめだよ」と目頭を押さえながら

言う姿を見て思わず「ごめんなさい」と謝った時の記憶がまだ残っている。

 

 

「強くなりたいとは聞いたけどさぁ、その前に死んじゃダメじゃん?命大事にいこうよ」

「そこは心配させて本当にごめん、このまま倒せると思って」

「あっー、謝らせたかったわけじゃないの。本当は君の傍に制止する人が居るべきだったんだ

 から。ただもう少し他の人を頼ってもいいんだよとは言いたかっただけだよ」

 

 

僕の謝罪に対して、こっちも悪い所があったと、返すイスマさんを見て心が痛い。

周りが見えず先走った僕の配慮のなさを改善したいと思い――

 

その瞬間、夢が思い返してしまう。

何も抵抗すら出来ず、ただ苦痛のままに刻まれる、その苦痛有り余る体験を。

 

ゼッーと音を立てて乱れる呼吸を整えながら「ちょっと、大丈夫?」とよろける僕を心配するイスマさんに「大丈夫です」と咄嗟に返答する。

何とも知れない悪夢を思い出し、動揺したなんて言える訳ない。

 

 

「あっ、ほら食堂に着いたよ。お腹も減ってるし、早く入ろうよ」

「んー、そうだね、……分かった、ならご飯を食べてまた鍛え合おっか!」

 

 

深く踏み込まない彼女の心遣いに内心感謝しつつ、気を取り直して食堂の扉を開けて

そこにいた人たちと挨拶を交わしながら、配膳台に並べられた朝食を手早くよそっていく。

 

「あそこの席が空いてるね、いっこか」という勧めのまま向かい合うように座り

食前の祈りを捧げようとしていると彼女が真面目な表情で、僕を見つめていることに気付いた。

 

 

「レン君、ちょっとずつでいいよ。焦らなくてもいいから、独りで我慢し続けないでね」

 

 

ふと投げかけられた気遣いの言葉から垣間見える優しさが嬉しさがとても嬉しく感じた。

先に見せてしまった姿を見て、気遣ってくれたのだと理解する。

 

 

「……ありがとう、少しずつ。うん、少しずつ吐き出すよ」

 

 

その好意に甘えるには、まだ時間がかかるだろう。

でもそれでも抱え込んで、僅かでも相談していこう。

 

そうして双方の想い、意思も確かめ合った後に

空腹を訴えるお腹の促しに従い、ほぼ同時に食前の祈りを再開した。

 

 


 

朝食と礼拝堂での祈りを終えたら、早速とばかりに中庭の訓練所へと移動する。

 

僕が今居候している【大和(ダイワ)】教会はカソリックの流れを汲み、裏の世界では西洋発祥の退魔術、武術を扱い抗い、生き抜いている。

 

それはここに所属するイスマさんも同じでーー

 

 

「行くよっ!!」

 

 

勢い良い掛け声と共に繰り出された右ストレートを頬に掠らせつつ、それに合わせる形で僕は構えた突剣を上側へと跳ねる。

その剣先が刺さる寸前、イスマさんは更に僕の左横へとステップ、僕の脇腹へとパンチを一発抉り入れる。

 

 

「ぐうっ!?!」

 

 

撃たれた痛みよりも肝臓を圧迫される息苦しさが責め上げる。

が、それでも棒立ちにならないよう剣を横へと薙ぎ、相手を後退させた間に立て直した。

 

その構えを維持しつつ、前方の相手へと浮き上がらせる形で剣先を一直線に突き出す。

それをイスマさんはテーピングを巻いた片手で払うが、これで終わりじゃない。

 

肩、肘を手早く折り畳み、同じ軌道を描いた刺突。

それが先の攻撃を払い退けた腕という守り無く、空いた胸へと突きが直撃した。

 

イスマさんは顔を苦痛に歪ませるが、剣から伝わる感触は浅い。

示し合わすように互いに後ろへとステップ、仕切り直しーー

 

『はい、そこまでッ!』という制止の声が割って入った。

 

 

「ごっほ…くぅっ~~!!やっぱ私のボクシングだと剣相手はきっつ!!」

「僕の間合いにあっさり入って一発入れた癖に、そう言われたくないなぁ…!」

 

 

互いに痛みを我慢し、貯めた息を荒れて吐き出す。

呼吸が大きく乱れ、膝を曲げ手をつく様はまさに疲労困憊それ以外はない。

 

「……最後は防いだと思ったけど、予想より突きを戻すのが早かった。ただでさえ刺突は防ぎにくいのにあれは反則だよ」

「でもやっぱり近づかれると、弱いよ。早く今の体に慣れてないと…」

 

「げっ、まだあの突きが早くなるのか…」と顔を顰めるイスマさんを尻目に戦闘の振り返る。

 

今回の鍛錬の目的は、対人。

覚醒者との戦いに慣れる事が第一の目的だ。

 

異能、超常の力に目覚めた覚醒者は常人と比べ、比身体能力が著しく向上する。

それ自体はとても良い事だ、ないよりは全然あった方が良い。

だが、今の僕は発達した身体能力にあった適切な動かし方が把握できていない。

 

悪魔相手ならまだ良い、だが人相手はその生半可な技は相手にとって絶好の隙となる。

その是正を主目的として今回のような鍛錬を重ねているのだ。

 

そして第二の目標は――

 

「で、出音君からしたらどう?私のボクシング、すごかったでしょ?」

「それは、確かにそうだね。突きをあんな見事に払われたりすると思わなかった」

 

超常の力ある覚醒者達が扱う対人技術をその身を持って知る事だ。

ボクシングや空手、サーベルや槍、或いは鞭や銃など多種の武器の使い手存在する。

 

 

(僕の思う以上に全般的な動きが早い……早くスピードに慣れないと)

 

 

そう振り返りをする中で『ディア』という呼び声と共に腹の痛みが引く。

声の先を見ると先の審判を務めてくれてた【エンジェル】が脇腹へと手を翳していた。

 

 

「ありがとう、エンジェル。助かるよ」

『いえ、これも役目ですから、イスマさんも癒しますので私の近くに』

 

 

「おっ、ありがとー」と言いながら近づくイスマさんの胸へと【ディア】を掛けて貰う。

痛みと共に傷も瞬く間に塞ぐその光景はまさに魔法、或いは奇跡だ。

 

 

「魔法って本当に凄い力だよねぇ…僕もエンジェルと同じ魔法を使えるのかな」

『はっきり言うと適正と修練次第です、霊格(レベル)の上昇に伴い自然と覚える者もいれば、修練を重ねても長く覚えれない者も当然います』

「ただ出音君は体の動かし方を覚えた方が良いよ? 半端な魔法を覚えても活用できなくて後悔するよ?」

 

魔法は直ぐに習得できず、するような物でもない。

その二人の真っ当な指摘を受け、それはそうだと切り替える。

 

今の僕が覚えている魔法、【スクンダ】*2は体をよく動かす前衛を務める身としては

確かに良い魔法だが、絵面がどうしようもなく地味だ。

なのでもっと映える魔法を。と望む欲はある。が、活用できなくちゃ意味がない。

 

「うん、分かった。今は皆の力を借りて僕は今あるものを使いこなすことに専念するよ」

『えぇ、サマナーの意志は汲みたいですが、すぐ見違えるように強くなれる術はそうありません。

 まずやれる事からやっていきましょう』

 

「それもそうだね」と同意しながら次の予定を思い返す。

確か次はこの世界での一般常識に関する講義だった。

 

「さて出音くん、私はここで別れるけど次の講義も頑張ってね!」

「うん、ありがとう。イスマさんも清掃活動頑張ってね」

 

「ありがとう、じゃあまたねー」と手を振って中庭の扉を開けて去る後ろ姿を見届ける。

 

 

『良き隣人に出会えましたね、私も安心しました』

「それは良かった、僕も今の幸運を強く噛み締めてるよ」

 

川上イスマ、彼女はこの過酷な世界で生きてきた先達である。

だが私的な時でも気軽に話せる仲でもある、それは友人と言ってもいい。

 

 

『ではサマナー、汗を拭って次に行きましょう。教えを乞う立場で相手を待たせては礼に欠けます』

「おっと、助かるよ。さっきの戦いで汗を沢山かいちゃったからね」

 

エンジェルから手渡されたタオルで汗を拭い取りつつ、今の自分を振り返る。

 

数か月前には想像もできない環境で、絶え間なく鍛え、覚える事が山ほどあり

そうしても恐らく命を賭けなきゃ乗り越えられない危地が沢山あり

負けてしまったのならあの悪夢と同じ目に有うかもしれない。

 

だがそれでも、この世界に好き好んで踏み込んだ僕を見てくれる人や仲魔もいる。

 

「よし、今日も一日頑張ろうか」

『えぇ、頑張りましょう』

 

 

朝起きた時と同じ決意の言葉を吐く、だがそれは朝の情けない自分を奮い立たせる後ろ向きの言葉じゃない。

支えてくれる人の好意に応え、より良い未来を掴もうとする前向きな言葉だ。

 

我ながら感情の移り変わりの激しい事だと思う、がそれでも自分の不幸だけを見てずっと怯えるよりはましだろう。

 

 

(何事も決断しなきゃ進まないんだ、なら動機くらいは前向きの方が良いよね)

 

 

我ながら心の変遷が激しい物だと内心で笑いつつ、思いを一新して中庭の外へと歩を進めた。

*1
真1メガCD版出典、ボス戦含めて戦闘から確定逃走する効果を持つ

*2
》敵PT全体の命中率を1/8、回避率を1/4ダウンさせる。四段階まで重ね掛け可能 *真女神転生3出展




ここまで遅れながらメガテン要素がほぼ出ていない話になってしまった…。。
次からもっとメガテン要素が増やしていきます。
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