抜けてたとこがあったので修正しました
「ぐぇっ、ぎっ、あのっ、ちょっ、体当たり以外でお願いできませんか!?」
国会議事堂へと続く道にて。
敵の断末魔すら聞こえない速度と衝撃の中、サイドカーにしがみつく平良さんが涙目で訴える。
現在、僕は並み居る怪人を轢き飛ばしながら進んでいる最中。
ガタガタと何度と揺れる車体を強く掴み、僕は淡々と返した。
「無理。僕、二つ以上武器出せないから」
「出してないじゃないですか!?」
「このバイク、武器扱い。大して効かない放電と体当たりくらいしか出来ないよ」
それに、このバイクを乗り回しながら攻撃を当てれる気がしない。
ああいうのは器用な人しかできないのだ。
内心で言い訳を述べていると、平良さんの肩にしがみついているポップリンに叫ぶ。
「ぽ、ポップリン!銃かなにかない!?」
「ないポプ!そういう武器は魔法少女として、人間として一皮剥けた時にしか発現しないポプ!!」
「魔法のくせに融通効かない!!」
「な、なんてこと言うポプ!?その霊装は妖精界の創世記からある由緒正しい…」
「使う人のこと微塵も考えてないよね、こういう装備」
「3人とも、罰当たりが過ぎるポプよ!?戦えるだけありがたいと思うポプ!!」
タイプチェンジって偉大なんだな。ガジェット式だと嵩張るって欠点はあるけど。
僕も使い分けできるようなタイプチェンジが欲しかった。
相棒の同族とも契約すれば出来るのかな、と思いつつ、群がる怪人を轢き飛ばす。
「ここからはいっそう当たってくから喋らないでね、舌噛むし」
「わかりました!!」
「喋らないでねって」
相手はこの怪人社会の支配者が集う城。
轢き飛ばすだけで倒せるようなのは居ないだろう。
気を引き締めて敷地内に入ると、違和感が襲った。
「……………あれ、怪人いませんね?」
「先に誰か乗り込んだのかも。近い人たちだったか、それとも…」
「あ、ヒビキちゃん寝っ転がってる」
「本当だ」
先輩が国会議事堂前で倒れ伏している姿がちらりと見える。
その周りには、武装のカケラらしきものが火花を散らしており、喰らった一撃の重さを嫌でも悟らせた。
理論上、先輩を倒せるヒーローは存在するが、実際に勝てるヒーローはそう多くない。
ここまで派手な負け方になると、更に限られてくる。少なくとも、撃破数10位圏内か。
先越されたかな、と思いつつ、すでに破壊された国会議事堂の入り口を通り抜け、バイクをしまう。
そこかしこで怪人の死による爆発があったのだろう。
ボコボコに穴の空いた状態の内装を前に、平良さんが顔を顰めた。
「ヒーローが何人か近くに居たんですかね?」
「……いや、単騎だ。破壊の跡が少ない」
「ゼロくんかな」
「多分、そうじゃないっすかね」
この状況でこんなことができるのは、今のところゼロくらいしか思い当たらない。
彼が持つ能力の関係上、新人の平良さんが居るのが懸念事項だが、彼がことの中心に近いのなら早期解決が見込める。
破壊の跡を辿り、本会議場に繋がる扉の前に立つ。
やはりというべきか、既に殲滅は終わっているらしく、何の音も聞こえない。
「やけに静かですね…?」
「先越されたか。誰か居るといいけど」
情報がないまま彷徨くのは避けたい。
この惨状を作ったヒーローがまだ去っていないことを祈りつつ、扉を開く。
広がるのは、そこらじゅうに破壊の波が広がり、焦げが目立つ本会議場。
その中心には、鈍色の巨影が倒れ伏していた。
「な、なんでしょう、あれ…?」
「…………」
訝しむ平良さんに、絶句する式村さん。
僕は呆れを込めたため息を漏らし、倒れ伏す巨体へと歩み寄る。
「じいさん、なにやってんの?」
「お、おぉ、シュウヤくんか…。
また腰やっちまってな…」
「や、そういうことじゃなくて…。
……式村さーん、ぎっくりー」
「はいはい」
巨人の正体は、先輩の祖父だった。
倒れ伏す彼に式村さんが治癒の光を浴びせる。
「あ゛ぁー、効くわぁー」としわがれた声を漏らすじいさんを前に、平良さんが苦々しい顔を浮かべる。
「え、えっと、もしかしてこの人…」
「察しがいいね。ぎっくり腰の人」
「ども、ぎっくり腰の人だよ。だっ、いぢぢぢ…。式村ちゃん、そこもうちょい優しく…」
「無理」
式村さんの治療には損傷に応じた痛みが伴う。
僕の場合は再生能力でなれているからそこまでデメリットに感じないが、他の人はそうはいかない。
先ほどまでとは打って変わって苦悶の声をなんとか噛み殺すじいさん。
軈て治療が終わると、なんでもなかったかのように、すくっ、と立ち上がった。
「おぉ、おお…、あんがとなぁ、式村ちゃん」
「それはいいけど、なんで戦ってんの?引退って言ってなかった?」
「縁側で茶ァしばいてたら殺されかけてな。
逃げるのも無理だったもんで、ヒーロー『ハンター』、一時だけのカムバックってやつよ」
「ハンター…?聞いたことあるような…」
「………」
「いや、今時の子はこんなもんですって」
「マジかコイツ」と言いたげな目を向ける式村さんを宥める。
じいさんはある程度名の知れたヒーローであるが、僕くらいの年代だと知らない人がほとんどだ。
式村さんの世代でも過去の偉人扱いされてたくらいに古いヒーローなんだから、平良さんの反応は仕方ないだろう。
そんなことを思いつつ、僕はじいさんを紹介する。
「15年くらい前に取り沙汰されて話題になってたヒーロー。
見つかるまで認知されてなかったけど、最初期に活動してた1人だから活動歴は50年」
「大ベテランじゃないですか!?
いいんですか、そんな軽い感じで!?」
「先輩のじいさんだし、そう気負うことないよ」
「そうなんですか!?」
叫び散らし、目をひん剥く平良さん。
最初期のヒーローのほとんどは引退済みだが、たまにこうして戻って来ざるを得ない状況に置かれる。
彼の参戦も今回限りだろう。
早期解決は見込めるが、じいさんが致命的に腰をやりそうで怖い。
僕はその心配を隠し、槌を引きずるじいさんに問いかけた。
「で、何か情報吐きました?」
「おう。歴史を歪めてる要因がわかった」
「ナイス。ここから遠かったりします?」
「いんや。車で数分だ。ただ、急がんとまずい」
「宇宙に飛ぶとかっすか?」
「当たりだ。慣れてきたなぁ、シュウヤくん」
「界隈だとベテランですから。流石にじいさんほどじゃないっすけど」
なるほど。歴史改変の要となる何かを宇宙に飛ばして手出しさせないようにするわけか。
宇宙で活動できる…、もとい飛び立つことができるヒーローなんてそうそういない。
少なくとも、歴史改変に対する適性を持っているヒーローの中には特に。
向こうは僕たちのことをよく知っているわけか。…いや、掲示板で語られている以上、今更だとは思うけど。
頭の片隅で推察を続け、僕は確認事項を済ませる。
「元凶自体に自我があるタイプですか?」
「恐らくはないだろうな。
そうでなきゃ、宇宙に飛ばすなんてことしない。装置かなんかだろ」
「作ったやつがラスボスってことっすか」
「だろうな。場所もすでに聞いてある」
解決に必要な情報は揃っているわけか。
僕がバイクを出すと同時、じいさんが携帯を操作し、そこらに放り投げる。
瞬間、携帯は宙でバギーへと変貌を遂げ、ずずん、と床に落ちた。
「取り戻しに行こうじゃないか。俺たちの月曜日」
「ぶっ壊しに行きますか。アイツらの月曜日」
敵は見えた。決着まで、あと少し。