劇場版規模の敵が週一でやってくるんだが   作:鳩胸な鴨

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敵側だと基本フォームで使ってきがち


戦力を召喚できる奴がいないとやってられない

とある山にて。

衝撃が空気を揺らし、ヒーローたちの体が宙を舞う。

僕とじいさんは構えを解くと、聳える扉を見やった。

 

「ここまで進むとヒーロー連中もこぞって来るよね。どういう経緯で従ってんのかはわかんないけど」

「いちいち確認してられん。さっさと行くぞ」

 

倒れ伏したヒーローたちを踏み越え、山をくり抜いて作ったであろう基地の扉を開く。

先輩もそうだったが、1人として怪人になっていないあたり、奴隷兼戦力としてこき使われているのだろう。

そんなことを思いつつ、僕は引き攣った顔の平良さんに声をかけた。

 

「ほら、行くよ」

「………あの、私、いらないんじゃ…」

「一撃で死なない保証がないから前に出したくないの。

歴史改変への耐性があると、歴史が戻った影響も受けられないから」

「それは、どういう…?」

 

説明はこれまで仕事が回っていない回復担当に投げるとしよう。

式村さんとアイコンタクトを交わしたのち、怪人ひしめく通路を再び歩き始める。

 

「歴史改変の中で死んだ人間は、歴史を正せば生き返る。…いや、違うか。

『死んだことに改変された歴史が、生きているという正しい歴史へと書き換わる』んだよ。

でも、歴史改変に適性があるやつはそうじゃないってことさ」

「な、なるほ…ど…?」

「一から十までわからなくていい。

死ねば死ぬって当たり前のことさえわかってればモーマンタイだ」

「あ、はい」

 

歴史改変で引退に追い込まれたヒーローなんて、この50年で腐るほどいる。

平良さんをその1人にしないためにも、無茶の効く自分と慣れたじいさんが前に出るべきだろう。

そんなことを思っていると、背後からエネルギーを貯めるような音が響いた。

 

「平良さ…」

「はい」

「ぐぁあっ!?」

 

平良さんに声をかけるより早く、彼女が下手人らしきヒーローを取り押さえ、腰にぶら下げていた変身アイテムを剥ぎ取る。

流れるような動きだ。それも、先週とは比べ物にならないくらいに。

僕の唖然とした視線に気付いたのだろう。

平良さんは床に倒れたヒーローを気絶させ、苦笑を浮かべた。

 

「遠藤先輩に教えてもらって、なんとか…」

「………天才肌すぎない?」

「い、いえっ!遠藤先輩の見様見真似ですから!」

「自己肯定感低いなぁ」

「ブーメランだからね、それ」

 

僕はゾンビアタックが出来るだけだと何度言えば。

横目で式村さんを睨め、歩みを進める。

 

「…………いませんね、敵」

「歴史改変の中心なんだよね、ここ?」

「その…、はず、なんだが…」

 

打ち止めなのか、出払っているのか。

流石に入り口近辺にいたのだけが全戦力とは考えられない。

となると、考えられる可能性は一つ。

 

「大広間にぎっしりパターンだな、これ」

「雷でなんとかなるかね?」

「無理でしょ。何人か無効化できるのが思い当たるし」

 

じいさんと言葉を交わし、最奥らしき場所に通ずる扉を少し開く。

広がるのは、ステージ。

歴史改変の要となるであろう機械が組み込まれたロケットを取り囲むように、多くのヒーローや怪人たちがひしめき、警戒にあたっていた。

 

「うっわ、マジでぎっしりだ…」

「あ、カラワンの赤」

「はぇー、結構顔ぶれ変わったなぁ」

「……あの、先輩方?感心するより作戦立てるのが先かと」

 

あまりの壮観っぷりに現実逃避してた。

これが歴史改変でさえなかったら頼もしいんだけど。

改めて現実を見て、僕は辟易の息混じりに愚痴をこぼす。

 

「とは言ってもねぇ。ここまで敵が集まってるとどうしようもないっていうか」

「歴史改変装置だけ壊すとかは…?」

「無理無理。遠距離攻撃したとしても、装置に届く前に撃ち落とされて、そこから袋叩き受けて死ぬ」

「陽動とかは…」

「ある程度は減るだろうが、最重要拠点を空にするなんて真似はしないだろうな。

少なくともワシらを囲んで殺せるくらいの人数は残るだろうよ」

「じゃ、どうするんで…?」

 

取れる手がないと思っているのだろう、平良さんの目に不安が宿る。

「自分がなんとかします」と言い出して敵陣に突っ込むような子じゃなくてよかった。

僕は安堵を出さぬよう、神妙な声音を崩さず答える。

 

「こっちも戦力を用意する」

「……え、えと、そんなんできるんですか?」

「式村さん、よろしくお願いします」

「はいな」

 

式村さんが懐から紙の束を取り出し、部屋にばら撒く。

瞬間。全ての紙がそのまま巨大化し、ひしめく敵に襲いかかった。

 

「なっ…!?」

「侵入者か!!装置を守れ!!」

「ぐ、この、邪魔だっ!!」

「………なんですか、あれ?」

「式神。私、妖術系ヒーローなの」

「こんなんできるなら、これまでの逃亡劇なんだったんですか…?」

「無限に出せるわけないじゃん」

「………ですよね」

 

式村さんのように式神や眷属を使うヒーローは多々いるが、ヒーローと比較すればかなり弱いのがほとんどだ。

故に、こうして乱戦に持ち込むくらいしか使い所がない。

式神がひしめく軍団をかき乱す中、僕たちは一斉に歴史改変装置へと向かう。

 

「羽虫どもめ!!」

 

静かに声が響く。

刹那。ヒーロー、怪人、式神。あらゆる遮蔽物を貫通し、光芒が襲いかかった。

 

「うぉおっ!?」

「あがっ!?こ、腰が…」

「っ、じいさん!!」

 

無理に避けようとしたのが祟ったのだろう。

蹲る爺さんを突き飛ばし、飛んできた光線を顕現した盾で受け流す。

光線を受けたヒーローや怪人たちはこの威力に耐えきれなかったのだろう。死に際に放った爆炎が僕たちの肌を撫ぜる。

知っている顔が爆発する様は、何度見ても慣れない。

漏れそうになる雷をなんとかこらえ、僕は装置の元に立つ影を見やる。

明らかに人。だがしかし、感じる気配は怪人のそれだ。

その周囲には、体の一部なのか、それとも機械なのか、まるで判別できない骸骨が宙を漂っている。恐らくはあれで光線を放ったのだろう。

死神のような出立ちのそれを前に、僕たちは並んで武器を構える。

 

「控えろ!この私、シャーレコーベ大総統の秩序を拒む悪ども…」

 

痛い中年の言葉を遮り、雷をまとう槍が装置へと向かう。

しかし、流石は黒幕というべきか。

漂う骸骨の一つが槍を弾き、装置の破壊を防ぐ。

忌々しげにこちらを睨む中年を前に、僕はバイザーの下で青筋を浮かべた。

 

「聞き飽きたわ、その類のセリフ。もっとバリエーション増やしてこい」

 

最終局面だ。パワーアップ形態がないことを祈ろう。

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