劇場版規模の敵が週一でやってくるんだが   作:鳩胸な鴨

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仲間の武器を使う展開が嫌いな人いないよね


継承

「ぉ、おごごご…」

「一番のベテランが足手纏いになってどうすんの、じいさん!!」

「すまん…。いぢ、ぢぢぢ…」

 

貫通するレーザーが横雨のように降り注ぐ中、じいさんを担いで駆け抜ける式村さん。

妖術で軽くしているのだろう。拘束しようと掴みかかる怪人やヒーローを掻い潜り、レーザーを軽やかに避けていく。

じいさんのぎっくり腰が、式村さん込みでも秒で再発するようなものだったとは。

そりゃ引退決意するわな、と思いつつ、僕は平良さんへと視線を向ける。

 

「わ、わわっ、わわわっ」

「………すっげ」

 

マジかよこの子。ビットタイプの攻撃なんて初見だろうに全部避けてる。

僕なんて、初見の時は強化形態発動一歩手前まで行ったのに。

魔法少女としての能力なのだろうか。いくらなんでも成長曲線がブチ上がり過ぎてる。

そんなことを思いつつ、僕は黒幕へと肉薄し、槍での殴打を繰り出した。

 

「そんな攻撃、効かん!!」

「うげっ、本体も戦えるタイプかよ」

 

片手で受け止められたが、想定内。

槍を分解し、距離を取る。

刹那、僕がいた場所に骸骨による光線が放たれ、空を焼いた。

 

「だーッ…、こなくそ…!」

 

わざと喰らって強化形態になろうかと思い、やめる。

僕の強化形態は条件を整えれば発動できる。それが例え、発動目的の自傷でも。

しかし、60秒で勝負をつけられなかったら、完全に無駄撃ち。

僕は完全にお荷物になる。

確実なのはゼロといった実力者が割り込んでくるまで粘ることだが、平良さんたちがいる以上、それも厳しい。

どうしたもんか、と考えつつ、ふざけた名前の中年と殴り合う。

 

「せ、先輩っ…!」

「平良さんは避けることに集中して」

 

ただの格闘戦でも、攻撃が痛い。生身なら内臓ごとめくれてる。

全身に伝わる激痛を堪えつつ、僕は中年に食らいつく。

 

「人間にしてはやるな。

だが、それでこのシャーレコーベ大総統に勝てると思ったら、大間違いだ!!」

「ぐ、ぉおあ…!?」

 

唐突に奴の手から伸びた光刃が、僕の外骨格ごと肉を引き裂く。

そんなんアリかよ、と悪態が漏れる。

激痛は耐えられた。だが、衝撃に負け、よろめいてしまう。

相手はその隙を見逃すことなく、ビットによる光線を僕へと集中させた。

 

「かっ…!?」

 

爆炎が僕を包み込む。

強化形態を発動させる条件の一つは、「五度は死ぬほどのダメージを立て続けに喰らう」。

先週は絶えず焼かれたから達成できたが、今回は違う。

同時に叩き込まれた攻撃が僕の外骨格をひっぺがしてしまった。

一応治りはするが、こうなると変身は一度解除され、体力も大幅に失う。

中年は僕の顔を掴み、憎たらしい笑みを向けた。

 

「我ら怪人の歴史、その礎となるがいい!!」

 

都合よく助けが入るわけもなく、ぞぶっ、と音が響いた。

 

♦︎♦︎♦︎♦︎

 

「加勢しなきゃいけないのに…!」

 

追い詰められた先輩を前に、焦りを吐き捨てる。

先週よりは強くなったと思っていた。先週よりも動きは格段に良くなっていた。

しかし、現実は先週と変わらない。

私はいまだに先輩たちに寄りかかっている。

胸を貫かれ、その場に転がる先輩。

再生能力があるからか、すぐに立ちあがろうとするが、その口からは血の塊が溢れる。

 

「くっ、そ…!」

「先輩!!」

 

横から入ろうにも、骸骨が放つ光線や、怪人たちの拘束が邪魔をする。

私の力では突破できない。

こんな時にこそ状況を打開するための力が目覚めてほしいのに、私にはその兆しすらない。

考えろ、と思考を巡らせている間にも、状況は刻一刻と悪化の一途を辿る。

 

『発射まで、残り2分』

「なっ…!?」

 

カップラーメンすら作れない時間で、世界の命運が決まる。

隙を見て再変身した先輩ですらも、向かってくる怪人や骸骨、更には黒幕への対処に追われ、余裕が見えない。

どうする、と疑問だけが頭をよぎる。

 

「嬢ちゃん、受け取れ!!」

「は、ぃいいっ!?!?」

 

おじいさんの声が響き、あの重々しいハンマーが私へと投げられる。

受け取れって?遠藤先輩の装甲を一撃で吹っ飛ばしたあれを?

無理、と叫ぼうとして、やめる。

今は些細なものでも打開策が欲しい。弱音なんて吐いてられない。

くるくるとブーメランのように回るハンマーの柄を掴み、その勢いのまま怪人たちに叩きつける。

存外軽い。…いや、変身している影響で膂力が増しているのだろう。

悲鳴も上げずに爆発する怪人を横目に、私は視線を黒幕へと向ける。

 

「雑魚が武器を持ったくらいで、何が変わったというのだ!」

 

確かに、状況は変わらない。

おじいさんの戦闘を見た限り、このハンマーに特別な力なんてなにもない。ただ質量があるだけ。おじいさんより上手く扱えるわけでもない。これで有利になった、なんてことは決してない。

何一つ変わらない現実を突きつけ、漂う骸骨から雨霰と光線を放つ。

落ち着け。一見複雑に見えるだけで、不可避というわけじゃない。

骸骨から放たれる光線は決まって一直線。それが重なっただけ。大丈夫。避けられる。

自分に絶えず言い聞かせ、光線を潜り抜ける。

 

「なにをしてる!?

寄せ集めごとき、排除しろ!!」

「「「はっ!!!」」」

 

黒幕が叫ぶとともに、怪人たちが光線の雨の中を突っ込んでいく。

私を拘束する気なのだろう。

ハンマーを振りかぶろうにも、光線を潜り抜けるので手一杯。

パニックに陥る寸前、視界の隅にあるものを見つける。

 

「式村さん!!左前二つ!!」

「はいな!!」

 

近場にいた穴だらけの式神が、最後の足掻きとばかりに骸骨二つを叩き落とす。

これでハンマーを振りかぶれる。

狙うは、向かってくる怪人たちの腹。飛ばす先を考え、力を込める。

思い出せ。おじいさんの動き、振り方、筋肉の動きに至るまで。

あんなふうに動けたら、じゃない。憧れで終わらせるな。あんなふうに動くんだ。

 

「ぶっ…飛べ…ッ!」

 

怪人の土手っ腹に槌が食い込む。

それだけでは終わらない。地面をより強く踏み締め、思いっきり飛ばす。

怪人がぐるぐると回り、黒幕の頭上をよぎる。

狙いが何かを悟ったのだろう。黒幕が目に見えて焦りを見せ、骸骨を向かわせる。

 

「させるか!!」

「こっちのセリフだ骸骨ヤロー!!」

 

黒幕の意識が逸れると同時、先輩が投げた槍が向かう骸骨たちを貫く。

吹っ飛ばされた怪人はそのまま歴史改変装置へと突き刺さり、大爆発を引き起こした。

 

「あ、あ゛ぁぁああああっ!!??」

 

爆炎を前に、黒幕が崩れ落ちる。

動揺が伝播したのだろう、骸骨の動きも鈍い。

この隙を見逃す理由はない。先輩の投げた槍へと飛び、片手で柄を握る。

私に先輩のような放電能力などない。が、それでも下に投げることくらいはできる。

 

「はぁっ!!」

「ぐぉっ!?」

 

どっ、と胸に槍が突き刺さるも、それでも決定打にはなっていないのだろう。

黒幕は少しばかり呻いたのち、すぐさま刺さった槍を抜こうと手を添える。

ならば、やることは一つ。

 

「どッ…、せェい!!」

「ぁが、がぁああああっ!?!?」

 

槍の柄をハンマーで叩き潰し、刺さった槍先を杭のように叩き込む。

敵が胸にエネルギーを集中させているのを感じる。

この一撃がラストアタック。ここで終わらせないと、何が来るかわかったものじゃない。

 

「だ、あ、ぁあああああ゛ッ!!!」

「ぬ、ぐ、ゔ、ゔぅ…!!」

 

裂帛の雄叫びを上げ、力を込める。

命の危機を前に余裕がないのだろう。黒幕との拮抗を続ける最中、びしっ、びしっ、と人間と瓜二つだった皮が剥がれ、本来の姿らしき怪人が姿を見せる。

あと少しだ。体力も魔力も、全部出し切れ。

 

「お、わ、れぇぇぇえええええッ!!!!」

「ぐ、が、が、ぎぎゃぁあああっ!?!?」

 

亀裂が全身を駆け巡り、吹き出した爆炎が視界を埋め尽くす。

拮抗していた感触が消え、槍が地面に刺さる。

長く、短い戦いの終わりを悟ると同時、私はその場に尻餅をついた。

 

「勝っ、たぁ…」

 

先輩たちに大金星を自慢する体力は、もはや残っていなかった。

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