転生龍は人がお好き   作:テムテムLvMAX

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ちょっと説明多し


一話

「僕は神なる龍、フォロゴストと、いうよ、君は一体、誰かな?」

 

 

 知らぬ間に、と言うか瞬きより早く、と言うか……

 

 俺は何に巻き込まれたんだろうか、目の前にはビルよりも大きな目玉が浮いているし、この空間は真っ白で、俺の体には浮遊感がある。

 

 夢、ではないのか。そう思ったが意識が覚醒する感覚がないし、意識がふわふわとしたあの眠っている時の感覚もない、脈絡の無さは夢なのだが。

 

 ひとまず分かることがない、さっきの声はこの大きすぎる目玉から聞こえてきた。神なる龍……フォロゴストと、言ったか。なんとも間延びした、ゆったりと流れる川のような声だった。女性のような、男性のような、掴みどころはない声だった。

 

 

「聞こえて……いるかい?」

 

 

 また聴いてきた、そろそろ返事をするか。

 あれ? 声が出ないな、喉が……、ない? 違うな、体そのものがないぞ。手も足もないし、心臓が動いている脈動感もない

 

 

「体がなくて、喋れないのか、待ってね、今、体を、作るよ」

 

 

 大きな目玉が一瞬またたいたら急に重量感が俺を襲った、それと同時に熱も感じるようになった。ああ体が出来たのか、と、俺はどことなく他人事のように思う。

 

 

「ありがとう」

 

 

 初めに出たのは感謝の言葉だった、俺は無意識のうちに言葉にしていたようで、気がついて愛想笑いしかでなかった。

 

 

「君、人だったんだね」

 

「あぁ……うん」

 

 

 素っ気ない返事をしてしまった、この声の主はなにも気にしていないんだろうけど。それはそれとして盛り上がらない、会話が。どうやら声の主、フォロゴストも俺も会話が出来ないみたいだ。

 

 気まずいまま、時間が流れる……実際は10秒もないのに、この時ばかりは大きな目玉と真っ白な空間で見つめ合う事に無限の時間を感じた。

 

 

「あ、あー、その、俺はリヒト、タニグチ リヒトだ。よろしく……?」

 

 

 耐えきれない俺は取り敢えず名乗った、分からないのはフォロゴストの反応だ。体を作ってくれた恩人? 恩龍な訳だが、その目的や行動規範、というか目玉だけしかないのに龍を名乗る事の異質さなどなど……この空間もなんだろう、芋づる式に疑問が出てくる。

 

 

「あぁ、そう、ねぇ、人さん」

 

 

 話を聞いていたのか、覚える気がないのか、名乗ったのに“人さん”と呼ばれてしまった。もう、良いか別に、覚えてもらいたい訳じゃないし。

 

 

「人さんは、どうして、ここに、いるの?」

 

「それはこっちが聞きたいよ」

 

 

 その問いかけに答えを持っているのはそっちじゃないか、大きな目玉さん。俺の気持ちが通じたのか、もしくは興味を失ったのか、向こうから別の話が飛んできた。

 

 

「そう。人さん、ここから、出たい?」

 

「出られるなら、お願いします」

 

 

 出る、という発想が出てこなかった。ここがどういった場所かもわからないのに、俺の夢だと、思いたかったのかも知れないが。

 世に聞く“明晰夢”だという可能性が捨てきれないが、そろそろその想定を捨てなければいけないかも知れない。

 

 

「人さん、死んだんだね」

 

「……はっ?」

 

「思い、出した、よ、ここから出れる、魂、もう、死んでる。ここは魂の、終端、生きた物が、終わる、そんな、場所」

 

 

 ……そうか。

 

 

「人さん、他の人さんに、かこまれ、て、死んでる」

 

 

 家族が見送ってくれたのか、母さん、父さん、マイラブリーシスター……皆が……やっぱり俺は、そうか……事故で、死んだんだな。頭の片隅にうっすら残る記憶で、そうじゃないかと、思っていたが。本当だったか……

 

 

「なら、もう未練はない、頼むよ大きな目玉さん、ここから俺を出してくれ」

 

「フォロゴスト、だよ」

 

 

 自分は拘るのかよ……

 まぁ、こんな何も無いところにずっといるのも気が滅入る、また死んでも良い、新しい場所へ行きたい、もう元の世界での寿命を全うしたなら、未練もない。若くして死んだ不幸を呪うのか、新たな人生を祝うのか、出来るなら俺は後者でいたいんだ。余計な負い目はない方が良い

 

 

「フォロゴスト、頼めるか? 俺を、この外へ」

 

「いいよ、でも、元の人の体、耐えられない、と、思う」

 

「それはどういうことだ?」

 

「僕達、龍が、支配する、世界、名前は、ガモンヴィール、僕らの、父、大地なる龍、ガモンの、骸の、上の、世界。父、強さを、一番にして、考えた、だから、外の世界、強いものが、多い」

 

 

 相当デカい龍がいたもんだ、いや神話ではよく聞く話か? 大地になる神様は。

 なんて考えていたら大きな目玉がぎょろっと動いた、まじまじとこちらを見るように。今までこんな大きな動きをしなかったから、かなりたじろいだ。

 

 

「人さんの、世界は、歴史の、保管庫、僕らの母、スペラの世界、だから、弱くても、生きていける。賢い、人さんも、多い。だから、人さんの、言う、神話は、僕達の、物語、だから、似てる、んだよ」

 

「つまり……俺の知っている神話は、フォロゴスト達の話が元になっていると言うことか? ……ちょっとまて心を読んだか?」

 

「うん、そう」

 

 

 平然と言われてしまった、もうこの際、いちいち突っ込むのはやめよう。

 ふむ、しかし、なるほど……神話なんてありえないと思っていた俺だが、死んで初めて知る事実だ。まぁこの場所に来るには死ぬしかないのだが。

 

 

「外に出るのは無理だな、人の俺じゃ、龍の世界は厳しい」

 

「人も、いる、けど、スペラの世界、より、すごく、少ない、だから、僕が、たまに力を、貸してるよ。でも、やっぱり、増えないね」

 

 

 魔境だな……ますます人が生きにくい世界だ……

 

 

「それと、龍だけじゃない、魔神龍ディモンくん、が、作った、人を食べる、魔族なんかの、闇の種族や、僕が、作った、光の種族、も、いるよ」

 

 

 むしろ良く人間が生きていられるなその世界、食物連鎖の最下層に居ないか人間、力こそ全ての世界と思うと俺は及び腰になった。

 

 

「やっぱり辞めるか……」

 

「ここにいても、ゆっくり、溶けるよ」

 

 

 溶ける?! それも困る!! 

 だとしたら、外へ出るしかない、外へ、龍の世界へ行ってやる。溶けるのは嫌だ溶けるのは嫌だ溶けるのは嫌だ! 

 

 

「じゃあ、行く?」

 

「行くよ、うん、死なないように頑張るよ」

 

 

 俺は心の中で出来る限りの覚悟を決めた、そのへんの野良犬にだって負け世界の人間だが、溶けて死ぬより生きて食われる方が良い。死に方は自分で決めたい、1度目が選べなかったから、二度目は尚更そう思う。

 

 

「なら、人さん、龍にするね」

 

「あぁそうだな、龍だな……龍だと? 待ってくれ色々待ってくれ」

 

「どんな龍、が、良いかな、考えてね、してあげる、から」

 

「おーい! フォロゴスト! フォロゴストさーん!?」

 

「僕の、オススメ、光の龍、だよ、おそろい、だよ?」

 

「話聞いてよっ!?」

 

 

 あぁ全く話を受け付けてくれねぇ! 

 俺が一人わちゃわちゃと慌ててると大きな目玉に瞼が上から降りてきて、その目を覆った。白い滑らかな皮膚はそれだけで神々しさを思わせるものだったが、驚くのはここからだった。

 

 その瞼が遠ざかると、上に上に登っていく、見上げてもまだ足りずに、思わず後ろに走って視界を確保した。それでもまだ足りない、ひたすら、ただひたすら走る、そして見えて来たのは巨大な、龍。見上げても足りないほど大きく長い、まさに星すら小さく見える神なる白き龍がそこにいる。

 

 

「なんてデカい……あの目玉、かなり小さかったんだな、ビルぐらい大きかったけど……」

 

 

 デカい、そんな言葉しかでてこない、巨大、巨躯、ビッグ、グレート、例えるにしても月では小さく、地球では大きい、そんなサイズ感だ。

 

 

『人よ、聞こえますか』

 

「この、脳に響く声は……フォロゴストか? 随分口調が変わったな」

 

『先程の私は、いわば寝起き、忘れていただけると、幸いです』

 

 

 寝起き……目を開いたまま、寝起き……本人が忘れくれと言っているなら、忘れよう、俺だって人を、この場合龍を、過去のことで弄るのは好きじゃない。戯れるのは好きだけど。何が違うんだと言われた、微妙だが。

 

 

『心遣いに感謝します、さて、覚醒した今、役目を果たしましょう。人よ、生きづらい世界でもめげず、どうか豊かに暮らしなさい、それがあなたの生きる意味となりましょう。力こそ全て、その中で生きるため、力を磨きなさい。

 母スペラの世界の魂が、父ガモンの世界の肉体へ交わる時、神なる我、フォロゴストの息吹が宿るのです、それこそが種』

 

「種……」

 

『龍の力です。ですがそれは何もしなければ種のまま、喰らいなさい、戦いなさい、生命を謳歌するのです、そして知恵を、慈愛を、無償の愛を渡すのです、ガモンとスペラがそうした様に、さすれば人よ、あなたは好奇心のまま、あなたの人生を全う出来るでしょう』

 

 

 難しいようで簡単、簡単なようで難しい。

 生きろと言われ、人にやさしくしろとも言われ、戸惑う心はある。だけど、やって来たことじゃないか、前世でも言われていたことだ、それも最も基礎的なことだ。

 

 そうあれと思えば、そうなる。ただそれだけ。

 

 ふと自分の手が視界に入った、よく見ると薄くなってきている、指の先からキラキラとした光の粒子が上に昇っていく、なるほどそろそろ時間が来たんだな、こうまで演出されると察するに易い

 

 

「そろそろ、かな?」

 

『えぇ、あと僅かです、もう一度魂だけとなったあなたを我が喰らい、あの世界へ産み落とします』

 

「……ねぇそれって」

 

『下品な言葉はおよしなさい』

 

「申し訳ない」

 

 

 どうも真剣になりきれないのは性分なんで許してくれと言っておいた。

 あとの残り僅かな時間をフォロゴストと談笑していると、遂に体が完全に消え、最初の姿に戻った。ふわふわした魂だけの、あの感じ。

 

 巨大なフォロゴストの口に吸い込まれたと思えば、暖かな温もりの中で眠りに誘われた。ゆっくり……長い……眠りに……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして、目が覚めると。

 

 

「おいどこだよここ」

 

 

 何も無い山のてっぺんだった。

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