もし、ハジメが大迷宮に行く前にガハルドがやって来てハジメを引き抜いたら。
そんなIFのお話。ルートは1つ。
※訓練あたりまで原作と同じためカット
ステータスプレートを受け取り、訓練を開始してから早3日。メルドが用を足しに言っている間、ハジメは檜山たちにいじめられていた。そんなとき、突然大声が聞こえた。
「おい!勇者ってやつが現れたんだって!?」
ハジメたちも含めて、全員がそんな声がした方を見ると、筋骨隆々の男が立っていた。
「・・・あなたは誰ですか?」
光輝が聞くが、その質問には答えようとしない。
「そんなことどうでもいいだろ?それより勇者って誰だ?」
「俺ですが・・・」
「ほう。お前か。よし、一回俺と戦え」
「・・・なんですか急に?俺には戦う理由はないんですが・・・」
「俺にはある。俺は強いやつが好きでな、多分だが勇者ってやつが一番強いんだろ?マキザラから聞いたぜ」
「マキザラ・・・?」
「おっと、失言だったな。忘れてくれ。それより、勇者さんよ、俺と戦ってくれるか?戦えないのならお前は弱虫ってことになるぜ?」
「・・・俺が弱虫のはずがないでしょう!いいですよ、戦ってあげます。怪我しても恨まないでくださいよ?」
「へっ、そうこなくっちゃな。あと、お前が俺様に勝てるとでも思ってんのか?」
「・・・!」
正体不明からの煽りに乗っかってしまい、一瞬で距離を詰める。
バキッ!
「ガフゥッ!?」
今の状況を簡単に説明すると、距離を詰めた光輝が殴り飛ばされた。ただそれだけだ。
「勇者ってこんなものなのか?・・・ああ、そう言えばこの世界に来たばっかりだったな。弱くて当然か」
すると、メルドが戻ってきた。
「すまんすまん。用を足していてな。訓練は順調か・・・ってなぜあなたがここに!?」
「ん?・・・ああ、メルドだったか?ちょっと勇者と対決してたんだよ」
「・・・おそらくあなたが圧勝したんでしょう?」
「おお、よく分かるな」
「あなたのステータスは私を優に越してますからね」
そんな話をしているとき、ハジメが聞いた。
「あの、彼は誰なんですか?」
「ああ、説明を忘れていたな。あの方はヘルシャー帝国現皇帝、ガハルド・D・ヘルシャー様だ」
「なんでそんな偉い人がここに!?」
「あの人・・・というかヘルシャー帝国が武力至上主義の国でな。あの人もその例に漏れず戦闘狂なんだ」
「スパイとして潜り込ませていたマキザラに勇者が現れたって連絡されてな。戦ってみたくて来ちまった。・・・それより、誰かウチに来ないか?地位は確保してやるぜ?」
「普通なら断るところなのですが・・・あなたから直々に勧誘されると無下にするわけにもいきません。・・・イシュタル様や国王陛下と話し合ってみます。・・・お前ら!今日の訓練は終了だ!座学に行っとけ!」
「「「「「「「「は、はい!」」」」」」」」
「いい返事を期待しているぜ?」
「ところで陛下、今日は・・・」
「ここに泊まってく。ベスタに来ることは伝えてある」
翌日。
「これはこれはガハルド陛下。本日はお日柄もよく・・・」
「堅苦しいのは嫌いだ。さっさと要件を言え」
「・・・はぁ。結論としては、そこにいる南雲ハジメなら良いとのことです。彼は錬成師でして戦闘には役立ちそうもないですから」
「錬成師か・・・ん?・・・・・・・・・・・・わかった。こいつもらってくぜ」
「・・・良いのですかな?戦闘には使えませんぞ?」
「そんなこと言ってるお前らの目は節穴だってことだ。じゃあな」
ハジメの意思など入る余地もなく、右脇に抱えられて連れてかれた。
「さて、ようこそ。俺の国へ」
「状況を説明してください」
「なんだ?聞いてなかったのか?俺が誰か欲しいって言った。あのジジイがお前なら良いと言った。だからお前を連れてきた。それだけだぞ?」
「展開が早すぎるんです!」
「あーあーうるさい。とりあえず、お前は何ができるんだ?」
「僕の話聞いてくれない・・・錬成だけですよ。あの人にも言われた通り僕は無能なんです」
「錬成か・・・それと、あんまり自分のことを無能って蔑むもんじゃねえぞ?」
「え?」
「隠れた能力とかあっても自分が自分を蔑んでいたらそれに気付けない。自分が努力しろって言われても蔑んでるからやる気が出ない。出世もできない。その結果落ちこぼれちまう。俺の持論だ。・・・お前はお前が思ってるより無能じゃねえはずだ。努力して、俺の役に立て」
「・・・!」
「おいおい、泣くんじゃねぇよ」
「・・・はい。・・・ガハルド陛下。これからよろしくお願いします」
「かしこまったりすんなよ。・・・なんか欲しいものとかあるか?」
「欲しいもの、ですか・・・でしたら、金属をください」
「わかった。・・・メーラ!倉庫からいくつか金属とってこい!」
「はい!」
ガハルドは近くにいた幹部みたいな人に呼びかけた。
「あいつらや俺とは長い付き合いになるかもしれねぇからな。名前とか覚えてくれよ?」
「頑張ります」
「ああ、そうだ。おまえ、これから毎日錬成しまくれ」
「・・・?なぜですか?」
「派生技能とか芽生える可能性があるからだよ。錬成師なら『鑑定』とかだな」
「ここがお前が寝泊まりする宿だ。金は俺が出してるから心配すんな」
「至れり尽くせりですね。・・・ありがとうございます」
「俺はお前に期待してるからな」
「そうですか。・・・そう言えば、僕を選んだ理由ってなんだったんですか?」
「ん?・・・ああ、あの中じゃ勇者とかなんかよりもお前が一番でかいことをしでかしそうだったから、だな。いってみれば、ただの勘だ」
「そうですか。・・・あと、外にいた首輪をつけていた人達は・・・」
「奴隷だ。・・・止めてくれるなよ?ウチはそうやって発展したんだ」
「他所様の国に口出しするつもりはありませんよ。・・・もしかしたら、労働力なら確保できそうですけどね」
「ほう。期待してるぜ」
「陛下!これぐらいあればよいでしょうか?」
「メーラか。ハジメ、これぐらいあればいいか?」
「試作品には十分です」
「そうか。・・・何作るつもりだ?」
「僕の国にあった現代兵器。銃です」
「ジュウ?」
「あー、説明が難しいので実物を作って説明しますね」
トンテンカン。グニグニグニョン。おまけにグニグニ。
「これが銃です」
「結構小さいな。軽い・・・こんなのが兵器なのか?」
「威力は保証しますよ。・・・危険ですので誰もいないところに撃ってください」
「・・・どうやって使うんだ?」
「えーっと、この弾を入れて、この穴を敵の方に向けて、ここのレバーを引くと」
パァン!
「・・・いまなにか出たのか?」
「目に見えないほど速いんです。・・・ここの壁に埋まってますね」
「あんな一瞬でここまで飛んだのか!?これがあったら戦争の勢力図がガラッと変わるぞ!?」
「それぐらい強い兵器なんです。量産可能ですしね」
「ふむ・・・メーラ、ちょっとこれ使って3体ぐらい魔物狩ってこい。ああ、ハジメ、弾くれるか?」
「はい」
宿で駄弁っているとメーラが帰ってきた。
「陛下!この武器おかしいです!」
「何かあったか?」
「威力です!音がなったらその瞬間死んでるんですよ!?しかも一撃です!額を狙いましたがそれでも異常です!」
「一撃・・・? おい、ハジメ。もう少し仕組みを詳しく教えてもらおうか?」
「・・・で、発射するときに回転がかかって貫通力が向上する仕組みです」
「なるほどな・・・お前らの元いた世界ってなんだったんだ?こんなの普通思いつかねえだろ」
「僕たちがいた世界には魔法はなかったですから・・・その分兵器や戦略が発達した感じですかね」
「ああ、そう言えばお前の世界には魔法なんてなかったんだったな。・・・なあ、1つ思ったこと聞いていいか?」
「はい。なんですか?」
「この銃・・・威力は低い方か?」
「はい」
「やっぱりか・・・そうだと思ったんだよ。兵器が発達したんだったらその分防具も強くなるはずなんだからな。思ったんだが、この国の鎧だったらこの銃ではおそらく貫通できない。・・・メーラが着ている鎧がこの国では上位のものなんだが、この鎧を貫通できるものってあるか?」
「おそらく作れます。『マグナム』って銃がありますので」
「そうか・・・量産は可能か?」
「できなくはないですが、威力完全特化の銃なので射程はそんなにありません。殲滅力の観点で見たら最初の銃のほうが高いです」
「そうか。・・・そう言えば、さっき労働力がなんとかって言ってたよな?それはどうなんだ?」
「材料があればおそらく作れますね。金属とゴム、そして魔石があれば」
「・・・ゴム?」
「あれ?ないんですか?えーっと、こんな感じで引っ張ったりしたら伸びる、弾力のある素材なんですが・・・」
「ああ、グライオスライムの外膜みたいなもんか」
「そんな名前なんですね」
「ああ。魔力量で弾力が変わるからいろいろ試してみてくれや」
「これでできるか?」
ガハルドはメーラに頼んで持ってきてもらっていた。
「たぶん。ま、一回やってみます。ちょっと時間がかかるかもしれないので明日見せますね」
「おう。なら明日の昼ぐらいにここ来るわ」
「よーっす。来たぞー」
「そう言えば公務とか大丈夫なんですか?皇帝ですよね・・・?」
「安心しろ。ベスタに丸投げして逃げてきた。なんか叫ばれた気がするが気にしない」
「それは安心とは言いません。逃避と言うんです。あと気にしてあげてください」
「細かいことは置いといて、それでできたのか?」
「細かくないです・・・まあできましたよ。」
「あれか?広場においてあるやつ。結構でかいな」
「あれは簡易版ですが、僕の世界では『トラック』と言われていた道具ですね」
「ほー。使い方は?」
「僕じゃうまく説明できないので昨日のうちに宿の人に使い方を習得してもらったんですよね。ラギさーん。お願いしまーす」
「おーけー」
そうハジメが呼びかけると、ラギと呼ばれた男性が荷物を荷台に乗せ、中に乗り込んで動かした。
ブロロロロロロロロロロロロ
「と、あれだけの荷物を乗せても移動可能なものですね」
「ほう。なかなか良いじゃないか。だが馬車で良い気もするが」
「作り方は覚えたので30分あれば同じものなら作れますよ。そしてあれは運搬も1つの利用方法ですがもう1つおまけを付けときました」
「おまけ?」
「ここは人が多いのでちょっと外で行います。荷台に乗り込んでください」
ブロロロロロロロ
「よし、ここぐらいでいいかな。ラギさーん。レバーをAに移動させてください」
「おーけー」
すると、天井上から砲台がでてきた。
「ハジメ、ボタンは押すか?」
「もちろんです。お願いします」
カチッ
ドガァアアアアアン
目の前には小さな丘があったのだが、6割方吹き飛んでしまっている。
「・・・訂正する。これは馬車よりも圧倒的に良い」
「それは良かったです。なら戻りますか」
ブロロロロロロロ
「そう言えばハジメよ。これさっき簡易版って言ってたが完成版はどんな感じなんだ?」
「用途を特化させたものですかね。運搬用と移動・戦闘用で2種類ありますが」
「あれ見たら俺も欲しくなった。戦闘用のを俺に作れ」
「金属と魔石と外膜ください」
「わかった。・・・そう言えば外膜はどこに使ったんだ?」
「ラーギさんが座っているところと下で回転しているものです」
「あれか。黒いのはなにか理由があるのか?」
「特にないですね。自分の世界ではあそこが黒かったので真似ただけです」
2週間後。
ハジメは城に来ていた。
「そこのお前、止まれ!名前と要件は?」
「南雲ハジメです。ガハルド皇帝に伝えたいことがありまして」
「ああ、あなたがハジメ様ですか。ガハルド様からはハジメ様が来たら部屋まで通せと言われております。こちらへどうぞ」
「よお、ハジメ!」
「お久しぶりです。・・・書類多いですね」
「あのあと帰ったらベスタに捕まって仕事付けにされた」
「やっぱりですか・・・まあ、それは一旦置いときましょう。完成しましたよ」
「お!トラックできたか!よし、どこだ?」
「あの広場に置いてあります。というか、仕事・・・」
「逃げる」
あのあと、「ガハルド様!?仕事残っていますよね!?ハジメ様も止めてください!」「ごめんなさい!無理です!追いつけません!」逃げたガハルドをベスタが見つけたが逃げ切られていた。
「よし、これか?前回のトラックよりかなり大きいな!」
「ハア、ハア・・・怒られますよ・・・?」
「ん?お前も共犯だろ?」
「違いますよ!・・・はあ。まあ、これがガハルド皇帝専用の車ですね」
「ほう。・・・ん?『車』?」
「『トラック』は荷物を運ぶ用の車なんです。でもこれは荷物を運ぶ用ではないのでトラックではないんですよね」
「そうなのか。・・・で、使い方は?」
「簡易版のトラックとほとんど同じなのでラギさんに教えてもらってください。いまトラックや銃が話題になりすぎてて仕事量めっちゃ多いんです」
「ああそうか。・・・そう言えば派生技能は出たか?」
「ああ、出ましたよ。『鉱物系鑑定』『遠隔鑑定』『武具鑑定』の3つですね」
「そうか。良かったな」
『これ使って自慢しに行くか』
「また来たぜ」
翌日、ガハルドは王国を訪ねていた。
「ガハルド様・・・連絡していただけるとありがたいのですが・・・今日はなんの御用で?」
「ただの自慢だ」
「自慢・・・?」
首を傾げていると、光輝たちがやって来て叫んだ。
「メルドさん、あの車は・・・ってガハルド皇帝!?なんでまた?」
「おう、勇者か」
「お久しぶりです。・・・あの車はなんですか?」
「お前らが無能って言ってたハジメに作ってもらったんだよ。・・・ああ、これ見たら無能はお前らの方か。フッ」
思いっきり嘲笑した。ハジメより無能と言われるのは特定の人間にとってこれ以上ない侮辱である。言わなくてもわかるだろうが、光輝とチンピラーズだ。
「あのオタクより俺が無能だと!?ありえねえ!」
「ん?・・・誰だお前?・・・ああ、思い出した。俺が最初来たときハジメを殴ってたやつの1人か」
「は・・・?で、デタラメ言ってんじゃねぇ!証拠でもあんのか!」
「そうです。流石に皇帝とはいっても言って良いことと悪いことがありますよ。・・・檜山たちはハジメに特訓をつけていたんです」
「へえ。この国では・・・いや、お前らの世界では人に火を付けて燃えているのを見て笑う。そこを見てなかった人間は別として、近くのやつもそれを助けようとしない。これが特訓なんだな」
「ぐっ・・・」
「なあ、メルドよ。こいつ本当に勇者なのか?善悪の区別もついてないぞ?」
「ステータスでは勇者とありましたので・・・」
「へぇ・・・ああ、そうだった。イシュタルのジジイに言っといてくれや。『アンタが無能と言って捨てた人間は俺の国で勇者扱いされてる』ってさ」
「バカな!勇者は俺ですよ!?」
「少なくとも俺からしたらハジメの方が勇者だよ。・・・銃なんてすげえ便利なモンもくれたしな」
「え?銃?あの人銃って言った?」
「いや、聞き間違いだろ」
「でも、あいつって元の世界では・・・」
「ああ、銃が何かわからねぇヤツもいんのか?これだ」
それは、メルドや周りの騎士以外全員が想像していたものと遜色ないものだった。
「う・・・嘘だ!どうせ外観だけなんだろ!?」
「まだ信じられねえのか?なら自分でくらってみろよ。ほら」
ダァン!
「ギャァアアアア!?痛ってぇえええええ!脚がぁああああ!俺の脚がぁあああ!」
「おっと、これはマグナムの方だったか?・・・でもこれで本物だってわかっただろ」
突っかかったのは檜山だったが、ガハルドに撃たれた。自分の身を持って本物だと証明してくれたのだ。ありがとう。君の勇姿は忘れない。
「じゃ、俺は帰るわ。ジジイに言っとけよ?」
「で、いつの間に乗り込んだんだ?嬢ちゃんよ」
「あれ?バレちゃってました?」
「今さっきな。髪が見えた」
いつの間にか香織がガハルドの車に乗り込んでいた。
「なんで来た?」
「ハジメくんに会いたいからですけど?」
「そうか。・・・正妻は俺の娘にするつもりだからな?」
「ふぇ!?せ、正妻!?・・・そ、それを決めるのはハジメくんですから!負けません!」
「ククク。せいぜい頑張れよ?」
ガハルドとハジメの性格結構変わってしまったかな・・・?