ありふれたかもしれないIFの世界   作:uruka

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奈落の底 IF ルート2

もし、奈落に落ちたのがハジメだけではなかったら。また、ハジメではなかったら。

そんなIFのお話。ルートは3つ。

※落ちるところまでは原作と似た進みのためカット

 

 

ルート2 檜山大介

 

 

メルドが魔法発動の合図をして、クラスメイトの魔法がベヒモスに向かっていった。

 

ただ一つを除いて。

 

その魔法、火球はハジメの方に方向を変えた。

 

着弾し、衝撃をもろに食らう。

 

なんとか踏ん張り皆の下へ行こうとしたが、三半規管が潰され、足取りもフラフラとしている。

 

更に悪意が牙を向く。

 

生きていたベヒモスが殺意をハジメに向けた。

 

逃げようとするハジメに赤熱化した角を向け、突進してくる。

 

残された数少ない力を振り絞り、必死にその場を離れた。

 

刹那、異常とも言える衝撃が周りに広がる。

 

その衝撃によって、下からヒビの入っていた橋が更に割れていく。

 

そして、崩壊が始まった。

 

崩壊し始めた橋では重いベヒモスの体を支えられない。

 

グアアアと悲鳴を上げながら落ちていく。

 

断末魔が反響する。

 

ハジメもなんとか逃げようとするが、崩壊のほうが早い。

 

手を伸ばすが、届かない。

 

身体が浮遊感に襲われる。

 

そのまま、奈落へ落ちていった。

 

それを見たクラスメイトたちは悲壮に暮れる。ただし、一人を除いて。

 

『ヒヒヒ、邪魔なあいつが落ちた。落とせた。俺は何も悪くない・・・ヒヒヒ』

 

檜山大介はハジメを落とせたことを喜んでいる。

 

そう。ハジメにあの火球を撃ったのは檜山だったのだ。

 

そんなことを考えていると、光輝の方から声がする。

 

「皆、まずは生き残ることだけ考えるんだ!撤退するぞ!」

 

その言葉に、クラスメイト達はゆっくりと動き出す。トラウムソルジャーの魔法陣は未だ健在だ。続々とその数を増やしている。今の精神状態で戦うことは無謀であるし、戦う必要もない。

 

光輝は必死に声を張り上げ、クラスメイト達に脱出を促した。メルド団長や騎士団員達も生徒達を鼓舞する。

 

だが、目の前に狐の魔物が現れる。こんな精神状態でここの魔物に勝つことは困難だ。

 

生徒たちは動けないだろうと思い、メルドが狐に攻撃する。だが、硬い毛皮に阻まれてほとんど攻撃が通らない。

 

今のクラスメイトや騎士たちは知らないことだが、この狐はただ非常に毛皮が硬いだけであり、この階層の魔物に比べてスピードも遅く、攻撃力も低い。

 

だが、固有魔法を持っていた。風弾を打ち出す魔法だ。ただし、そんなに早くない。見てからでもある程度は避けられる速さだ。

 

今の精神状態でも避けられる。だが、檜山は違った。

 

『俺は悪くない、あいつが白崎に近づくから・・・ヒヒ・・・』

 

未だに自己弁護を続けていた檜山。そのため風弾に気が付かない。

 

自己弁護のせいでメルドたちの避けろという声にも反応しない。

 

檜山がようやく風弾に気づいたのは身体に当たってからだった。

 

弾速が遅い。だからといって威力が低いわけではない。弾速を犠牲にしているせいか、むしろ異常なほどに高かった。

 

風圧で橋のところまで吹き飛ばされる。踏ん張ることもできず、自分が落とした無能のように、自分も奈落に落とされた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『あ・・・?』

 

川で目を覚ました檜山。なぜこんなところにいるのか思い返してみたところ、何かわからないものが飛んできて自分が吹き飛ばされ、落とされたのだということを思い出す。

 

『だれだ俺に向かって撃ったやつは・・・わかったらぶっ殺してやる・・・』

 

誰かもわからないクラスメイトにヘイトを向ける檜山。魔物が撃ったのだということにはなっていなかった。

 

周りを見ていると、ハジメも流されていた。それを見て、殺せたんだと内心喜ぶ。

 

『よし・・・これで白崎に近づくこいつを消せた・・・ヒヒヒ・・・白崎は俺のものだ・・・』

 

そんなことを思いながらも、脱出しようとその場を離れる。

 

上に行くための階段を探そうと、歩き続ける。

 

濡れた服で歩いているため、くしゃみが出る。だが、低体温症という考えには至らず、そのまま歩き続けていた。

 

洞窟を歩き続ける檜山。この後にハジメもするように身を隠しながら進む。

 

周りには凶悪そうな魔物が多くいたが、幸運にも見つかりはしなかった。

 

そして、分かれ道にたどり着く。ハジメが腕を喰われるあの道だ。

 

檜山はただの勘で左を選んだ。

 

その先に見たのは小さな、30cmほどの魔物。尾が鎌になっている栗鼠だ。

 

見た目はかなり弱そうだ。これなら自分も殺せると思い、剣を構える。

 

だが、どう考えても悪手だった。ここには凶悪そうな魔物がウヨウヨいる。そんなところに生息している魔物が弱いわけがない。

 

剣を構えた瞬間、ほんの少しだけ栗鼠の尾が動く。

 

その時、檜山の両手首と剣が落ちる。

 

「は・・・・・・・・・・・・・・・・?」

 

ダクダクと血が溢れ出る腕を見て、状況を嫌にでも理解させられる。

 

あの魔物に腕を切られた。

 

「あ、ぁあああああああああああああっっっっっ!?う、腕が!?俺の腕がああああああっ!?」

 

パニックになり、その場から慌てて逃げ出そうとする。

 

だが、逃げようとする獲物を捕食者が逃がすわけがない。

 

右足首が切断される。そのまま地面に倒れ込む。

 

地面に這いつくばってでも逃げようとするが、逃げられない。栗鼠はこっちにゆっくりと歩いてきていたが、途中で止まった。

 

なぜ?そう思い、首だけ後ろに向ける。そして、その理由がわかる。

 

栗鼠の背後から体躯が4メートル以上もあるであろう巨大な虎が現れていた。

 

虎の体色は黒と灰色。口元には長く鋭い牙が見え、尾は3本あった。

 

その虎はこの階層に置ける熊と双璧をなす絶対的強者。

 

栗鼠は生き延びることを諦め、その場に止まっていたのだ。

 

そして、そのまま一口で喰われる。

 

肉が噛みちぎられるぐちゃっ、ぐちゃっとした音に加え、骨が砕かれるベキ、バキ、とした音も混ざっていた。

 

それは檜山にとっての絶望が体現した姿だった。

 

『なんでだ・・・?どこで間違えた・・・・?ようやく白崎を俺のものにできると思ったのに・・・・・・・・・・・・こんなところで・・・喰われて・・・?』

 

ハジメを落としたことに関しては完全に間違ったことだったが、それ以外は何も間違えてなどいなかった。

 

迷宮の理不尽にたった一人、巻き込まれてしまっただけだ。

 

現状に絶望していると虎がこっちに歩いてきた。そして、なぜか檜山の眼前に立つ。

 

虎は一回、グルルと唸っただけだった。ただ、どう見ても威圧のような迫力はなかった。

 

まるで、人間が相手を嘲笑するときに使うようなものが含まれているようだった。

 

檜山は絶望していて何も考えられないが、虎はこの情けない生物を嘲笑っていた。

 

そして、あんな小さな食料でこの巨体の空腹が収まるはずがない。

 

腹が減っている捕食者は目の前の生物の頭を喰いちぎったのだった。

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