ありふれたかもしれないIFの世界   作:uruka

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キダイさんからのリクエスト・・・なのですが、リクエストとは少し違ったものになってしまいました。

3人で結婚する、そして自分のことだと勘違いした哀れな光輝、という部分を入れることができませんでした。

まあ、一応は完成したのでどうぞ。


幼馴染のIF

もし、ハジメ、雫、香織が光輝に合う前からの幼馴染だったら。

そんなIFのお話。ルートは1つ。

 

 

 

ある夏休みが開けた日のこと。香織と雫が通っている小学校に一人の少年が転校してきた。

 

「な、南雲ハジメです。よ、よろしく、おねがいします」

 

見た目は地味な感じの少年だ。背が特段高いわけでもない。

 

「よし、じゃあ、南雲くん。席は・・・八重樫さんの隣に座ってもらおうか。八重樫さん、南雲くんに教科書を見せてあげてくれ」

 

「あ、はい」

 

「わかりました」

 

 

 

「よろしくね」

 

「あ、うん。よろしく」

 

 

 

ハジメは活発な少年ではなく、むしろ室内で小説や漫画を読んでいることが好きな落ち着いたタイプの少年だ。

 

そのため、初日の昼休みから図書室に行っているところを何人かは見ていた。

 

クラスメイトに『どこから来たの』とか『親の仕事は』とかを聞かれたくなくて逃げてきた、というのがハジメの本音だが。

 

そして中に入ると、1人の少女が本を読んでいた。ドアの音に反応したのか、ハジメの方に目を向ける。

 

「・・・だれ?」

 

長い黒髪の可愛い女の子だ。ハジメは目を引かれる。

 

「あ、はじめまして、だと思う。今日からてんこうしてきた南雲ハジメです」

 

「あ、新しい子なんだね。私は白崎香織。これからよろしくね」

 

「うん。よろしく。・・・さっそくなんだけど、何かおすすめの本とかってあるかな」

 

「・・・そうだね・・・これとかわたしはすきだな。文字が大きくてよみやすいの」

 

「あ、そうなんだ。じゃあよんでみようかな」

 

 

 

 

 

おすすめされた本を読んでいると、聞いたことのある声が聞こえてきた。

 

「ハジメくん、いるかしら・・・って香織じゃない。ここにいたのね」

 

目を向けると、隣の席にいた雫がドアのところに立っていた。

 

「あ、雫ちゃん。どうしたの?ここに来るなんてめずらしいね」

 

「いや、ハジメくんをさがしてたのよ。みんながしつもんしたいこととかあるのに、いつのまにかいなくなってたんだから」

 

「・・・え?2人は友だちなの?」

 

「ええ、そうよ。ようちえんのときからいっしょなの」

 

「ハジメくんは雫ちゃんのこと知ってるの?」

 

「わたしのクラスに来たのよ」

 

「あ、そうだったんだね。・・・でも、なんでここに来てるの?」

 

「・・・いや、ちょっと・・・たくさんの人に話しかけられるのがにがてで」

 

「あ、そうだったのね。・・・なら、クラスのみんなに言っておくわね」

 

「うん、そうしてくれるとうれしいな」

 

 

 

 

 

 

そしてハジメ、雫、香織は図書室などで一緒にいることが多くなった。

 

放課後にそれぞれの家で遊んだりすることもよくあった。

 

 

 

南雲家の反応

 

「ただいまー。お母さーん、今日家で友だちとあそんでもいい?」

 

「おかえり。別に大丈夫よ。どんな子が来るのかしら?」

 

「えーと、香織ちゃんと雫ちゃん」

 

「・・・確か図書室で一緒にいる子達だったかしら?良いわよ。でもお母さんとお父さんの部屋には入らないでね。入ったら怒るわよ」

 

「はーい」

 

 

 

白崎家の反応

 

「ただいまー」

 

「おかえりぃ!マイエンジェルゥ!学校はどうだった?」

 

「あ、今日はお父さんお休みの日だったんだ。楽しかったよ。今日、お友だち家に呼んであそんでもいい?」

 

「もちろん良いさ!誰が来るんだい?雫ちゃんかな?」

 

「うん。雫ちゃんも来るよ。あと、新しくお友だちになったハジメくん」

 

「・・・香織?もしかしてその『ハジメくん』って言う子は男の子だったり・・・?」

 

「え、そうだよ」

 

「ノォオオオゥ!香織が、マイエンジェルが男の毒牙にかかってしまうぅ!か、香織?そのハジメくんとは遊ばないことってできるかな?」

 

「え、できないよ。だってわたしの大切なお友だちだもん」

 

「そんなぁあああ!かお―カフッ」

 

急に智一の身体が崩れ落ちた。その背後には母の薫子がものすごい笑顔で立っていた。

 

「香織、おかえりなさい。お父さんはお母さんが預かっておくからお友だちを家に呼んでもいいわよ」

 

「わかった。お母さん、ありがとう」

 

 

 

八重樫家の反応

 

「ただいま、お父さん。今日、友だちと家であそんでもいい?」

 

「おお、おかえり、雫。遊ぶってことは香織ちゃんかな?」

 

「うん。それとハジメくん」

 

「・・・この前新しく転校してきた子だったかい?」

 

「うん。今日あそぼうよって話になって」

 

「・・・良いぞ。今日は稽古も休みの日だし、道場に入ることも許可しよう」

 

「ホント!?ありがとう!お父さん!」

 

『・・・『ハジメくん』がどんな子か見極めるとするかね。もし良さそうな子なら婿に・・・』

 

 

 

 

 

といった三者三様の反応だった。初めて香織の家に行ったとき、智一がハジメの方を恨みのこもったような目で凝視していたり、雫の家に行ったときは毎回のように虎一と鷲三がハジメのことを見定めるような視線を向けたりしている。

 

まあ、おそらくは気のせいだろう。小学1年生にそんな視線を向ける大人など変人くらいしかいないのだから。

 

※3人とも変人という可能性大

 

 

 

 

 

 

そうして家や外で遊んだりしている間に、いつの間にか4年生まで成長していた。時が過ぎるのは早いなぁ。

 

その頃にはもうハジメも学校に馴染んでいて、香織や雫と一緒にいるのも平常運転の一つになっていた。

 

 

 

そして3年生の夏休み。いつものように香織の家で遊んでいた3人。その日、偶然にもハプニングが起きた。

 

「・・・あ、飲み物なくなっちゃった。ちょっと取ってくるね・・・キャッ!?」

 

ベッドから降りようとしたのだが、足元にあったクッションで足が滑ってしまい、なんとか体勢を立て直そうとする。だが、流石に難しかった。背後に倒れることだけは避けられたのだが、逆に前に倒れてしまう。そして前にはハジメが座っており、香織を受け止めようと手を伸ばしている。ハジメは香織をなんとか受け止められたは受け止められたのだが、衝撃を相殺することはできなかった。そのため2人でそのまま倒れる。

 

身体に衝撃がかかるが、それよりもハジメと香織の状況だ。

 

どんな体制かというと、ハジメと香織が抱き合ったまま床に倒れている。ハジメは下で香織が上だ。そして2人の顔がぶつかっている。見方によっては香織がハジメを押し倒したようにも見える。

 

予想がついているだろうが、事故チューしていたのだ。

 

「「―――!!!??」」

 

「か、香織!?ハジメ!?大丈夫!?」

 

そう声をかけられた瞬間、香織は跳ね起きる。

 

「わたし、の、飲み物取ってくる!」

 

そう言って焦ったように部屋から出ていく。

 

「「・・・・・・・・・」」

 

部屋が静寂に包まれる。その静寂を破ったのは雫だった。

 

「・・・ねえ、ハジメ?・・・さっき、香織と・・・その・・・チュー、してた、わよね」

 

「い、いや、ちょ、あ、あれは事故だよ」

 

「・・・私からしたら、香織がうらやましいのよ」

 

「・・・へ?」

 

ハジメは呆けたような声をだした。その直後、雫がハジメを押し倒し、そのままキスをする。

 

「んー!?むー!!」

 

口を塞がれているせいでハジメは声を出せない。

 

そして。

 

「の、飲み物、とってき・・・な、何してるの!?」

 

その視界に入ったものは雫がハジメを押し倒してキスしている光景だった。

 

持っている飲み物をこぼさないように置いてから2人に近寄り、引き剥がす。

 

「し、雫ちゃん!何してるの!」

 

その言葉に、雫は目に涙を浮かべて返答する。

 

「だ、だって・・・ハジメが香織に取られちゃうかと思ったの!」

 

「・・・え?」

 

「いつも優しくて!困ってたら助けてくれて!いつの間にか好きになってたの!だからハジメを香織に取られたくなかったの!」

 

その言葉にほだされたのか、香織も言い返す。

 

「わ。私だって!ハジメくんのこと大好きだもん!話しかけてくる人が少なくて!1人で本を読んでたら話しかけに来てくれて!いつも私を助けてくれてた!私だってハジメくんのことが好きだよ!」

 

息を整え、ハジメに向かって叫ぶ。

 

「「ねえ、ハジメ(くん)は、どっちが好き!?」」

 

そんなことを言われたハジメ。内心はかなり混乱している。

 

なにせ、この2人は学校でも有名な美少女なのだ。そしてハジメも2人のことは好き。そんな2人が泣きながら自分に同時に告白してきた。どんなシチュエーションだよ。

 

そして混乱しまくったハジメは何をトチ狂ったのか、2人を抱きしめた。

 

そして、まずは雫に、そして香織に、また雫にと交互にキスをしていった。

 

何回もしているうちに香織と雫は落ち着いたのか(落ち着いてない)、ハジメが来る前に自分からキスしに行くようになった。

 

そしていつの間にか3人同時にキスする光景が出来上がっていた。

 

 

 

 

 

 

 

そして15分後。

 

「暴走してしまいすみませんでした・・・」

 

「いや、も、元を言えば私が転んじゃったのが原因だし・・・///」

 

「私もその後に押し倒しちゃったし・・・///」

 

唇の柔らかさを思い出しながら謝罪する。

 

「・・・ねえ、結局ハジメくんは私と雫ちゃん、どっちが好きなの?」

 

「え!?え、えーっと」

 

そう言い詰まるハジメを香織と雫は凝視している。

 

「・・・僕にはどっちが好きとか決められない。どっちも大好きなんだ」

 

「・・・やっぱり、そう言うよね」

 

「ハジメなら、私たちのどっちかを上に見るなんてことしないからね」

 

「3人でハジメくんのお家でゲームするとき、絶対にハジメくんは1人が余るようなゲームだったり、1人しかできないようなゲームは選ばないよね」

 

「いっしょにだがしやさんに行くときも、3人で分けられるようなものばっかり買ってたわよね」

 

それは、ハジメからしたら何の変哲もない、当たり前のことだったのかもしれない。だが、香織と雫はその当たり前のことを内心とても喜んでいた。

 

その他にも、雫や香織が言っていたように、ハジメは色々と雫や香織を助けていた。1人でいたときにはハジメの方から話しかけに行っていた。

 

別に香織と雫が特別なわけではなく、クラスメイト全員に対しても同じような行動を取っている。そんなハジメに対して好意を抱くのは普通のことだろう。

 

「・・・ねえ、ハジメくん。私たちのどっちが好きとか決めてくれなくてもいい。・・・3人で、付き合ってくれないかな」

 

その言葉にハジメはもちろん、雫も目を見開く。

 

「ちょ、ちょっと香織!?さ、3人で!?」

 

「・・・だって、雫ちゃんも気づいてるでしょ?ハジメくん、学校で人気だよ。私たちのほうがハジメくんに近いのに、取られたくないじゃん。・・・雫ちゃんは、ハジメくんが他のだれかに取られてもいいの?」

 

「・・・いやよ。絶対ハジメは他の人になんか渡さない。渡してたまるもんですか」

 

「でしょ。・・・だったら、私たちのものにしておいたほうが良いよね」

 

「・・・そうね」

 

「・・・僕としては、どっちか1人を選んでっていうのはいやだ。それだったら3人で付き合うのに賛成」

 

「・・・なら、決定ね」

 

「・・・一応、付き合ってることはナイショにしておこうか」

 

「そうだね。3人でって聞かれるとどうなるかわからないし・・・」

 

と、まあこんな事があり、3人の関係性は友達じゃなくなった。

 

 

 

 

 

 

そして1年後の夏休み明けの日。1人の転校生がやってきた。

 

名前を『天之河光輝』という、イケメンな少年だ。

 

クラスにいた女子はひと目で目を奪われていた。

 

もちろん香織と雫は彼氏がいるため目を奪われてなどいない。

 

 

 

その光輝だが、中学校に入ってからなぜかやたらと雫と香織に話しかけるようになった。

 

そして、クラスのアイドルが(美少女とはいえ)たった2人だけに執拗に話しかけているのは嫉妬される。

 

そのため、クラスの女子に香織のノートが汚されたり、雫のペンや消しゴムが取られたりといった嫌がらせを受けるようになった。

 

ハジメに相談してみると、光輝にやめてと言ってみたらと言われた。

 

しかし、光輝に話しかけるのをやめてほしいと頼んでも、光輝は一切聞く耳を持たず話しかけてくる。

 

もちろん嫌がらせはヒートアップしていた。

 

そのことを聞いたハジメだが、強硬手段に出た。

 

まず、学校にビデオカメラを持ってくる。そのビデオカメラがカバンのチャックから少しだけ見えるように入れてロッカーにしまう。カメラの向きは雫と香織の机が両方映る位置だ。

 

そしてそのまま3日ほど撮り続けた。

 

そして3日後、家でカメラを取り出して確認してみる。微妙にチャックが邪魔だったが、クラスの女子が何人かで香織のノートを切り刻んでいる様子と、雫のカバンから筆箱を取り出して勝手にペンを盗んでいる映像がなんとか映っていた。

 

その映像を手に、両親に相談する。ついでに白崎家と八重樫家もだ。

 

そして運が良かったのかはわからないが、八重樫道場の門下生の1人の父が教育委員会の人間らしく、動画を預かってくれた。

 

そしてハジメたちが通っている中学校に行き、否定しようとする担任や女子生徒にハジメが撮った動画を突きつける。

 

盗撮だ何だと喚かれたが、そこは威圧して黙らせる。

 

結果、女子生徒たちは学校中に噂が広まり、他の生徒たちから白い目で見られるようになった。

 

担任はいつの間にか消えていた。(八重樫家が回収した)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そしてあっという間に2年半が過ぎていった。3人はなんとか全員同じ高校に受かることができた。なぜか光輝も受かっていたようだが。

 

そしてある日のこと。

 

いつものように遅くにクラスにハジメは入る。

 

「よぉ、キモオタ! また、徹夜でゲームか? どうせエロゲでもしてたんだろ?」

 

「うわっ、キモ~。エロゲで徹夜とかマジキモイじゃん~」

 

いつものように檜山や近藤といったチンピラーズが話しかけてくる。

 

理由としては、学校の2大女神である香織と雫がいつもハジメに話しかけているからだ。

 

まあ、醜い嫉妬ということだ。

 

そんな檜山達を無視して、香織と雫が話しかける。

 

「ハジメくん、おはよう! 今日もギリギリだね。またいつもの?」

 

「ハジメ、おはよう。毎日大変ね。うるさいでしょう?」

 

『またいつもの』とは愁の手伝いのことだ。開発がギリギリになっていたりすると、ハジメも一部手伝うことがあったりするのだ。昨日は香織の言う通り、手伝いだった。ちょっと寝不足だ。

 

 

「香織、また彼の世話を焼いているのか? 全く、本当に香織は優しいな」

 

「全くだぜ、そんなやる気ないヤツにゃあ何を言っても無駄と思うけどなぁ」

 

そんなふうに話しかけてきたのはクラスメイトの光輝と龍太郎だ。

 

「ああ、おはよう。・・・自業自得っちゃ自業自得だから仕方ないよ」

 

「それが分かっているなら直すべきじゃないか? いつまでも香織と雫の優しさに甘えるのはどうかと思うよ。香織や雫だって君に構ってばかりはいられないんだから」

 

「別に甘えてはいないよ。2人が話しかけに来てくれるだけさ」

 

光輝がハジメに忠告する。光輝の目にはハジメは2人の厚意を無下にする不真面目な生徒として映っているようだ。

 

「というか、2人とも南雲なんかに構わないで俺達と一緒に話さないか?」

 

「え?なんで?私ハジメくんと話したいから話してるんだけど。というか光輝くんに勝手に私の行動を決められたくなんかないんだけど」

 

「そうね。私たちはアンタの所有物じゃないのよ」

 

その言葉に光輝は固まる。

 

直後に担任が入ってきて、始業のチャイムが鳴った。ハジメは寝た。おやすみなさーい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

教室のざわめきに、ハジメは意識が覚醒していくのを感じた。居眠り常習犯なので起きるべきタイミングは体が覚えている。その感覚から言えば、どうやら昼休憩に入ったようだ。

 

ハジメは、突っ伏していた体を起こし、十秒でチャージできる定番のお昼をゴソゴソと取り出す。

 

それを飲もうとすると、

 

「ハジメくん!一緒にお弁当食べよ!いつもそれだけだと栄養足りないよ?私ハジメくんの分もお弁当作ってきたんだ!これ!」

 

「私もいいかしら?ちょっと相談したいことがあるのよ」

 

「あ、そうなんだ。ありがとう。雫も良いよ。いっしょに食べよう」

 

香織が話しかけてきた。だが、もう一人話しかけた人物がいた。

 

「香織、雫。こっちで一緒に食べよう。南雲はまだ寝足りないみたいだしさ。せっかくの香織の美味しい手料理を寝ぼけたまま食べるなんて俺が許さないよ?」

 

爽やかに笑いながら気障なセリフを吐く光輝にキョトンとする香織。少々鈍感というか天然が入っている彼女には、光輝のイケメンスマイルやセリフも全然効果がないようだ。

 

「え? なんで光輝くんの許しがいるの?というかこれはハジメくんのために作ってきたんだよ。光輝くんのためじゃないよ」

 

そう言うと香織はハジメの方に向き直って弁当を渡す。

 

だが、こんなときに異常事態が発生。

 

光輝の足元から幾何学的模様が出現し、みるみるうちに教室全体まで広がったのだ。

 

「皆! 早く教室から出て!」

 

その言葉が担任から発せられると同時、模様がカッと光り輝いた。

 

 

 

 

 

いつも通りプレート受け取りまでカット

 

※原作とは違い、香織と雫は戦争参加に賛成などしていません。むしろ完全否定です

 

 

 

 

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南雲ハジメ 17歳 男 レベル:1

 

天職:錬成師

 

筋力:10

 

体力:10

 

耐性:10

 

敏捷:10

 

魔力:10

 

魔耐:10

 

技能:錬成・言語理解

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これが血をこすりつけたときに出てきた情報だ。

 

まるでゲームのキャラにでもなったようだと感じながら、ハジメは自分のステータスを眺める。他の生徒達もマジマジと自分のステータスに注目している。

 

メルド団長からステータスの説明がなされた。

 

「全員見れたか? 説明するぞ? まず、最初に〝レベル〟ってのがあるだろう? それは各ステータスの上昇と共に上がる。上限は100でそれがその人間の限界を示す。つまりレベルは、その人間が到達できる領域の現在値を示していると思ってくれ。レベル100ということは、人間としての潜在能力を全て発揮した極地ということだからな。そんな奴はそうそういない」

 

どうやらゲームのようにレベルが上がるからステータスが上がる訳ではないらしい。

 

「ステータスは日々の鍛錬で当然上昇するし、魔法や魔法具で上昇させることもできる。また、魔力の高い者は自然と他のステータスも高くなる。詳しいことはわかっていないが、魔力が身体のスペックを無意識に補助しているのではないかと考えられている。それと、後でお前等用に装備を選んでもらうから楽しみにしておけ。なにせ救国の勇者御一行だからな。国の宝物庫大開放だぞ!」

 

メルド団長の言葉から推測すると、魔物を倒しただけでステータスが一気に上昇するということはないらしい。地道に腕を磨かなければならないようだ。

 

「次に〝天職〟ってのがあるだろう? それは言うなれば〝才能〟だ。末尾にある〝技能〟と連動していて、その天職の領分においては無類の才能を発揮する。天職持ちは少ない。戦闘系天職と非戦系天職に分類されるんだが、戦闘系は千人に一人、ものによっちゃあ万人に一人の割合だ。非戦系も少ないと言えば少ないが……百人に一人はいるな。十人に一人という珍しくないものも結構ある。生産職は持っている奴が多いな」

 

ハジメは自分のステータスを見る。確かに天職欄に〝錬成師〟とある。どうやら〝錬成〟というものに才能があるようだ。

 

ハジメ達は上位世界の人間だから、トータスの人達よりハイスペックなのはイシュタルから聞いていたこと。なら当然だろうと思いつつ、口の端がニヤついてしまうハジメ。自分に何かしらの才能があると言われれば、やはり嬉しいものだ。

 

しかし、メルド団長の次の言葉を聞いて喜びも吹き飛び嫌な汗が噴き出る。

 

「後は・・・・・・各ステータスは見たままだ。大体レベル1の平均は10くらいだな。まぁ、お前達ならその数倍から数十倍は高いだろうがな! 全く羨ましい限りだ! あ、ステータスプレートの内容は報告してくれ。訓練内容の参考にしなきゃならんからな」

 

この世界のレベル1の平均は10らしい。ハジメのステータスは見事に10が綺麗に並んでいる。ハジメは嫌な汗を掻きながら内心首を捻った。

 

(あれぇ~? どう見ても平均なんですけど・・・・・・もういっそ見事なくらい平均なんですけど? チートじゃないの?・・・・・・ほ、他の皆は?香織や雫は?やっぱり最初はこれくらいなんじゃ・・・・・・)

 

ハジメは、僅かな希望にすがりキョロキョロと周りを見る。皆、顔を輝かせハジメの様に冷や汗を流している者はいない。

 

メルド団長の呼び掛けに、早速、光輝がステータスの報告をしに前へ出た。そのステータスは・・・

 

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天之河光輝 17歳 男 レベル:1

 

天職:勇者

 

筋力:100

 

体力:100

 

耐性:100

 

敏捷:100

 

魔力:100

 

魔耐:100

 

技能:全属性適性・全属性耐性・物理耐性・複合魔法・剣術・剛力・縮地・先読・高速魔力回復・気配感知・魔力感知・限界突破・言語理解

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まさにチートの権化だった。

 

「ほお~、流石勇者様だな。レベル1で既に三桁か……技能も普通は二つ三つなんだがな……規格外な奴め! 頼もしい限りだ!」

 

「いや~、あはは……」

 

団長の称賛に照れたように頭を掻く光輝。ちなみに団長のレベルは62。ステータス平均は300前後、この世界でもトップレベルの強さだ。しかし、光輝はレベル1で既に三分の一に迫っている。成長率次第では、あっさり追い抜きそうだ。

 

すると、香織と雫が話しかけに来た。

 

「ねえねえハジメくん!どうだった?私はこれ!」

 

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白崎香織 17歳 女 レベル:1

 

天職:治癒師

 

筋力:10

 

体力:30

 

耐性:40

 

敏捷:20

 

魔力:120

 

魔耐:120

 

技能:回復魔法・光属性適正・闇属性耐性・高速魔力回復・言語理解

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「私もこれよ」

 

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八重樫雫 17歳 女 レベル:1

 

天職:剣士

 

筋力:90

 

体力:60

 

耐性:40

 

敏捷:120

 

魔力:20

 

魔耐:50

 

技能:剣術・縮地・先読・気配感知・隠業・言語理解

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2人のステータスにうなだれていると、ハジメのステータスを見た香織が言った。

 

「だ、大丈夫だよ!危なくなっても私が守ってあげるから!」

 

「そ、そうよ。私なら」

 

その言葉に、ハジメは反応する。

 

「私ならハジメのこt「2人とも、それはだめだ」

 

「「え?」」

 

「守られてばっかりでは僕が自分を許せない。・・・特訓して少なくとも隣に立てるようにはする。それまで待ってて」

 

「「う、うん・・・///((かっこいい・・・))」」

 

 

 

 

 

 

 

 

報告の順番が回ってきたのでメルド団長にプレートを見せた。

 

今まで、規格外のステータスばかり確認してきたメルド団長の表情はホクホクしている。多くの強力無比な戦友の誕生に喜んでいるのだろう。

 

その団長の表情が「うん?」と笑顔のまま固まり、ついで「見間違いか?」というようにプレートをコツコツ叩いたり、光にかざしたりする。そして、ジッと凝視した後、もの凄く微妙そうな表情でプレートをハジメに返した。

 

「ああ、その、なんだ。錬成師というのは、まぁ、言ってみれば鍛治職のことだ。鍛冶するときに便利だとか……」

 

歯切れ悪くハジメの天職を説明するメルド団長。

 

その様子にハジメを目の敵にしている男子達が食いつかないはずがない。鍛治職ということは明らかに非戦系天職だ。クラスメイト達全員が戦闘系天職を持ち、これから戦いが待っている状況では役立たずの可能性が大きい。

 

檜山大介が、ニヤニヤとしながら声を張り上げる。

 

「おいおい、南雲。もしかしてお前、非戦系か? 鍛治職でどうやって戦うんだよ? メルドさん、その錬成師って珍しいんっすか?」

 

「……いや、鍛治職の十人に一人は持っている。国お抱えの職人は全員持っているな」

 

「おいおい、南雲~。お前、そんなんで戦えるわけ?」

 

檜山が、実にウザイ感じでハジメと肩を組む。見渡せば、周りの生徒達――特に男子はニヤニヤと嗤っている。

 

香織と雫が睨んでいるのだが、一切気づいていないようだ。

 

「さぁ、やってみないと分からないかな」

 

「じゃあさ、ちょっとステータス見せてみろよ。天職がショボイ分ステータスは高いんだよなぁ~?」

 

ハジメは投げやり気味にプレートを渡す。

 

ハジメのプレートの内容を見て、檜山は爆笑した。そして、斎藤達取り巻きに投げ渡し内容を見た他の連中も爆笑なり失笑なりをしていく。

 

「ぶっはははっ~、なんだこれ! 完全に一般人じゃねぇか!」

 

「ぎゃははは~、むしろ平均が10なんだから、場合によっちゃその辺の子供より弱いかもな~」

 

「ヒァハハハ~、無理無理! 直ぐ死ぬってコイツ! 肉壁にもならねぇよ!」

 

そう笑われていると、話しかけてきた人物がいた。

 

「『子供より弱い』?『すぐ死ぬ』?それは君たちが決めることじゃないよ。・・・ハジメくんは努力して強くなるって言ってるんだから」

 

「あ、し、白崎さん・・・でもこいつ錬成師ですぜ?無能に決まってるじゃないですか」

 

「私はそうは思わないな。ハジメくんなら絶対なにか起こしてくれるはず」

 

「・・・へいへい。白崎さんに免じて返してやりますか。どうせお前は無能なんだからせいぜい俺等のサンドバッグになっとけよ?

 

 

 

 

 

 

 

そして、翌日から訓練が始まった。

 

魔法組と戦士組に分けられた。ハジメは戦士組の方だ。

 

戦士組の方には雫がいるのだが、檜山たちもいる。だが香織は魔法組のためいない。ハジメをいじめる絶好のチャンスだ。

 

メルドや他の騎士が目を話した隙にハジメをチンピラーズ4人が殴ったり燃やしたりしてくる。

 

メルドたちが戻ったときにはすでに元の訓練に戻っており、証拠はないため何もできない。

 

雫がどうにかしようとしたのだが、関係がバレることを恐れてしまったハジメがそれを拒否した。

 

そして思ったことだが、少なくとも、檜山達を一瞬で倒せるレベルにならないと二人の隣には立てないだろう。

 

なら、どうしようか。そのことを相談するため、3人でハジメの部屋で話し合っていた。

 

「うーん・・・なにかいい方法ってあるのかな?」

 

「そうね・・・今ってハジメはどれくらい早く錬成できるのかしら?」

 

「ん?・・・これぐらいだね」

 

机においてあった燭台を手に取り、2秒ほどで燭台を立方体に変形させる。

 

「なかなか早く見えるけど・・・これじゃすぐ敵に近寄られちゃうわね」

 

「そうなんだよね・・・もっと早くするしかないよなぁ」

 

「そうするしか方法はないはずよね。・・・そういえば、ハジメ。私に武器を作ってくれないかしら?この剣を素材にしていいから」

 

「え?良いけど・・・なんで?」

 

「・・・日本刀じゃないと使いづらいのよね」

 

「あ、そういえばそうか。竹刀って日本刀を竹で再現したみたいなものだったね」

 

「それじゃ雫ちゃんは上手く戦えないよね」

 

「そうなのよね・・・できるかしら?」

 

「できるだけやってみるよ。5分ほど待って」

 

そう言うとハジメは刀身を錬成して変形させていく。一度大雑把に形作った後、目視で凹凸を減らしていく。刃の形状もできるだけ日本と近いものになるように変形させる。

 

そして5分後。

 

「よし、ある程度できた。・・・どうかな」

 

「良いわね。かなり近いじゃない。・・・でも、流石に持ち手と鍔は無理だったのね」

 

「複雑なのは・・・というか、そんなに形を覚えていないものは難しいんだ。ある程度形を覚えているものならできるんだけどね・・・練習して、もっと上手くできるようになったら作り直すよ」

 

「・・・ねえ、ハジメくん」

 

「え、何?」

 

「香織、急にどうしたの?」

 

「『銃』って作れないの?」

 

「・・・あ。・・・え?・・・いや。つく、れ・・・・・・・・・・・・・・・作れる」

 

そう言いながら、さっきの立方体を手にとって錬成していく。その結果、火薬はないものの銃の形状ができた。

 

ハジメの父、愁の会社はゲーム会社だ。ゲームの作成に一部携わっていたハジメは銃の形状をかなりの精度で理解していたため、この世界でも銃を作り出すことができたのだ。

 

「流石に火薬はないから撃てないけど・・・作れた」

 

「これを使えば・・・」

 

「・・・でも、錬成を頑張ってみる。これだと『銃のおかげで』強いって事になってしまう。自分の力で隣に立ちたいんだ。これは最終手段にするよ」

 

「・・・そっか。邪魔しちゃってごめんね」

 

「そんなことないよ。いいアイデアだよ」

 

「・・・まあ、そろそろ寝ようかしら。もう夜も遅いのだし」

 

そう言いながら雫は部屋のベッドに潜り込む。

 

「あ、あれ?ねえ、雫?ここ、僕の部屋・・・」

 

「いいじゃない。このベッドは大きいのだし。私の部屋はここからだとちょっと遠いのよ」

 

「あ、なら私もここで寝る。私の部屋は雫ちゃんの隣だし」

 

「香織まで・・・まあ、いっか。それじゃあ、寝ようか」

 

「「「おやすみなさい」」」

 

 

 

 

 

そして錬成の訓練を続けること早1週間。

 

以前より早く錬成ができるようになり、しかも精度も向上していた。

 

==========================

南雲ハジメ 17歳 男 レベル:5

 

天職:錬成師

 

筋力:17

 

体力:27

 

耐性:17

 

敏捷:17

 

魔力:48

 

魔耐:17

 

技能:錬成[+遠隔錬成][+円滑錬成][+高速錬成][+精密錬成]・言語理解

==========================

 

これが今のハジメのステータスである。

 

他のステータスよりも、体力と魔力が上昇幅が大きい。

 

そして、まさかの派生技能が4つ。

 

たったの1週間で派生技能を4つも獲得できたのはチートだとしか言いようがないだろう。またはとんでもない才能があったか。

 

そしていつものようにハジメの部屋で話している。

 

「・・・よし、だいぶ速くなったね」

 

「私から見ると、この間の立方体が一瞬で短剣に変わったようにしか見えないわね」

 

「高速錬成って凄いんだね!」

 

「そうだね。・・・あと、こんな事もできるよ」

 

そう言いながら短剣を球体に変形させ、真上に放り投げる。落ちてきたものをキャッチするが、落ちてきたものは正四面体だった。もう一度投げる。今度は立方体が降ってきた。もう1回。今度は星型。さらにもう1回。今度はハート。上を見ていると、空中で止まった一瞬のうちに形が変形しているのが見える。

 

『遠隔錬成』と『高速錬成』を組み合わせると、こんな曲芸みたいなこともできてしまうようだ。

 

あと、遠隔錬成だが、試してみたところ、ハジメの部屋の端から端までは普通に届くようだ。

 

長さにすると8メートルくらい。

 

「・・・そうだ。刀貸して。もう少しいい形にできそう」

 

「あ、そうね。はい、これ」

 

「はい。終わったよ」

 

「・・・ホントに早いわね。刃こぼれも取れてるし・・・私よりチートじゃない?『錬成』って。永遠に武器を作ってくる敵なんか戦いたくないわよ」

 

「あはは、そうだね・・・でも、それよりも攻撃だよ」

 

「ハジメくん、攻撃はどうするの?」

 

「うん。アイデアはあるんだ。まだ上手くできてないけど」

 

「・・・どうするの?」

 

「これを使うんだ」

 

そう言うと、金属で作られた極細のワイヤーを見せる。そのワイヤーは身体に巻かれていた。

 

ワイヤーの先には、短剣が繋がっている。

 

「錬成の訓練をしてたときにわかったんだけど、僕の『錬成』って一部を僕が持ってさえいたら100メートル先でも錬成できるんだ。そしてこのワイヤーは50メートルある。これを使えば安全圏から一方的に敵を切ったりして攻撃ができるってものなんだけど・・・まだ練習中」

 

「・・・正直言って、私ハジメとは絶対に戦いたくないわね」

 

「そうかな。・・・あと、まだいくつかあるんだ。これもワイヤーを使うんだけど、これはちょっと太めのワイヤー。こうやってワイヤーを相手に絡ませる」

 

ハジメは伸ばしたワイヤーを机に置かれていた果物(赤と白の縞模様のバナナみたいな果物)に巻きつける。

 

「そして僕がちょっとだけ振動を加えると・・・ほら。スパッと切れちゃった」

 

「・・・糸ノコみたいなものかしら」

 

「うん。・・・我ながらえげつない技を作ったなと思うよ」

 

「・・・ハジメくん、他の技は何があるの?」

 

「あ、えーっと、ここで見せると大惨事になるから、明日見せるよ。ラッキーなことに、明日は休みの日だしね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして翌日。3人は訓練場を使う許可を取り、訓練場に来ていた。周りでは騎士たちが訓練している。

 

「で、昨日見せなかった3つ目の技だけど、こんなのだよ」

 

そう言うと、敵に見立てた鎧を檻を作って閉じ込める。そして地面を錬成し、大量のトゲを作り出す。材質は石だ。その大量のトゲを微妙にタイムラグを付けながら鎧に向かって突撃させる。

 

一瞬の後、土埃が撒き散らされる。埃が風で吹き飛ばされると、そこには見るも無惨な姿となった鎧が。トゲに貫かれたまま檻に閉じ込められていた。

 

周りの騎士は訓練するのも忘れてハジメが行ったことを呆然と見ている。

 

何人かは仲間と話していたりもする。

 

「なあ、お前ならあの子に勝てるか?」

 

「絶対無理。たぶん一発も当てられないし、もし近づけてもあのトゲが襲いかかってくるんだろ?勝てるわけ無い。無理戦だ」

 

「言っといてあれだが、俺も無理だな。あれ見て思ったが、魔法も意味がないだろうな。一瞬であのトゲを作ったってことは、一瞬で壁を作れるはずだからな」

 

「・・・あれ?もしかして、勇者様より強い?」

 

「・・・あり得るな。団長は今勇者様に勝っているが、あの子と戦うとなると・・・勝つどころか一瞬で殺される可能性すらあり得るんじゃ・・・」

 

「・・・気になるし、呼んでくるか?」

 

「そうだな」

 

 

 

 

 

「・・・で、あいつらに呼ばれて来たんだが・・・戦うか?」

 

「・・・はい。お願いします。自分がどれだけ戦えるか知りたいので」

 

「あいつらじゃだめなのか?」

 

「・・・あの顔を見てください。『絶対に嫌だ』って顔してますよ」

 

「・・・はあ。訓練増やしてやろうか。・・・まあいい。準備はいいか?」

 

「はい。いつでもどうぞ」

 

「では、行くぞっ!・・・何っ!?」

 

そう言ってメルドは地面を踏み込み、ハジメに近づく。だが、ハジメは地面を錬成して石の檻とトゲを作り出す。檻は自分を守るために、メルドの方ではなく自分の方に出現させた。トゲをよく見ると、先の形は雫に渡した日本刀のような形になっていた。石だから切れ味は良くないのだが。そのトゲを操り、連続でメルドに攻撃を仕掛ける。8本のトゲが連続で攻撃してくるため、どうやっても被弾してしまう。それが積み重なると少なくないダメージを受けてしまうのだ。

 

これは同時にトゲを操作し、更には複雑な操作を行うため、他の技よりも異常なほど疲れる。5分以上行おうとすると、気絶してしまう可能性だってある。

 

そうして攻撃を続けていると、2分ほど経ったとき、偶然メルドに隙のようなものができた。その瞬間にメルドの剣を弾き飛ばし、首元にトゲを突きつける。

 

「・・・メルドさん。僕の勝ちです」

 

「・・・まいった」

 

その瞬間、訓練場が沸いた。

 

周りの騎士からの歓声が凄まじいことになっていたのだ。

 

「すごいぞー!少年!」

 

「メルド団長に勝つなんて!」

 

「この国に団長を超える最強が生まれたぞ!」

 

口々にハジメを称賛する声が聞こえてくる。

 

恥ずかしさと隠しきれない喜びを隠すために、顔を隠す。

 

すると、肩を叩かれた。

 

「ハジメくん、お疲れ様」

 

「お疲れ、ハジメ。メルドさんに勝つなんて凄いじゃない」

 

「うん、よかった。・・・あー、疲れた。集中しっぱなしでだるい」

 

「・・・部屋で休む?」

 

「うん、そうする。2人も来てよ」

 

「当たり前よ」

 

「もちろん!」

 

そうして部屋に戻ろうとすると、メルドが話しかけてきた。

 

「南雲ハジメ。・・・見事だった。俺がお前に教えることはなにもないな。剣術を教えようと思って剣を渡したんだが、いらん心配だったな。・・・お前は、俺よりも強い。俺が認めるんだ。誇っていいぞ」

 

「メルドさん・・・ありがとうございます」

 

「・・・ああ、そうだ。明日連絡しようと思っていたんだが、もう少ししたら『オルクス大迷宮』というところに行って、本物の魔物と戦う予定でいるんだ。そのためにはパーティーを組んでおいてほしい。お前らは3人でパーティーか?」

 

「・・・そうですね。この3人でパーティーです」

 

「そうか。ならお前たちは問題ないな。・・・ああ、そうそう。1つ言っておく。他の国では導入していないところもあるそうだが、この国では一夫多妻制を導入している」

 

「「「・・・え?」」」

 

「もし式を上げるなら呼んでくれ」

 

「えちょ、メルドさん!?それだけ言って去らないでください!」

 

「・・・ハジメくん」

 

「・・・ハジメ」

 

「・・・2人とも・・・?」

 

「「これから、末永くよろしくね」」

 

「・・・プロポーズはこっちからさせてほしかったな」

 

そう言いながら、身体に巻いてあったワイヤーを一部取り出し、即興で指輪を作る。

 

そしてできた指輪を2人の薬指にはめる。

 

「・・・今はこんなのだけど、また今度ちゃんとしたものを渡すから」

 

「・・・ありがとう。ハジメ。これからよろしくね」

 

「私も。これからもよろしくね!ハジメくん!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いいなー。あの少年。あんな可愛い子2人ともが嫁さんか・・・」

 

「羨ましいが、最強様にはふさわしいだろ」

 

「・・・俺も結婚したくなってきたな。・・・あ、相手いないんだった」

 

「「涙拭けよ」」

 

 

 

 

 

 

そして翌日。昨日言われたように、メルドの口から改めてオルクス大迷宮に行くため、パーティーを作っておいてほしいと言われた。

 

もちろんハジメ、香織、雫の3人でパーティーを組んだ。

 

ちなみに、昨日渡した指輪だが、ハジメがケースを作ってそこに保管してある。

 

戦闘訓練などで汚したくないからだ。

 

 

 

 

 

 

まあ、予想通りといえば予想通りだが、光輝が香織と雫を勧誘しに来た。

 

「生憎だけど、私たちはもうハジメと一緒のパーティーになるって決めたの」

 

「そ、そうなのか。・・・でも、南雲と一緒にいるよりも俺の隣にいたほうが安全だぞ?何か起きても守ってやれるし・・・」

 

「いいの。私たちはもう決めたから」

 

「・・・なら、仕方ないか。・・・困ったらいつでも呼ぶんだぞ?」

 

「はーい」

 

『『たぶん光輝(くん)に頼むまでもなくハジメ(くん)に頼むと思うけど』』

 

 

 

 

 

そして、大迷宮に行く前日の夜。

 

「・・・ねえ、ハジメ」

 

「・・・雫?どうしたの?」

 

「・・・怖いの」

 

「え?」

 

「明日、魔物とはいえ動物を殺すことになるんでしょ。・・・それが、私はどうしようもなく怖いのよ」

 

「雫ちゃん・・・」

 

「・・・正直、僕だって怖い。1回魔物を殺して、そのまま元の日常に戻れるのかって不安だよ」

 

「・・・ハジメもなのね。・・・ねえ、ハジメ?」

 

「・・・どうかしたの?」

 

「抱いてくれないかしら」

 

「・・・はい?・・・聞き間違いかな?『抱いて』って言われた気が・・・」

 

「そう言ったわよ」

 

「ちょちょちょ!まだ未成年の少女がそんな事言うんじゃありません!」

 

 

勇者パーティーの戦闘はカット

 

 

 

 

 

 

ハジメがラットマンと戦う番がやってきた。

 

クラスメイトは錬成師であるハジメがどうやって攻撃するのか興味があるようで、ハジメを凝視している。

 

一部は嘲笑う準備をしている輩もいる。

 

そして、ハジメが突っ立ったまま『錬成』と唱える。

 

次の瞬間、周囲に大量のトゲが生える。材質は石のみ、金属のみ、混ざっているものと様々だ。

 

そのトゲが一斉にラットマンを貫く。脚。額。眼。胸。腕。貫かなかった部位など核しかない。核を貫かなかったのは自分の正確さを知らしめるためだ。

 

誰もが言葉を失っている。無能のはずの錬成師が一瞬で敵を殲滅したのだから。

 

嘲笑おうとしていたチンピラーズは恐怖している。

 

復讐されるのではないかと考えているからだ。

 

まあ、ハジメからしたらそんな面倒くさいことはしないだろうが。

 

後始末が大変だからだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

20階層の一番奥の部屋はまるで鍾乳洞のようにツララ状の壁が飛び出していたり、溶けたりしたような複雑な地形をしていた。この先を進むと21階層への階段があるらしい。

 

そこまで行けば今日の実戦訓練は終わりだ。神代の転移魔法の様な便利なものは現代にはないので、また地道に帰らなければならない。一行は、若干、弛緩した空気の中、せり出す壁のせいで横列を組めないので縦列で進む。

 

すると、先頭を行く光輝達やメルド団長が立ち止まった。訝しそうなクラスメイトを尻目に戦闘態勢に入る。どうやら魔物のようだ。

 

「擬態しているぞ! 周りをよ~く注意しておけ!」

 

メルド団長の忠告が飛ぶ。

 

その直後、前方でせり出していた壁が突如変色しながら起き上がった。壁と同化していた体は、今は褐色となり、二本足で立ち上がる。そして胸を叩きドラミングを始めた。どうやらカメレオンのような擬態能力を持ったゴリラの魔物のようだ。

 

「ロックマウントだ! 二本の腕に注意しろ! 豪腕だぞ!」

 

メルド団長の声が響く。全員で相手をするようだ。飛びかかってきたロックマウントの豪腕を龍太郎が拳で弾き返す。最前列にいた光輝たちが取り囲もうとするが、鍾乳洞的な地形のせいで足場が悪く思うように囲むことができない。

 

ロックマウントは投石などの攻撃手段があるため、最後尾あたりにいるハジメたちにも攻撃が普通に来る。だがハジメは壁を錬成して作り出し、簡易的なシェルターらしきものを作り出していた。

 

「キャアッ!?」

 

だが、そのシェルターが壊された。突然投石の威力が高くなったわけではない。

 

まさかの投げてきた岩(らしきもの)がロックマウントだっただけだ。

 

意外な攻撃方法に驚きながらもさっきよりも壁を厚くして錬成し、香織や雫、その他諸々を守る防御手段にする。

 

そして、ハジメは体に巻き付けていたワイヤーを取り出し、近くにいるロックマウントに巻きつける。

 

香織と雫だけは見たことがある攻撃方法。他のクラスメイトや騎士たちは初見の攻撃だ。

 

そして、ロックマウントの腕や脚、顔といったように、身体中全体にワイヤーが巻きつけられていた。そして、巻き付けたワイヤーに微細な振動を加え続ける。

 

すると、みるみるうちにロックマウントの体表にワイヤーが沈み込んでいった。体表にある岩を砕きながら進んでいる。

 

そしてある程度沈んだとき、ロックマウントが叫び、そしてそのまま倒れた。

 

「グゥガガガガァアアアー!!!!!!・・・ガ、ァ」

 

トドメとして、首を切断する。

 

討伐完了だ。

 

「よし、終わり。・・・雫、香織、大丈夫だった?」

 

「ええ、無事よ。ありがとうね、ハジメ」

 

「私も無事だよ!ありがとう!ハジメくん!」

 

そして、前の方、光輝たちがいる所ではではメルドの声がかかっている。

 

「後ろのやつはハジメが倒したぞ!お前らも気合い入れろ!」

 

その声に光輝が反応する。

 

「南雲が倒した・・・俺だって、香織と雫に頼りになるところを見せるんだ!」

 

そう言い、自分が持つ最高威力の一撃を放つ。

 

「万翔羽ばたき、天へと至れ――〝天翔閃〟!」

 

「あっ、こら、馬鹿者!」

 

メルド団長の声を無視して、光輝は大上段に振りかぶった聖剣を一気に振り下ろした。

 

その瞬間、詠唱により強烈な光を纏っていた聖剣から、その光自体が斬撃となって放たれた。逃げ場などない。曲線を描く極太の輝く斬撃が僅かな抵抗も許さずロックマウントを縦に両断し、更に奥の壁を破壊し尽くしてようやく止まった。

 

そして倒せたことを噛み締めようとすると、メルド団長の拳骨を食らった。

 

「へぶぅ!?」

 

「この馬鹿者が。ハジメに負けたくないって気持ちはわかるがな、こんな狭いところで使う技じゃないだろうが!崩落でもしたらどうすんだ!」

 

「す、すいません」

 

「まあ、今回は崩落とかそんな事故も起きなかったしこのことは不問としよう。もし次回使うときは状況を確認してから使えよ!」

 

「は、はい」

 

このときとある宝石(水晶?)が見えていたのだが、このことに気づく人はいなかった。

 

いや、いたにはいたのだが、それは遠藤だったため呼びかけても気づかれていなかっただけだ。

 

「よし、今回はここで終了だ!明日はまた訓練場で訓練を行う。それでは今から帰宅するが、気を抜くなよ!帰りに新しい魔物が出てくる可能性があるからな!」

 

「「「「「「「「「「「はい!」」」」」」」」」」」」




その後、ハジメたち3人が結婚すると言うことを聞き、光輝が暴走した。だが、この国では一夫多妻制を認めているとメルドに言われ、光輝がハジメにボコボコにされる事態は避けられたようだ。

ハジメはメルドに勝った。メルドは光輝に勝てる。結論、光輝はハジメより弱い。

チンピラーズも文句を言おうとしていたようだが、迷宮でのハジメの戦闘を見て文句を言おうにも言えなくなっているようだ。

戦えば、死ななくとも大怪我することは確定しているからだ。
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