ありふれたかもしれないIFの世界   作:uruka

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YYKKさんからのリクエストです。

この前にもいくつかのリクエストがあったのですが、うまく話が作れなかったので断念させていただきました。


カトレア戦で2人が死んだIF

もし、ハジメが助けに来たとき光輝と檜山がすでに死んでいたら。

そんなIFのお話。ルートは1つ。

※カトレア戦の途中から始めますが、作成の都合上ちょっと戦闘を変化させています

 

 

 

光輝と相対しているのは、頭部が牙の生えた馬、下半身がゴリラで構成されているような魔物だった。その肉体には極太の腕が4本生えている。

 

血走った眼で光輝を睨んでおり、長い馬面の口からは呼吸の度に蒸気が噴出している。明らかに、今まで光輝が戦った魔物とは一線を画す雰囲気を纏っていた。

 

その馬頭は、突き出した拳を戻すとともに、未だ立ち上がれずにいる光輝に向かって情け容赦なく濃密な殺気を叩きつけながら突進した。光輝がうずくまる場所の少し手前で跳躍した馬頭は、振りかぶった拳を光輝の頭上から猛烈な勢いで突き落とす。光輝は、本能がけたたましく鳴らす警鐘に従ってゴロゴロと地面を転がりながら、必死にその場を離脱した。

 

ドォガガアア!!

 

直後、馬頭の拳が地面に突き刺さり、それと同時に赤黒い波紋が広がったかと思うと轟音と共に地面が爆ぜた。まさに爆砕という表現がぴったりな破壊がもたらされる。これが、この馬頭の固有能力〝魔衝波〟である。内容は単純で、魔力を衝撃波に変換する能力だ。だが、単純故に凄まじく強力な固有魔法である。

 

『物理耐性』の派生技能[+治癒力上昇]により、何とか脳震盪からだけは回復しつつある光輝は、必死に立ち上がり聖剣を構えた。その時には、もう、馬頭が眼前まで迫っており再び拳を突き出していた。

 

光輝は、聖剣を盾にするが左腕が完全に粉砕されており、右腕一本では衝撃を流しきれず再び吹き飛ばされる。その後も、何とか致命傷だけは避けていく光輝だったが、四本の腕から繰り出される〝魔衝波〟を捌くことで精一杯となり、また最初の一撃によるダメージが思いのほか深刻で動きが鈍く、反撃の糸口がまるで掴めなかった。

 

「ぐぅう! 何だ、こいつの強さは! 俺は〝限界突破〟を使っているのに!」

 

「ルゥアアアア!!」

 

苦しそうに表情を歪めながら、〝限界突破〟発動中の自分を圧倒する馬頭の魔物に焦燥感が募っていく光輝は、このままではジリ貧だと思いダメージ覚悟で反撃に出ようとした。

 

だが……

 

ガクン

 

「ッ!?」

 

その決意を実行する前に、遂に、光輝の〝限界突破〟の時間切れがやって来た。一気に力が抜けていく。短時間に二回も使った弊害か、今までより重い倦怠感に襲われ、踏み込もうとした足に力が入らず、ガクンと膝を折ってしまった。

 

その隙を馬頭が逃すはずもない。突然、力が抜けてバランスを崩し、死に体となった光輝の腹部に馬頭の拳がズドン! と衝撃音を響かせながらめり込んだ。

 

「ガハッ!」

 

振り抜かれた腕と同じ速さで迷宮の壁へと吹き飛んでいく。『限界突破』の副作用として一定時間の間弱体化するというものがあるが、運が悪くもその時間内だったため通常よりも膨大なダメージを受けてしまった。

 

血反吐を吐き、ガクリとうなだれる。そして、そのまま一切動かなくなった。

 

瀕死の状態であり、まず生きていることが奇跡だ。

 

まあ、おそらくは馬頭の魔物がじっくりと光輝をいたぶるために手加減したのだろうが。

 

馬頭の魔物が光輝に近づき、首根っこを掴んで持ち上げる。その光輝をカトレアに見せるようにした。その状態の光輝を見てカトレアは満足気に頷き、部屋中にいた魔物に命令を与え撤退させる。

 

数分後、警戒心をあらわにしながら龍太郎や雫といった勇者パーティーの面々が現れた。

 

雫たちの目に入ったのは、馬頭の魔物がうなだれた光輝の首根っこを持ち上げている姿だった。

 

勝利の象徴である勇者が敗北したことを理解し、表情を絶望に染めた。

 

 

 

※ここからも原作はいろいろありますが、面倒なのでカットします

 

 

 

カトレアの頭上数センチのところで静止している聖剣を見て、カトレアは光輝に言葉を投げかける。

 

「呆れた。・・・今更気づいたってのかい?アンタが殺そうとしているのは『人』だってことに」

 

光輝にとって、魔人族とはイシュタルに教えられた通り、残忍で卑劣な知恵の回る魔物の上位版、あるいは魔物が進化した存在くらいの認識だったのだ。実際、魔物と共にあり、魔物を使役していることが、その認識に拍車をかけた。自分達と同じように、誰かを愛し、誰かに愛され、何かの為に必死に生きている、そんな戦っている〝人〟だとは思っていなかったのである。あるいは、無意識にそう思わないようにしていたのか・・・

 

その認識が、魔人族の女の愛しそうな表情で愛する人の名を呼ぶ声により覆された。否応なく、自分が今、手にかけようとした相手が魔物などでなく、紛れもなく自分達と同じ〝人〟だと気がついてしまった。自分のしようとしていることが〝人殺し〟であると認識してしまったのだ。

 

「まさか、あたし達を〝人〟とすら認めていなかったとは……随分と傲慢なことだね」

 

「ち、ちが……俺は、知らなくて……」

 

「ハッ、〝知ろうとしなかった〟の間違いだろ?」

 

「お、俺は……」

 

「ほら? どうした? 所詮は戦いですらなく唯の〝狩り〟なのだろ? 目の前に死に体の「一匹」がいるぞ? さっさと狩ったらどうだい?おまえが今までそうしてきたように……」

 

「……は、話し合おう……は、話せばきっと……」

 

そんな戯言を言う光輝に、カトレアは心底軽蔑したような目を向ける。

 

「はぁ・・・甘ちゃんなこった。・・・あたしは、アンタみたいなやつが大っ嫌いなんだよ!来い!アハトド!この甘ったれた勇者に制裁してやりな!」

 

「ルゥオオオ!」

 

アハトドと呼ばれた馬頭の魔物がかなりの速さで光輝に接近してくる。

 

光輝は接近した魔物を倒そうと聖剣を構えるが、がくんと体から力が抜けた。

 

さっき使った『覇潰』、そしてそれよりも前に使用した『限界突破』。無理に無理を重ねた光輝の体はすでに動くのが難しくなっているくらいには負担がかかっていた。

 

そんな隙を見逃すほどこのアハトドは甘くない。

 

光輝の胴体をその剛腕で掴み、そしてそのまま持ち上げた。握力が強いせいか、光輝は苦悶の表情を浮かべている。

 

周りにいた雫や龍太郎はその絶望とも言える光景を眺めている。さっき、アハトドが光輝に向かってきていたときにカトレアは周りの魔物に命令を下しており、一旦戦闘が中断されていたのだ。というか、周りの魔物はむしろ光輝の方に近づいていったのだが。

 

そのおかげか、なんとか集まることができて結界で少なくとも自分たちの身体を守ることができた。しかし、光輝はその限りではない。

 

「グッ・・・はな・・・せ・・・!話し・・・合え・・・ば・・・わかりあえ・・・る・・・はず・・・だ・・・!」

 

「・・・こんな状況になってもまだそんなこと言い続けるのかい」

 

こんな状況になっているのにまだ話し合えばわかると思い込んでいる光輝。そんな光輝にはカトレアだけでなく、雫のように一部のクラスメイトからも軽蔑したような視線が送られていた。

 

「・・・アンタは害でしかない。・・・ここで死にな」

 

「・・・え・・・!?」

 

「アハトド、やれ」

 

そう言われたと同時、アハトドが光輝を握っている手に力を込め始めた。光輝の表情は苦悶から絶望へと変化していく。

 

「い・・・嫌だ!死にたくな―――

 

命乞いの言葉は無視し、アハトドは光輝の身体を握りつぶした。

 

バキバキ。ゴキッ。グチュ。ビチャッ。バキッ。ニチャ。ガチャン。・・・ドチャッ。

 

アハトドが手を開くと、光輝だったものが落ちてきた。

 

鎧、聖剣だった物の残骸。血や肉が付いたままの骨。あと、首の途中でちぎれた光輝の生首。圧力がかかりすぎたのか、右目が飛び出てしまっていた。

 

アハトドは光輝の胴体を掴んでいたため、頭部は握りつぶされなかったのだ。まあ、握りつぶされなかったからといって無傷というわけではなかったのだが。

 

しかし、その頭部はカトレアに近づこうと歩き出したアハトドによって無惨にも踏み潰された。

 

パキッと音がした後、アハトドが踏み潰したところにあったのはもう誰だったのかすらわからなくなってしまった骨と血、そして肉だった。しかし飛び出てしまっていた右目だけは無事だった。

 

「ありがとうさん、アハトド。・・・それじゃ、次はあっちだね」

 

そう言って、2人(1体と1人?)は青白い顔をした檜山たちの方を見た。

 

「う、うわぁああああああっ!?し、死にたくねぇええええ!」

 

その視線に気が付き、怖気づいたのか檜山はその場から逃げ出そうとしてしまった。

 

そう・・・結界から抜け出してしまったことにも気が付かずに。

 

さっきカトレアは雫や龍太郎たちと戦っていた魔物たちを自分たちの下へ戻らせたが、それは万が一アハトドが倒されてしまうようなことがあったときのための保険としてだった。

 

この場で最も危険だった光輝が死んだ今、保険として置いておく必要はなくなっていた。

 

そして、カトレアのところにいる魔物の中でも特に固有能力が強力な魔物(ドラ◯エのきめ◯どうしの背が伸びて服を着ているような魔物)が檜山に向けて火球を放つ。

 

背後を見ていなかった檜山はその火球がぶつかってしまい、一瞬で火ダルマになった。

 

最期に檜山が目にした光景は、自分以外の全員が結界に守られて無事でいる姿だった。

 

「クソ、が・・・・・・・・・・ち・・・しょ・・・・・」

 

そのまま地面に倒れ、二度と起き上がることはなかった。

 

そしてアハトドが雫たちの方に歩き出したとき、急に地面が揺れ始めた。

 

いや、地面だけではない。天井、壁・・・この階層全体が揺れている。

 

そのせいか、天井からも石の破片が落ちてき始めた。

 

そして、更に揺れが大きくなったとき、天井が崩落した。

 

いや、「壊された」が正しいか。

 

まあ、どっちでも良いだろう。1つ言えるのは、魔族にとっての『悪夢』が降臨したということだ。

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