もし、ハジメ、香織、雫、優花、愛子が何らかの事情で召喚時にクラスにいなかったら。
そんなIFのお話。ルートは2つ。ハジメ視点と別視点。
※召喚までは原作と同じためカット
ルート1 ハジメ視点
教室のざわめきに、ハジメは意識が覚醒していくのを感じた。
居眠り常習犯なので起きるべきタイミングは体が覚えている。
その感覚から言えば、どうやら昼休憩に入ったようだ。
ハジメは、突っ伏していた体を起こし、十秒でチャージできる定番のお昼をゴソゴソと取り出す。
が、取り出したときに放送が鳴った。
〜♪『2年3組南雲ハジメ君。健康診断の連絡があるのですぐに保健室に来てください』
これは10日ほど前にあった健康診断のことだ。しかし、ハジメはタイミング悪く視力検査を休んでしまった。
その視力検査についての呼び出しだった。
面倒だな、と思いつつも検査はしなければならないため保健室へと歩いていった。
お昼はその道中で飲んだ。
「はい、検査はこれで終わりよ。来年は休まないようにしてね」
保健室で受けられなかった検査を受けたハジメは歩いてクラスに戻っていた。
『おいキモオタ!視力はどうだったんだ!?どうせお前は夜ふかししてゲームばっかりしてるから視力も悪いんだろ?』
『やっぱりエロゲーばっかりしてるオタクは目が悪いんだな!』
とか檜山とか近藤が言ってくる想像ができる。
だが、現実は違った。
檜山や近藤といった不良たちはクラスにいなかったのだ。
いや、檜山だけではない。
香織、雫、優花は残っていたが、光輝や鈴といった他全員が跡形もなく消え去っていた。
「俺もいるわ!!」
ごめん、浩介も残ってた。気づかなかった。
残っていた4人に何が起きたのか聞いても、誰も何が起きたのかわからない様子だった。
逆になぜ4人は無事だったのかと聞くと、色々理由があった。
香織は昼食用の飲み物を買うために購買に行っていた。
雫はトイレで用を足していた。
優花は5限目の授業で使用する教材を取りに行っていた。
浩介は委員会の仕事をするため移動していた。
ハジメは上述の通り視力検査のため。
なぜこんな現象が起きたのか考えているとこのクラスの担任である愛子が入ってきた。
「みなさーん、プリントを返すから名前を呼ばれたら取りに来てくだ、さ、い・・・・・・・・・・・・・え?み、皆は?どこいったんですか?し、雫さんや南雲くん、何か知りません?」
そんなふうに動揺しながらハジメたちに何が起きたのか聞こうとする。
だが、ハジメたちもなぜ皆が消えているのかは知らないため首を横に振る。
一旦、校長に相談することにした。
「なんですって?ここにいる4人以外の生徒が全員消えた?」
「はい、私が教室内に入ったときにはすでに白崎さんたち4人しかおらず・・・私としても何がおきたのか一切理解できていないし把握できていないんです。」
「私達も色々と用があってその時教室にはいなくて。私が4人の中で最初に戻って来たんですが、その時にはもう皆いませんでした。」
校長室に入り説明した。発言したのは主に教師である愛子と雫だった。
「そうですか・・・わかりました。君たちは今日は帰ってください。この状態で授業をしても意味はないでしょうから。それと、畑山先生は残ってください。この後に職員会議を行います」
「わかりました」
クラスに自分の荷物を取りに戻ると、何人も生徒が集まっていた。
「なあ、なんで誰もいないんだ?」
「知らねえよ。でもあの弁当とかどうみても途中だよな・・・?」
「鈴ちゃんたち・・・どこ行っちゃったの?」
そりゃあ野次馬も集まるだろう。なにせ今日の朝は全員いたはずなのだから。なのに、そこにいる5人を除いた他全員が行方不明。
見に来るなという方が難しい話だ。
ハジメたちが教室に入ろうとしても話しかけてくる。
だが意外と物わかりがいい人間ばかりだったのかは知らないが、自分たちも何もわからないことを伝えると結構すぐに去ってくれた。
「そうか・・・すまんな。お前らも急に同級生が消えてショック受けてるだろうに聴いてしまって」
上級生にはこんなことを言ってくれる人もいた。
「ただいま」
ハジメが帰宅すると慌てて母、南雲菫が玄関に来た。
「ハジメ!?どうしたの!?なにか学校であった!?」
今の時刻は14時20分。普通じゃありえないくらい早い。
「あ、か、母さん・・・」
その様子を見て菫は本当に何かが学校で起きたことを悟る。
普段のハジメなら授業短縮などで早く帰れたときはすぐに靴を脱いで部屋の中に入るはずだから。
でも今回は違う。部屋に入るどころか靴すら脱がずに玄関で棒立ちになっていたからだ。
「詳しいことは部屋で聞くわ。靴脱いで上がりなさい」
「ハジメたち5人以外が行方不明、ねえ・・・これが漫画だったら異世界召喚がテンプレなんだけど・・・あいにくこれは現実なのよね。流石にありえないかしら」
ハジメからの説明を聞いて菫はこう話す。事実、光輝たちは本当に異世界召喚されていたわけだが今のハジメたちが知るはずもない。
帰る前にクラスで何が起きたか知っている人を探してみたが、どのクラスにもいなかった。
昼休みには廊下にもかなり人がいたはず。でもなぜ・・・?
考えても仕方ない。不信感を覚えながらもその日はそのまま帰宅したのだ。
その結果があのハジメの異様な雰囲気だったのだ。
そしてこれは何もハジメの家だけではない。
白崎家や園部家でも同じようになっていた。
そしてその頃高校では会議があり、3つのことが一旦決まった。
『愛子がハジメたちから聞いたことをありのまま保護者に伝える』
『ハジメたちは別々のクラスで授業を受けさせる』
『警察に連絡するが、絶対にマスコミがこのことを嗅ぎつけてきて生徒たちに質問しようとするだろうからそのときは教師が対応する』
そしてこのことは即刻在校生に伝えられた。
そしてその日はそのまま解散となった。
行方不明になった生徒の家族は20世帯以上ある。それに加えて警察にも連絡するのを今日中にしなければならないためだ。
早速校長たちは連絡を始めた。
事態を理解できずしどろもどろになる者。発狂した者。怒声を浴びせる者。
三者三様だったが、全員が自分たちの子が行方不明になったことを受け入れていないようだった。
高校に来た保護者もいた。だがやって来てひとしきり怒声を教師陣にぶつけた後、ようやく事態を理解できる時が訪れたのか地面にへたり込んで泣き叫んでいた。
止められる者などいるはずなかった。
そして、1年が経過する。ハジメたちも3年生になり受験シーズンに入っている。
この1年、色々あった。一部を記載する。
まず、連絡をした直後から警察の捜査が始まった。
だが、様々のものに視点を置き捜査を続けてみても、一切証拠や手がかりと行ったものは見つからなかった。
それに便乗するように、マスコミが生徒たちに質問しようとしたりして囃し立てる。
そのマスコミは先生たちが対応することができたが、記事にはあることないこと書かれることもある。その記事を呼んだ人間はそれが事実だと勘違いするため、SNSでは炎上や同情など色々起きていたりもした。
結局その捏造記事を書いた出版社は文書偽造の罪で潰れてたが。
それに加え、1ヶ月が経った頃、中国で世間を揺るがす大事件が起きたため世論はそっちに向かい、警察も捜査が減ってしまった。
半年も経てば、短い時間で事件の進捗のなさを報道したり、テレビのコメンテーターやこの事件を機にブレイクしようと下心を抱えた自称オカルト研究者などが様々な見解で話題を引き延ばそうとするくらい。
もう世間の意識は全くと言っていいほど行方不明事件に興味がなかった。
それでも失踪した学生達の家族や残された警察が必死に行方を探していた。
しかし、警察が本気で探しても見つけることができなかったのだ。
手掛かりすら何一つ得ることができず、誰もが心身の疲労と諦念に侵されていた。
そして1年が経過した現在、警察も捜査を打ち切り、保護者たちもほぼほぼ諦めのムードだった。
中には精神を壊してしまった人もいるくらいだ。
そして、更に9年。行方不明になってからでは10年が経過した。
とあるファミレスに20代の男性、女性が集まっている。
全部で4人いる。ハジメ、雫、優花、浩介だ。
「・・・で、結局手がかりってあったのか?」
「いや、まったくなかったわね。ウチのおじいちゃんたちでも把握していないっていったい何が起きてたのかしら・・・」
「僕たちの方も手がかりなし。父さんたちのコネとか使って探してみたんだけど全然さ」
浩介が話しかけ、雫とハジメが答える。
雫の家は道場を経営している。そして雫の家族、保護者は本当にアンタら人間か?と疑いたくなるような人が多い。忍者の末裔とか言われてたりもする。
そんな人たちでも一切の手がかりなし。もちろん警察でもこの事件は迷宮入りとなってしまっていた。
ハジメは高校、大学を卒業した後、父である南雲愁の会社に入社した。
愁も会社の地位とコネを使って調べていたのだが、手がかりなんかゼロ。
浩介と優花は2人ほどのコネがあった訳では無いが、それでも自分たちなりに探していた。
「やっぱりそうか・・・」
沈黙が続く。その重い空気を変えるため、雫が話を変えた。
「そ、そう言えば南雲くん、伊織ちゃんは最近どんな感じなの?」
伊織とはハジメと香織の間にできた子供だ。
大学では経済学部に進んだハジメだったが、香織も同じ大学の同じ学部だった。
別にどちらかがストーカーというわけではない。
ハジメはこの大学を第一志望として受験し、合格。
香織はもう少し上の大学を受験していたが、その大学には落ちてしまい第二志望だった大学に入ったのだ。それが偶然ハジメが入った大学だっただけ。
それからなんやかんやあって2人は同棲してそのまま結婚した。
なんやかんやのところは書くと長くなりそうなので・・・と言いたいところだが作者が全然話考えてないからカット。
そして2年前に子供が生まれていた。
「もう元気いっぱい。壁に落書きばっかりしててさ。掃除が大変だよ」
「というかもう2歳になってるのよね?ならウチに食べに来なさいよ。雫や浩介も」
そんな事を言ったのは優花だ。高校卒業後調理学校に進学し、自分の家を手伝っている。
美人看板娘としてネットでは結構話題になってたりする。
「んー、ならまた今度行かせてもらおうかな。伊織が汚くしちゃったらごめん」
「全然問題ないわよそのくらい。いつもやってる掃除がほんのちょっと増えるくらいだし」
「で、やっぱり今回も手がかりは見つけられなかった、と」
「ま、これももういつものことなのよね・・・なら、今回もこれで解散かしら?」
「そうね。じゃあまた会いましょう」
「ただいま」
「おかえり、ハジメくん」
そんなふうにハジメを迎えたのは妻である香織だ。
「伊織は?なんか声聞こえないけど・・・」
「お父さんが預かってくれてるの。孫に甘いんだから」
ハジメとの結婚にグギギ・・・となっていた香織の父、白崎智一。そんな堅物親父は生まれた孫の破壊力に一撃ノックアウトされた。堅物親父から孫バカジジイに進化した。
「義父さんか。なんか伊織生まれてからあの人僕にちょっと優しくなったような」
「孫に嫌われたくないんでしょ。でも、それより久しぶりの休み。デートしない?」
ここ数ヶ月仕事だったり育児の疲労でデートができていない2人。二つ返事で出かけた。一応デートしてくるというメッセージを送ってある。
「久しぶりだね。こんなふうにゆっくりしてるの」
「仕事多かったからね・・・でも一段落ついたし当分ゆっくりできそうだよ」
そんな他愛もないことを離しながら川沿いを歩いていると、不意に背後から声をかけられた。
「香織!俺に会いたかっただろう!?今戻ってきたぞ!」
・・・急に誰?声をかけてきたのはコスプレをしているのか金ピカの鎧を着ている青年だ。
「あの・・・だれですか?」
そんな事を言ったのは香織だ。
「ああ、そうか。長年離れ離れになっていたからだな。君の幼馴染だった天之川光輝さ!」
まさかの光輝。10年間行方不明になっていた人間が突然現れたのだ。
「えっと、色々聞きたいことあるんだけど、光輝くんは10年間どこで何してたの?」
「ああ・・・あの日、俺達は異世界に召喚されて、そこで天職ってやつをもらったんだ。俺は勇者だって。で、その後に魔人族を倒してくれと頼まれたんだ。戦争に参加してくれって。クラスの皆も俺の意見に賛成してくれて戦争をすることになったんだよ。でもさ、魔人族は人間みたいな姿だったんだ。それなら話し合えばわかるはずなのにあの世界の人は殺せっていうんだ。しかも魔人族を殺さない俺は裏切り者だってさ。勇者である俺の言葉は全て正しいはずなんだぜ?でも裏切り者だってさ。人殺しは悪いことだろう?」
そんなふうに話す光輝の言葉はそれはもう異常だった。
まず異世界に召喚されたなんて普通は信じられるはずがない。
天職や魔人族なんてもってのほかだ。
しかも自分が話すことは全て正しいなんてまず普通の精神では思ったりしない。
というかなぜ戦争に参加した?
「で、それからもレベルを上げたり訓練しながら過ごしていたんだけどさ」
光輝は話すことをやめていない。周りにも何だ何だと人が集まってきた。紺色っぽい帽子も見えてる。
「目の前が急に明るくなって、気づくとそこに立っていたんだ。それで理解したんだ。これは香織が俺のことを想っていてくれたからだって。だから神様がまたこの世界に戻してくれたんだって。だからさ、香織、喜びなよ!君が好きな人が戻ってきたんだ!」
本当に話を聞かない。
「というか、君は誰だい?僕の香織に勝手に許可なく近づいてるなんてさ。何様のつもり?」
ハジメの方を見て光輝は言う。
「ハジメくんだよ。私の夫」
それに答えたのは香織だった。
「は?ハジメ?あのオタク?何かあったのかい?というか夫?なぜ?ありえないだろ?僕意外と香織が付き合って結婚するなんてさ」
「ありえなくなんかないよ。私高校の時からハジメくんのことが好きだったんだもん」
「そんなはずない。ありえないんだ。・・・ああ、そうか。香織、君は気づいてないだけだよ」
そんなふうに自分に都合のいいように考えているみたいな発言を繰り返す。
「君はハジメに催眠をかけられてハジメを好きだと勘違いしているんだ」
「そんなわけ無いだろ。というか告白したの香織からだったよ?」
すぐさまハジメがその勘違いを正そうとしても一切話を聞こうとしない。
「うるさい!俺の香織に催眠なんてかけやがって・・・成敗してやる!」
そう言って腰から剣を取り出す。本物みたいな剣に観客は悲鳴を上げた。
「ちょっと、キミ!こんなところでそんな危ないもの出しちゃだめだよ!」
観客の一人だったおじさんが光輝に近づいて動きを止めようとする。だが。
「うるさいな、どけよ!これは俺とあいつの問題だ!」
そう言って光輝は光輝を抑えようとしたおじさんを手で払いのける。
そうした後またハジメに剣を向ける。だが、その時周りの人が叫んだ。
「キャァアー!人殺しよ!誰かー!」
光輝からしたら軽く手で払い除けた感じだったのだろう。だが光輝は自分の力がおかしいことを一切理解していなかった。
結果としておじさんは胸が陥没してしまい、そのショックで亡くなってしまったのだ。
その声を聞いた光輝はおじさんの方を見る。口から血が流れている。
自分が人を殺した
その事実は光輝を動揺させる。
異世界でも人を殺さなかった人間が人を殺してしまったのだ。
もう遅いことだが、光輝は自分の力が異常に成長していることを理解しておくべきだっただろう。
直ぐ側にいた警官が光輝を取り押さえる。警官は自分より力が強い人を取り押さえることもあるため様々な技術を身につけている。そのため光輝を取り押さえることができているのだ。
そうして光輝は現行犯逮捕されたのだった。
少し、後日談を記そう。
あの後、光輝は警察に連れて行かれた。警察署では取り調べがあった。なぜこんなことをしたのか。
「俺は悪くない俺は悪くない俺は悪くない俺は悪くない俺は悪くない勝手にあの人が死んだだけだ俺は悪くない俺は悪くない」
質問しても、こうやって話すばかりで答えようとしない。
埒が明かないと判断されたのか、部屋に一人で残された。
1時間ほど経って戻ると、少し落ち着いたのか会話はできるようになっていた。
だが、そこで話されたのは異世界や魔人族といったおかしなものばかり。
警察は光輝を精神異常者だと判断した。
それと光輝の名前を聞いたとき、何か思い当たることがあったのか近くにいた年配の警察官が何か連絡しているようだった。
2日後。
テレビではこんなニュースが出された。
『次のニュースです。◯◯町の河川敷で20代と見られる男性が40代の男性を殴殺した模様。警察が詳しく調べたところ、容疑者は10年前の行方不明者の一人でした。ですがその本人は精神に異常をきたしており、会話は困難という状況です。10年前の行方不明者である天之河光輝容疑者は◯◯町の河原で剣を取り出し20代の男性に剣先を向けた。それを止めようとした近くの男性を殴殺したところを近くの警察官に取り押さえられた模様。警察は動機を調べたり他の行方不明者がどこにいるのか詳しく調べていく模様です。それでは次のニュースです。政治家である・・・』
リクエストいただいたのはいいんですが今回も暴走してしまった・・・
かいざーおーさん、イメージと違ったらすいません。